六の村の村長の話
大変お久しぶりでございます。
前回体調に気を付けて――――といっていた私が体調不良と、仕事の忙しさにダウンしておりました。
そして、その間に書籍版二巻が発売!(イェーイ!)
――――遅すぎる宣伝ですが、二巻もよろしくお願いいたします。
そして、めでたく3巻も出して頂けるようですので、ゆっくりと書いていこうと思います!
今度は絶対にギリギリになって焦らないように!
ケモナーさんから話を引き継いでおもむろに立ち上がった六の村の村長が話始める。
「そこの四の村のがここに来てからはかなり忙しいことになった。何せたった一人の獣人が村を二つ滅ぼしたってんだからな。まさかと思って偵察も出したが、確かに村二つが潰されてやがった。まぁ、全てを鵜呑みにするわけにはいかなかったが、守りを固めない要因にはならないからな。守りを固めると時に他の村への警告と、この事態をさっさと片付ける為に他の村へ使いも出した。·······まぁ、結局集まったのはここにいるメンバーと五の村のメンバーのみって訳だがな」
そうぐるっと辺りを見回す六の村の村長。
「後はやられた一の村に使いをやって無事な連中は此方に移動させた。その時に奴等と一戦あったわけだが·······それはどうでもいい。流石に四の村に関しては敵の拠点になってるって事で無事な奴の救出には向かえちゃいねぇ。様子見はしたが、単純に考えて敵の数は二つの村の男の総数だ。一つの村で――――それも守りに残す人員を考えると、確実に勝てるとは言いがたい上に、負けると敵の数を増やすだけって所がめんどくせぇ」
確かに敵の数が増えるのは驚異かもしれないけど、今は一の女性、二、三、六の村の人間が戦力として考えられるはずだ。それなら守りに残す人員をそれぞれの村で半分ずつと考えても、相手の戦力よりも多い戦力を出せるはずなんじゃ?
「って訳で、一旦戦いは仕掛けずに撤退したわけだが―――今度はより厄介な事になった訳だ」
厄介な事?
「奴に操られている獣人の中にも普通に意識がある様な言動をする奴が現れやがった」
そういえばケモナーさんや、この六の村の村長からは、操られている獣人は見ればすぐ解るって言われていたっけ? ということはレッカもその類いなのだろうか?
「条件はよくわかんねぇが、そいつ等は味方の振りをして此方に溶け込み、一人ずつ誘い出しては敵の元に導いてやがった。偶然にも早期に発見できたお陰で被害は最小限に留めることは出来たがな」
「ちょっと待ってください!」
思わず六の村の村長さんの言葉を遮ってしまった。
「じゃあ、この村の中にもアルファに操られた人が居るかもしれないってことですか!?」
「あぁ、そう言うことだ。何なら何人か引っ捕らえて纏めてある」
迂闊に攻め込めないのはそれが理由なのか――――。確かに、いつ裏切られるかわからない状態では攻め込もうにも攻め込めない。
「だから、今んとこは常時監視をつけている状態だ。今無事だと思われている奴全てにな」
「それはどういう―――?」
「簡単な話だ。全員五人一組で行動させて、単独での行動を禁止させている。厠に行く場合でも扉の前で残りの四人を待機させるって感じで互いに互いを監視させている。勿論男と女は混ぜている。着替えも専用の場所で行わせているぞ?」
成る程、どれだけ敵が混じっているかは解らないがそこまで多くないと推測することが出来るこの状況でなら、その案はかなり有効に働くだろう。
「あれ? でも、俺達と出会った時ケモナーさんは一人だったけど?」
「四の村の奴には精鋭をつけていたからな。お前さん等が気づかなかっただけだろう?」
「普通にケモナーさんだけじゃなくて後ろにもついてきてたにゃよ? ノエルは気づいて無かったにゃ?」
ニナがそう言うが、その隣でアオイが首を横に振っているのを見る限りアオイもその存在には気づけていなかったらしい。
·······しかし、生命感知と温度感知で感知できないって、一体どうすればそんなことが出来るんだろう?
一旦死んで温度を失った死体にでもなってみるとか?
しかし、ここにはアルファに操られている人達がいるのか······。後でその人達にセイクリッド・ウォーターを使ってみるか? レッカも触れるなみたいなことを言われていたみたいだし、もしかしたら洗脳が解けるかもしれない。
「―――いや、無いな」
少し考えると、その行動が全く無意味なものであることに気づく。
仮に、セイクリッド・ウォーターの魔法で洗脳が解けていたとしても、それを証明する手段が俺たちには無い。
もし、操られていた人が正気に戻ったとしても、それを証明する手段が無いのだ。
その後何かあればただでさえ良くない俺達の立場が、より悪くなるだろう。
「まぁ、てなわけで、今は手詰まりな訳だ。取り敢えずは対策を立ててえものだが······おい、そこの四の村の客人達は何かあるか?」
六の村の村長が俺達に話題を振ってくる。
ここはセイクリッド・ウォーターの情報を共有しておくべきだろうか? いや、ここで下手に隠して後々ばれるのは心証が悪いだろう。
「一応、俺とアオイで使える魔法のセイクリッド・ウォーターっていう魔法が有効になると思う。まだ、試したことは無いんだけどレッカはアルファから絶対に触れるなって言われていたらしいから、もしかしたら洗脳が解けるのかもしれない」
「ふぅむ、何故アルファがその魔法を知っておるのだ?」
確かに、それに関しては俺も疑問だったのだが、予想自体はできている。
「これは予想でしか無いんだけど、以前同じ様な黒い炎を使う敵をこの魔法で倒したことがあった。多分その時に何らかの方法でアルファに伝わったんだと思う」
「ふぅむ······成る程。一度試しておきたいところではあるが······難しいものだな」
六の村の村長も俺と同じことを考えているのか、顎に手をやる。
「まぁ、考えていても拉致があかん。次はお主たちの事を話してもらおうか。四の村の客人達よ。一応此方の事情は今のであらかた話終えておるからな」
六の村の村長の言葉に俺は頷いた。