理由
「大樹海に向かう? どういうことだ? ノエル」
俺の言葉にテツから疑問が提示される。
「全て憶測でしか無いんだけど、恐らく大樹海全てが敵って訳では無いと思う」
「······根拠はあるのか?」
「まずは、大樹海の規模。大樹海全域で俺達人間種と同じくらいの亜人種がいるんだよ? それを全部一人で洗脳するとしたらどれだけ時間がかかる? これは態々捕らえた男をニナの幼なじみが炎で燃やしたっていうことから洗脳されている人たちにはこの洗脳の炎は使えないという仮定の元での話になるんだけど······ニナは大樹海から出てどれくらいたってる?」
「王都までの移動に二週間かかっているから大体半年くらいにゃ」
「───じゃあ俺達が今から移動したとしても一ヶ月だ。一日で五人捕まえたとしても百五十人。大樹海全体の数から比べれば微々たる物の筈だよ」
「······ふむ」
一応テツは納得しているのか突っ込みは入れてこない。それを確認して俺は話を続ける。
「次にだけど、ニナが逃げ切れているんだよ」
「······成る程」
俺の一言で察してくれたのかアオイが頷く。
「む? 今ので何かわかったのか?」
反面テツは理解できなかったのか首を傾げている。
「ニナが逃げ切れたと言うことは他に異常に気づいて逃げ出している人、もしくは逃げ出した人がいる可能性は非常に高い」
「ふむ、そうだな」
「そして、逃げ出した人は当然逃げ出した先に注意勧告をするはず」
「まぁ、しなければおかしいな」
「そしたら当然その逃げ出した先は警戒するはず。ニナの里から来た人たちが近づいてきたら攻撃を仕掛けるくらいに」
「うむ、そこまでは俺も考えた。しかしその洗脳できるニナの幼なじみが攻めてくれば話は別だろう。さっきまで味方だった者が急に敵に変わるのだ。そう簡単に対応ができるとは思えんが······?」
「そしたら更にそこから逃げ出した人が次の所に情報を伝える。今大樹海は二つに割れている可能性が非常に高い」
「成る程、確かにどれだけ頑張っても全ての者を燃やしきるなど不可能だからな」
テツは納得してくれたようだ。それに恐らくだが───、
「敵の炎だけど、多分一瞬燃やされたくらいでは洗脳はされないと思う」
「確かに。それなら態々捕まえて燃やさずとも普通に燃やせばすむ話だからな───ふむ、そう考えると何とかなるのか?」
確定だと思って動くのはまずいだろうから断定はしないが、ほぼ間違いないだろう。
「そして、数の問題もニナの幼なじみに抗う集団に何とか接触できれば多分協力してくれる筈だ」
亜人種と人間種という垣根はあるが、こちらには獣人のニナもいるのだ。恐らく大丈夫だろう。
「成る程······そう考えてみれば確かに大樹海に向かうのもあり───いや、今この瞬間も洗脳されている人が増えている事を考えれば今いくことの方が最善なのかもしれんな」
「······なら!!」
「あぁ! 勿論何かあったら直ぐに撤退することが条件にはなるが、大樹海に向かおう」
テツの言葉に俺達は大樹海へと向かう準備を始めるのだった。
ノエル「あれ? このパーティーのリーダーって俺だよな?」
作者「······次回投稿は水曜日かな? 正直書籍化作業の進みが悪いのでもしかしたら日曜日になるかも? よろしくお願いいたします!」