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語られし理由

「ぐっ······ここ······は?」


 セイクリッドウォーターによって吹き飛ばされたマーカスが身動ぎする。


「······マーカス」


 俺がマーカスに声をかけると、さ迷わせていた視線が此方へと向く。


「······ノエルか。はっ、何があったか薄々思い出してきたぜ。その久し振りに見たムカつく面をぶっ飛ばしてやりたい所だが俺にはもう時間がねえ」


「時間が無い? ······なっ!?」


 マーカスの視線を追って俺が見たのは徐々に黒くなっていっているマーカスの右足だった。


 慌ててヒールをかけようとするがマーカスに止められる。


「無駄だ。気づいてんだろ? 俺はもうとっくの昔にくたばってんだよ」


「うるさい! そんな理由で諦められるか!」


 マーカスの言葉を無視して俺はヒールをかける。しかし、そんな俺の思いを無視してマーカスの体は徐々に黒くなっていく。


「······ノエル。これからもし俺みたいに黒い炎を操る奴に出会ったら躊躇するんじゃねえぞ。俺の中に埋め込まれていた憤怒の炎は死体に宿って宿主の記憶と結び付いてその体を動かす物だった。つまり、その黒い炎を操る奴等はもう死んでるんだ。もし俺みたいに中の炎だけが消滅したとしても見ての通り直ぐに体が崩壊を始めやがる。だから躊躇はするな。でないとノエル。今度はお前が死ぬことになるぞ」


 マーカスの確信を持ったような言い方が気になり俺はマーカスの顔を見る。


「俺たちのパーティーが死んだのはとあるパーティーと強欲の魔炎の使い手の戦闘······いや、蹂躙を見て、そこに無謀にも加勢したからだ。奴は蹂躙している時に確かにこう言っていた。『白魔法師が冒険者をするなど許されざる事です。我等が主を害される訳にはいきませんからねぇ』と。その後俺は憤怒の魔炎を埋め込まれて奴等の仲間になっちまった。そして、その時に俺の記憶を参照したんだろう。憤怒の魔炎はノエルを殺そうと行動し始めた。今日ここに来て勇者を殺した後もノエルを殺す予定だったみたいだしな」


 いきなりマーカスから告げられた事実に俺は思わず治療の手を止めてしまう。それが事実ならば一つの仮説が浮かび上がってしまう。


「じゃあ白魔法師が冒険者に向かないっていうのは······」


「ふん、てめえが今まで白魔法師で冒険者を続けることが出来ている······それが答えだろ」


 マーカスの言葉に俺は頷く。


「まぁ、しかし······どういう理屈かは知らねえが白魔法師であるてめえが勇者になったんだ。こんなことは俺が言えたことじゃねえが······俺たちの仇はまかせ───ゴフッ! ちっ! もう時間切れか·······」


 いきなり咳き込み始めたマーカスに体の方を見る。もう、首の下辺りまで黒化が進んでいた。


 慌ててヒールをかけ直す。


「げほっ! ごほっ! ······ハァ、ハァ。ノエルゥ······最後に······一つだけ······院長先生に······育てて貰った恩も返せず先に行っちまってごめんって······」


 結局マーカスはそこまでしか言葉にすることはできなかった。


 そこまで口にした段階で黒化が一気に進行して全身を包み込んだのだ。


 そして全身が黒化したマーカスはその全身を塵に変えるとまるで最初からその場にいなかったかのように風に運ばれて散っていったのだった。

漸く白魔法師が差別されていた理由を明かすことが出来ました。補足しておくと、白魔法師の冒険者は(この物語の始まる)200年ほど前から魔族によって一人ずつ消され、また、情報操作等も行われたり、光魔法について書かれた本を消し去られたりしていました。ノエル君が見つけた光魔法についての本も埃を被って誰も見つけられないような所に隠されていた様な状態だったため、無事でした。この設定については最初から決めていたもので、物語がここまで来ないと明かせない事実だったので、疑問に思われた方も多かったのでは無いでしょうか? 実際感想にてたくさんご意見頂いておりましたし······また、疑問点などございましたら感想欄にてよろしくお願いいたします。

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