破魔の試練その7
1時間も遅刻して申し訳ないです!
『君は勝てない相手に立ち向かう勇気と自分にとって都合の良い誘惑をはね除ける意思の強さを僕に示した。僕はそれに応えて勇者の力を君に継承しようと思う』
早見 昴の言葉と共に光が俺の方へと向かってくるのを見ながら俺は、
さっき勇者の力が欲しいって言えばくれるみたいな事を言っていたみたいな気がするが······まぁ、格式美みたいな物だろうか。
等と下らないことを考えていた。
早見 昴から向かってきた光は俺の胸に当たると、そのまま俺の体の中に入ってきて······俺の中に染み込んでいったのを感じた。
『うん、ちゃんと体に馴染んでるね。おめでとう。これで君も勇者だ。その力で魔王を倒すも良し、勇者を倒すも良し······君の好きにするといい。ただし、一つだけ忠告しておこう』
「忠告?」
『あぁ。君に見せた二つ目の世界を覚えているかい?』
俺は無言で首を縦に振る。勿論だ。あんなもの忘れられるわけが無い。
『あれは最初の一つとは違い、君の願望や意思なんて全く関係なかった物だ。あれはこの試練を受けた者の一人が実際に体験した事を君とその仲間に置き換えて再現した物だ』
その言葉に俺は目を見開く。何故なら先程まではあれも、ありうるかもしれない未来の可能性の一つか何かだと思っていたからだ。
しかし、あれが事実だったということは·······
『そう、君は魔王だけでは無く、権力にも気を付けなくてはならない。権力は時として強力な武器になりうるんだ。だから可能な限り権力も避けていくのがベスト』
早見 昴の言葉に俺は冷や汗をかく。
普通に繋がってしまっている権力であるヤマト家の事を思い出したからだ。
『後は······まぁ、君が勇者になったことは君が目標を達成すれば嫌でも魔王にばれる。だからそれまでに死者の軍勢を見分ける方法を手に入れて欲しいんだけど······何か当てはあるかい?』
「治療師ギルドのギルドマスターが恐らく教えてくれる」
前回はアオイか俺のどちらかが探知を使えれば良かったのでアオイが熱源探知を使えるようになった時点で俺は探知の練習を諦めたが、ノクスさんが教えてくれていた生命探知は命を感知してその動きを知るというものだから不意打ちはともかくとして搦め手は封じることが出来るだろう。
アオイを助ける前にやることが増えるのは辛いが、アオイを助けた後直ぐに死んでしまったのでは意味が無い。
それに、前回も感覚はかなり掴めていた。恐らく一日か二日あれば習得も出来るだろう。王都に戻って直ぐに勇者に襲撃をかけても恐らく失敗に終わるだけ。
だからミズキさんに渡りをつけたり、俺達が王都で指名手配されたりしていないかなどの情報確認。
その時間を当てれば良いだけだ。
『成る程、確かにそれなら問題は無さそうだね。後は魔王を倒す方法だけだ······とは言ってもかなり難しいと思うけど······まぁ健闘を祈ってるよ』
早見 昴が後ろを向いて歩き出すと同時に、さっきまで真っ暗だった空間が急激に白くなっていく。
それと同時に俺の目の前も真っ白になっていき───、
そこで俺の意識は途切れた。
これにて破魔の試練終了です。次回更新は······日曜日かな。
さぁ! こっからテンションあげてくぞぉー!