破魔の試練その6
大変お久しぶりです!皆様
1週間ぶりでしょうか?
今回書籍版に一部設定を合わせております。と言っても技名だけなのでそこまで重大なネタバレはしないように心がけておりますが······
合わせている部分は以下のとおりです
過回復→過回復
エリアヒール→全域破壊
ブースト→身体強化
「俺じゃ·······魔王を止められない?」
『あぁ、そうだね。魔王は聖魔の守りの他に死の衣というスキルを持っている。効果は触れた相手の奪命。······悪いけど君のスキルとかを確認させてもらった限りではこのスキルを掻い潜って魔王を止められるものは見つからなかったよ』
······そんなスキルがあるなんて魔王反則だろ!
思わずそう叫びたくなってしまった。
早見 昴の言葉を信じるのなら元から魔王は死んでいるのだから、俺の切り札である過回復も効かないことになる。つまり、俺の中で魔導書投擲と並んでただ二つの遠距離攻撃である全域破壊も効果が無いという事になる。
つまり、俺が魔王に勝つには身体強化を使用した近距離での殴り合いを制するくらいしか無かったのだが、死の衣のスキルのせいで魔王に触れることは出来ない。
······魔導書投擲だけで魔王を倒すとか少し無理があるだろ。
B級下位並の力を手に入れた今でもミノタウロスを相手に出来るかどうかだ。とても魔王相手に成功するなんて考えられない。
『それと、もう一つ残念なお知らせがある』
そんな中で早見 昴が追い討ちをかける。
『今まで勇者の力を受け継いだ者達が魔王を倒せていた理由は、勇者を倒して安心しきっていた、もしくは勇者の力を受け継いだ者を魔王が見つけ出せていない内に魔王へと挑むことが出来ていたからだ。君は勇者の力を使って今代の勇者を討とうとしているからね、その余裕は誘えないし、一発目から正体はばれている事になる』
「正体がばれていたらどうなるんだ?」
『······最初に君に見せた世界を覚えているかい?』
早見 昴の言葉の意味が解らず頭を捻るがノムおばさんに後ろから刺されたあの光景はとても忘れることが出来ないものだったので頷いておく。
『あれと似たような事が現実に起こるようになる。魔王は死を操ることに慣れている。つまり、死者に仮初めの肉体を与えて行動を操るなんて事もできるのさ。君に想像出来るかい? 普段の生活をしている人たちがいつの間にか死んでいて魔王の尖兵へと成り果て、背中を見せるとナイフで殺しに来ることもあるし、実は死んでたと思われていた親類が、実は生きていましたとばかりにこちらへと近づき、ハッピーエンドだと思いきや殺されるなんて事もある』
早見 昴の言葉に俺は絶句する。
もしかしたらそれは家族だけの話ではなくてアオイやテツも······そう考えると体が震えてしまうのを感じる。
『正直死の衣に関しては仲間に任せてしまえば良い件ではある。死の衣を突破する方法としては遠距離からの魔法だけで攻撃を続けることだからね。だけどこの話を聞いた後に君はどこまで仲間を信用することができる?』
正直な話未知数だった。その状況になってみなくては解らないが、恐らく完全に背中を任せられるか否かと言われればその答えは否となってしまう。
『さてと、情報はここまでだ。だから君には再び問いかけるとしよう。君は魔王を倒すために······ん? いや、君の場合は勇者を倒すためにか? まっ、どっちでも良いか。勇者の力を望むか否か。ちなみに万が一魔王を倒すことが出来ても今度は二番目の世界みたいなことが現実になる可能性が高い。そして、もし勇者の力を諦めてこの場所に残留するなら僕の力の全てを使って君を守るし、君の望む世界を作ることも出来る』
早見 昴の言葉と同時に早見 昴の後ろにアーシャ村の皆が形成されていく。ノムおばさんやカインおじさん。父さんと母さんも······皆俺の名を呼び手を差し出して来る。少なくともあの時のような狂ったような感じは無い。
俺は思わず一歩二歩と踏み出してしまった。
『そうだ。普段なら彼女がアーシャ村にいることはあり得ないんだけど······君が望むなら彼女も一緒になれるようにしてあげよう』
その言葉に呼応して形成される女の子······アオイ。
その姿を見た瞬間に俺の足が一歩止まる。
「······ノエル」
アオイが呼ぶように手を俺に向かって差し出す。父さんや母さん達と並んで───。
『ノエル······嫌だよ。助けて······』
夢で見たアオイの言葉が聞こえた。
そして───、
『······待ってる』
その言葉が聞こえた時、俺は決意した。
足を止めてゆっくりと早見 昴の方を向く。
「······俺は、アオイを助け出すと誓いました」
その言葉に早見 昴は俺が何を言いたいのか察したようだが、敢えて何も言わなかった。
しかし、その後ろにいる父さんや母さん達は俺の言葉を止めようとするかのように、俺の名前を絶叫するかのように呼び始める。
「だから俺には勇者の力が必要です。確かに俺には魔王を倒すことは出来ないかもしれませんし、かなり不利な戦いにもなるでしょう。でも、俺には便りになる仲間がいます」
俺は一旦言葉を切って胸に手を当てて仲間の顔を思い浮かべる。頭は悪いけど優しく面倒見の良いテツ。基本的に無表情でたまに毒を吐くが、猫と戯れて幸せそうな顔をしたりする所もあるアオイ。今は故郷に帰ってはいるが、ラブラブカップルのレッカとニナも恐らく何だかんだ言って一緒に戦ってくれるだろう。
「だから、俺はそんな仲間を信じて戦い抜きます。なので勇者の力を俺にください!」
その言葉に早見 昴が頷いてニッコリと笑う。
「良いだろう。合格だ」
次回投稿は金曜日を予定しております




