ミズキさんの呼び出し
(祝)100話!
結論から言うと依頼は比較的に楽に終わった。
どの様に達成したかと言うと、まずはバルバロスを見つける所からだ。
とは言ってもバルバロスを見つけること自体はそこまで難しいことではない。
王都から少し離れた森(校外学習で使ったところとはまた別である)の奥まで行けば、個体数こそそこまで多くないものの、バルバロスは生息しているし、生息域まで行けばバルバロス自身の巨体や、色から見つけるのもそこまで難しくはない。
それに、バルバロスは繁殖期以外では基本的に一匹でいる。なので、多対三という状態になることも基本的に無いのだ。
バルバロスを見つけたら次は気を引く囮役と槍の奪取役に別れる。
今回はテツが囮で、奪取役がアオイ、俺はどちらかに何かがあった時すぐサポートに入れるように構えている。
位地についたことを確認すると、テツが攻撃を一発入れてバルバロスの気を引くと同時に
「ヘイトコンセントレイション!」
と叫ぶ。
後から聞いたのだが、これは盾役の茶魔法師が好んで使う魔法で、相手を自分に集中させる魔法らしい。
それによってテツに攻撃が襲いかかるのだが、テツは槍による攻撃を全て真っ正面から盾で受けるのでは無く、側面を盾で打ち上げる。
これによって槍を引き戻すことに失敗したバルバロスが体勢を崩し、その隙にアオイの魔法がバルバロスの腕を切り落とそうとするも、一発で切り落とすことは叶わなかった。
まぁ、これは何時ものことで普通ならバルバロスの視線がアオイへと向かう事になる。
しかし、今回のバルバロスはテツのヘイトコンセントレイションの効果か、アオイに注意を向けること無く、再びテツへと攻撃を仕掛ける。
再びテツの盾によって上方向へと弾かれる槍。
そこにアオイの魔法が再び着弾して、バルバロスの槍を持った腕を切り落としたのだった。
後は俺が過回復を使って倒したのだった。
え? 最初から過回復を使って倒していたら傷の無い槍を手に入れれていたのではないかって?
俺も最初はそう思ってたんだけど、試してみたら普通に槍の方もぶっ壊れてしまったのだ。
明らかに生き物では無いはずなのにどう言うことなのか、知り合いに聞いても誰にも解答はもらえなかった。
とまぁ、こうして依頼を無事に終えることができたのだが······
「治療師ギルドにて待っているとの、ミズキ・ヤマト様からの伝言です」
依頼完了報告と同時にその様な伝言を伝えられる。
この伝言は冒険者ギルドのサービスの一環で、一応有料にはなるが、対象の冒険者を指定して、伝言を伝えてくれるというものだ。
俺は使ったことは無いが、ノクスさんなどは仕事をテツだって欲しいときにちょくちょくこの制度を使って俺を呼び出したりしていた。
「それにしてもミズキさんから呼び出しってなんだろうな?」
「······ん、しばらく来ちゃダメって言われたのは昨日の事だしそれの説明とか?」
確かに、俺達は昨日までヤマト家でたまにお世話になっていたのに、理由も話さずしばらく来るなといわれたのだ。
もしかしたらそれの説明をしてくれるのかもしれない。
「ノエル達はミズキ・ヤマト殿と知り合いなのか?」
俺達二人の会話を後ろで黙って聞いていたテツが口を挟む。
そう言えばテツはアオイの家族の事を知らないんだったな。
俺がアオイに顔を向けると、アオイがテツに説明を始める。
「ん、ミズキ・ヤマトは私の姉さん。私はもう家出してヤマトの名前は捨てたけれど」
「ほぅ!」
テツが顎に手をやって興味深そうにアオイを見る。
そんな状態のテツに、アオイが事情を説明する。
そうした話をしている間に治療師ギルドについた俺達。
テツは治療師ギルドに入ったのが初めてだったのか、興味深そうに辺りをキョロキョロと見回している。
そんなテツを連れて受け付けに行き、ミズキさんに呼ばれたことを伝えると、話が通っていたのか、ミズキさんのいる部屋を教えてくれる。
ミズキさんのいると聞いた部屋をノックすると
「入って良いよ」
とミズキさんの声がしたので、扉をあける。
「ごめんね。いきなり伝言なんか使って呼び出しちゃって」
「大丈夫」
ミズキさんが手を前であわせて軽い感じで謝る。
まぁ、俺達も特になんとも思っていないし急ぎの用事があるわけでもないのだ。
と、そのミズキさんが後ろのテツに気づいたようだ。
「彼は?」
ミズキさんの言葉にテツが一歩前に進み出て胸に手を当てて自己紹介を始める。
「初めまして、ミズキ・ヤマト殿。私はテツと申します。ノエルたちとパーティーを組ませて頂いている者です」
そんなテツを見て、俺とアオイがぎょっとする。
今までこんなテツを見たことが無かったからだ。
ミズキさんも俺達の反応を見てテツのその行動が何時ものものでは無いと察したのか
「いつも通りで良いですよ。ノエル君とアオイちゃんのパーティーメンバーなんですし······それに私は貴族の一員とは言ってもそんなことあんまり気にしないですから」
ミズキさんの言葉に、俺は体が固まった。
どうしてテツがこんな行動をしているのかを察したからだ。
そう言えばヤマト家って貴族なんだった······
よくよく記憶を思い返して見ても俺、ヤマト家の人に敬意を示していたことって一度も無いんじゃ······
今更ながら俺は冷や汗をダラダラとかくのであった。
本来ならもっと長く書く予定だったのですが、ここで切らないと次がとても短くなってしまう······
なので中途半端ですが、一旦ここで切らせて頂きます。
次回更新は······日曜日ですかね?