始まりの村アーシャ
本日より連載始めました
よろしくお願いします
「よっと! そろそろ今日は終わりにするかな」
「じゃあ、向こうに置いてある木は車に積んでくればいい?」
荷車を指差して僕はお父さんに訪ねる。
「おうよ! 流石にこれ以上切ったらまた元に戻るのにかなり時間がかかって来るだろうし今年はここまでにしよう」
「うん!」
お父さんの言葉に僕も頷き、車に木を積む。
その木を積み終わるとお父さんと一緒に車を引いて僕たちの村へと歩き出す。
僕たちの村はアーシャという名前でかなり小さな村だ。
そのため一人一人がやる仕事が多岐に渡り、お父さんも今日は木こりのお仕事だったが明日は猟師のお仕事をやることになっているし明後日はまた違う仕事をすることになるのだろう。
「おぉ、ディックさんじゃないか! 今仕事からお帰りかい? ノエル君もお手伝いご苦労様だね。少し食ってきなよ」
そう言って焼き鳥の刺さった串を手渡して来るのはいつも何らかの屋台をしているノムおばさんだ。どうやら今日の屋台は焼き鳥の屋台だったようだ。
「おっ! 今日は結構体使ったから腹減ってたんだよ。絶対に夕食までは持たなかったから助かるぜ!」
「ありがとうございます」
お父さんは笑いながら、僕は一つ礼をしてから受けとる。
「良いってことさね! あんたらが外の事をしてくれているからあたしらはこうして暮らしていられるんだ。あたしとしてはあんたらが怪我一つなく帰ってきてくれるのが何より嬉しいんだ。もし魔物とかに襲われたら一目散に逃げておいでよ」
『魔物』
それは魔族と呼ばれる人達により使役され、人々を襲っている存在だ。なぜ魔族がそんなことをするのかは不明であり、人間を食料としているという話やただの趣味など様々な噂が流れている
そんな中人間は冒険者と呼ばれる力ある人達の働きにより魔物を退けることで生存圏を確保している。
また、僕たちが住んでいるこの世界の名前はルイスといい、ルイスにはこの魔物を使役する魔族や僕たち人間の他にも亜人族と呼ばれる人たちがいる。
エルフやドワーフ、獣人と呼ばれる人たちだ。
彼らは森の奥深くに住んでいて自分達の村に近づく人がいたら容赦なく攻撃するそうだ。
亜人族の人達には少し会ってみたい気もするけど襲われるのは流石に少し怖いかもしれない。
「そういや最近新しいダンジョンが見つかったって話を村長から聞いたよ。ここから結構近いって話だからしばらくは警戒しないといけないかもね」
「ふむ、そうか······それではしばらくはいつも以上に警戒をしないといけないな」
ノムおばさんとお父さんが難しい顔で話しているダンジョンとは、誰が作ったのかわからない空間の事だ。
中には大量の魔物が存在することと、ダンジョンの奥深くにあるダンジョンコアというものを破壊しない限りどんどん大きくなっていく事から魔族が多すぎる魔物を収容するために作ったんだとか、魔族が人間の住む地域を侵略するための前線基地だとか様々な噂が流れているがこちらも噂の真相は定かではない。
ではなぜお父さんがいつも以上に警戒をしないといけないと言ったのかというと、魔物が多すぎるダンジョンは少しずつだけど魔物を外に放出する。つまりお父さんが警戒しているのはそのダンジョンから出てきた魔物なのだ。
更にそれだけならいいのだが最悪の場合ダンジョンからモンスターが爆発的に出てくる事もある。
それを僕たちは「ダンジョンの氾濫」と呼びかなり警戒している。
なぜなら冒険者の数が多い王都アルンの近くならともかくとして、こんな田舎な村だ。
当然冒険者などいるはずもなく、もしダンジョンが氾濫なんて起こせばこの村が滅びるのは確定になってしまうからだ。
「ぬぅ······これは皆で逃げる準備をしておくべきかな?」
お父さんが言うことに僕も賛成だ。
ダンジョンの氾濫は新しく見つかったダンジョンにこそ起こりやすい。これは子どもでも知ってる常識だ。
新しくダンジョンが見つかったということは新しく出来たか、今まで見つかっていなかったかのどちらかだ。
まだ新しく出来たのならば早急にそのダンジョンを潰せば終わる。
しかし、今まで見つかっていないだけだとしたら今ダンジョンの中にはどれ程の魔物がいるのだろうか?また、どれだけ大きなダンジョンになっているのだろうか?まるで予想がつかない。
つまり、いつ氾濫してもおかしくない。
それどころか今まで氾濫が起こってなかったのが不思議なくらいだったのだ。
要するに今すぐにでも逃げないとヤバイかもしれないってことだ!
「その件については大丈夫さ。S級冒険者のパーティーの一つが今回見つかったダンジョンの攻略に向かっているらしいよ。S級なら直ぐに終わらせてくれる」
「あぁ、そりゃ大丈夫だな」
ノムおばさんの言葉にお父さんも頷く。
どうして大丈夫だと思ったんだろう?
お父さんに目を向けるとお父さんも僕が疑問に思っていることに気づいたのだろう答えを教えてくれた。
「要するに魔物を倒す仕事の冒険者の中でも一番強い人がこっちに向かってるんだ。その人たちの強さは人間とは思えないほど強いらしいぞ!」
その言葉に僕は目を見開いて。
「そんなにすごい人たちがいるなら安心だね」
お父さんはそんな僕をポンポンと叩くとノムおばさんに改めてお礼を言って僕に帰宅を促した。
この時はまだこんな幸せな日々がずっと続くと信じていた。
ここから頑張って書いていきたいと思います
続きが気になる方や将来性を感じていただけた方、単純に面白いと思ってくださった方は評価やブックマークをよろしくお願いします