いつものできごと
そこは地下室でも屋根裏でもなく、いつものように三階あたりの端の部屋だった。ブーンと唸りを上げている、子象くらいの大きさの金属の箱型の精密機器を組み合わせたような物体があって、なんだか雑然としているなあと思って、端の機械に手をかけて窓際の方へと引っ張ってみたら、プシューという音がして唸り声が止んだ。機械が停止してしまったのだろう。それと同時に電源が落ちてしまったから、これはどうやら発電機だったようだ。あらためて、端から整然と機器を並べた上で、壁際を見てみたら、壁から出たコネクタに、基盤のあらわなコネクタが外れて転がっているのが見えた、そこでぼくはそれを、手に取ってみると、熱を持っていて少々熱い。我慢しながらそれらを組み合わせてみると、パシッという音がして、再び唸り始めて電源が入った。
そのとき連絡が入って、敵がやってきたというので、ぼくは慌てて階段を下りていった。すると下から、留学生たちが、スリッパを履いて駆け上がってくるのだ。ぼくがサンダルを履いているのを見て、「おかしい」と思ったらしいが、「そうか、先生だからか」ということですぐに納得してくれた。ぼくは彼らとぶつかりそうになりながら下まで降りて、見上げると、屋上の上に、彼女が立っているのが見えた。横から、敵の軍団がやってきて、階段を駆け上がっていくので、今度は彼らと競争で、屋上まで上がった。屋上では彼女が大演説をぶっていた。「このビルは欠陥だらけだ。小さなドアがないし、中吊りの幟もないし、四角いもうひとつの部屋もない。みてみなさい。この屋上はつるぺただ。この屋上に小さなコンクリートの建物があるべきなのだ」しかし彼女はたちまち軍団に取り押さえられてしまった。そして、軍団によって「中吊りにしてやる」と言われ、端のコンクリートの境のところに出た金属の突起に両腕を引っ掛けられようとした。ぼくはそれを間一髪で奪い返して、奥の方にあった、ダンボール箱に彼女を詰め込んで、上からその辺にあった古新聞やクッションなどを詰めた。ぼくは、軍団たちと戦うと見せかけて、その段ボールを持って奥の部屋から階段を下りて、自宅の隣の部屋に、持っていった。
そこはお茶の間で、三世代の家族が団欒を行っていた。そこへダンボール箱を持って行って、中から出したのは、古ぼけた犬で、ここでかつて飼っていた犬なのだった。しかしその家族は、「こんな犬知らない」というのだ。おかしいと思ったら、既に後釜の犬がいて、その犬とこの犬とはそっくりドッペルゲンゲルなのだった。その場は彼女に任せて、ぼくは外へ出て、ある小屋の前に立った。そこへ、戦闘員たちが追いついてきて、ぼくの横に首領が立つのだった。
「いつもここにいたというわけだ」
「そう、これを見てたんだよ」と、掛け軸の絵を指差すと、ちょうど朝日が昇り始めて、陽の光が当たり、すると隠れていた立体画が黄色く大きく浮かび上がるのだった。