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オレオレ詐欺に注意?

作者: 山田助兵衛

『オレオレ詐欺に注意』


 けたたましく電話が鳴り響いた。

 カチャ。

『ばーちゃん?オレだよオレ!』

 電話の向こうから切羽詰まった声がした。

「あらま、どちら様?」

『オレだよ~~!車で事故っちゃって~~』

「あらまぁたいへんだ。……で、どちら様だっけ?」

『オレだよ!忘れたのかよ!』

「ん?え~~と何だっけ……んと、た……たかし?」

『そうだよたかしだよ!』

「で、どちら様?」

『え?いやだからたかしだよ!』

「ごめんねぇ、最近耳が遠くて。ええと、つよしかい?」

『…………そうだよ。つよしだよ!』

「あ~~~~そうだよつよし!思い出したよ。それで、どうしたい?」

『車で事故っちゃってさ~~~~相手がすぐにでも示談金払えって』

「あらあら。それで、え~~と」

『いやだから、つ━━』

「あー、たかしだよたかし。ごめんね何度も。で、どうしたって?」

『そう、たかしだよ!車で事故ったんだって!(大丈夫かこのバアサン)』

「馬?」

『く・る・ま!』

「おや、車なんて買ったのかい?すごいねぇ」

『違~~う!!』

「あれまどうしたのかい?」

『事故ったの!事故!クラッシュ!』

「最近は物騒だねぇ」

『オレの話だ!!』

「あ~~ごめん。で、たかし、お金が要るんだね?」

『そうだよ!急ぐんだからよ!』

「それで本名は?」

『だから山田権兵衛!……あ』

「はい、ありがとうね」


『━━次のニュースです。オレオレ詐欺で十数件に渡り数百万円を騙し取っていた無職自称小説家志望「山田権兵衛」容疑者(永遠の18歳)が詐欺の容疑で昨夜逮捕されました』



『オレオレ詐欺は注意』


 けたたましく電話が鳴り響いた。

 カチャ。

『バアちゃん?オレだよオレ!』

「……」

『車で事故っちゃって、相手がすぐに示談金払えって━━』

「……………………」

『もしもし?バアちゃん?』

「……………………………………………………」

『えっと、オレだけど。聴こえてる?』

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………」

『……』

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

『……失礼しました』

 プツッ。ツーツー……。

「…………未熟」

 詐欺の負け。



『オレオレ詐欺はちゅうい』


 けたたましく電話が鳴り響いた。

 カチャ。

『バアちゃん?オレだよオレ~~』

「何だその言葉使いは!!」

『はい?』

「敬語はどうした!」

『は、はい!申し訳ありませんでした!』

「バカモノ!最後には『sir(サー)』を付けんか!」

『失礼しました!サー!』

「うむ。して用件は?」

『あ、はい、オレ車で事故っちゃって、相手がすぐに示談金払えって凄い勢いで、でも手持ちが全然無くて━━』

「話がくどい!もっと簡潔に話せ!」

『了解であります、サー!(わたくし)は事故を起こし、早急に金銭が必要となったのであります!サー!』

「よろしい!では所属と姓名を名乗れ!」

『感謝の極みです!サー!』


 もちろんこんな相手がまともにお金を振り込める訳が無かった。



『オレオレ詐欺の注意』


 けたたましく電話が鳴り響いた。

 カチャ。

『バアちゃん?オレだよオレ~~』

「…………一郎?」

『(ぎくっ)そ、そうだよ一郎だよ!』

「……田中一郎くん」

『え?……何で…………』

「大学中退後、ろくに仕事も無く現在無職。先月家賃を三ヶ月滞納して追い出され今の家賃一万二千円のボロアパートになんとか居住」

『おい、何で知って……』

「三日前に昔の知り合いの合コンに無理矢理混ざるも自分だけ一人寂しく帰宅して」

『な、な、な?』

「今朝はしょぼくれた顔で牛丼を食べてたわね」

『ひぃっ!』

「何時でも貴方を見ているよ。ふふふふふ……それじゃ、ね…………」

 プツッ。ツーツー……。 



『オレオレ詐欺が不注意』


 けたたましく電話が鳴り響いた。

 カチャ。

『バアちゃん?オレだひょオレ━━』

「あ、噛んだ」

『………………』

「………………」

『…………………………』

「……………………ぷっ」

『~~~~!』

 プツッ。ツーツー……。

 その後、同じ電話が掛かってくることは無かった。



『オレオレ詐欺??』


 男は電話の前で腕を組み一心に集中していた。。

「……今度こそ」

 チャッ。

 ピポパポ……。

 トゥルルルル……カチャ。

「バアちゃん?オレだよオレ━━」

『現在この電話は使われておりません』



                        おわり。

連載にすると、200字以内のエラーになるので纏めてどうぞ。

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