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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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VSクラン公国 ③

陽が傾きかけ、帰還の狼煙をあげる砦にファルモットは息を切らして辿り着いた。

先に帰らせた部下達から迎えられ倒れるように座り込む。


「クソが・・・。あの人狼マジで強ぇな。」

「人狼ですか!?よくご無事でしたね・・・。」


ファルモットはされるがまま鎧を脱がされながら溜息をついた。


「汗を流したら直ぐに作戦会議に入るぞ。偵察隊からの情報の整理と各隊長を集め、ついでに本国とも通信を取れるようにしておけ。」


敬礼とともに立ち去る部下を見送り疲労で鉛のように重い体を引きずり簡易湯屋に向かった。









ラズは樹上から南の空に登っていた狼煙が消えた事を確認し地に降り立ち周囲に集う族長達を見渡す。


「どうやら偵察隊は帰られたようですね。負傷された方達は治療をするか後方支援に回して下さいね。」


補佐達が伝令に走る姿を見送りラズは言葉を探しながら困ったように首を傾げた。


「え~と。一応こちらから攻めはしないので皆さんお休みしてもいいですよ。

明日が本番ですからゆっくり英気を養って下さい。」

「有難い言葉だが肝心の作戦を聞いてないのだが?」


ルークスの言葉にエルフを除く全員が頷く。それに更に困り果てたラズは眉を潜め、


「説明って面倒ですね・・・だから率いるのは嫌なんです。」

「ラズ様・・・本音出てますよ。」

「あら、失礼しました。そうですね・・・ではエリザお願いします。」


突然任されたエリザは恨めしげにラズを見るが顔を背けられたので諦め頷くと全員からの憐れむ視線に気付き、にぶい汗を浮かべ思う。


この立ち位置になりわかったがアンリはこれを纏めてるのか・・・ある意味凄いな。

だがあれはあれでイカレてるから出来るのだと思うと私には出来るだろうか?


咳払いをして思考を切り替えたエリザはもう1度頷き口を開いた。


「シスターカイネから託された策は単純だ。私のスキルで相手の作戦を盗み見ろだ。」

「成程・・・それで敵将を殺させなかったのだな。」

「あぁ、付け加えるならあの場でファルモットを殺していれば全軍撤退もありえると判断した。そうなればアンリの策は潰える。」


唸り声をあげたルークスはそれは困るな、と呟き頭を掻いた。


「了承した。どの道考えるのは苦手だから任せることにする。」


背を向け歩き出したルークスに続きリゼも手を振り、


「私も同意見だ。やる事があれば声を掛けてくれ。」


他の者も頷き同族の下へ歩き始めた。




ラズは一息ついたエリザに視線を向けると首を傾げ微笑む。


「当事者になるとアンリさん頑張ってるなって思いませんか?」

「そうですね・・・少しだけ尊敬してもいいかなと思い直しましたよ。」

「フフ、アンリさん喜びますよ。

更に喜んで貰うために彼等の作戦を盗みましょうか。」


頷いたエリザはスキル[千里眼]を発動させた。









ファルモット達は砦内の1室で地図や資料を広げ眉を潜めていた。

部下からの報告から新たに×印を付けられた侵攻経路に溜息をこぼし負傷者リストに視線を移した。


「偵察から戻ったのはこれだけか・・・。」

「はい・・・こちらが情報を纏めた資料になります。」


紙を捲り遭遇場所や種族と使用武器、魔術、予想スキルが書かれた文字を追い顔を険しくする。


「街道を進ませた別働隊からの報告はあるか?」

「それが・・・潰走しました。

戻った者からは恐ろしく強いデュラハンに率いられた大盾を持つ猫又族とハーピー族と交戦したとの事です。」


ファルモットは机に拳を叩きつけ苛立ちを露わにする。


「全て、全て、全て!先をいかれてるじゃねえか!?

こうなりゃ大砲でも森にぶち込むか!?」

「副団長どうか落ち着いてください!まず飛距離が足りません。それに大砲を持ってきてませんし大森林を破壊すれば糧に営む者達からの苦情が・・・。」

「だよな・・・。それに団長に怒られちまうか。」


怒られなければやるのか?と全員が思うが口にはしないで頷く。


「現状、やれる事を考えましょう。まず商人を見かけた者はいないとの事ですから奥で指揮を取っているのかと。」

「誘き出すのは・・・無理か。だが悠長に構える物資もねぇ。何か案は?」

「地の利は相手にあります。なので兵力差で覆すしかないかと。」


ファルモットは経験から悪手だな、と思うが先を促す。


「隊を小分けにし密度を増しましょう。負傷、死亡による欠員が3割を超えた時点で後続と合流し立て直しを計りつつ進むのはどうでしょうか?」

「かなり危険と思うのは俺だけか?待ち構えられたら全滅もありうる策じゃねえか。」


部下の1人が地図を示し、


「偵察隊が戻らなかった地は危険な魔族が多いと判断し、比較的安全と思われるここから一点突破、もしくは陽動を用いての強行突破しましょう。前線に防衛を敷いてると考えるなら内部は比較的安全かも知れません。」

「・・・いや、誘われてる可能性を考えたらそこから離れた次点の方が良いのでは?」

「裏をかいてを考えられる話だ。ここは最短ルートを推奨する!」


部下達の意見のやり取りを眺めるファルモットは頼もしさを感じつつ思う。


諦めてねぇならやりようはあるか。ならここは俺が責任を取れるようにしなきゃな。


「ここだ。ここから攻めるぞ。」


偵察隊が戻り尚且つ砦から最も近い地を示した指先に口論を止めた部下達の視線が集まる。


「どこから攻めても危険度は変わらん、と言うより予測できねぇ。なら移動位楽したいじゃねえか。」


ハハ、と笑い全員を見渡し、


「明朝から全軍での侵攻を始める。全体では防衛主体の陣を組み、各隊は弓兵と魔術師を攻撃の要にする。

探索に長けた者も隊に割り振り奇襲を避けるようにしろ。良いな!」


全員が敬礼をして部下達の下へ向かい1人残されたファルモットは頭痛を感じながら本国へ今の決定を伝える為に通信魔具に向き直った。

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