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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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クラン公国 ①

クラン公国城下街の警護を任されている騎士団は賑わいが落ちつつある事を肌で感じていた。

巡回中であればそこらの店から声がかかり近況を話し土産を貰う事も多かった年末に比べ明らかに活気が無くなっていた。

騎士団長グレイグは部下達に振り向き大通りを示し、


「大森林の街道を魔獣が闊歩していたそうだがそれだけでこうなるか?」

「いえ、ディストラントは賑わいを増しつつあると報告がありますから魔族を従えてると噂の商人の仕業でしょう。」


そうか、と呟き溜息をこぼす。


「王の決断は早計とも思えたが的を得ていたのだな・・・。」

「はい、国が傾く程とは思えませんが脅威となる存在が魔族と手を取ったのは間違いありません。」

「諜報員も戻らないしな・・・。」

「あの森で何が起きてるんだ。」


不安を口にする部下達を叱責するかのように柄を石畳に落とし音を鳴らしたグレイグは注目を集め見渡した。


「夏に国を挙げての討伐軍が起こされる。だが、魔族の反撃に備えねばなるまい、練兵に励み武勇を誇り何よりも民と国土を守れる者となれ。」


姿勢を正した部下に頷き、


「その時は東の森前での戦いとなるだろう。しかし我等の勝利と言えるのは混乱を起こした者の粛清。

実力ある者は特殊な任務として国王直々の命で討伐隊に組み込まれる事になっている。各員その栄誉を受けれるよう鍛錬を怠るなよ。」


敬礼を返したグレイグは城外での演習を行っている方向へ視線を向けた。




火薬の匂いが立ち込める演習場で1人の男がつまらなそうに頭を掻き溜息をつく。


「攻城戦じゃねぇんだぞ。大砲なんざ使うわけねぇだろうが!」


地を蹴り破壊された的を指差してから背後の部下達に向き直るのは騎士団副長のファルモットだ。


「うちの王様も団長もアホなのか?なぁーお前らどう思う?」

「演習を見に来ている国外の方もいますから・・・。」

「ンなことはわかってんだよ!だがこれ1発撃つのに幾ら金がかかるか知ってるか!?俺は知らん!

だがな、それら全て税金だ。国民の金が示威行為で浪費されてんだぞ。それもあろう事か次の戦闘では使わない兵器の試運転でだ!意味がねぇだろうが!」


部下の1人が頷き、


「確かに次の大森林攻略戦を想定するなら連携力強化を重視した方が良いと思います。

我が国は正規兵以外のギルドや冒険者、傭兵崩れも多いのでやり方も考え方も違うでしょう。」

「わかってんじゃねぇか。そう、俺らは基本無駄金食いなんだから成果を出せなきゃ後ろ指さされんだよ。

なのに、合同演習も想定訓練もさせてもらえねぇ・・・なんでだ!?」


ファルモットの怒声に別の部下が敬礼と共に口を開く。


「前回の演習で副隊長自ら敵大将役をフルボッコにした事が原因であります。加えるなら、合同演習の際、遅刻したギルドの方を的に矢を射った事も悪いのかと。」

「大将役を受けた奴が弱いから悪いんだよ!それに遅刻した馬鹿をお咎めなしで済ませってのか?あぁ!?」


沈黙した部下に溜息をこぼし懐から数枚の写真を取り出した。


「演習は止めてここにいる奴だけで臨時会議に入るぞ。工事視察に行った大臣から士気向上目的で預かったものだ。見てみろ、魔族共は美女揃いだ。」


円陣を組み写真をまわす姿に団員を結束を感じたファルモットは続ける。


「そこに写ってる男が商人アンリだ。奴はエルフに夜魔達に囲まれて過ごしてる、当然のように巨乳で鬼の姉さんもセットでな!

俺達なんざ女団員いねぇってのに許せねぇよな!?」

「勿論です!」

「これは許せない事です。えぇ、許されませんとも。」


ファルモットは不満の声に力強く頷き手を横に振り息を吸う。


「大臣に聞いた話によれば獣人族も従えてるとの事だ。美女、巨乳、ケモミミ・・・これはもう殺すしかないだろうが!!!」


円陣が解け全員が地を揺るがす声をあげた。










東の森、泉前に作られた妖狐族の仕事場として作られた建物の中でハンモックに揺られるアンリは気だるさに包まれつつも声に振り返った。


「悪い、聞こえなかったからもう1度言ってくれ。」


淡く光る玉を片手に持ったサラは振り返ると玉を握り潰し記憶の奔流を眺めつつ口を開く。


「疲れてる所悪いが、この記憶にある漫画の『独裁少女スター☆凛』の好物を食べてみたい。」

「あぁ、思い出した。確か主人公の星野凛がクラスカーストの頂点を目指してあらゆる手を使い目的を成していく学園物大作だったな。しかし今思うと危険なタイトルだ。」

「そうなのか?わからんがその子の好物ピロシキが気になって仕方ない。作ってくれ。」


アンリはレシピを確かめるように思考を走らせ頷く。

準備の為にハンモックから降り地に足を付けた所で身を傾かせた。


「記憶を抜かれるってのはかなりの負担だな。次は寝る前にしてもらおう。」

「ココ、記憶とは人生よ、奪われる反動は軽くはないわ。

無理はせずしっかり休んでおくが良い。」


ノイルは労るようにアンリをハンモックに戻しサラに視線を飛ばす。


「のう、鬼の娘よ。妾達は仕事中故娯楽を求めての事なら外へ行くがよい。」

「悪いな、仕事の邪魔は本位じゃないが私もアンリの護衛が仕事だ。

コイツが外に出ない限り私はここに居座る。」


そうかえと呟き、そして思考を走らせたノイルはアンリを見て閃いた。


「ココ、主もねだってばかりじゃなく料理の1つ位してみたらどうかえ?アンリは疲れておるから楽させてやりたいとは思わんか?」

「ふむ、一理ある、だが私に出来るだろうか・・・。」


サラは視線を宙にさ迷わせそして鈍い汗を感じ首を横に振る。

アンリはそれに微笑み、


「ノイルはわかってない。想像してみろ、ズボラ系女子・・・可愛いな。うん、可愛いとも。」

「アンリや、主の嗜好が広すぎて理解しきれん。何をもって可否を判断しておる?」


ハハ、と笑うアンリはサラの髪に手を触れ笑みを濃くする。


「自分に正直であろうとしてるだけだ。駄目な時俺はノーと言える日本人だぞ。最終的には押し負けて頷くが。」

「・・・わかっておったが馬鹿なんじゃな。この先の苦労が目に浮かぶようよ。」


肩を落としたノイルを妖狐族が全員で励ました。

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