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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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画策する者

ディストラントでの説明会を終え参加した国々と情報を得た国々は揺れていた。

東の森に面した国は魔族、魔獣の脅威を退ける為に与するかの判断を迫られ、その脅威を肩代わりさせてきた内陸の国は静観か干渉かに迫られていた。

特に内陸の国々は魔族の脅威に晒されてきた国に支援金を送る事で貿易や領土間の不均衡を黙認させてきた現状があり、それが出来なくなる可能性を秘めたアンリの存在は邪魔の一言に尽きるものがあった。


その一つスラグ王国では国王サイモンを筆頭に重役が集い会議を行っている。


「面白くない、面白くない話ですぞ。ほっておけば魔族に仕事を奪われた下民が溢れ国政に影響が出るでしょう。」

「活動を認めなければ良いのでは?」

「魔族が経済活動に関するのが問題だと言っている!それに率いているのが流奴というではないか、貴公は由緒ある家系でない者を信ずるのか?」


怒声が交じり机を叩き声を張り上げる重役に王は頷いた。


「教会も関わる事だ今は様子を見るしかあるまい。どのみち学のない奴隷と変わらぬ者の集合体故、何処かでボロを出し力尽きるであろう。」

「王、それがならぬ時も考えねばなりませんぞ。」


側近の言葉に咳払いをして応える。


「その時は粛清となるな・・・。無用な存在を消す事は世のためであろう?」


拍手が部屋を満たしそれに満足気に笑み濃くしたサイモンは立ち上がる。


「1度はギルドを退けた者だ。兵の鍛錬、そして情報を集めよ。準備を怠る事は許さん。

そして与する可能性のある国に牽制となる文を送っておけ。」


下げられた重役の頭を見渡し再び玉座に座った。







東の森と海洋に面する国、マルナもまた会議に揺れていた。

ディストラントから東にあるこの国は竜人、獣人族が侵攻をかける事もありその都度大きな被害を受けている地である。

海が近く漁業や塩の産出を主な産業としているが塩害により農作物の被害が多く輸入に財政の多くを割かれている上に魔族に対する備えで国庫は常に厳しい状況に追い込まれていた。


ディストラントに向かわせた使者からの報告を受け大筋で議論がまとまった時通信係の兵が大広間に駆け込んできた。

マルナを治める王リックは差し出された紙に目を通し葛藤から拳を握り絞り出すように言葉を作る。


「スラグ王国から商人アンリと協同が見られた際は支援金を打ち切るとの事だ・・・。」


決して多くはない支援金だがそれでも今の状況では国が傾く可能性がある宣告に大広間に集った役職者達がざわつきそれぞれが再び議論を交わしだした。

それらを黙らせる為に玉座から立ち上がり手をかざし注目を集め口を開く。


「今は議論をしても変わらん!

内政を担当する者は経費を見直し無駄を省け。

そして直ぐにディストラントへ使者を送れ、商人アンリとの面会を希望する事を伝えろ!良いな!!」

「それは・・・魔族と協同するという事ですか?」


リックは視線が自分に集中している事を確認し首を横に振る。


「これを兆しと思いどちらが得かを測りたい。

今まで通り強国の思惑に左右されるだけの国で終わりたくないと私は思う。

魔族を従える商人・・・使者の言葉を信じるなら森の覇者のエルフ族と土蜘蛛族、そして伝承でしか伝わらない鬼を連れていたと言う。ある筈がない、ないのはわかっているが僅かでも変わる可能性があるなら話をしたい・・・。」


静寂に包まれた大広間を見渡しリックは頭を下げた。


「国を治める者として必要と判断して事だ。信じてくれ。」


王の覚悟を受けた役職者達は互いに視線交わし頷く。

始まりは小さく、次第に大きくなる拍手が部屋を満たした。









「と、こんな所だろう。理解したな?」


ソドム教会の中、新品で揃えた長椅子に寝転がったカイネは地図を指差し起こり得る国々の動きをアンリに伝えた所だ。

頷く動きに満足気に目を細めたカイネは頬杖を付きつつ溜息をこぼす。


「やはりあの説明会は悪手だったかもな、いたずらにお前が得た力、影響力共に知らしめた結果になった。」

「俺に力はないよ。それにお客様が説明を求めたら答えなきゃ信頼は得られない。

あれは必要だったと思う事にするさ。」


カイネは座り直し視線をアンリと並べ、


「良いのか?スラグの馬鹿王は間違いなくお前を邪魔と思うだろう。あの国が本気で潰しに来たら被害は大きくなるぞ。」

「その時は俺のやり方で最小限に抑えるから問題ない。知ってるだろ?俺は戦士じゃないからお行事良く正々堂々迎え撃つなんてアホな事はしないって。」


ほう、と笑みを作るカイネはアンリの肩を抱き地図を広げ直した。


「ラズから聞いたがお前が考案した国の滅ぼし方は良く出来てる。カンラムもルフラもあれなら滅ぶしかない程の完璧さだった。なぁ、それに似た戦略か?教えろよ。」

「あれ程手はかからないよ。攻められてから始めても間に合う程度に簡略化した搦手ってやつだ。今は行えないから下準備が必要だけどな。」


アンリも乗り気でカイネと戦略会議を始めた。









マイは街道を馬で駆け抜け、ソドム村を目指し10日間かけ辿り着いたそこは以前目にした村とかけ離れていた。

数十年前に来た時は柵だった囲いは5mの高さを持つ木壁に変わり所々に櫓が建てられ、前回より村の範囲が広がっていた。


「何が・・・何が起きている・・・?」


混乱するマイは馬を降り検問の列に並び後ろに付いた旅人に会釈をし口を開く。


「すまない、以前来た時と大きく違うが何か知ってるか?」

「シスター様は知らんのか?俺も旅人仲間から聞いただけだけどな・・・。」


マイは相槌を打ちながら会話が終わると会釈をし前に向き直り混乱に拍車をかけた。


魔獣が街道に出てたのはいい・・・旅人や商人を見兼ねソドム教会認定のハーピーを使った事業が始まったのも知っているし、それにより通行税の接収が安定したと思う。

そして危機感から村の改築を行うのまでは納得出来た。

だが、そんな時に都合良く木材を安く卸す商人が現れ、大工仕事をする魔族が増える事があるのか?


「おかしい・・・。明らかに仕組まれた事だ。」


マイは検問を終え門を潜り村中に入るとまずは教会に向かった。

事の経緯を確かめつつもカイネの仕事の監査も兼ねているからだ。

何故か教会前に店があり、人混みを掻き分けノックも無しに扉を開く。


長椅子に座った2人が振り向き、見知った1人は手を上げ、もう1人はそそくさと祭壇前に移動した。


「お、お客さんみたいだからまた後でな。」


アンリは急いで転移魔術を起動させると家に繋げ移動する。

それを止める為に手を伸ばすマイに振り返り叫ぶ言葉を聞いた。


「絶対お前が黒幕だろっ!!」


カイネは転移魔術式が消えるのを確認し地図を畳むとマイに視線を向け歯を見せるように笑い、


「また逃げられたな。笑ってやるから次も頑張れ。」


マイが地を蹴りカイネに詰め寄ると喧嘩が始まった。

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