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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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城塞都市 ~会合 ① ~

城塞都市内部の東門付近の拓けた空間に円卓が置かれそれを囲む様に4つの人影が椅子に座っている。

東に竜人族長ナード。

南に土蜘蛛族長リゼ。

西に人狼族長ルークス。

北に城塞都市代表代理としてラズが。


東の森に関わる事として、城塞都市に与している者も探りに来ていた者も構わず壁内に通され事前交渉と前提条件の確認の証人になっていた。



ラズを除く机を囲んだ3人の視線は近くの小屋へ向けられている。

小屋から顔を出したアンリは夜魔達に観覧者用の弁当を配らせ、その後ろに続こうとしたフランは寄付と書かれた箱を手にしていた為リノアに捕まり小屋へと戻されていた。


「なぁラズや、あの男は何をしとるんだ?」


ナードの問いにリゼも頷く。


「観覧の者達への配給です。食事を通し関わりの少ない魔族へのアピールと仰っていました。」


はぁ、と頷いたリゼは周囲を見渡し溜息をこぼす。

ここでの決定が東の森中に知れ渡るのは間違い無い事であり、おかしな言動は即座に同族の権威を貶める羽目になるだろうと思う。


それぞれが同族会議の内容を確認していると夜魔達が全員の前に食前酒を置き、ラズの横に1つ椅子を置くと一礼し、続くようにアンリとサラが談笑しながら歩いて来る。


「なぁなぁ、牛鬼族ってあんなに厳つい顔してるのに肉食えないって知ってた?ハンバーグにすれば食えるのかな?」

「知らん。だが頭が牛ならそうかもな。」


アンリが円卓の4人に視線を戻すと困惑の視線が向けられている事に気付いた。

アンリは自分を見て、隣のサラを見てから後ろに振り返る。そこにも同様の視線を向ける観覧者達の目があり正面に向き直り首を傾げる。


「牛鬼族が菜食主義は常識だったのか?教えてくれれば野菜のみの弁当を用意したのに・・・ルークスさんはひどい人だね。」

「何故そうなる!?」


まぁまぁ、と窘めたラズがアンリに席を譲り、1歩下がると全員に一礼をした。


「では、アンリさん後はお任せします。」

「ありがとう助かったよ。」


ラズは微笑を浮かべ円卓から立ち去り、サラもアンリの横に座る。

ラズが纏めた書類に目を通し3人に頭を下げ、


「じゃあ始めるか。前提にある通りお互いが利益を得る為に協力し合えるそんな関係になりたいものだね。」









ディストラント王城、執務室でレアは感嘆と驚愕から沈黙した。

横に並ぶサムトとムーラも同様で言葉を作る事が出来ずにいる。

机に並ぶ品々はどれも強力な魔力を有する物ばかりであり通常では考えられない逸品が揃えられていた。


「これらは・・・例の商人からの贈り物か?」

「はい、アンリと名乗る商人が使いの者に持たせた物のようです。」


ムーラが書類の束の上に置かれた1枚の手紙を手に取りそれを差し出す。



国王陛下への謁見が遅れている事、平にお許し下さい。

私共の特殊な事情故に陛下には多大な気遣いをさせてしまいその返礼として贈らせて頂きました。どうかご笑納して下さい。



文面に目を通したレアは頷き改めて品々に視線を送りその1つ、光沢を帯びた滑らかな布地に手を触れ唸る。


「これは何で出来ておるのだ・・・。わかるか?」


2人も布地に触れそして首を傾げた。


「絹とも違うようですが何よりこの魔力は異常ですな。」

「こちらの寝具にも同じ布が使われているようです。中身はハーピー族の羽毛ですが布地の正体は・・・。」

「そうか・・・しかしこれ程の物を贈られたとはあっては急ぎ体制を整え厚遇せねばならないな。」


頷いたレアは立ち上がり、


「サムト、ムーラ共に信をおける者のみ集めよ。すぐに会合を始める。それが終わり次第使いの者と調整に入る、良いな。」


はっ、と一礼し部屋を出る2人を確認し再び座ると横に積まれた書類に手を伸ばした。









アンリは1度両手を上げ袖の位置を直すと肘を机に乗せ指を組む。


「さて、こちらから提供出来るものを伝えようか。

まずは労働の場、そして不必要な作物等の買取り、最後に知識だ。」


3人を見渡し続ける。


「まずは同意が得られた魔族の集落に繋がる街道を作るつもりでいる。商品の運搬もしやすく、往来も楽になるからな。

そこでは階級、身分問わずの雇用だから護衛要員も必要だろうし物資の運搬をする者達も必要な大規模工事になると思っている。」

「賛成しない魔族からすれば行軍が楽になるだけだろう。その侵攻にはどう対応するつもりだ?」


アンリは質問が来た事に嬉しさを覚えた。

土蜘蛛族としてはこれに関心があるのだろうと思い口を開く。


「リゼさんの言う事は当然考慮している。

防衛策としてはここと同じ壁を作るつもりだ。ついでに転移魔術を設置させて貰えるなら迎撃要員を送る事も出来る。」


サラが頷き、


「必要なら私が行く。それでも不安な魔族が近くにいるなら先に消えてもらうのも手だな。」

「その際は殲滅ではなく移住を頼む所から始めるつもりだ。」


アンリの補足にざわついていた周囲の魔族も静かになりリゼも頷く。


「遮って済まなかった。続けてくれ。」

「いやいや、気になる所があればまた言ってくれ。

で、工事後も仕事は用意しているからそこは安心してほしい。

次の買取りだが、例えだがナードさんの所の果物を例にしよう。」


アンリは自分の前に置いた手付かずの食前酒示し、


「これはリンゴの皮を砂糖と酢に漬けたリンゴ酢を酒で割ったものだが、こういう使い方をした事は?」

「無い、調理は不得意でな。つまりアンリよ。捨てている物さえお主なら商品に出来る、そういう事だな?」

「全部では無いけどね。当然果肉に関しても調理方法の知識はある。詳しくはレウさんが知ってるから後で聞いてくれ。」


続くアンリの声は周囲の魔族へ向けられていた。


「他の者達も様々な物があるだろう。それらは物でなくても良い。名指しで悪いがドワーフ族からはその技術と知識を買った。

必要と判断するなら俺は何でも得ようと思っている。」


おぉーと声があがり、それなら、と続く声が周囲を取り囲む。

それに頷いたアンリに遠慮するように小さく手を挙げたルークスは咳払いを1つして、


「不定期にしか取れぬ物や鮮度が落ちやすい物でも良いのか?」

「もちろんだ。販売場所を人の国にも拡げる用意をしているから問題ない。希少と銘打つなりやりようは幾らでもある。」


なるほど、と頷き、相変わらず用意周到だと思い笑みがこぼれる。


「何かおかしいか?」

「いや、気にしないでくれ。」


腑に落ちない表情のアンリはまぁいいか、と呟き、


「最後の知識だがこれは賛同する者達が多ければ多い程助かる物だ。

それぞれの知識の共有化とそこからの派生を見込んでいる。それにより研究や新たな考えや可能性が生まれる場を用意するつもりだ。」


アンリは転移で取り出した書類を机に広げ3人に確認させる。


「そこにあるように俺からは調理の技術と食材の保存方法を伝えれる。

これは不作の年や異常気象などの要因の際役立つ可能性があるだろう。」


3人を見渡したアンリは1度頭を下げ、


「前向きな検討をお願いしたい。そしてそちらの求める事を聞かせてほしい。」

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