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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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事後処理 ①

アンリはくすぐったさと暖かく包まれる感覚に目を開いた。

よく見ている天井から寝室にいる事を理解し視線を横にずらす。

サラの顔が近くにあり抱かれる様に腕が上に乗っている、何時もの寝姿から戦いは終わったのだろうと思い身体を起こそうとした時、呼吸に揺れる胸に目が止まった。


・・・やはり大きい、これは土台となる胸下が小さい事により相対的に大きく見えているだけの錯覚なのだろうか?

それとも横になっているからこそ起こり得る事なのかも知れない。

ふむ、と頷き比較対象として指を広げ横に充てがいほう、と感嘆する。

間違いなく大きい、錯覚ではないのならこれはなんと形容すべきだろうか・・・。


深く思案していると見られている気がして顔をあげるとサラと目が合う。


「・・・・・・。」

「・・・何してるんだい?」


アンリは手を戻し深く頷く。


「哲学的な考察をしていただけだ。気にしないでくれ。」

「胸を見ていた気がするんだが?」

「そうだな、真理はそこにあるのかも知れない。」


サラは身体を起こしアンリもつられて起こす。


「なんか釈然としないが嘘は言ってないみたいだからいいか・・・。」

「サラをだますのは無理だからいつでも本音だよ。

それより勝ったんだろ?最後まで見届けれなくて悪いな。」

「お前は良くやったから気にするな。事後処理は手伝うからとりあえず飯を作ってくれよ。」


アンリが頷き部屋を出たのを見送ったサラは伸びをしてから胸を触り確かめた。


「真理ねぇ・・・ここにあったのか。」








食事が終わり片付けを済ませたアンリは集まっている各族長にお礼を伝える為に泉前の広場へ出た。

横にサラとラズが並びカイネとフランはルークスを挟み、見張るついでに泉の前で釣りを始めていた。


「ルークスさんだったか?あの戸惑いを見てると不憫だな。」


全員がシスターズを見て無言になり合わせるようにため息を付く。


「まぁ、あれはほっといて。

お疲れ様。まずは戦ってくれてありがとう。傷を負った人は治療に専念して元気な人で事後処理をさっさと済ませて祝杯をあげよう。」


一息つき、


「獣人達へは俺とサラが担当するからみんなは各族の状況や今後の意見を纏めてくれ。」


まだまだやる事は多い事はわかっていたのか全員が頷きそれぞれの住居へ向かっていく。







ルークスは近づく足音に気付き顔を向けると勢いよく立ち上がりそして跪いた。


「可能ならば全ての責任を俺がとる!だから同胞達が負う責任は・・・。」

「それはサラから聞いたよ。ルークスさんも生きてて良かった。とりあえず今後について話そうか。」


ルークスは戸惑いながらも頷き、立ち上がるとアンリの後をついていく。

入れ替わるようにカイネに近づいたサラは釣果を見てからカイネの胸を見てふむ、と頷く。


「なんだ?馬鹿になったのか?」

「いや、アンリが言うには胸には真理があるらしいがカイネの大きさなら無さそうだな。」


カイネは釣竿をフランに渡すとゆらりと立ち上がる。

ルークスの陰に隠れようとしたアンリの背を一瞥し、


「後で話がある、時間作っとけ。」


アンリがビクリと振り向いた時にはサラとカイネは喧嘩を始めていた。


アンリはラズに助けを求める視線を送るが微笑まれただけで首を振り拒否されルークスに向き直るが同じように拒否された。


「・・・まぁいいか。ナイトーさん呼んで来るから待ってて。」


アンリがトコトコ歩きだしたのをラズと見送ったルークスは後ろで戦っている2人に視線を向けた。


「あの2人いつもこうなのか?」

「いえ、いつもはもっと凄いですよ。観客が集まり賭事も始まりますからね。」


驚愕に身体を震えさせたルークスは眉間に指を当てた。

おかしい・・・それは異常だ、何がどうなれば鬼の戦いを見物出来るようになるんだ?

ルークスの挙動を見たラズは苦笑し言葉を続ける。


「何かあって困ったらアンリさんを頼っているので大丈夫ですよ。

あの人は私達を恐れず否定もしません。そして誰かが助けなければ生きてもいけません。

だから誰でも気軽に接してくれるので私達も全員で支えようって気持ちなるんです。」


ルークスはそういう事か、と頷きそして昨日までの戦いを思い出しラズに頭を下げた。


「1つ納得出来た。礼を言う、エルフの女王よ。

俺には支配は出来てもそのような求心力は無かった、なら負けるのは当然だったか・・・。」








ラズは周囲を警戒しながら歩いていた。ここで話す内容は獣人達の今後を決める事であり聞かれる訳にはいかない内容だからだ。

ナイトーさんに乗り進むアンリはルークスとの事前交渉を始めた。


「とりあえずルークスさんは部下に命じて遺体の回収をしてくれ、ほっとくと疫病が発生しそうだから早めに頼む。

悪魔族って魔族が来る可能性があるらしいから遺骨にするなら燃やす場所も提供するよ。」

「すぐにやらせる、ここには迷惑をかけすまない。」


ルークスは頭を下げるとアンリは首を横に振る。


「こちらもやり過ぎたとは思わないが恨みを買うには充分過ぎる程やったから謝らないでくれ。

出来るならそれらの感情も抑えて欲しいが無理なら俺が原因にしてくれて構わない。」

「いや、先も言ったが責任は俺1人で受けたい。せめて同胞達の分だけは負わせてくれ。」


アンリは生真面目だな、と思うが敗軍の長とはこういうものなのかもなと思い直し頷く。


「そこは貴方に任せるよ。今は仲間達からの報告待ちだから確実な事は言えないけど俺個人としてはルークスさんにも、他の獣人達にもこれ以上の犠牲を求めるつもりはない。

だから貴方には俺達と共に歩める先があるのかを考えて貰いたい。

この場でお願い出来る事はそれだけかな。」

「気遣い感謝する。だがそれらを考えるのはこの身の裁可が終わってからになるがいいか?」


アンリは頷きナイトーさんを獣人達が野営している方向へ向かわせ、難しい顔を横を歩くラズに向け首を傾げる。


「プラタさんの説得って出来るかな?」

「短気な人ですからね・・・。私もついて行きますからまずは話してみてはどうですか?」


きっと怒るんだろうな、と呟き、仕方ないか、と気持ちを切り替えた。








陽が森を射し、木漏れ日が地を照らす中プラタは子供が遊んでいるのを笑顔で眺めている。

戦いが終わり、今後の事は色々あるが今はこの光景に癒され束の間の憩いを甘受していた。


「お寛ぎの所失礼します。」


声に振り向くとニームが肩で息をし呼吸を整えている。


「どうした?急な用事でなければ後にして欲しいのだか。」

「言いづらい事なのですが・・・ラズ様とアンリさんが獣人達の件で話があるそうです。」


プラタは憩いの時間が早めに終わった事に怒りが浮かぶが大事な用なのは間違いないと思い、ニームに子供を任せ指定された場所へ向かった。

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