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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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夜戦~進む策謀~

空が赤く火に照らされるのを確認していたアンリは転移されてきたメモを開き、ルークスの居所を地図で確認すると予測と少しズレていた為隣にいるエリザに声をかける。


「疲れるから楽で最短ルートを探して。」

「ある訳ないでしょう!?馬鹿か貴方は。」

「静かにしろ。アンリは無視でいいから敵が少ない所を探せ。」


サラの声に頭を下げ即座にスキル[千里眼]を使う。

1度見た相手の周囲を俯瞰で見るスキルを斥候役の幻影族を対象に絞りルートを確定させそれを地図に書き込みアンリに渡す。


「今ならそれで行ける筈です。先導しますから着いてきて下さい。」

「ん、急ぐから誰かおんぶして。」

「「甘えるな!!」」


アンリはシュンとしてから走りだした。






クラシス達は指定された泉前で戦闘準備をしていた。

視界の先でフランがロイドの頭を手に逃げそれを追いかけるロイドの体が走っている奇行が繰り広げられていて全員がそれに意識を向けている。

ケイトは溜息を付き視線を杖に戻す。


「昼の鬱憤を少しは晴らせればいいんだけど。」

「ケイトさんの所は余裕あったんですね。こっちはいっぱいいっぱいでしたよ。」


ヴァンも視線を剣と加速術符に戻して答えた。


「ギートから聞いたわ、そっちは大変だったみたいだけど私は不完全燃焼よ!せっかく水を引いたのに!雷魔術を放ちたかったのにぃ!!」

「確か心室細動にさせて捕虜にする策でしたね。ラズさんも拷問道具を片手に残念がってましたよ。」


ケイトが頭を手で抑え後でラズさんに謝らなきゃ、と零した所でフランとロイドの遊びが終わり戻ってきた。


「まだ時間はありそうなので飲み物でも用意しますからしばしご歓談を、祈りも忘れずに。」


フランの一礼に全員が会釈で返す。

クラシスは改めて溜息をこぼしケイトとヴァンに見えるようにモドリギの種を取り出した。


「俺達は依頼が終わったら帰るがどうする?専属で雇われてるのは聞いたが戻るなら使え。」


2人は顔を見合わせ首を横に振る。


「いらない。帝国に戻ってもここ以上の待遇は無いわ。」

「僕もです。専属にしてもらえてるしアンリさんを支えたいと思っています。」


クラシスはそうか、と呟き種をしまう。


「俺達は冒険者だから好きに生きれば良い。ギルドには籍を置いとくから戻りたければ何時でも帰ってこい。」


2人の礼に片手を挙げ応えたクラシスはヴェイグ達に向き直る。


「元気そうで良かったが雇い主が不安だな・・・。」

「アイツもクラシスも同じ流奴だろ?信じてやれよ。」

「そうそう、仲良さそうだったし同じ境遇、気が合うんじゃないの~?」


嫌そうに顔を顰めたクラシスは手を横に振り否定する。


「魔族に拾われた所までは同じでもそれ以降は違う!第一俺は元の世界の記憶がないからこの世界の人間と変わらん。」

「まぁ、記憶持ちは珍しいからそうそういないもんね~。認めれないのも仕方ないか。」


フローはニヤニヤ笑い、つられてヴェイグも笑う。更に顔を顰めたクラシスはそっぽを向いて無視をした。






森に苦痛を表す声が響きラズは笑みを浮かべる。

もっともっとゆっくり聞いていたいと思うのは贅沢だろうと思うが小さくなった声を惜しむように呟く。


「あぁ、良い声でしたね・・・。」


ラズは倒れていた獣人の足に矢を放つ。

また悲鳴が響き助けようと新たな獣人達が現れそれを射殺す。それが先程からの繰り返しだった。


「これが魔族や人間相手のコール猟ですから良く覚えておくように。仲間意識がある相手なら効果的ですからね。」


背後の部下達が頷くのを感じまた足目掛け矢を放ち悲鳴をあげさせた。それに笑みを深くしたラズは虫人族に視線を向ける。


「援護はしますのでそろそろ行かれますか?毒を使うなら顔か心臓付近を狙うと効果的でしたよ。」


ニームから聞いたラズの行いを思い出し引き攣った顔で会釈をしたプラタは部下達に向き直る。

我らの数は少なくこの場での活躍は他の仲間達より劣るだろうと思う。それは仕方ない事であり、責任は自分にある。

それでも・・・それでも散った同胞の思いを継ぎ戦えるのは我らしかいない!

拳を握り腕を横に振り叫ぶ事で覚悟を示した。


「先に散った同胞が繋いだ今を好きに戦うがいい!

あの無念を!屈辱を!怒りを!この場で体現しろ!!!」


部下達の決意を秘めた目を受け戦場へ向かった。








夜魔族の特性は夜間限定だが魔力を増大させる効果がありそれを使い戦闘を優位に進めていた。

リノアの指揮の下木々を縫うように空を飛び魔力を帯びさせた爪が獣人達を削っていく。

空が見える程度に拓けた地に来た獣人の1軍は円陣を組み長柄の武器を掲げる。


「ここで戦う、隊から離れず防御に徹しろ!反撃する機は必ず来る!!」


それを見ていた夜魔達の笑い声が森に響きリノアは予定通りの展開に顔を綻ばせ地に降りた。


「誘導完了です。共にあれを殲滅しましょうか。」


リノアの声に倒木に座っていたハルクが頷き、トレント族が大木を手に獣人を囲むように現れる。

獣人達はそれを見て嵌められた事に気づくが逃れる術は無く空と地の連携を受け命を散らしていった。










アンリはサラにおんぶをされながら揺られていた。数回あった獣人の斥候相手の戦闘の途中、木の根につまづき足をくじいたからだ。


「すまないね~儂は足が悪くてのぉ。」


サラが少し力を込め足を握るとアンリが背でバタバタ暴れ始める。


「痛い痛い痛い、ごめんなさい!もうしません!」

「わかれば良い。ふざけるなら自由に動ける時にしとけよ。」


はい、と呟いたアンリを振り返り見たエリザは緊張感がない人だ、と思う。

この時の為に策謀を練り指揮をしていた時はそれでもまともだった筈だがサラやカイネがいるとふざける頻度が増している気がした。

何故だろうと思うが先の木々が無くなり拓けた空間に出た所で一際大きな身体を持つ人狼と10人程の人影が遠くに見え思考を切り替える。


「あれが人狼族の長でしょう。」


エリザは姿勢を屈め緊張を顔に表す。

アンリはサラの背から降りると足に回復魔術をかけ歩き出した。


「・・・治せたのか?」

「そりゃもちろん。サラにおんぶしてほしかったから甘えただけだ。」


サラはまぁいいか、とこぼしカイネと並び歩を進める。

獣人達が気付き武器を構える距離でアンリは歩みを止め大きく息を吸い手を前に出し口を開いた。


「お前達の暴挙を止めるせいぎゅの・・・」


無言があり風音だけが遠く聞こえる中、言葉を噛んだアンリは口を抑え顔を横に振る。


「すまん。心にも無い事を言おうとしたせいか口が付いてこなかった、登場からやり直したいんだが良いかな?」

「「「良いわけねぇだろ!!」」」


全員から否定された。

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