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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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城塞都市~防衛戦①~

陽が天に差し掛かる森の中、木々縫うようにマーニャに率いられたハーピー族は飛翔する。

LA、LALA~。と響く歌声は獣人族を惑し意味のない方向への矢を放たせ、その場に座り込む者も現れていた。


ハーピー達は歌を響かせながら特性を使い風を集め玉にしそれを落とすように獣人へ放つ。

悲鳴と怒声が混じり結果にマーニャは頷いた。


「この地は私達の棲家です。招かれざる方にはお引き取り願いましょう。」






エリザは自身のスキル[千里眼]によりハーピー族の成果を確認する。


「あの歌は幻惑のみだが耐性無視の男性特効か。ハーピー族を恐ろしいと思うとはな・・・。」


編成の時、アンリが男衆を外すと言った時医者の下へ連れていくべきか悩んだが言われた通りの成果に納得する。

おそらくは自分で試したからの信頼だと思い場にいる者に声をかける。


「ハーピー族が上手くやっている。私達は更に手柄を立てねばラズ様のお叱りを受けるぞ!」


エルフ族の表情が引き締まり、青ざめる者もいる。

ラズの説教は基本拷問を手伝わせながら行われるからだ。

あれを受けるとしばらく食事は取れなくなり夜も眠れない日々を過ごすことになるから尚更避けたい事であった。

エリザは過去を思い出し身体を1度震わせると記憶を消そうと首を横に振る。


「容赦はするな。私は怒られたくない。」

「「「はいっ!!!」」」


返事に満足し全員木々を渡り戦場へ移動する。







オーク族は武器を捨て両腕に力を込め地を削りながら前に歩を進めようとしていた。

対するは猫又族の大盾部隊だ。斜めに陣取り地にスパイクを突き刺し靴もアイゼン風に改造したもので侵攻を受け止める。

互いの後衛が矢を放つが猫又族は後ろの者が木盾を翳し防いでいた。


「この臆病猫共がぁ!!戦う気は無いのか!?」

「うるせー!!兵力差を考えて喋れ豚野郎!」


両軍はそれぞれ怒声を飛ばしながら押し合うがオーク族は徐々に右に流されていく。猫又族が斜めに陣取っている為押す力が反らされている為だ。



「人狼はどこだぁっ!?」


右端の大盾部隊の前で大剣を薙ぐように振るヴェイグの前で獣人達が剣を折られ吹き飛ばされていた。

ヴェイグはスキル「重心操作」を用い振る時は手元に当てる時は先端に重さを移動させ大剣では有り得ない剣速と威力を両立させながら流されてくる獣人をなぎ倒していく。


「すごーい!ヴェイグやるじゃん。」


フローは手を叩いて魔術式を起動させた。氷柱を作りそれを風魔術で飛ばしながらヴェイグのサポートをしていく。刺さると同時に砕け部位を凍らせるソレはフローの得意魔術で獣人も地面も構わず凍りつかせていた。


クラシスとヴァンは左端で待機しながら戦況を優位に進めている事を確認し後ろに立つロイドに視線を向ける。

ロイドは頭を持っておらず剣と盾を確かめていた。


「大丈夫ですか?」


ヴァンの声にロイドは剣を地に突き刺し親指をたてて肯定する。

クラシスはどこに耳が?と思いつつ視線は木の上に向けられそこにはエルフ族の男達が矢を放ちながらロイドの頭を下に向けるように固定している。


「デュラハンの頭を俯瞰に使うなんて誰が考えたんだ?」


クラシスの問いにヴァンはえっ?と振り返り、


「アンリさんです。頭持ってると片手しか使えないから無駄だと言って特訓させてました。」

「そうか・・・。ここの魔族も苦労してるな。」


はぁ、と溜息をこぼし、


「書類を取りに来ただけで魔族との戦いに参加させられると思わなかった。嫌になる。」


首を横に振り肩を落とした時頭上から笛が響くと大盾部隊の背後で矢を放っていた者達が次の笛の音に合わせ矢を集中させる。

オーク族の押しが弱まった隙に隊列を左に下げるように組み直した。

クラシス、ロイド、ヴァンはそれぞれ武器を構え近くの者から切り伏せていった。






アンリは戦場の動きが押され始めた事に舌打ちすると矢を放つ2部族に指示を出す。


「射線を下げろ!前衛に矢を集め近付けさせるな。」


更に袖を張るように勢いよく左腕を下ろすと城壁内に置いた投石機から50cm程の大きさの石が弧を描き獣人の中軍に直撃した。

アンリは新たな攻撃に混乱する獣人達へ向け言葉を続ける。


「俺のいた国ではこの時期おとし玉をやるもんだ。金じゃないがサービスとして受け取れ!」

「「「いらんわーーー!!!」」」


獣人達の怒声にも負けず更に1歩前に踏み出すと指でそれぞれを示し声を張り上げる。


「うるせー!お前等が攻めてくるから用意したんだ黙って受け取っとけ!!」


更に肩をいからせ拳を握り振り下ろすと次の石が飛んでいく。


「お前等のせいで俺の事業計画が無茶苦茶になってんだぞ!?剥製やカーペットとして店に並びたくなければさっさと帰れ!!!」

「「「誰が帰るかーー!!アイツを殺せ!!!」」」


イマルとアキナは部下達と地に落ちた矢を拾いながら溜息をつく。


「兄さん煽りスキル高すぎですわ。本人、大真面目なのが怖い怖い。」

「デスネ~。あ、矢羽根はハーピーさんのに替えなくていいデスが毒瓶を皆に届けてネ。」


二人は拾った矢の長さから弩には使えないと判断しエルフや弓を使う者達に届けるように別の指示をだしながら怒声を飛ばし挑発するアンリを見てまた溜息をついた。









~1時間程前~


ホビット族が弩を転移させた魔術式が起動を停止し現れたサラは足元に落ちていた本日通行止めと書かれた立て札を手に文字に指を這わす。

アンリ達が最初に戦った崖上から谷下に転がる死体を見て感嘆した。


「よくやったもんだ。だがほっとけば悪魔族が来るかも知れんな。」

「ここは森の中だから大丈夫じゃないですか。」


背後の木から降り立ったラズは谷で拾った剣を持っていた。それをサラに渡し、


「見た所一番頑丈そうですが使えますか?」


サラは少し力を込め柄が凹まない事を確認し頷く。


「いいな、これなら思いっ切り殴れる。カイネと合流次第さっさと終わらせるぞ。」

「殴る武器じゃないですよ・・・。」


2人は森を走り獣人達の後方を迂回するように合流地点に辿り着く。

カイネが暇そうに木に背を預け武器の確認をしていたが視線を2人に向け伸びをする。


「来たか、今ロイズが相手の本陣を探っている所だから待ってろ。」

「ふふ、楽しみです。彼等はどこまで読み切れていますかね。」


ラズとサラが地に座りカイネは肩を竦める。


「本陣を城塞化し勢力集中させて作った策だ、アレが囮とは思わんだろう。この一手で終わらせたい所だが。」

「まぁ、無理だろうな。奇襲しようと持久戦なら確実に勝てるあいつらは逃げるだろう。」


3人はそれを理解しているからこそ、ここで終わらせたいと思っていた。

カイネとラズは目的の為に獣人族を多く残し傘下に収めたいと思い、サラはアンリの負担を終わらせる為に終結を望んでいた。

3人は逃がさず追い込む方法を模索しながらロイズの帰りを待ちわびる。









「フフ、クラシスまで参戦したわ、2人はここからどうなるか読めるの?」


エミルの視線はアンリ、サラ、ルークスを映す映像に向けられていた。


「さてな、予想外過ぎて先が読めんわ。ただルークス達は喉元に向けられた策に気付いておらんようじゃから対応を誤ればここで終わるかもの。」


ココ、と続け鬼と書かれた駒を獣人の本陣後方へ置く。


「十中八九逃げるわ。その対応が出来なければ勝敗は簡単に覆るかも・・・。」

「ふーん、よくわかんないけどフェミナはクラシスが心配じゃないの?あの戦力差じゃ死ぬよ。」

「どうかしら?あの子はそこそこ強いから大丈夫よ。」


3人は先を楽しみにしつつ視線を映像に戻した。

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