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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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城塞都市~開戦~

クラシスは走りながら周囲を確認していた。

土が掘り返され木々が伐採された空間に家が建ち並び生活の基礎が出来ている。

走る足元も道として石畳を用いた作りであり遠目には水路も作られていた。


「なんなんだ此処は・・・。」


零す言葉に返答はないが背後には同じように走る足音が2人ある。それに頷き目的地に向かい更に加速した。


開けられた門を潜り開けた空間でクラシスは足を止めた。同様に止まった2人と共に息を整えながら周囲を見渡す。

必要なのはシスターカイネの確認と戦場となる場の確認だ。

視線の先に可哀想な人を見る視線の猫又族がいてその先に知った顔がある。

そこで倒木に腰掛けワインを飲んでいる黒衣のシスターがいた。視線が合いゆっくりと立ち上がったシスターは口を開く。


「お前がクラシスか?そうだろ?返事はどうした?」

「そうだ連絡を受けて来たんだがまずは資料を受け取りたい。早めに渡してくれるなら助かるんだが。」


カイネは首を横に振るとクラシスに近付き肩に手を乗せた。


「私は持ってない。残念だったな。」

「は!?いやいや・・・え?」

「見事な顔芸だ。流石ギルドマスター、ユーモアも極めているとは恐れ入った。」

「ちょっと待てーー!?」


クラシスは叫び1度大きく呼吸をする。横で2人も怪訝な顔でカイネを見ていた。


「どういう事だ!?」

「どうもこうも持ってるのはフランだ。私が持ってるとは言ってないだろうが。」


3人は静かに崩れ落ちた。カイネは晴れやかな笑みで踵を返すと倒木へ戻りヴァンに視線を向ける。


「あいつら面白いな。ヴァンもああいう芸風身に付けたらどうだ?」

「嫌ですよ。その担当はアンリさんで充分です。」


ヴァンは動かない3人に近付き頭を下げる。


「クラシスさんまた会えて嬉しいです。今日はよろしくお願いします。」







獣人達は隊列を3つに組み直し森を警戒しながら進む。

その隊の1つ、先頭にいるギルカは先行部隊を壊滅に陥らせた自責の念といいようにやられた屈辱が頭を巡るが今は成果を持ってくるのが先だと自分に言い聞かせ部隊をそれぞれ東、南、北から囲むように進軍させていた。


「この先に卑怯者共がいる!罠を仕掛け、小細工を弄さなければ戦えない雑魚共だ!!誇り高い我等が真の戦いというものを教えてやろうぞ!!!」


雄叫びに頷き決意を固める。


「この屈辱、必ず返すぞ。」






同時刻

アンリは東門の上で森から響く雄叫びを聞いていた。

横にいるサラは気にした様子もないがプラタとケイトの顔は険しくなりイマル、アキナは両手で身体を抱き震えている。


アンリの横に影が移動し人の形を作るとロイズが現れた。幻影族の特性、平面化を解いたからだ。


「お疲れ様。どうだった?」

「はい、獣人達はここと南北に別れ進軍しています。西門へ向かう軍はいないようです。」

「ありがとう。後は手筈通りに。」


ロイズが頷き再び影に戻り移動していく。アンリはメモを転移させると視線を森へ向けたまま口を開いた。


「さて、準備は良いな。指示は1つだ。近付く馬鹿共を射殺せ。」





同時刻

南門が閉鎖され壁上にホビット族が整列したのを確認したカイネはヴァンに指示を出し雄叫びが聞こえた方向に迂回するように森へ入る。

ギートは部下達に装備の確認を急がせロイドと共にサインの確認をしていた。2人の横では心底嫌そうなクラシスと楽しそうなヴェイグとフローがいる。


「人狼だってよ。なかなかお目にかかれない最上級魔族だぜ。」

「ふふふ、早く終わらせて恩を枷に値切ってやるわ。」

「2人共離れるなよ・・・。あとヴァンも。」

「ついでですか!?」





同時刻

北門の壁上にピクシー、ホビット族の女達が整列していた。

エリザとマーニャは木の上に作った高台に散り部下と共に眼下を確認する。


「ハーピーの長、ここには女しかいない。この意味がわかっているな?」

「もちろんです。私達の歌声を存分に聞かせてあげましょう。」


エリザは頷き弓に張った弦を確認し獣人が来る方向へ視線を向ける。


「さぁ、全員死ぬ気で戦え!もっとも本当に死ぬなよ。ラズ様に怒られるからな。」


笑い声が零れ全員が覚悟を決めた。






同時刻

西門にいたリノアは手に転移されたメモを見て横にいたハルクに渡すとピクシー、ホビット達に他の門へ向かうように指示を出した。


「予想通りここには来ないようですから見張り以外は全員休んでおきなさい。私達の戦いはこの後です。」


夜魔族とトレント族は草の上に寝転びそれぞれの休憩に入ったのを確認したリノアは頷きハルクと共に壁上に腰掛ける。


「始まりますね。」


ハルクの頷きを見て思うのは侵略を受け逃げ出した事と谷へ向かうアンリの手が震えていた事だ。

あれは恐怖からだったと思うのは彼を弱者として見ているからだろうか?

それでも表情には出さず懸命にいつも通りを演じきっていたのは仲間達へ不安を悟らせない為だろう。

そんな弱い人を戦場に駆り出したのは自分であると思うと敵の来ない此処にいるよりは戦場へ向かうべきでは、と思う。

言葉を作ろうか迷い横目で見たハルクは変わらぬ無表情でいるがいつもより落ち着きが無いようにも見え苦笑する。

強者であるハルクもまた同じように悟らせないように振舞っているのが可笑しく思え小さく頷いた。


「私達の戦いまでゆっくりさせてもらいましょう。」


それが仲間を信頼する事だとわかった気がした。








獣人族は木々の先に巨大な建造物を確認していた。

有り得ぬ壁に全員の足が止まり息を飲むが周囲に罠がない事を確認させたギルカは森から踏み出した。

隊列を整える間周囲を確認すると先程の人間と2部族が壁上に座っているのが見え怒りが湧き上がるがそれを押し殺し言葉を飛ばす。


「殺す前に聞いてやる、お前は何者だ。」


ギルカの問いにアンリは頬を掻き立ち上がる。


「俺か?俺はどこにでもいる普通の商人だよ。」


仲間から普通?とざわめきが起き視線がアンリに集中した。

アンリは両軍全員の視線が集まった事に頷き両手を広げアピールする。


「見ろ!これが俺を注視しなければ見失う程の凡人の証拠だ!!!ビバノーマル!!」


獣人達は届く声に1つの思いに囚われた。それは絶対の確信をもったものであり誰かが小さく呟いたイカレてる、の声に全員が頷く。


「狂人の類いとは思わなかったが先程の借りを返させて貰うぞ。」

「まぁ、待ちなよ獣人さん。先に攻めてきたのはそっちでそれを迎撃されたからって怒るのは道理が合わないだろう?」


一息付き、


「今からでも遅くないから帰りなよ。此処は俺達の本陣で備えは当然している。ここは諦めるのが正確だ。」

「我等が偉大な王が望む覇道の前にそのような醜態を晒せるか!!」


アンリは肩を竦めると空を仰ぐ。


「なら戦いの後で君達は後悔する事になる。そう、商人として獣人達に対する抗議の値上げをするぞ。君の判断で皆がお買い得の時にお買い得じゃ無くなる事になるかも知れないのだが。」

「いい度胸だな、それは認めよう。」

「納得ありがとう。では50%割増で今後は提供しよう。」

「その事ではない!認めるのは勝てると思っている覚悟の事だ!!!」


ギルカは話しながらも見える範囲の情報を整理する。

門は引上げ式、破る事は出来そうだが小さく大軍を送り込むのは難しい。更に門の両側の壁が出っ張っていて横からも攻撃が来るだろう。

地にある水は堀かどうかはわからないが沼地にはなっていないのは確かだと思い頷く。

これなら一気に攻め落とすのは難しいが時間をかければ必ず落とせる筈だ。

後衛の部隊に梯子を作らせる伝令を送り隊列を整え雄叫びと共に両軍は激突した。

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