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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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交渉 ~プラタ~

プラタは空からハーピーに掴まり運ばれてくる子供達を見て安堵する。1人また1人と抱き締めるように抱え再会と謝罪をしていた。

交渉が終わり虫人族の仮の住まいとなった地区でプラタは思う。


我等の戦いを無駄にしないという言葉を信じてもいいのだろうか・・・。


~1時間程前~


プラタは自分がいた森と違う地運ばれた事を理解した。

遠く聞こえるのは破壊の音ではなく建築の音が届き目の前には数枚の紙を持つ見知らぬ男とソドムのシスターがいた。

視線を横にずらすと泉があり先程会話していた幻影族の長の姿はない。


処刑魔術と聞いていたものに身を委ねた事から強ばっていた身体が弛緩する。

便利だな・・・。これが転移魔術か。


「プラタさんは貴女かな?他の方もお疲れ様。俺がアンリだ。」

「・・・子供達は?」


プラタの問いにアンリは手にしていた地図を渡し、


「此処に集めてる。会いに行くなら早めに交渉といこうか。中に入りなよ。」

「初めに言っておくが面倒をかけるなら殺すから暴れるなよ。」


プラタはその言葉に緊張を戻し部下を外で待たせ後を付いていく。扉を潜り部屋にいる人を視界に収めた時動きを止めた。

何故竜人族とエルフがいる!?

疑問を思うがまずは挨拶をしなければならない方も共にいる為跪く。


「お初お目にかかります。妖蜂族を纏めさせていただいおりますプラタ、痛たたた。」

「話しならアンリの役割だ。私は食事をするから邪魔するな。」


サラに頭掴まれ身体を起こされるのをアンリは前も見たなぁとしみじみと思う。


「マーニャ達と同じでプラタさんも苦労人になるな。」

「痛たた、すいませんすいませんすいません。」


床から足が離れバタバタし始めたのを見てしみじみしていた気持ちを切り替えた。


「黄色と黒が揺れるとなんか不安になるからその辺りでやめてやれ。」


サラが手を離し床に落ちたプラタは頭を抑え蹲るように丸くなっていた。


「なんだかスズメバチの死骸を彷彿させるな。」

「死んでません!貴方かなり失礼な人ですね。」


アンリは外であたふたしていた従者に怒られ肩を竦める。


「例えなのに・・・。とりあえず座ってくれ。サラとレウさんは空いた所を気にせずどうぞ。」


プラタはよろけながらも机に辿り着き椅子に腰を下ろす。背後にラズ、正面にカイネ、その横にアンリが座り1つ離れた所で竜人と鬼が食事を持って座った。

アンリは紙を机に置きプラタを見て、


「さて、とりあえずそちらの要望は仇討ちって所かな?対価は得ているから大抵の事は受け入れるよ。」

「その通りだが待て、対価?」

「うん、言いづらい事だが貴女達を玉砕覚悟で戦わせて時間を稼いだ。こういえば検討つくだろう。」


プラタは思い返し何故守りではなく攻めを選んだのかに気付く。拳を握り全身をワナワナと震わせ机を叩き立ち上がった。


「貴様その為に子供達を!?」

「籠城されては俺達が困るからな。結果は貴女が知っているだろう。その事については遅れたが済まなかった。」

「殺す!!」


プラタが特性を使い指に毒針を生成すると同時に肩の関節にラズが短刀を突き刺さした。


「此処で暴れるなと警告されませんでしたか?言えた事ではありませんが話し合いの場に暴力を持ち込むべきではないですよ。」

「憤る前に少しは考えろ。例え誘導されてたとしても戦いを選んだのはお前等だ。」


カイネの言葉が終わり短刀が抜けるに合わせプラタは崩れ落ちるように椅子に座る。睨む目はアンリを捉え今にも襲いかかりそうであった。


「まぁこうなると思っていたから事前に打ち合わせしていた。それも含め悪かった。」

「謝って済むと思うのか!貴様の行いは我等を死地に追いやっただけではないか!!」


プラタの怒りは更に膨れ上がるがその言葉にフォークを片手に鹿肉のステーキを食べていたサラが首を傾げる。


「お前は他人を利用した事がないと言い切れるのか?今回はアンリが上手くやっただけで本質は変わらん。」

「サラ様まで人間の肩を持つのですか!?」

「文句は私に言え。アンリに好きにしろと言ったのは私だ。いわば私の指示で動いていたと同然だ。」


アンリは首を横に振りプラタに視線を移す。


「悪いが俺はこういう戦い方しか出来ない。批判は俺が受けるが命はやれん。

その上で俺がそれに意義を持たす為に考えたんだが聞いてくれないか?」


アンリが渡した紙は2枚、同じ内容で同盟契約が書かれサインは済ましたものだ。


「本書と控えだ。貴女達の戦いを無駄にしないと約束しよう。」

「貴様の言葉など信じられるか!!」

「なら説明をカイネに頼むよ。」

「読んだら納得しろ以上だ。」


アンリは肩を竦め再び正面に向き直る。


「だそうだが俺からの説明いる?」

「当たり前だろうがぁ!?」


プラタのあまりの迫力におぉ、とのけぞり慌てて契約書を示す。


「信じないって言ったのに・・・。

日付を見て貰えばわかる通り2週間前になっている。つまり戦いが始まる前から同盟であり、貴女達は俺達の為に時間を稼ぐ戦いをしてくれたって事にしないか?って事だ。」


アンリは指を組み机に置く、


「提案を飲んで貰えるなら貴女達の戦いは無駄ではなく、そして敗戦でも無い。何故ならこの地での戦いこそが本戦だからな。」

「それは・・・詭弁だ。」

「そうかもな。だがそれを知るのはこの場にいる者だけだ。全てを無駄にするのかそれとも受け入れるのか貴女が決めてくれ。」


血が肩をつたい震える拳を濡らしアンリを睨む。

プラタは悔しさで目頭が熱く頬の端に震えのような動きを感じた。

狡猾な人間だ。これを飲むならあの戦いに意義が生まれるがそれはこの男の行い全てを許さなければならない事でもある。

許したくないが同胞達の誇りを守る事が出来るのは事実だと思う。

目頭を袖で拭い声を絞り出す、


「勝機はあるのか?本当に勝つと確約出来るのか?」

「その為に行動している。許してくれなくていいが協力して欲しい。」


沈黙を置いたプラタは書きなぐるように契約書にサインをした。


「貴様の正当性を結果を持って示せ!」

「任せてくれ。そして俺達の為に戦ってくれてありがとう。」


プラタは無言で席を立ち扉に向かう。その背にアンリが声をかけた。


「渡した地図に記した場所を虫人族の居住区として好きに使ってくれ。今後も連絡するから頼むよ。」

「・・・わかった。」


扉が閉まりアンリは大きく息を吐いた。ラズが正面に座り小さく拍手をする。


「いやぁ、良くやりましたね。正直始末するしかないと思っていたので凄いです。」

「あぁ、虫人族には何一つ払ってない上協力させるとはなかなかに悪どい。」


サラとレウが空になった食器を流しに置き冷蔵庫内からプリンを取り出してから振り向く。


「これ貰うぞ。仕事行く前に薬草をプラタに届けるから用意しとけ。」

「私もデザートいただきます。アンリさんって以外と頭切れますね。驚きました。」


アンリは机に頭を乗せ伸びるようにだらけるとカイネに顔を向ける。


「疲れたし怖かった・・・。そろそろ時間も無いしクラシスに連絡しといてくれ。」

「はいよ。此処に置く通信魔具もそろそろ到着するだろうし準備も仕上げに入るか。」


アンリはラズに視線を移し体勢そのままで口を開く。


「向こうに転移魔術式作ったし暇なら獣人狩りに行く?妖蜂族の毒がどれ位効くか知りたいんだよね。」

「行きます!彼女達も憂さ晴らし出来て喜ぶでしょう。」


立ち上がり笑顔でトタトタと扉に向かうラズを4人は手を振って送り出した。

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