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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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顔合わせ ~親睦会~

泉前に設けられた場には料理が並びそれぞれの席が用意されている。

ピクシー族、ホビット族、幻影族、夜魔族、トレント族、ハーピー族、猫又族、ロイド、ケイト、ヴァンが緊張した顔で座っていた。サラ、カイネ、ラズはそんな面子を気にせず楽しそうに会話している。

ラズの後ろにはエルフの戦士20名程が直立のまま控えていた。


「おい、料理が冷めるから食おうぜ。そこのエルフ達も置物になってるなら給仕を手伝う位したらどうだ?神が悲しんでるぞ。」


カイネの言葉にエルフ達がそれぞれの動きを作る。

サラは箪から酒を飲み石窯で作業しているアンリとガイアスに視線を向け口を開く。


「カイネがワガママ言ってるから先に始めるぞ。」

「好きにしてくれ。俺はケイトが取り過ぎた魚を保存食にしなければならない。」


ケイトに全員の視線が集う。狼狽えたケイトは困った顔を浮かべた。


「たくさん必要って言うから泉に雷魔術を叩き込んだら取れすぎたのよ・・・。」

「ケイトは野蛮だな。常識が無いのは悲しい事だと思わないか?」


ケイトは立ち上がり風魔術を3連続でアンリに向けて放つが当然のように避けられる。

全員がおぉと声を出しアンリが歓声に応えるように両手を広げお辞儀をした。


「ムカつく・・・絶対当ててやるんだから。」


ケイトは再び魔術を放とうとするがカイネの言葉に動きを止めた。


「おい、腹減ってるんだ余計な手間取らすなら殺すぞ。」


カイネがわかるように殺気を放ちサラとラズを除く場の全員が緊迫した空気に喉を鳴らす。

ケイトの顔が一瞬で青くなるがアンリはヒラヒラ手を振りながら窘めるように口を開く。


「駄目だ。ケイトは必要な存在だしいなくなったら俺の仕事が増える。」

「・・・冗談だ。アンリが過労で倒れられても困るからな。」


再び石窯に向き直ったアンリとガイアスは今の事など気にならなかったかのように調理を始めた。







賑やかに食事が始まり酒が全員に回った頃にカイネはアンリに視線を向け皿を示す。


「これは教会でも作れるのか?やれるなら石窯を用意しとくぞ。」


カイネは言いながらピザの上に刻んだ唐辛子を酢漬けしたものを乗せ口に運び指に着いたソースをギートの服で拭おうと手を伸ばす。


「ちょっカイネ様!?」

「うるさい。アンリと話してる。」


アンリは手拭いをカイネに渡し、


「出来るけど次は餃子と決めている。寒くなるとオスの猪は臭くて食えなくなるらしいから今しか売れない物をやりたい。」

「もう少ししたらあのくそ不味い肉が出回る頃か・・・。で、必要な物は?」

「鉄板と覆うものだがガイアスに頼んだからいいよ。むしろ教会内でやって良いのかが気になるな。」


カイネは躊躇なく頷き次のピザを口に放り込み呑み込むと両手を広げ宙を抱く。


「金の為だ主も黙認してくれる。」

「そうかなら当日お供えだけしとくか。」


カイネを除く全員が適当過ぎる、と思うが言っても聞かないから無視する事にした。

そんな事を知らないアンリは頭を首に乗せたロイドが食べる所を確認しふむ、と頷き追加を焼く為に石窯に戻って行く。


「夜魔姉さんこれ美味しいデスヨ。」


手持ち無沙汰であったリノアが振り返るとアキナが皿にピザを乗せて差し出している。それに興味深けに周りの魔族の視線が集まっていた。


「・・・リノアさんと呼んだ方が良かったデスか?」

「いえ、アキナのお好きに呼んで下さい。私達は対等、そうでしょう?」


アキナが笑顔でコクコク頷くのを見てから皿を受け取る。

自分がハルクに気を使わないと同じようにこれが共存するという事なのでしょう。

それを何故かくすぐったいような気がするが悪い気持ちではないと思う。

頷き1口食べ、


「うん、美味しいです。アンリにもっと貰いましょう。」


はいデス、と走るアキナを見て微笑んだ。






「さてと、夜魔姉が怒るから俺の川下汚染大作戦は取り止めになったが別の案を聞いて貰いたい。」

「それはまともな発想から生まれたものですか?」


リノアにまぁまぁと手で制しアンリが指を2本立てる。


「代案だ。こっちも被害が出るのを前提にしてるから下策と思っていたやつだがな。1つは初日を籠城して夜間に奇襲をかける。幻影族に相手の本拠地を見つけてもらいその周りに火を掛けて混乱させるつもりだ。」


アンリはザワつくのを再び制してから口を開く。


「もう1つは別勢力と合流して叩くというものだがこの辺りはまだ情報がないから未定だ。その後の関係にも不安があるから出来ればやりたくないのが本音だな。」


ロイドが手を上げ視線を集める。


「人狼族は強い。そして獣人達は多いです。この場に留まるとしても戦力が足りないのでは?」

「それは大丈夫だ。クラシスを獣人にぶつけようと思っている。」

「来るわけないわ。ギルドマスターとして軽率な行動をとるはずないの。」


ケイトの言葉にヴァンも頷く。アンリは2人に哀れみの視線を向け口を開く。


「認識が狭いぞ。伝手があり目的を共有出来るなら可能だ。それに既にカイネから答えはもらっている。」

「あぁ、クラシスは気の毒だがアンリの考えを伝えれば来るしかない。」


カイネの言葉が終わると再びザワつくがそれを無視してアンリは続ける。


「まだ時間はあるから考えといてくれ。特にギルドを引き込む方は拒絶もあると思っている。いつでも遠慮なく言ってくれ。」


部族内で考えをまとめる事を決め全員が頷いた。


その後それぞれが住んでいた地域の事や脅威、他のめぼしい魔族の会話で場が進み、陽が暮れる前に片付けをしているアンリとサラ以外全員が酒に潰れていた。

サラはアンリを視線で追いながら思う。

よく働くそしてああいう奴だから誰もが気軽に接するのだろう。

私には出来ない事でありアンリがいるから他の魔族ともこのような場を囲める、それを嬉しいと感じる自分がいるがそれを伝えるのは気恥しいとも思い思考を切り替えた。


「魔術はどの程度まで上達したんだ?」


目の前で皿を重ねているアンリに聞く。アンリは片付けを止めサラの隣に移動すると、


「転移ならカイネに調節してもらったから掌程度の範囲なら1時間以上は維持が可能だが数人囲む範囲となると10分程度で魔力が切れる。こればかりは精進するしかないな。」


まだまだだ、と首を振る。


「充分な成長だから気にする事はないがカイネがここと教会を繋げたがっていたぞ。」

「繋げたら毎日シスターズが飯をタカリに来そうだ。だが、利点も多いからな・・・どうしよう。」


サラはアンリの頬に手を触れ視線を合わせる。


「思うまま好きにやれ。困ったなら私を頼ればいい。そうだろ?」

「助かる。サラが一番の頼りだ。」


サラが微笑むのを見て改めて選択が広がるのを感じる。

それを嬉しく思い精一杯やれる事をやろうと決め頷きで応えた。

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