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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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会合

泉を囲む広場の一部に人だかりが出来ていた。巨木に向かい祈りを捧げるように跪く夜魔族を横目に天幕を潜りながらアンリが口を開く。


「熱心だな。応急処置はしたし介護員も付けたから心配はない筈だが・・・。大体ここいらを管轄してるシスターはカイネだぞ?祈りを聞く奴じゃない。」

「言うな。カイネも神も聞かずとも祈りたくなる時はある。気が済むまでやらせればいいさ。」


サラの言葉にそんなもんか、と頷き椅子に座り机を挟んだ対面の5人に顔を向けケイトの講義をメモした図鑑を開く。

ピクシー族、ホビット族は最下級。幻影族は下級。と確認しページを捲る。


夜魔族は上級でデュラハン族、トレント族は・・・最上級か。

厄介だと思う。階級で贔屓はしないつもりだかどこまで意識出来るか。

更に思うのが夜魔族とトレント族が住処から逃げている・・・。それだけ獣人達の数が多いのだろう。

アンリは気持ちを今に向け口を開く。


「改めて俺はアンリだ、まぁ適当に呼んでくれ。まずはこちらが提供出来る事を話す。その上でそちらの求める事を聞こう。現在俺達は忙しく人手不足でね。是非とも協力して欲しい。」

「アンリさん正直過ぎです。」

「偽ったって仕方ないだろ?後で文句言われるよりはマシだ。」


サラも頷いているから間違いない。

アンリは夜魔のページを開き文字を指で示す。


「しかし夜魔って姉さんを付けるとなんか妖艶な響きだな・・・。」


ガシッとギートに肩を掴まれ引き摺られるように天幕の隅に連れていかれた。


「アンリ殿!?ふざけないでくれ!お願いだからちゃんとしよう!!」

「イテテ、椅子が倒れたじゃないか。大体ふざけてないぞ。思った事をそのまま言っただけだ。」

「考えて喋れって言ってんだ馬鹿!!」


ギートは冷や汗が浮き出るのを感じながら狼狽した。

相手は上級魔族だ。暴れられたら多少の付き合いなど無視され大惨事になるのは目に見えている。


「落ち着け大丈夫だ。ちゃんと考えてるから俺を信じろ。」


アンリは服を叩いて椅子を直し座ると頭を下げる。


「悪いね、ギートはたまにおかしくなる癖がある。今のも情緒不安定故の事だと思ってくれ。」

「アンリ殿・・・。」


ギートが恨めしそうな声を出した時リルトが飲み物を持って天幕を潜る。

アンリが会合の支度中に用意しといた物だ。


「ありがとうな。外の夜魔とトレント達にも配ってくれ。後風呂も用意しといたから案内を頼んでいいか?」

「はい。任せてください。」


リルトが頭を下げ立ち去るとリノアが口を開く。


「ありがとうございます。移動続きだったので皆喜ぶでしょう。」

「連れてくるように言ったのは俺だ。もてなしは当然の事だから気にしないでくれ。先に会合をするから夜魔姉とトレ兄は後になるが悪いな。」

「アンリ殿!?」

「うるさいぞ。ちゃんと呼び方を考えた。彼女等は夜魔姉、トレ兄、寝てるのがデュラさんだ。」


マーニャとギートは諦めたように机に頭を載せ、ピクシー達3人は椅子から離れ距離を取る。サラは椅子を傾けながら笑っていた。


「リノアとハルクだったな。理解出来ないようだがアンリはこういう奴だ。」

「何の話だ?まぁ始めるか。3人もそんな所にいないで座ってくれよ。」


3人は夜魔の顔色を伺いながら不安げに席に戻る。アンリはそれを見て頷く。


「提供出来るものだが衣食住はこちらが責任を持って対応する。他部族と揉めたとしても俺に・・・サラとラズに任せればいい。」

「ラズ様!?」


イマルの言葉にマーニャを見るが首を横に振るということは伝えてなかったと言うことか。


「ラズは今エルフ達を連れ帰って来てる途中だ。今週中には着くと連絡があった。ついでにカイネにも協力を頼んである。ソドムのシスターだがわかるか?」


5人が顔色を変えた事で知っていると伝わり、サラが後押しする為口を開く。


「カイネは私とラズと繋がりがある。金になるなら何でも引き受ける悪いシスターだと思っておけ。」

「サラ様の言葉でしたら信じます。ですがそれ程の方々を有していて何故我等に声を掛けたのでしょう?」


ロイズの言葉に5人が頷く。

それを見てアンリはやはりサラ達は別格なのかと再認識した。


「獣人達が動き出してるらしい。夜魔姉達が避難してきてるって事で現状は伝わるか?」

「負けて住処を追われたと言ってもいいのですよ?」

「俺はそれを見ていない。何があったのかも知らない俺が軽々しく敗北と決め付ける訳にはいかないだろう。」


リノアは礼儀を知っている事に驚いた。

先程の言動から鬼の力を頼りにした愚かな人間だと決めつけていたのだから尚更だった。


「そういう訳で獣人達からここいらを守る為に色々やっているんだが人手が足りない。工事を手伝ってほしいのが本音だが戦いになるかもしれないから無理強いもしない。

それに人間の言葉だから簡単には信じれないだろう?だからサラに保証してもらう。」

「あぁ、ここで決まった事は必ずアンリに守らせる。私がそれを確約する。」


リノアとハルクは横の魔族が確かめるように質問をするのを見ながらある種の思いを抱く。


人間を信じない前提に鬼を証明に使うですか・・・。個の戦力は怪物を有していながら脅しに使わない。

自分の立ち位置を理解していて相手への理解を求める姿から根は真面目なのだと思う。自分ではなく相手に対して・・・。

魔族が納得する事を前提にしている事からも伝わる事だ。


「信じてもいいのかも知れませんね。」


ハルクが頷くのを見たリノアは考え込み1つの結論に至る。

それを言葉にする前にアンリが手を叩き口を開いた。


「なら3人とも仲間を連れてきてくれ。仕事は後で割り振るからこれから頼むよ。」


3人が急いで天幕を出るのを見送りアンリは2人に振り返る。


「待たせたな。獣人達の情報はギートとマーニャに話してくれればいい。俺はデュラさんの治療してくる。サラは休んだら仕事に戻ってくれ。」


アンリが指示を残し天幕を出るのをリノアは理解出来ずにいた。


「え!?」

「変な声を出すな。落ち着いたら要点を纏めて話せ。それを聞いたら私は仕事に戻る。」


リノアは決心したのにとも思うが今は治療の対価として情報を話す事にした。

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