戦闘~サラ&アンリ~
木々が揺れ幹が倒れる森の中2人の人間は後退しながら鬼と対峙していた。
振るわれる拳は触れるものを薙ぎ払い砂塵を巻き上げ2人を追い詰める。
「ハハハ、上手く避けるじゃないか。」
笑みを浮かべ追うのはサラ。
避けながら剣を交えるクラシスとその補助をするケイト。
両陣営を眺めながらナイトーさんをモフモフするアンリ。
異なる行動は互いの目的を成そうと目まぐるしく動き続けていた。
一方であるクラシスは冷静に戦力差を分析し勝利を手中に収める為最善を尽くす。
鬼の膂力、防御力、地形情報それらは劣っている事を認める。
だが、と思い。人数、手数、技量では勝ってる事がクラシスを前に進める力になる。
更に勝利条件は鬼の攻略ではなく人間1人の処理となれば隙を作り詰め寄る事だけが問題だと思う。
「おらぁっ!」
全力で叩き付けた剣を腕で受けた鬼の拳が迫る。
クラシスは身体を後退させつつ悪態を零す。
「これが純粋な鬼か、無茶苦茶な身体しやがって。」
触れれば吹き飛ばされ、掴まれたなら振り払う事も出来ず握り潰される。
通常の剣や魔術ではダメージを与えられない上に足止めも出来ない。
サラは獰猛な笑みを浮かべ口を開く。
「頑張れ、カイネ以外では久しぶりの戦いだ。直ぐに終わってくれるなよ!」
サラは思う。
やはり人間はいい。勝てぬとわかっていても挑んでくれる。
技量を高め、機を伺い英智を結集し活路を見出そうとしてくれる事がたまらなく嬉しい。
「だから、もっと頑張ってくれ!」
握る拳を叩き付けた時サラの右腕に痛みが走った。
クラシスの持つ剣が淡く光り、肉を裂き骨にくい込んでいる。それを確認し素直に驚いた。
「おぉ!やるな。」
「これでも断てないとはな!」
サラは後退するクラシスを追わず追撃の炎弾を片手で払い傷口を眺めるとそこで3人の動きが止まっていた。
サラの右腕から別の手が生えたからだ。それは傷口を手の平で抑え数秒すると離れ生えた腕はVサインをすると消えていき傷口が塞がっていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
クラシスとサラは無言で見つめ合い同時に同じ方向に視線を向けた。
視線の先には手の平を血に濡らしたアンリが拭う物を探してリュックを漁っている姿があり視線に気付いたアンリは顔をあげ首を傾げた。
「なんだ?タオルでも貸してくれるのか?」
クラシスは首を横に振り気合いを入れ直し剣を真っ直ぐにサラに突きつけた。
「ケイト。5分だけ持ちこたえてみせる。何としてもアイツを仕留めろ。」
「無理無理。アイツ魔術避けるもん。それにナイトウルフも相手なら尚更よ。」
「頑張れ。鬼も言ってただろ?頑張れと。」
「最悪。・・・でもわかったわ。期待はしないでよね。」
クラシスは頷きケイトを通す道を作る為サラに肉薄し振るう剣に魔力を通し前に進む。
「アンリ。適当に逃げてな。女の方はお前狙いだ。」
サラも忠告を残し迎撃を始めた。
「さて、話し合いを提案したいがどうだ?」
後退しながらケイトに声をかけるが返事は言葉ではなく行動で示された。
ケイトは術式を前方に5つ展開し3つを魔獣へ、2つをアンリへ向け、それぞれの術式を起動し炎弾をばら撒きながら距離を詰める。
「ナイトーさん逃げようか。」
アンリは魔獣を炎弾の軌道から逃れるように走らせる。
自身も避けながら背後を見ると足元に術式が浮かび地を跳ねるように追い掛けてくるケイトがいた。
「めちゃくちゃ怖いんだけどっっ!!」
ケイトは距離を詰めながら炎弾を放ち続けながらも冷静に観察していた。
どうやっても自分の魔術では当てる事は出来ない、だが鬼から距離を離せば時間は稼げる。いずれ体力が尽きたならどうだろう?
草木が走りを妨害している今なら疲れやすいのではないか・・・。
体力を削るため威力ではなく速度重視の魔術式に切り替える。
「仲間が命懸けで作った時間なの恨まないでね。」
「クソ。硬すぎだろうが!」
クラシスは剣が鬼の腕に止められるが構わず連撃を重ねた。
剣に魔力が溜まりきるまではダメージが通らないのを理解している為この時間はフェイントだと割り切っているがやはり悔しさがある。
勝負をかける一撃を確実に決められるように場を作り、剣は薙ぐ軌道のみで構成。
まだ見せていない突きなら魔具発動で鬼の身体を貫く自信はある。
それまで体力と命が持つか・・・。
サラは違和感を感じていた。
相手の技量は変わらず勝利への執念も肌で感じるが何かがおかしい・・・。
剣の連撃を受けきり伸ばした拳は空を切り木に当たる。
そのまま倒れる幹に蹴りを当て破片を相手目掛け飛ばすが防御魔術式を展開させたクラシスに受け切られた。
楽しいのは間違いない。これ程の相手はなかなか出会えるものではないしよく凌いでいる。だが何かがおかしいね・・・。
なんだろうかと思うが答えは出ない。
互いに攻防を交わしクラシスが宣言した5分も過ぎた頃サラの拳が僅かにクラシスの左肩を掠めた。
クラシスの身体が大きくぐらつき半身になりそのまま膝が崩れるように身を落とした。
瞬間、サラは跳ぶように後方へ跳躍した。直後クラシスが身体を前に伸ばすように剣をサラの腹部ヘ突き出した。
肩で息をして額の汗を拭うアンリは両手を挙げながら後退をしケイトと相対していた。
2人の距離は10m程の間がある。
アンリと同様荒れた息をしながらケイトが口を開く。
「そろそろ諦めなさい。これ以上逃げても無駄だとわかっているでしょう?」
フゥ、と一息つき辺りを伺う。途中で魔獣の姿が消えている為奇襲をされないように魔術式は四方に展開したままだ。
「まぁ、そうだな。改めて話し合いって選択はどうだ?」
「時間稼ぎとみなし却下。そしてあの鬼の方には絶対に近寄らせないからそのつもりで。」
「それで後悔ないんだな?」
「・・・?」
アンリは返事を待たずに右手を振り下ろした。
直後に風を切る音がしケイトの左腕に矢が刺さる。
「え?・・・あれ?」
ケイトは混乱の中腕に痛みが走る。思考が追い付かず矢とアンリを見比べた時女の声が聞こえた。
「アンリさん、生きてて何よりです。何故私に気付けたのですか?」
「やはりラズか。この場に着いた時スキルの警告が無くなったから誰かいると確信しただけだ。」
ラズは言葉を受け思う。
スキルが私のいる所まで導いたということでしょう。流石、生き延びる事にかけては群を抜いていますね。
「なるほど。ところでこちらの方は私が始末してよろしいですか?」
腕を抑え蹲るケイトの前に身を進めたラズは妖しく笑みを浮かべた。




