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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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動き出す者達

ソドムがある街道を南に抜け東へ向かった先に小国ディストラントがある。

主な産業は無く周辺国家と同様に魔族に対する防衛を名目に大国からの支援金と通行税が収入源の弱小国家だ。

国を守る主要な兵は1000人程しかおらず有事の際には義勇兵を募るかギルドや傭兵を借り受け運用していた。

魔族の領域で最も混沌とした東側の森に近い為か周辺の村に度々、魔獣や魔族が現れその対応に追われる日々を送っていた。


「クソ、どうすれば現状を変えられる・・・。」


国王レアは執務室の机に頭を預け呟く。


先王が病に倒れ、若くして王になったレアは悩み続けていた。

経験不足を理由に支援金は減らされ、荒れる内政により商人の流通も減少し国が傾き掛けていた為だ。

内政に着手したいがギルドや傭兵への支払いで国庫は常にギリギリだった。

国が不安定になりつつある現状は民に不安を感じさせている。何とかしなければ近くディストラントは終焉を迎え多くの者が奴隷に身を落とす事になる。

それだけは防がなければ・・・。


コンコン、

扉が叩かれ開く、執務室へ通された男2人は跪き頭を垂れる。


「レア様、御報告したき事があり参りました。」


レアは体を起こし姿勢を新たにする。


「聞こう。ムーラ翁、サムト騎士団長、楽にしろ。」


はっ、と声があり立ち上がる2人を見ると手には箱を持っている。

2人が机に箱を置き開く。

1つの箱には羽飾りの着いた帽子や羽ペン、矢があり、別の箱には瓶詰めの飴や保存食があった。

ムーラが羽ペンを手にとり、


「これらはソドムからきた商人が運んでいた品です。この羽は全てハーピー族の物で出来ております。」


レアは意味が分からず先を促す。


「魔力を通すのに適した加工がされており魔術の心得がある者ならば飛躍的な強化が出来る品々です。」


横のサムトも頷き、


「魔道弓兵に矢を使わせた所威力、命中共に向上致しました。更にこちらの食料品を御確認下さい。」


渡された瓶を開ける、鼻で感じるのは香辛料と香草の匂い、中の肉をとり口にする。


「美味いな。だがこれらがなんだというのだ?」

「ソドムでこれらを作り販売してる者がおります。我が国に招ければ輸出を産業に出来るかと。」

「それだけではなく兵達の装備も良くなればギルドや傭兵を雇う数を減らせます。どうか一考を。」


レアは2人の臣下の言葉を吟味する。

ムーラ翁もサムトも先王からよく使え国の為に献策してくれた重鎮だ。無下に出来ない。


「良い。その者に使者を出せ、必ず書状を渡すよう厳命せよ。」


退出する2人を見送り改めて机に頭を預ける。


「魔族の領域で何か起きてるのか・・・良い事だと願うしか出来ぬか。」





街道を南に抜け内陸にあるスラグ王国の王サイモンにも同じ品が届いていた。

農業や鉱物の輸出が盛んで魔族軽視の風潮が強く、貴族史上主義の国だ。


「確かに良い物ではあるのだろう。だが誇りある我等が使うにはちと品が無さすぎる。そうは思わぬか?」


王の言葉に国の要職者達が頷く。


「魔族など流奴と変わらぬ奴隷達よ。」

「我等には人間として誇りがある。王よ、このような物必要ないですぞ。」


口々に出る言葉にサイモンは頷く。


「これらは我が国で一切の流通を許さん。そしてソドム及び大森林を探るよう兵達を向かわせよ。」

「王よ、大森林は危険では・・・」

「ならばギルドに依頼せよ。このような物を作っておるのだ。人への侮辱故、見つけ次第殺して構わぬ。」


王の指示で重役達が動き出す。






武装帝国カンラムにあるギルド本部。

ギルドの下へスラグ王国から依頼が届けられた。


ソドム及びシーズ大森林にて魔族と共謀する者の始末をお願いしたい。


ギルドマスター、クラシスは魔具に映された文を読み部下へ通達する。

大森林への侵攻は稀な依頼であり、用意に時間がかかるためだ。クラシス自身何度も足を踏み入れた地であり馴染みある土地、危険度は理解していた。


「中位以上の戦士、魔術師を計100人集めろ。久々の大口依頼だ。」


その言葉に頷き各国へ伝達を出す為慌しく動く部下達。


「準備が整い次第編成をし出陣するぞ。何人か先行し情報を集めておけ。」


椅子に深く座り腕を組む。口の端が上がり笑みを作り出陣への思いを馳せる。







ソドム教会内に集まる者達がいる。

机に集った6人は神妙な面持ちで座りフランから渡された紙に目を落としていた。

誰も口を開かず静寂が教会を包む中アンリが沈黙を破る。


「何これ?」

「書いてある通りだ。異論は聞こう認めんがな。」


改めて文を見る。


露店の品数不足について、今より生産量を上げ土日共に商売を可能にする事。

もしくは軽食屋を立ち上げ土日共に商売をする事。

共に不可能なら土日はソドムに留まる事。


読み終わりアンリは思案する。

意味が分からん・・・。最近は集客に励む2人の長のおかげで土曜日で売り切れその日の内に帰宅している。

日曜日まで留まれば生産量は落ちる事になり、更に2部族が集めてくれる材料も無駄になる。


「無理だ。今だって休みなく作っててこれだぜ?軽食屋も準備があるから余計品薄になるぞ。」

「ぐ・・・どうしても駄目か?」


カイネの言葉に頷きで答える。それを見ていたサラが疑問を口にした。


「なんで2日滞在に拘るんだ?布施は渡してるだろ。」

「ん?美味いメシが食いたいからだ。週一じゃ足りん。」


アンリはサラとラズと共に立ち上がる。


「帰ろうか、無駄な時間だったな。」


3人で扉へ向うとカイネが慌てて止めようとする。


「待て待て、他にも理由はある。設備を増やす目処が付いたんだ。」


振り返るとフランが奥の部屋から男を招き入れていた。


「アンリさんだな、ドワーフ族のガイアスだ。何でも言ってくれ可能な限りやらせて貰うぞ。」

「・・・現状に追いついてないけどよろしく。」


ガハハと笑いながら背中を叩かれ、


「いいから、あっちで話そうや、きっと力になれるぞ。」


アンリ達は机から離れた所でガイアスと座り込み話を始めた。





カイネはギートとマーニャに小声で提案をした。


「お前らのどちらかであいつらを招く事は出来るか?」


真っ直ぐ2人を見つめ更に言葉を紡ぐ、


「集落の者が生産に関わるなら量も確保出来るしお前らも収入が増えるぞ。」


2人の反応は別だった。マーニャは、


「私の所は可能ですね。部下達は交流を深めているので恐れる事も無いでしょう。」


ギートは申し訳無さそうに頭を下げ、


「俺の所は厳しいな。先代の教えもあってなかなか理解してもらえないのが現状だ。」

「ならハーピー族の所だな。猫又族も多少は手伝ってくれるだろ?サラの説得は私がやるから2人は先に帰って部下達へ説明しとけ。」


2人は頷き扉へ向かう。

見送りカイネもガイアス達の話に加わる事にした。

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