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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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協力者 ~猫又族~

猫又族の長ギートは兵達を連れソドムの市場を進む、先週起きた自分の子供達が攫われた犯人に対する制裁の為だ。

帰ってきた子供達に話を聞くと、


「怖かった。」

「飴をくれた。」

「人間だった。」


頷き確信する。

子供達をお菓子で誘惑し攫った人間がいる。許さん、何が何でも追い詰め後悔と共に殺す。


子供が持っていた瓶の中にあった紙に書かれた教会の前の店に手掛かりがあると信じ辿り着いた先、人間の男が片づけをしている。子供達が指を指し、


「あの人が飴くれた。」


それに頷き、男に近寄る。


「猫又族のギートだ。人間よ、何か言う事はあるか?」


目の前の男、アンリは頷き、


「・・・猫、好きだよ?」


ギートは襲い掛かった。

右手に持つ槍を叩き込む、それを男が右に避けたのを見てやはりと確信する。


商人の動きではない、更に自白した以上こいつが犯人だ。

警戒を強めつつ槍を構え睨みつけ姿勢を低くする。



アンリはスキルが示すまま回避しバックステップで距離を空ける。昼休みに入る為片づけした1箱が倒れ中身の果実や瓶が転がるのを無視しギートを見る。


「危ねぇー!なんだ猫好き駄目か?駄目なのか?肉球最高だぞ!?」


正面から金属の光が迫る。


「戯言を!貴様は万死に値する!」


槍の柄が許す範囲にあった壁や箱が砕かれ宙に舞う。

その下に潜りアンリは転がる。


どうする?どうすればいいんだ!?

クソ、こんな事ならサラとラズに買い出し頼まなければ・・・。


カイネもナイトーさんに乗って朝から帰って来ない。

どうする?改めて思うが有効策が見つからない、相手は戦士だ、武器を持ち、戦闘経験も多い筈で仲間も引き連れてる。

自分は攻撃出来ない上に戦闘経験は無いに等しい、スキルのおかげで回避は出来ているがいずれ追い詰められる。


避け続けるが瓶に足を取られ転倒した直後に槍がくる、分かっていても地に付した状態では完全に避けれず左腕を貫かれる。激痛に歯を食いしばり、


「こんな所で死ねるかー!」


握り潰した果実を投げつける。それはギートの顔の前で青く光る障壁にぶつかり果汁を撒き散らした。



ギートは何が起きたか分からなかった。突如青く光る障壁が現れ目が開けれなくなる。

鼻が伝えるのは柑橘の匂いだ。


「こっちの猫も柑橘は苦手だな!」


男の言葉と同時に槍から腕が抜けた感覚がくる。


距離を取らねば不味い、目が見えずに戦える程地形に慣れていない上に転倒すれば窮地に陥る。

槍を振り回し男を寄せ付けないよう後退した背中が何かにぶつかった。

先程の状況から部下だと判断し、


「水を持ってこい!今すぐだ!!」


言葉と同時にギートの肩が砕かれ地に叩きつけられた。




アンリは左腕に回復魔術を掛けながら安堵する。教会の扉前で座り込むと一息着いた。


「助かった・・・。遅いぞ、サラ。」

「悪い悪い、まぁ無事で良かったじゃないか。」


サラの後ろで猫又族の兵達がラズにより拘束されている。ほっとけば趣味の消費物になるのは短い付き合いでも分かる。なので、


「悪いけど全員教会に入れてくれるか?話がしたいから。」


サラとラズが手をあげ応えたのを確認し腕の治療の為教会の中に入る。





ギートと猫又族の兵達は冷や汗を流し俯いていた。

意識を取り戻した後、治療を受け椅子に座らされている。

僅かに目線を上げ再度確認をする。


左にいるのはラズだ。拷問趣味のイカレたエルフ本人に間違い無い。

中央に座り腕を組んでいるのは鬼族のサラだった。巨人族に組みした先代から逆らうなと厳重に言われた上、先程力の差を実感させられた人物だ。

右にいるのは暴力渦巻くソドムにおいて、最も危険な人物カイネ。関わりはないが噂によると2人に劣らぬ危険度と認識している。


再び目線を落とし現状を把握しようと高速で思考する。

何故、危険人物が揃っているんだ・・・?

子供を攫った黒幕がこの3人なら制裁は無理だ、教会から生きて出る事も諦めなきゃならないだろう・・・。


冷や汗が頬を伝い握る手に落ちた時、正面のサラから声がくる。


「で、何の用だ?」


その威圧的な声に喉が縮み呼吸すら満足に出来ないギートは混乱状態になるが更に、


「面倒だ、幾つか風穴空ければ小鳥の様に喋るだろ。」

「それなら私がやりますね。顔以外切り刻めば誰でも素直になりますから。」


混乱が恐慌に変わる。ガタガタ震える猫又族を無視して3人が立ち上がると同時、奥の扉が開く。

出てきたのはギートの子供達だ。皿を抱え歩く後ろに白衣のシスターと男が大皿や食器を持ち続く。

立ち上がった3人は即座に座り何事も無かった様に机に皿が並べられるのを手伝い始めた。

猫又族もそれに倣う。


先程相対した男が、


「ギートだったね?改めて名はアンリです。先に昼食で良いか?」


3人の視線が頷けと無言の圧力があり緊張しながらも首を縦に振る。

置かれた皿に載っていたのはサンドイッチだった。

パンを焼きバターを塗った面には炙った厚切り肉や野菜が挟まれている物、卵とマヨネーズを混ぜ合わせた物、野菜と衣を付けた肉を揚げた物等種類がある。


「今度、店で出そうと思ってるから感想よろしく。」


アンリの言葉に3人と白衣のシスターは頷き、平らげる。見た事無い物を食べる3人は幸せそうで先程までの空気が嘘と感じられた。


「フラン、デザートお願い。」


アンリの声に頷き、フランが奥の部屋に消える。


「さて、何で攻撃されたのか教えてくれる?」


言葉にギート達に緊張が走る、アンリの左袖は赤黒く染まっていて腕を押さえているのを見て震える声で、


「うちの子がそちらの人間に攫われたと聞いて来たんだが・・・。」


アンリを指差し理由を伝えると奥の扉が開きフランが顔を出した。


「アンリさん、先程まで子供達の肉球を一心不乱にプニプニしていたのは自分の物と主張していたのですか?フランは見損ないました・・・。」


そして扉が閉まる。


嫌な沈黙があり、3人が小声でヒソヒソと、


「これはアンリが悪いよな?」

「あぁ、神も仕方ないと言っている。」

「アンリさん、残念です。」


ギートが立ち上がり、爪を出す。


「我が子を守る為だ。言い残す事があれば聞いておこう!」


慌てて3人の後ろに周り込み待ったをかけ、


「攫ったっていつの事だ?」

「先週だ。この子達を攫ったんだろ?」


アンリは誤解を解くため丁寧かつ正確に先週の事を説明する。途中サラやラズにも話をしてもらい概要を伝え子供達に向き直る。子供達は頷き、


「この人、助けてくれた。」

「お水と飴くれた。」

「もっと飴欲しい。」


その言葉にアンリは笑顔になる。

ギートに向き直ると、猫又族は集合して何か話し合っている。


結論が出たのか、衣を正し、天を見上げた後視線をアンリに向け勢い良く土下座した。


「「「疑ってすいませんでしたー!!!」」」


アンリは最近土下座をよく見るなと思いつつ子供達にフランの手伝いを任せる、大人のそんな姿は見せるべきでは無いと判断したためだ。奥の部屋に消える子供達に手を振り見送くると物騒な会話が聞こえてきた。


「どうする?1分あれば全員始末出来るが?」

「あらあら、3人なら10秒で充分でしょう。」

「いや、アンリの痛みを思えば5秒で終わらせよう。」


そんな3人を手で制して震える猫又族を立ち上がらせる。


「はい、この話は勘違いだったから終わり。デザート来たら食べようか。」




アンリは午後の準備を猫又族に任せてギートと向かい合う。


「アンリ殿、本当に申し訳ない。恩人に対してあのような事をしてしまいどんな詫びをしたらよいか・・・。」

「もういいよ。魔術使って疲れたから今度にして・・・。」


椅子に寝そべったままのアンリを気遣うようにギートは頭を下げる。


「ならば午後の店番は我等がやりましょう、ゆっくりして下さい。」


アンリは後ろで賭事をしてる4人を示した。


「商品の説明出来るの・・・?あの4人も出来ないんだけど。」


ギートが目を向けた先、停止したように身動きしない者達がいる。正面のカイネと目が合うと睨まれ慌てて視線を逸らす。


「なら、接客と呼び込みしてよ。説明は俺がするから。」


ギートはそれに頷き部下達の下へ向かい指示をだし午後の商売が始まる。





夕方前に明日の分まで商品は完売し、猫又族とハーピー族が露店の片づけをしている。

店前には2人の族長が正座で並んでいた。

1人はギート、もう一人はマーニャだ。その前にいるアンリは右足に添え木と布が巻かれ杖を付いている。


午後の商売を始めてすぐの事だ。マーニャが手伝いにやって来てギートと呼び込みで競い始めたのが悲劇の始まりだった。

客数や購入額を互いに誇るまではまだ良かったが、熱くなったのか掴み合いを止めようとしたら突き飛ばされて骨折する事になった。


「俺さぁ、弱いから魔族の力で押されたら転ぶんだよ。」


今はギートのスキル[痛覚遮断]で歩けるが治療出来るだけの魔力はアンリに残っていない。


2人は現状を正しく理解していた。このままアンリが教会に戻れば怪我の事を聞いた3人から報復がくるだろう。

そうなれば無事では済まないのは確定で最悪一族まで飛び火しかねない状況だった。

2人は何とかしようと考えるが回復魔術を使える部下がいない。

どうする、悩む2人は今完全に心を1つにしている。


「アンリ殿、重ねて本当に申し訳ない。今日は治療は出来ないですか?」

「無理、やれば魔力切れで倒れる。今日は治す事が多かったから限界だ。」


ギートは猫又族全員の怪我も治したアンリにそれ以上は言えず歯噛みする。


「あの、アンリさん?部下に回復薬を買って来させるのでそれを使うのはどうでしょう?」

「いらないよ。魔力戻ってきたら自分で治すから。」


完全に手詰まりを理解した2人はここで諦めた。

鬼達の報復を受ける覚悟を決めアンリが教会に入る補助をする。



教会の中、祭壇前にシスターズが倒れている。その横に金とワインが積まれた机があり鬼とエルフが上機嫌で飲んでいた。

アンリは瞬時に賭事の結果を理解する。

サラのいる机に近づくと声がきた。


「足どうした?」


ビクリと震えた2人の前に出る。右足を少しあげ、


「転んで折れた。明日には治すから気にしないでくれ。」

「そちらの2人の仕業ですね?少し待ってて下さい。今同じ目にあわせますから。」


立ち上がるラズを手で制し、机に近づき座る。


「2人共集客に夢中だったからな、近づいた俺が悪い。だがおかげで明日の分まで完売したぞ。」

「おぉ、やるな2人共。」

「そういう事でしたら不問ですね。ご苦労様でした。カイネ達から巻き上げたワイン飲みますか?」


マーニャとギートは困惑しながらもアンリを見るが椅子に促された。

5人は五体投地で祈るシスターズを背に祝杯をあげつつ今後について話し合い夜が更けていく。

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