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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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協力者 ~ハーピー族~

森を進んだ先、大木が群生する区域にハーピー族の住む集落があった。


アンリは荷車を引くナイトーさんの背で運ばれる子供達を見ながら歩を進め集落の明かりが近づいた頃、木々を揺らす風が止まった。


「?、静かになったな。」


言葉と同時にアンリの右横の地面が裂けた。


アンリのスキル[超直感]が自身に危険が迫っている事を伝えてきた。

スキルに従い右に移動した時、居た所の地面が裂けた。アンリはスキルが示すまま即座に回避行動をとる。

更に右へ、前に伏せ、着いた手を反発にし左へ避け、前転をし1歩下がり服を叩き土埃を落とす。

全ての回避後に地面が裂けているのを確認し仲間達に振り返ると、サラとラズそして子供達も拍手している。

それに手を挙げて応え正面を見て、挙げた手を前方に伸ばし五指を広げ待ったの構えをし、一息入れて、


「暴力よく無ひじょっ!」


噛んだ。

拍手をしていた仲間達や姿見えぬ相手からも憐れんだ視線が届いた。

沈黙があり、静寂の中、その視線から逃れる為俯きつつサラを手招きで呼ぶ、恐れられてる鬼ならなんとかしてくれるだろうと期待して背中に隠れた。






サラとラズは目の前で起きてる事の対応に困惑していた。

視線の先には地に手を付き頭を伏せたハーピー族の集団がいる。数にして300を超える土下座があった。

事情を説明した後案内され今の状況に至る。


声を掛けてもブルブル震え許しを乞う者達をどうすればいいか決めあぐねていた。

2人の横にはナイトーさんに跨りはしゃぐハーピー族の子供達と我感せずと調理をしているアンリがいる。

子供達の手には棒付きの飴が握られ笑う声が響くが大人達にはそれすら不敬にならないかと更に頭を地に擦り付ける事になっていた。


アンリの前の鍋からは良い匂いが辺りに漂い、遊んでいた子供達が1列になりスープとパンを受け取り食べ始めている。


「変な兄ちゃん、コレ美味しいよ!!」

「うん、めちゃくちゃ美味しいー!!」

「美味いよ!変人な兄ちゃん!」


変は余計だと言いながら笑顔でおかわりを着いでるアンリを呼ぶと嫌そうな顔で肩を竦めた。


「なんだよ、俺は子供の相手で忙しいんだが。」

「なんとかしてくれ。私等が何を言っても駄目なんだ。」


サラの視線の先に目を向ける。


「さっきから変わらないけどハーピー族の寝方じゃないのか?」


アンリは首だけ横に振る土下座集団を見て、


「なら2人して脅したんだろ?仲良くしなきゃ駄目だぞ。」


手を叩き、


「全員起立!従わなきゃサラが殴るぞ。」


土下座が勢い良く立ち上がる。それに頷き、


「全員解散!逆らうと素直になれるまでラズが相手するぞ。」


立ち上がった集団は樹木の上の住処に消えた。


「これで良し、さぁ夕飯にしようか。」


サラとラズが半目を向けてくる、それに少し引きながら、


「な、なんだよ?」

「アンリさんが脅していませんでしたか?」

「駄目なんだろ?そういうのは。」


2人の声に頷く。


「時と場合によるんだよ。文句言ってると夕飯が冷めるぞ。」


鍋の前に3人で座り子供達と食事を始めた。








マーニャと名乗ったハーピー族の長がサラとラズと酒を酌み交わし、周りには接待の用の部下達が囲んで歌や踊りを披露していた。


「良いぞ。もっと呑め。」


マーニャは鬼から酒を注がれ、恐縮しながらそれを一息で飲み干し、アンリに視線を向ける。


集落の中心の広場で遮蔽物は無く、周りを覆う様に大木が茂っている空間だ。

ハーピー族の風魔術を此処で使うなら上位魔族でも倒す自信があり、その中心に置いた篝火の近くで魔獣を背もたれに魔族図鑑を読んでいた。


「あの方はその正気でしょうか?」

「気持ちは分かります。・・・残念ながら正気ですよ。」

「あぁ、ここがヤバイ地形だって分かるだろうにな・・・。」


マーニャは首を横に振り攻撃する意思が無いことを伝え、今後の事を考える。

店を見たと言う部下の話と先程見せられた商品の残りから一族として関わりたい事業であり、その為に協力は惜しまないつもりだ。

だが目の前の2人は作り方を知らず護衛と材料収集が主だと聞いた、ならば店での売り子や宣伝に使って貰えるなら一族に新たな収益が産まれる事が期待出来る。

その為にはアンリと呼ばれる男に話をしなければならないが・・・。

改めて男に視線を向けると右手の本を魔術で左手に転移させて喜んでいる。

正直、何がしたいか分からない。手渡しすればいい筈だがそんな事で魔術を使う人間にまともな会話が出来るのかと不安を感じるが意を決して歩みを進め声をかける。


「アンリさん?あの、一緒に呑みませんか?」




アンリはかけられた声に視線を向け身構えた。


「・・・・・・」


首を傾げるマーニャを確認、魔族図鑑のハーピーの説明に視線を移す。


〜ハーピーは声で混乱、惑いを与え襲いかかる。特に男に対して効果があるので注意~


そこまで読み、惑いの声と酒の組み合わせは危険だと判断してナイトーさんの背に隠れ伝える。


「いや、気にせず3人で親睦を深めてくれ。」




マーニャは謎の警戒を示すアンリを見て混乱した。

だが一族の事を思い、長として新たな利益のチャンスは見逃せない。更に上手くいくなら森の脅威の2人にも取り入れるかも知れない以上意を決してアンリに近づく。

ナイトウルフが歯を剥き出し威嚇した所で歩みを止め、


「子供達の恩人に改めてお礼をしたいだけなのですが駄目ですか?」


葛藤するアンリを見て更に言葉を続ける。


「これを機に親睦を深め、お力になれる事があるかも知れません。互いの理解の為にもお願いします。」


魔獣の後ろに隠れたアンリが顔を出し、


「わかった、でもあまり呑めないからな。」


マーニャは頷き部下達に接待を任せた。




アンリは舞い踊るハーピー達を見て新たな商品を思いついていた。取り留めない会話と共に酒が進んだ頃に固まった構想を話す事にした。


「ハーピー族は羽毛の生え変わりはあるのか?」

「夏前と冬前にありますが何故?」


訝しみつつ応えるマーニャの言葉に頷き、歌う1人の羽を触り確認する。柔らかく綺麗な羽だ。


「生え変わった羽毛を売ってくれないか?羽根ペンや可能なら寝具の中身に使いたい。」

「寝具ですか?布にはならないですよ。」

「俺のいた世界では羽毛を布に詰めて使ってたからな。手間だが柔らかいところだけ集めれば出来る筈だ。他にも箒や飾り細工とか作りたいな。」


ラズを見ると手を振り応える。


「矢羽にも使えますね。ハーピーで作った事はありませんが任せて下さい。」


マーニャは大事な話になった事を理解し、水を飲み酔いを覚ます。


「アンリさんは流奴でしたか、道理で奇行が・・・失礼。羽は集めて選別後洗っておきます。後、村で開いてる店で我等を雇って貰えますか?」

「店やってるの知ってたのか?ウロウロしてたのは偵察?」


アンリの後ろで歌っていた1人が慌てたように声をあげる。


「違います!その値段を見て諦めたんです・・・。」


その女性を睨みマーニャが声を荒げた。


「リルト!私語を許した覚えはありません!!」


俺の何気無い一言で怒られ俯く姿が可哀想でマーニャを手で制する。

ハーピー族に前向きに協力してもらう為にもここは優しく接する事にした。


「サラ、マーニャを任せた。でリルトは何が欲しかったんだ?残ってるならあげるよ。」


手を引き荷車の下へ、売れ残りを見せると、戸惑いつつ視線が止まったのは香り付き石鹸だった。それを渡し頭を下げる。


「はい、俺のせいで怒られたお詫びに。」


躊躇いの言葉を出そうとしているが制して素早く元の位置に戻るとマーニャが笑うサラに勢い良く呑まされていた。視線が合い身体がフラフラと揺れている。


「あの、大声出してすいません・・・。」

「うん、その・・・大丈夫?」


はい、と声が来てマーニャは倒れた。





朝日が登る頃マーニャはひどい頭痛と共に起き上がった。

辺りを見回し自分が広場で寝ていた事を確認、辺りに漂う匂いの下へ視線を向けると妙な事になっていた。


「起きたか。早くしないとメシが無くなるぞ」


鬼の声に飛び起き、そのままふらつき背後に倒れる所を支えられ声がきた。


「しっかりしろ。長の示しがつかないだろうが。」


すいません、と呟き改めて視線を向ける。

目の前では子供達が1列に並び朝食を受け取っていた。


「・・・・・・」


列が無くなり、アンリは鍋の物を器にいれマーニャに近づく。


「はい、食べれるか?」


マーニャは器を受け取り、視線を移す。


「麦ですよね・・・?」

「オートミール風だ。ナッツ類と塩漬け肉で仕上げたから厳密には違うが。」

「はぁ、よく分からないですがいただきます。」


マーニャは見た事無い食べ物を少しだけ口にして飲み込み感想をこぼした。


「美味しい・・・。」


麦が塩漬け肉の出汁を吸い込み臭み消しに香辛料が使われている。これで昨日の2人の話が理解出来た。

これも、荷車の積荷も殆ど作り方が分からないが何より発想が違う。


改めてアンリに向き直り頭を下げ、


「我等に出来る事あればどんな事でも言いつけて下さい。必ずお役に立ちます。」

「うん。よろしく、何かあれば頼らせて貰うよ。後は俺を守ってくれ。」


マーニャが顔を上げると視線が合い胸を張るアンリと目が合う。


「俺戦えないから、頼むよ。」


またも理解出来ない事を言って離れていく。残されたマーニャの肩にサラが手を置き、


「気にするないつもの事だ。もし此処で使わない物があれば私の小屋へ持って来い。」


よく分からないがあれで普通なのだと思う事にした。



マーニャは新たな仕事に期待を抱き3人が小屋へ向かうのを見送った。

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