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鬼と人と約束と  作者: 敦人
三章 魔王会談
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交渉 ~ フェミナ① ~

アンリとフェミナのやり取りを離れた位置で見ていたファルモットは警戒を強めつつ対面に座るサムトとハングへ声をかけた。


「あの馬鹿、誰が相手でもああなのかよ・・・なぁ、ここにいたら危ねぇから王様達だけでも避難させられねぇか?」

「どこに?我々はここが森のどの辺りに位置するのかすら知らないんだぞ。」

「そういう事だ。今は荒れないよう祈っておく位しかやれる事は無いな。アンリ殿が関わるから無理だと思うが。」


3人が無言で俯いてからそれぞれの王を見るとリベルトは横の夜魔族から酌をされた杯を飲み干し気にするな、と手を振ると他の2人も同意の頷きを見せた。


「サムトよそれで良い。ここで逃げ出すような醜態を見せれば我々は魔族と道を断つことになる。それは国を思えば出来んことだ。」

「レア王は若いが肝が座っとるな。であれば我等も覚悟を決め行く末を見定めよう。」

「儂は美女に酌をして貰えるなら何でも良いがこちらからは事を荒らすでないぞ。」


再び杯を空にしたリベルトが胸を張るのに全員が苦笑した。







フェミナはカイネとサラが肉の取り合いをしているのを眺めながらアンリの考えが纏まるのを待っていた。

肉を渡す事でサラと席を交代してもらいアンリを攻撃圏内に収めた上で思うのはどのような考えを聞かせてくれるのかしら?という事だ。

フェミナは自身が選んだカンラムとこの地の戦力差を思いもし、まともにぶつかる事を選んだならその場で殺す事を決めていた。


武装帝国と呼ばれるカンラムは他国に比べて正規兵の規模も装備も大きく差があり、最近は気球を使った空からの攻撃と偵察を可能にしつつある国で、フェミナとしても手を焼く国力を有しているからだ。

更に国土の広さ故に侵略の際、戦線を薄くさせる事から東の森全軍を有したとしても勝利は不可能と言うのがフェミナの結論だった。


だからこそ警戒しているのはアンリの逃亡だ。

異常なレベルで転移魔術を習得しているこの人間は距離を詰める事が難しい。もしこの場で逃がす事があれば2度と会うこと無く逃げ切るだけの力があるのを知っているからこそ手が届く範囲で返事を待っていた。




ノイルと資料を纏め終えたアンリは伸びをしてからフェミナに視線を向け会釈を送り、


「待たせて済まないね。何しろ幾つも策があるから最終的に納得して貰えそうな結論を選ぶのに時間がかかってしまったよ。」

「強がりでは無いわね?」

「当然だ。では説明しようか。有り得ない話だが俺がカンラム攻略しちゃうぞ。って気分になったらこれを使う。」


アンリは横に置いておいた2つの袋を渡すと受け取り中を確認したフェミナは顔を顰めそして口を開く。


「大麻・・・こっちの袋はアヘンね。」

「正解。ソドムで商売を始めた時に知ったこれらを使う弁当屋から売人を紹介してもらい入手したものだ。

繁盛店だが行ったことは?」

「ないわ・・・薬に頼らなくてはならない程落ちぶれてないの。」


ハハハと笑い、


「これは失礼した。でもこれらは使い方によっては有用な兵器だよ。例えばカンラムが植民地として支配している地、そして穀物を育てている農業が盛んな地域にばらまいたらどうなるかわかるかな?」

「貴方・・・正気?」

「無論正気だとも。

これを行う理由は幾つもあるが期待出来るのは相手の労働力、生産力を低下させこちらは資金を得ることだ。通常の戦争で言うなら破壊工作に当たるかな。」


印をした地図を手渡し、


「年単位はかかる裏工作だがなかなかいい案だと思わないか?なにしろやりようによってはこれが戦争の始まりだとすら気づけない。」

「理解したわ。そして貴方は狂ってる。」

「残念だがまだこれを行う本質を理解していないと思うよ。

良いかフェミナさん?これは次の手を進めるための食料自給率を下げる為でしかない。

現実問題として中毒者による労働力低下。そして風評被害による購買力低下。

さぁ、貴女がカンラムの統治者としたらどうするかな?」


フェミナは数秒の思案をし、民が安心出来る食品の輸入。と答えようとしてから最悪に思い当たり鉄板が跳ねる程の勢いで机を叩いた。


「正気じゃないわ!これが戦いというの!?」

「憤りは理解するよ。そして事前に伝えた通り皆が引くと言った意味を理解したね。

俺は商人でこの状況を望む者だからカンラムに送る品を積極的に取り扱いそして麻薬を混ぜよう。

大麻は粉末にして香辛料に、アヘンは水溶性を活かして酒に混ぜるなり生鮮食品に注入すれば気付かれない。」


そして、と続け、


「正攻法ではないがこれが俺の戦い方だ。

誰にも気づかれずゆっくりと崩壊させ表に出ないから復讐される事も無い。勿論利益は上げ続けるから俺は嬉しい。」


広場内の皆が沈黙しているのに肩を竦めたアンリは溜息をこぼし項垂れる。


「こうなると思ったから言うのが嫌だったんだよ。

一応聞くけどまだ続ける?」

「・・・・・・これは貴方を魔王と認めるかのテストです。

現状ではカンラムは落ちないわ。」


頷いたアンリは頬を掻き同意した。


「そうだな。何しろ輸入品に含まれる麻薬は味が変わらないようにする為微量だから食べた位では依存性は発揮しないだろう。

だが疲れている者、そして精神が弱い者や鬱憤を募らせている者はきっと普段なら取らないような行動、例えば暴力行為や犯罪を起こすかもしれないね。」

「これらは国を混乱に貶める為・・・ね。」

「その通り。1度では微量でも続けたら?それが規則性も無く国の至る所で頻発したら治安はめちゃくちゃだろう。」


フェミナが手に持つ地図の王城を指差し、


「大事なのは王を殺すことではない。それでは別の者が玉座に着くだけで国は滅びないからな。

だから今の王様には治安を維持出来ない責任を取って粛清されてもらう必要がある。」


沈黙で先を促すフェミナに頷いたアンリはカイネに視線を合わせてから口を開いた。


「現状で利用しやすいのは教皇だろうな。

麻薬が蔓延り、ほっておけば他国にも影響が出る大国を諌める意味を説いて聖戦とでも銘打ち連合軍を募れば戦力差はひっくり返るだろう。ついでに魔族にも参加を募れば人間との確執を越えた出来事として歴史的な融和を結べるかもしれない。」

「そして黒幕の貴方は無傷で利益を得ると。」

「過程のみの利益だけだよ。

領土は求めないと1歩引いた姿勢が謙虚だろ?最もその後に台頭する者達をお客さんに更なる利益を得るつもりだがね。」


アンリは明らかに引いた全員を見渡し何か言いたげな雰囲気を手を前に出し制してから続ける。


「まぁ概ね説明は終わりかな。細かい調整は必要だろうが概要としての動きはこんなもんだ。

一応、前提で言っておくがこれは俺が殺される事があった際に報復したい人が楽出来るよう考えおいた策をこの場に落とし込んだもので実践する気は無いよ。

なにしろこの世界に住む皆は俺からすればお客さんだからこちらから手を出す事はないつもりだ。」


安堵の表情を浮かべるレア王達に手を振りフェミナに向き直ったアンリは首を傾げ、


「さぁ採点を頼む。細かい説明が必要なら答えるが?」

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