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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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幕間 ~眷族の儀式(仮)~

闇に包まれた部屋の中、卓上の灯りを頼りに鏡を見ていたサラは軋む音に振り返りベットに視線向けた。

寝返りをうち寝息をたて熟睡しているアンリに苦笑し改めて机に広げた物を見る。

2組の水着だ。

サイズを測り好みの物を持ってきたまではいいが似合っているのかの判断が出来ないでいた。


「こういうの着るの初めてだからわからんな。」


最悪、ラズかカイネに相談しようと思っていたが明日の出発に備え早めに休んでいるのか階下から音が聞こえない為に頼れる者がいない状況になっている。


「クソ、普段は馬鹿騒ぎしている癖に・・・。」


悪態をこぼしつつも1組の水着を身体にあてがい気分が高揚している自分に苦笑し思う。

長く生きているが、落ち着いてからは森から出ない生活を送っていた事もあり旅行に慣れていないと自覚している。

それが今年に入り既に3カ国に行き市場の観光も出来た。そして今回は初めての海旅行だから尚更楽しみで仕方ない為、今も準備が終わらないでいた。


「まぁ、明日アンリに決めてもらうか。」


サラは指輪に入れた物をチェックしてから1度伸びをしてベットまで歩み寄るとアンリの瞼に触れ眼球運動を確かめる。

指に伝わる動きがない事でノンレム睡眠とわかり、自身の人差し指の腹を歯で噛み切り、特性による治癒が始まる前にその雫をアンリの口に運び嚥下を確かめ頷く。


アンリが苦しそうに額に汗を浮かべ苦悶の表情で伸ばした手を掴み動きを止める。

一息付きこれから起こる事を思い俯くと同時にソレはきた。

寝室に苦しむ声が響き暴れ傷つかない様に優しく抱きしめたサラは小さくごめんな、と口し自傷行為を防ぐ為により身体を密着させた。

10分程で大人しくなり、寝息をたて始めたことに安堵の吐息を漏らしたサラはアンリの額に浮いた汗を拭い髪に手を当て撫でながら思う。


鬼が持つ力を加護として与える危険性をラズとカイネは警戒していた。

アンリが力を得る事ではなく壊れる事を。


鬼という超抜者の力を受け止められる程人間の肉体も精神も強靭出ない事は理解しているがそれでも続けるのは心配だからだ。


アンリは足りないものが多い。

攻撃する事も出来ず強者からすれば防御面も空気抵抗と変わらない程度に脆弱な身体をしている。

危険の多い森は城塞都市内でも荒事が絶えない地であり、人がいる最寄りの村は享楽と退廃の象徴と称されるソドム。何かの弾みで騒動に巻き込まれ命を落とす危険性が高い土地に生きる以上これは必要な事で正しい行動だと思う。


「約束したからな・・・何をしても守ってみせる。」


手を離し横になったサラは寝息をたてるアンリを抱き寄せ、


「でもこの事もいつか話さなきゃな。」


呟きにその時を想像すると怒るアンリの顔が浮かび、それは嫌だな。と思うが、もしかしたら気にしないで笑っていつもの日常を迎えるかもしれないと思い苦笑する。

今まで何度も先送りにしてきたが今日も結論は出ずまた今度考えよう。と決め瞼を閉じた。










外から聞こえる小鳥の声に早朝を感じたアンリはゆっくりと瞼を開いた。

見慣れた天井を眺め思考が覚醒する迄ゆっくりしながらやるべき事を考える。


先に休暇を取っていたギートやルークスの獣人組やリゼ、プラタとアキナ、イマルが引率していた虫人族達の報告によれば無人島はセイレーンを代表する海魔族の休憩所でもあるらしい。

ついでだから挨拶とマルナの船を襲わないよう交渉しなくては、と思い横で寝息をたてるサラに助言を求めようと身体を横にし動きを止めた。


目の前にはサラの寝顔がある。だが問題はその下で布地に包まれ柔らかく変形しつつも存在を誇示している胸だ。


見慣れたつもりだがやはり大きい・・・。


最近は外回りが多く朝食を作るなりノイルと共に各国で行う事業の障害になる貴族の懐柔や場合に寄っては記憶を奪い精査した上で悪事を露見させ告発作業など暗躍する事が多かったからゆっくりと観察するのは久しぶりの事だ。

落ち着け、と思い焦るなと1度呼吸を整える。


男の夢は大きい程良い。

そう夢とは目指す先であり願うものでもある。それに手を伸ばす事は間違いなのだろうか?


「俺は夢を追う姿勢を評価する。だからこそこれは間違いではない。」


言葉にしてから頷き、下から掬い挙げるように確保すると1度その重さを確かめ、そして優しく寄せてみる。


予想以上に重い・・・だが張りがあり、つきたての餅のように柔らかくただただ素晴らしい。


これを何と評するべきかと思い考えてから溜息を溢した。


「無念・・・まさかここで語彙力不足を痛感するとは。俺ではこの素晴らしい胸を形容するのに相応しい言葉を見付ける事が出来ないな・・・。

現代文の授業をもっとしっかり受けておけばこんな事にはならなかったのだろうか?」


だがここで悩んでいても仕方ないので次の検証に移行しようと腕を動かした時声が来た。


「んっ・・・何してるんだい?」


アンリは無言でサラに目を合わせたままゆっくりとしかし名残惜しそうに手を離す。


「悪い、起こしてしまったか・・・大事な確認中でね。」

「別に良いんだが何をしてたんだ?」

「ふむ、未来・・・その重さと尊さを再確認していた。」


ほう、と呟いだサラは自身の胸に手を当て思う。


アンリは嘘を言っていない。つまり真実だ。

であれば前に聞いた事と合わせるとここには真理が宿り、夢と希望と未来がある事になる。

これが異世界の常識なのだとしたらこの状況は不可視であり不確かな事柄を捉えた世界の知識を得ているのという事だろうか?


サラは真偽確認の為に追加の言葉を作る。


「ここには色々詰まっている。そういう事か?」

「あぁ、だからこそ大きく育つと考えている。」


身を起こしたアンリの背を眺めてから成程と頷く。

何故か納得してしまう言葉でありそして自身にそれが有ると言われた事に頬を緩めたサラはそれを隠す為に1度ベットに身を伏せ枕で顔を隠した。


「何してるんだ?娼館の姉さん方連れてきたら直ぐ出発だぞ。」

「あぁ、うん。わかった。先に降りててくれ。」

「二度寝と忘れ物の無いようにな。」


サラは階下に向かう足音を聞きながら1度頬を叩き気合いを入れ身体を起こすと机に広げた水着が目に入る。

数秒眺め、選んでもらうのを忘れていた事を思い出し再びベットに倒れ込んだ。

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