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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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事後処理 ~クラン公国~

玉座の間にてリベルトは徹夜明けの頭に手を当て胃薬を口に含み1つ呼吸をおいた。

城内は騒がしく、昨夜あった襲撃の後片付けと交わされた商談による文官達の動きが起きていた。

朝方に伝えた約束の時間が近付くに連れ部屋が緊張に包まれていくのを感じたリベルトは椅子を握る拳に力を込める。


待つ者達は想定外の客で、下手をすればこの場の全員が皆殺しになる力を有した怪物と奇人だ。

それを思い不安から視線を横にずらすと幼い娘リアラと目が合った。

体の弱い妻と共に万一を考え避難させたが玉座の隣が空席では示しがつかないと頑なに拒否し同行した愛娘だ。

場の緊張を感じているだろうがそれを感じさせない柔らかな微笑みがあり小さな頷きを返され覚悟を決める。


昨夜は先手からぶっ飛んだ行動を取られ空気に飲まれたが今回は大丈夫よ。

場はこちらが用意し徹夜で議論を交わし用意は出来ておる。これなら娘にいい所を見せ王としての振る舞いを学ばせる場になるかもしれんな。


確信に似た結論と共に視線に扉に向けると同時に扉近く衛兵から声が来た。


「来ました。招いてもよろしいですか?」


一瞬で静寂になった場を見渡し頷きゆっくりと扉が開いた。

扉を潜りゆっくりと歩み進める者達に全員の視線が集中し、それを見渡したアンリはふむ、と頷きリベルトとその横にいる少女に目を止めた。


「これは・・・予想外だな。まさかのロリコン王とは羨まけしからん。」


青筋を額に浮かべながら深呼吸するリベルトは叫びたくなるのを堪え出来るだけ威厳を保とうと咳払いをする。

アンリはそれに応える為に1度頷き、


「安心してくれ。俺は他人を性癖で否定する程浅慮ではない。

それに経済に於いて未来への投資は当たり前だ。貴方は恋愛にそれを用いてる、そうだね?」

「違うわっっ!!?」


我慢出来ずに立ち上がり叫ぶと娘が引いた顔で1歩後ずさりした。

その動作にショックを感じながら前に崩れ落ち項垂れると、そこにふむ、と声が届き、


「俺の解釈何か間違えていたかな?」

「ココ、真面目にやらねば後で説教よ。」


アンリは臣下達に支えられながら椅子に座り激励を受けているリベルトを眺めながらノイルに頷き思考を始めた。


今朝にも説教されたから己の間違いをしっかり認識出来たつもりだ。

そう、大事なのは王としての振る舞いだろう。

見た目は変えられないが昔見た映画やドラマを思い出し、高貴さと偉大さを表すためこの場で直ぐに対応出来る事に思い当たり改めて頷くと口にした。


「朕に任せるでおじゃる。」


ノイルのローキックがアンリの内腿に炸裂した。











東の森、野営地で負傷者の確認が終わり損害報告書をまとめていたラズとリノアは視線を南側に向ける。


「今頃は事後商談ですね。昨夜は暴れたと報告にありましたが上手く進むでしょうか?」

「ふふ、大丈夫ですよ。既に大筋合意をしている以上後は利権割合を定めるだけです。流石のアンリさんもちゃんとやるでしょう。」


そうですよね・・・と呟きリノアは遠慮がちに続ける。


「あの、この所アンリからサラ様に似た気配が増しているのは・・・?」

「あ~、やはり気づいてましたか。」

「はい。もしかして眷族化の儀式を行っているのでしょうか。」


困ったように眉を顰めたラズは首を横に振る。


「眷族化は互いの合意が無ければ成立しません。

あれはアンリさんを心配するサラさんが一方的に加護を与えていると見るべきでしょう。」

「ですが人間が鬼の血を取り入れ続ければ普通でいられなくなりませんか?あ、今も大概ですけど・・・。」

「まぁ、魔力量の増大と精神面での混濁はあると思いますが元からおかしいとしておきましょう。

それにカイネも気づいているので危険と判断すれば止めさせますよ。」


腑に落ちない顔のリノアに苦笑する。


鬼と人間ではあまりに懸け離れている。それを縮めようとしての行為と捉えているがアンリへの精神面、肉体面の負担は大きく危険も多い。

それらを理解している筈のサラが行っているのは過去に誰か失うような事がありそれを重ねての事だろう。

当人でない以上これは推測ですがそれ程大事なんですよね。とそこまで思い、席を立つ。


「さぁ、朝食にしましょう。盛り付けは私がやりますので調理は任せましたよ。」

「え?あ、はい。ラズ様も調理覚えたらどうですか?手先器用ですから向いてると思うのですが。」

「嫌です。私は食べる専門と決めているので。」


ラズは1度胸を張り、立ち上がったリノアの肩を押しながら簡易厨房へ向かった。








玉座に座るリベルトは文官達が商談の最終取り決めを行うのを眺めつつ歩み寄ってくる者を確認し嫌な汗を感じた。

急いでリアラに向き直り、


「今から来る人間に近付くと馬鹿が移るから離れてるんじゃぞ。」

「あの者は拡散型、もしくは伝播型のスキル保持者という事ですね。お父様も汚染されないように気を付けて下さいまし。」


スカート裾を摘んでの一礼に頭を撫でる事で応えたリベルトは改めて視線を前に戻した。

先程まで商談に参加していた筈だが、またふざけたのか昨夜話を交わした九尾につまみ出され部屋の隅で泣き真似をしていたのは見ていたが、いつの間にか隣に鬼を連れ数mの距離でこちらを眺めている。

唾を飲み込み視線を合わせると言葉が来た。


「娘だったんだな。誤解して済まない。少し話をいいだろうか?」

「・・・許す。」


ありがとうと一礼をしたアンリは手元に地図を転移させつつ歩みを進める。それにグレイグ達騎士団が警戒を示すがリベルトは手を翳す事で元の位置へ下がらせた。


「俺を警戒する必要はないんだが・・・まぁいいや。

東の森での軍事訓練を認めて欲しいって事だけどこの条件じゃ無理だ。何しろあの地は俺の商売の基盤でね。」

「対価の森近郊の砦までの領土では足りんか?」

「ハハ、治安維持に使っていた領土じゃないだろう。それに俺達と同盟を結んだ以上不要な砦の筈だが?」


ぬぅ、と唸り笑みを浮かべるアンリを見たリベルトは忌々しい気持ちを抑え頷く。

元より荒地で農耕も期待出来ず金脈となる地でもないのは事実。だが昨夜からの会議で土地を対価に人以上の戦力を有する魔族の戦力情報を得たいと思っていた為にどうするかと思考を走らせた。


「・・・では、共同訓練ならどうだ?」

「それなら・・・まぁ、良いかな。こちらが用意した土地で決められた演習なら構わないよ。多分。」


最後の言葉に不安を覚えるが頷き、確かめる為にも言質話取ったからなと伝える。

あぁ、と頷いたアンリは少し迷いながら頬を掻き、


「それなら一応、連絡役を兼ねた外交官となる人を用意してくれ。なるだけ武に長けた人が良い。

何しろ森の中は弱肉強食でね。弱い人間では対等の話が出来ないからな。」


リベルトは数秒悩み視線をグレイグに向けるとアテがあるのか頷きを返された。


「それで良い。人選が決まり次第追って連絡するが住居は用意してくれるのだろうな?」

「勿論。複数人が快適に過ごせる用意をしておくよ。」


頷くリベルトは平静を保ちつつも内心は小躍りしたくなる程喜んでいた。

外交官から得られる魔族の情報や情勢は今後の生命線になりうるもの。それを如何に多く得ようかを悩んだ末が軍事訓練を口実にした兵の派遣だったからだ。

それが思わぬ形で最深部に部下を置けることになり思わず破顔してしまう。


対するアンリも冷静を保ちつつ内心でガッツポーズを取っていた。

流奴を使った文明の加速化は妖狐族に与えた地で行う為に外交官を招こうと余程の事がない限り露見する事はないだろう。

そして今後の関係を考えるなら綿密に連携を取れる状況を作って置くことが最善だとも思う。

互いに異なる思惑を隠し笑顔で握手を交わしてからアンリは次の言葉を続ける。


「後は・・・スラグ王国の兵がこの国を通過しようとしたら会談の場を設けてくれないか?話し合いで済むならそれに越した事はないと思ってるんだ。」


1歩離れたアンリの顔に浮かぶ笑みが先程と違い冷酷さを秘めている事に気づき冷や汗を背中に感じたリベルトは身を震わせた。


何を考えているのかわからぬ男よ・・・。


思いと寒気を振り払うように頷き、


「領土の通過条件に打診してみよう。可能かは断言出来ぬが良いな?」

「うん。手間をかけて悪いね。

ちょうどノイル達の商談も纏まったようだし今日は帰るから何かあれば通信魔具で連絡してくれ。

出来れば昨日借りた部屋を貸してくれるなら転移魔術を描き残しておきたいんだか・・・。」

「ならばあの部屋をそちらからの外交官用にする。駐屯せずとも必要な事として認めよう。」


再びありがとう、と深く一礼をしたアンリはサラを連れ背を向け仲間達の下へ向かった。

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