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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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散策 ~クラン公国~

クラン公国城下町は王城を中心に東西に区画が別れた作りをしている。

それぞれに明確な区分はないがシーズ大森林からの行商人が集いやすい東側に多くの店が並び賑わいをみせていた。



アンリは周囲から音がそこかしこから届く東側の区画にある大通りをサラと歩いていた。

一般的な服に着替えてはいるものの一際美しいサラは通りすぎる者が振り向き注目を集めている。


「さっきから見られてるが私の姿おかしいか?」

「いや?俺もさっきからすれ違う人達に妙な目で見られたりしてるからそういう国民性なんだろう。」


そうか、と納得したサラは安心したように笑うと改めてアンリの手を握り先を示す。


「こういう経験は無いから楽しいな。次はあの店に行こう。」

「アクセサリー屋か・・・ラズのお土産は買ったからサラにはケモミミカチューシャを見繕ってやろう。何が良い?」

「・・・ならカチューシャ以外を見ようか。」


泣き真似を始めたアンリを引き摺るように店に入った。





店前に立てられた登りや呼び込みの声に誘われ店を転々と移動しながら買い物を済ませた2人は噴水がある広場のベンチに座り休憩に入る。

サラは膝の上に出店で買った魚のフライを乗せ1つ口に運び顔を顰めた。


「不味い・・・。」

「そりゃそうだろ。市場にあった魚は泥抜きも甘く、野締めというかあがりだったじゃないか。」


あがりの意味がわからないのか首を傾げたサラは促すように視線を合わせる。


「自然死だよ。締める際氷を使えば幾分マシなのに・・・簡単に言えば下処理が雑だって事だ。時間も経ってるから臭いを誤魔化す為にビネガーを振ってある。

こんな物、食べれるけど美味いはずがない。」


ふむ、と頷き両手でアンリの頬を摘み左右に引っ張ったサラは、


「そういう事は先に言ってくれ。」

「痛い痛い、だって店前で商品批判とか頭おかしい人間のやる事だろう?だいたい俺も商人だからそれは出来ないって。」

「それなら仕方ないな・・・。だが私はこの国の調理を信用出来なくなったから夕飯はアンリが作ってくれ。」


手を離し良いな?と視線を向けて来たので頷き胸を張る。


「そのつもりで材料は買ってあるから帰ったら宿屋の厨房借りられるか聞いてみるよ。」

「肉だな?そうなんだろ?信じてるからな?」

「当然だ。今回は面白い付け合せを用意するから期待しててくれ。」


目を輝かせたサラは頷き、調理手順を確認しながら材料を指輪にしまうアンリを見てから噴水に目を移す。

遠巻きにこちらを見る人はいても周囲に近寄る人がいない事を確認してかねてからの思いを口にした。


「レアや、リックから国に誘われたと聞いたんだが・・・。」


言葉尻が小さくなる事に連れ不安を増したサラは言わなきゃ良かったな。と思いつつ意を決して続きを口にする。


「お前が人の暮らしを望むなら私はそれを応援したい。王に付かせてなんだがあの地が嫌なら言ってくれ。」

「・・・良くわからないな。確かに少し前に両国から重役として迎えたい意向は聞いている。ついでに言うなら西の渓谷に住む魔王からも代理人を通じて同様の話が来た。

だがそれらは俺が移動する理由にはならないよ。」


アンリは指を1つ立て続ける。


「まずは商業的な話だ。

仲間も増え、ようやく軌道に乗り始めた今を捨てるのはあまりに意味がない。

そしてスキルを使い失敗しない商売を広げる以上敵が多い俺には抗う術は転移しかない。

何より金を得る者は見合う暴が無ければただ奪われ利用されるだけの存在となるのがこの世界だ。

少なくとも両国に行けば迷惑をかけ続ける事になり限界がくれば全ての責任を負わされ処刑されるだろう。」


指をもう1つ立て、


「気恥しいが次は感情からの話だ。

この世界に来た俺を救い助けてくれるサラに恩を返したい。俺ができる事はあまりに少なく無意味な事が多いだろうと思うがそれが今の目標だ。

良いか?俺がこの先どれだけの富を得ようと偉業を成したとしても始まりはサラが居たからこそだ。それを忘れられるジョブではないし軽視出来る人間でも無い。

だからサラが不要と思ったなら殺してくれ。それでようやく帳尻が合うってもんだ。実に商人らしい最後だろ。」


ハハハ、と笑うアンリと対照に俯いたサラは言葉を反芻しながら自身の浅はかさを呪い大きく息を吐く。

気にすることなくアンリは頷き、


「他にも理由はあるが納得してもらうにはこれで足りるか?足りたなら褒めてくれ。俺は褒められると調子に乗る人間だ。」


催促をするアンリを見て頷いたサラは気持ちを切り替えなければと拍手をして口を開く。


「悪かった。今の事は忘れてくれ。」

「それは無理だが口外しないよ。負担になってるのは俺の方だからね。

さて、この場に居たらヤバイとスキルが警告し始めたからそろそろ移動しよう。」


言葉に周囲を見渡したサラは遠くから聞こえる金属の靴を鳴らす足音に気付く。


「警備隊か・・・。近いな。」


頷いたアンリに手を引かれ広場を離れた。










騎士団を率い噴水前で歩み止めたグレイグは周囲を見渡し首の傾げる。


「僅かだが妙な魔力を感じた気がしたが・・・。」

「この辺りは旅人やギルド関係者が多くいますから特定は難しいですね。一応この辺りの者を確認しますか?」

「そこまでしなくても・・・この場で揉め事も無さそうですから問題ないのでは?」


部下達の声に思案するが念を入れるべきと判断し、


「住民を不安がらせる訳には行かないからこの場での調査は止めとこう。

だが入国管理の担当者に帳簿を用意させてくれ。出来るだけ細かい情報を知りたい。」


敬礼と共に列を離れた部下に会釈を返し全員を見渡す。


「東の森へ兵力の大半を割いている現状では城下町全域を警備し切れないのはわかっているな?

だからこそどんな些細な事でも構わん。気付く事があれば直ぐに伝えてくれ。」

「関係無いかも知れませんが・・・賭場の方向から来た者が女2人組が揉めていたと口にしていましたが?」

「それは・・・賭けに負けたのだろう。よくある事だ。一応店に迷惑をかけていないか見て来てくれ。」


1人が駆け足で賭場へ向かうの見送り、他に報告が無いことを確かめ巡回を再開した。

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