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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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VSクラン公国 ⑤

剣戟と魔術の音、そして怒声が森を震わせる中、クラン公国の軍は木々に糸を張り巡らされた地で戦闘を行っていた。


「なんで魔族が協力しあってんだよ!?」

「知るか!無駄口叩く暇があるなら弓を番えろ!」

「前線が崩壊し始めたぞ後続を回せ!」


混乱する軍を樹上から眺めるリゼは笑みを作り声を下に送る。


「遠距離攻撃を警戒してゆっくり前進し続けろ。無理はするな、どのみち勝ちは決まっている。」


獣人族を筆頭に雄叫びが上がり武器を構え先に進んでいく。


「想定外の始まりではあったが作戦を盗むだけでこうも楽になるか・・・。エリザよ。ラズに愛想付かせたら私の下へ来るが良い。重宝するぞ?」

「有難い言葉だが断る。ラズ様は些か勝手だが憧れだ。」

「ハハ、残念だが仕方ない。断られた腹いせに私も暴れてくるか。」


地に降り立ったリゼは伸びを1つしてから気軽な足取りで歩を進めると振り返ったエリザの肩を叩き、


「ルークス達が煙幕を使い突撃をかける頃合だ。プラタも乗じて暴れるとの事だからこの一撃で戦意を無くさせたいものだな。」

「・・・やりすぎるとアンリの交渉に響くだろうしな。私も補佐に回るよ。」


それは頼もしい、と頷き2人並び最前線に進んだ。









木を縫うように移動する2人は接近と共に剣を交わす。

高い音が連続で響き後退しながら距離を取るラズを追うファルモットは視界から得た情報に苦味を感じ前方に剣を振った。

木々に張られた糸を切り裂き踏み込もうとした地に矢が刺さる。


「あっぶねぇな!」

「良く見えていますね。いえ・・・感知しているのでしたね。」


耳に楽しげな笑い声が届くのを無視しつつ現状を整理する。


一騎打ちに持ち込めたのはラッキーだった。最初にやられた精霊魔術は特性起動に僅かな溜めが必要なのか使う素振りがねぇ。

相手のスキルを知れたのも優位だろう。物質生成系は感覚系や肉体強化系に比べ発動がわかりやすく奇を衒う事に向くタイプでも無い。

だが、


「クソ、使いこなしてやがる・・・。」


言葉と同時に踏み込みラズとの距離を詰める。


遠距離戦では確実に死ぬだろう。何しろ身を隠されたら探知出来ない上に弓の名手と名高いエルフ族だ。勝てる道理がねぇ。

全身が粟立つ感覚から格上の相手だとも認識している。それでも、と思い踏みしめた地を蹴り何度目かの剣を交わした。


「負けれねぇんだよっ!!」


右手の剣を横薙に振るい左手で氷結魔術式を起動させ放つ。


ファルモットは避けられるのも構わずある動きをイメージする。昨日戦ったルークスと名乗る大柄の人狼の戦い方だ。

こちらの攻撃を意に返す事なく大剣を振るう姿は遠心力を利用し木々を薙ぎ倒し剣による受けも防御魔術式も許さないものだった。

アレを完全に真似するのは無理だと思う。筋力が足りず、武器も衝撃に耐えきれず、己のスキルは肉体強化系では無いからだ。


それでも足りぬものを補おうと柄を逆手にし肘あてで剣の背を押せるよう持ち替え身を回す。

乱立する木々を避け相手の攻撃にも対応する為にスキル[共感覚]を駆使し全方位を感知、身を回す合間を埋める為に左手で魔術を発動させながら加速した。



ラズはファルモットの攻撃に急場での拙さとそれを上回る覚悟を見て表情を戻す。


持ち手を変えた事により剣による攻撃範囲は狭まるが遠心力が増し受けきる事は難しいですね。大きく距離を取り疲れるのを待っても良いがどうしましょうか・・・。


回避をしながら思案を終えたラズは相手の覚悟に応える事にした。

自分は魔族では数える程しかいないジョブ持ちで狩人だ。気配を絶ちまた伺う事に長け、数多の経験から対応策は備えている。


小さく頷いたラズは短刀を回転を妨害するタイミングで突き、繰り出される魔術を防御魔術式を展開させながら身を躱す。狩りではなく久しぶりの戦いに再び微笑んだラズは相手に敬意を評し戦闘を進めていく。








クラン公国内、王城を囲む壁を植え込みの木に隠れ見上げたロイズは片手にパンフレットを持ち城兵の動きと人数を観察していた。


「思ったより兵数が少ないがどういう事だ?」


1日2日で全てがわかる筈も無いので見える範囲の人数をパンフレットに書き込み、移動をしながら目測で城壁の高さと見える窓から待機場と仮定し記しておく。

歩測で全体の距離を図り推測時間を割り出した所で木陰に座り城壁を眺めながら影に向かい声を作る。


「侵入経路はありそうか?」


影の1部が盛り上がり片膝を着いた部下が頭を下げ、


「城壁に警報系魔術式が仕込まれています。おそらく正門以外の全てが範囲でしょう。」

「・・・用水路はどうだ?」

「確認しましたが同様です。魔王様に頼みハーピー族を連れて来れるなら空からの侵入も試みれますが?」


首を横に振ったロイズはパンフレットを開き城壁周りを確認しながら唸り声をあげる。


「駄目だ目立ち過ぎる。それに今日位アンリさんにはゆっくりして欲しい。これは現在森で戦っているであろうラズ様とルークス様にも頼まれた事だ。」

「そうでしたか・・・わかりました。出来うる限りの手を尽くすよう仲間達にも伝えてきます。」


再び影と同化した部下に頷いたロイズは城壁を見上げ侵入経路の探索に動き出した。






アンリは姿見の前でターンをし全体像を確認すると頷き振り返る。


「何処から見てもクラン国民と自画自賛したいのだがどうかな?」


一般的な服に着替え終えた3人は値踏みするように頭から足先まで視線を動かし頷く。


「お前の記憶で見たがピッタリの言葉はあれだ、馬子にも衣装、だったか?似合ってるな。」

「ココ、これなら頭がイカレてるとはスグにはバレまいよ。」

「そうか?私は普段のスーツとか工事衣装を見慣れてる為か仮装にしか見えん。」


床に崩れ落ちたアンリは床を手で叩きながら悔しさを表し、


「お前ら・・・俺を馬鹿にしないと会話出来ないのか?普通ならそれでいいだろう!?」


サラはブレスレット型の変化用魔具を付け角が消えるのを確かめ口を開く。


「気にするな。偵察がてらとはいえせっかくのデートだろう?夕刻前には戻るなら急がないとな。」

「ココ、2人の邪魔はせんように妾はカイネと行動するとしよう。」


カイネも頷き、懐にしまったアンリから預かった金貨の詰まった皮袋を確かめると晴れやかな笑顔で親指を立てる。


「とりあえず賭場に行って増やしてくるから心配するな。仲間達が作ってくれた時間であり神の思し召しだ。有意義に楽しもうじゃないか。」


笑うカイネはノイルの肩を叩き並んで扉に向かい振り返る。


「戸締まりはしっかりな。久しぶりの余暇を楽しめよ。」


2人に手を振ったアンリは衣服を叩いて立ち上がる。


「じゃあ俺達も行くか。偵察やラズのお土産の前に市場で食材や香辛料見たいんだけど良いか?」

「あぁ、好きに行けば良い。気に入る物があるなら私も嬉しいからな。」


戸締まりをし手を繋いだ2人も街へ向かった。

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