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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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VSクラン公国 ④

クラン公国、城内の繁華街から1本道を外れた宿屋の最上階にある部屋の窓を開けたノイルは、昼前とあり風に乗り届く大通りの賑わいを聞いていた。


「転移魔術式を描いた荷物を宿屋に送り付けるとは大胆よの。」

「楽だろ?俺の名前を使うとバレると思ってカイネに教会経由でギルドに依頼してもらったんだ。おかげで潜入成功だ。」


Vサインで笑うアンリに目を細め頷く。


「主は色々考えるの。良い使い手になる素質があるわ。」

「俺はやれる事が少ないからな。少ない手札を活かす方法は常に考えてるよ。」


ココ、と笑い再び外に視線を向けると背にアンリの声が届く。


「しかしいい国だ。活気があり、店も充実している。ロイズ達が戻るのは夕方だから後で散策してこようかな。」

「ココ、程々にな。確かラズから土産を頼まれておるのだったかえ?」

「うん、似合いそうな髪飾りにしようと思う。」


机でサラと共に備え付けられたパズルに興じるカイネは視線を向け1つ手に取ると口を開いた。


「フランの分も買っておけよ。気に入らなかったら売るから高価な物がいい。」

「うーん、聞きたくなかった本音だ。聖職者というか人としてどうなのよ?」

「何も問題ない、これは救いだ。

聖書にも天の国へ富を貯めろとあるだろう。

お前の先を心配する敬虔な信仰心が私達の為に金を使わせようという心遣いに至っただけだ。

わかったらその思いを汲み取るべきじゃないか?」


期待の眼差しを向けるカイネにアンリは首を横に振ると窓際のノイルの横に立った。


「この世界の教義に不安を覚えるのは俺だけだろうか?」

「解釈の違いよの。残念な子を気にするでないわ。」

「何を意味のわからんことを・・・永く信仰を持つ私が間違っている筈がない。そうだろう?」


全員が無言で視線を逸らし、アンリは部屋に備え付けられた街のパンフレットで安そうな店を探し始めた。








小川に近い森の中ルークス、リゼ、エリザは地図を眺めつつ侵攻ルートと迎撃準備の確認をしていた。

駒を置き地形や種族の得意な地を割り振りつつ片目を閉じスキルを発動させていたエリザは口を開いた。


「サラ様達は無事移動出来たようだ。予定通りなら今日か明日に決着か。」

「千里眼・・・良いスキルだな。私は応用が効かぬスキル故羨ましいよ。」


腕を組み1つの手で駒を遊びつつリゼは続ける。


「ルークスも戦闘位しか使い道のないスキル故そうは思わんか?」

「まぁな、率いるものとしては足りん事が多いとは思っているがお前程ではない。」

「私はリゼのスキルを知らないからなんとも言えんな。」


言葉に苦笑したリゼはスキル[連撃]を発動し駒を指で弾くと宙に舞いながら破壊された。


「スキルを見せてもらっている礼だな。

発動中のみ触れた物に腕の数だけ同程度の攻撃を加えるものだ。攻撃一辺倒の笑えるスキルだと思ってくれ。」

「・・・触れた物だけ?」

「あぁ、武器も飛び道具による攻撃も駄目だ。殴り合いでしか使えない約立たずなスキルだ。」


エリザは自嘲気味に笑うリゼに会釈を返し、


「情報感謝する。

しかし近接戦闘においては無類の強さを誇る土蜘蛛にそのスキル・・・貴女が長である事は必然ですね。」

「まぁ迷宮内なら閉所故使い道もあるがな・・・。長といえばラズはどこにいった?」

「ラズ様はその、言葉を選ぶなら戦いを楽しみにし過ぎてトランス状態だったので・・・。」


エリザがラズと別れた方向に視線を向けた時轟音と共に木々が倒れる音が届いた。


「「・・・・・・。」」


2人は無言でエリザと同じ方向に視線を動かしてから地図上の侵攻ルートに視線を戻し確認する。

周囲の部下達が騒がしくなり始めた頃に再び木々が倒れる音が響いた。


「あの狂人勝手に始めたのか!?」

「エルフ族でしっかり抑えてないのか!」

「そう言われてもラズ様を抑えるとか私達には無理だから・・・。」

「「諦めんなよ!!!」」


2人の叱責を受けたエリザは身を竦めてから立ち上がり全員で音の方向へ駆け出した。








隊の先頭にいたファルモットは眼前の木々が倒れるより早く剣を抜き飛来した矢を右に弾いた。

一撃で剣が砕け腕に痺れが走るが気にすることもせず前方を睨みつける。

視線の先にある木々が倒れ声が届いた。


「フフ、アハッハハハハハ。良い、良いですねぇ。その足掻き、私昂って仕方ありません。」

「今のはシルフの精霊魔術か?姿が見えねぇがエルフ族ってのは隠れてばかりの臆病者だな。」


ファルモットは僅かでも情報を得ようと挑発しながら寒気を感じていた。

前方から声が聞こえるがスキルは相手の居場所を特定出来ていないからだ。


クソ、完全に自然に溶け込んでやがる・・・わからねぇのは相手の技量に俺が追いついてねぇって事か。


「姿位見せてくれても良いんじゃねえか?会話する時の基本だぜ。」

「これは失礼しました。礼節を弁えていない方達と決めつけてお恥ずかしい限りです。」


ファルモット達の視界の先に金髪のエルフが一礼をしているのが見えた。

身を起こす動きで弓を絞り狙いを定めたラズは微笑み、


「エルフ族を纏めているラズと言います。アンリさんに貴方達の接待を頼まれている者でもありますのでどうぞよろしくお願い致します。」


再び特性を発動させ矢を放った。






ファルモットは砕けた剣に魔力を込め矢に投じ、同時に指輪から取り出した追加の剣にも魔力を込め横薙に振るうと快音が響き矢を弾く。

全身に緊張から吹き出た汗が風の奔流で冷えるのを感じつつ荒い息を整え、楽しそうに笑うラズに1歩踏みだし背に回した手で部下達へ迂回して先に進むサインを送る。

重い空気が背に伝わり、留めてみせる決意を証明する為に続く1歩目から全力で距離を詰めた。



射られる矢を弾き距離を詰めるファルモットは容易に撤退出来ない地での明らかな待ち伏せと昨日の報告にあがらなかった化物が現れた事から任務の失敗を明確に感じていた。

それでも祖国から追放された自分を拾ってくれた団長の為に、不要とされた自分に価値を与えてくれたあの人の期待に応える為に、と覚悟を決めラズへ肉薄した。



ラズは軍が2つの隊に別れ自分を避けるように前進を進めた事に悲しみを感じていた。

先へ進むなら土蜘蛛族が作り上げた狩場があり、より多くの命が見えない所で散ってしまうと思うと目尻に僅かな涙を湛える。

迫るファルモットに矢を射りながら思うようにはいかないものです、と思い口を開く。


「残念です・・・。もっと大勢に相手して欲しかったのですが。」

「ハッ、仕方ねぇだろう。上司を差し置いて美女へアプローチはさせねえよ!」


ラズは1歩後退し振るわれた剣に短刀を合わせ微笑む。


「そのような言い方照れてしまいますね。

ではお相手お願い致しますがどうか果てないように気を付けて下さい。」


残忍な笑みを浮かべるラズと決意を秘めたファルモットの戦いが始まった。

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