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鬼と人と約束と  作者: 敦人
一章 獣人族の侵攻
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教会

アンリとサラは扉を締め近くの椅子に座り目の前でカードを片手に繰り広げられている熱戦に視線向けた。

恐らくポーカーの様なルールだと思うが先程の子供達を思い出すと確信はないから今は終わるまで静観する事にした。




カイネは手札を見て内心歓喜していた。

ついてると思う、同時にまだいけるとも。

5枚の手札は3枚が揃い後2枚揃うならと。


1度の交換でいけるか・・・悩む所だが希望が現れる。

フランの捨て札に自分の望みがあり直ぐにでもすり替えをしたい気持ちを抑える。


目の前の2人は甘くない。


1人はこの手の賭を共にやっている為こちらの考えを深く理解している可能性がある。故に不用意な行動をすれば必ず気付く筈だ。

もう1人は狩人だ。自然で生活をしてるだけあり勘と注意力が危険だと判断し動く事が出来ない。



躊躇うカイネの思考に天啓が降りる。

神は仰っていた。


ー神は見えざる所で報いたもうー


素晴らしい教えだ。

我が神はイカサマ推奨なのだ。

神の使徒としてその言葉を体現せねばならない、だからやる。

2人の注意を逸らすため、最適な一手を布石として勝負に出た。


「アンリ。悪いがワインを取ってくれないか?祭壇の上にある瓶だ。」


動く音が聞こえ2人の注意が逸れたのが分かる。見知らぬ男が近くを通るのだから意識せずとも視線は動いた。


その僅かな隙をすり替えに使う。焦る気持ちを自制しつつ同時に間に合うのかと葛藤を鎮める。普段通りに札を捨て同時に希望の札を拾い山札に触れる、だが山札を捲らずそのまま手を戻す。

手札を見れば3枚が揃い2枚も揃っている。フルハウスだ。

負けはないと確信しコインを上乗せした。


「良いのですか?」


その声に頷きつつワインを受け取り前祝いのつもりで口に含む。


場が進みフランは降りた。ならばと更にコインを上乗せし視線を交わす。


「払えないとか言うなよ?」


頷きが見えカイネはニヤリと笑い札を見せる。フルハウスだ。


相手の頭が下がり数秒の沈黙そして、見せられた札はフォーカードだった。


「私の勝ちですね。」

「は?」


沈黙があり再度手札を見る。そして大事な事を伝えた。


「待て、私はイカサマをしたやり直しだ。」

「それ。見破った側が言うことでは?」

「・・・駄目か?」

「もちろん駄目です」


カイネは息を吐き横にいる男に視線を向ける。言わなければならない事があるからだ。


「すまん、流奴用にと教会から支給されたお前の支度金全て無くなった。」


数秒の沈黙があり、


「何してんだアンタ!?」


カイネは立ち上がりアンリの肩に手を乗せる。


「私は全力だった。悔いはない、だからそれ以上責めるな。これが神が望まれた運命なのだから。」


アンリはその場に崩れ落ちた・・・。



カードと瓶を片付けしてた3人がアンリの元に戻ってくる。


「さて、終わった事だし自己紹介をしとこうか。」


崩れ落ちたままのアンリを見下ろし、


「邪魔だから祈りは祭壇前でやりな、そこは通路だよ。」


シスターに天罰を落とすよう神に祈りたくなるのを抑え立ち上がる。


それを見て左の白の法衣を着た女性が頭を下げ手を合わせる。


「フランと呼んで下さい。そして御愁傷様です。」


右の金髪が美しい女性が肩に手を乗せ、


「私はラズと呼んで下さい。種族はエルフ、ジョブは狩人です。お見知りおきを。そして・・・御愁傷様です。」


2人の言葉を聞き救いがない事を悟る。


「よし。紹介も終わったし。ラズ、今の金で酒と食料買って来いよ、調理はコイツがやるから。」


いつの間にか近くに来ていたサラも合わさり4人が頭を下げ、


「アンリ(さん)ご馳走様です!!」


足から力が抜け今度は椅子に座り込んだ・・・。





アンリは立ち直るのに時間がかかり、今日は泊めてもらう事になった。


日が沈み他愛のない話で食事が進む。

鬼とエルフの飲み比べに巻き込まれないよう避難する為祭壇前の椅子に座ると目の前の扉が開きカイネが来る。


「まだ怒ってるのか?負けを認めれないのは良くないぞ。」


いや、と首を振り、


「もともと俺のお金じゃないから大丈夫だ。」

「理解力あるな。諦めるのが早くて助かるよ。」


その言葉に怒りが浮かぶが深呼吸を1つ、


「何か用があるのか?」

「あぁ、サラの所に居るなら安全だろうしここで店をやらないか?情報収集も出来るだろ?」


食事中にここに残る事を伝えた後色々考えてくれたのだと思う。


カイネは床に地図を広げ見せてくる。


「ここがソドムだ。街道を挟み東西に別れた森の東がお前の住む森だ。間違っても西には行くなよ。」

「間違わないけど何で?」

「西の森には2人の魔族の王がいる。出て来る事は少ないが危険過ぎて普通の人間は近寄らないからだ。」


成程と思うと同時に王が居るのかと納得する。


「東の森には居ないのか?」

「かなり前だがサラが殺したから不在だな。実質アイツが王だが本人が統治する気ないから今は無法地帯だ。」


笑って酒を飲んでる姿しか見てないので実感がないがやはり強いのか・・・。


続けるぞと言われ、視線を地図に戻す。


「で、街道を渡り大森林を抜けると南北両方に人間の国がある。」


南側の大陸の端にある大きい国を指し、


「これが武装帝国カンラムだ。周辺国家にも影響力を持っている。北側に同じ様に影響力があるのが魔道国家ルフラだ。」


森を過ぎ反対の大きい国を指す、


「大陸ではこの2つが最大の国だな。南北が交わるここに居れば情報は事欠かない筈だ。」


必要な情報はカイネが持ってるとは言えなかったので別の大陸を指し、


「ここは?」

「そこにも同規模の国があるがここに近寄る事なんかないから気にしなくていい。」


そっかと頷き帰還の方法を教える気はないと理解した。

そして理由は分からないが俺を利用しようとしているのは感じる・・・。


「ならここで商売するにはどうしたらいい?」


カイネから書類を手渡される。


「揃えといたから好きに始めればいいさ。場所はここの前で登録しといた。礼は布施として売上の5%にしといてやるよ。」

「金とるのか・・・?」

「信仰の証と思いな。金で纏まるならそれが1番だろ?」

「悪徳だな。本当に聖職者か?」

「信仰はそれぞれさ。代わりに色々助けてやるから頷いときな。」

「助けてくれなかったら返金しろよ。」

「分かったよ。お前が問題を起こさなきゃ良いだけだ。頑張れ。」


キレそうになったが深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


「なら商品を作らなきゃならないか・・・。」

「飲食店で良いだろ?お前の作る物はどれもこの世界には無いものだ。売れるぞ。」

「駄目だ。味だけで商売するには俺の技術では未熟過ぎる。目処はあるから明日にでも市場調査をして決めるよ。」

「そうか、だがお前が思う程作った物は悪くないと言っておこう。お前の世界の水準は分からないがな。」

「もっと精進するよ。やる事は多いから早めに行動しなきゃな。」


作る物はある程度決まっている。後は作れるか、そして売れるか?の2つだがやってみなくては分からない。

市場から離れた場所でやるからには集客方法も考えなきゃならないと思いつつ立ち上がりカイネと共に扉を開ける。部屋の中には酒に潰れたフランとラズの前で飲んでるサラがいた。


「おっ戻ったか、まだ飲むぞ。潰れるまで付き合ってくれよ?」


覚悟を決めて鬼に挑んだのだった・・・。

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