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騎士王

 地上に向かった慶司達はその途中で爆発音を聞く。自分たちが向かっているのとは別の巣穴の箇所から響いてきた。


「この爆発は、ソアラ」

「まっかせなさーい!」


 普段は調子にのってフワフワとしているソアラだが阿吽の呼吸で飛び出していった。


 精霊No1のスピードは伊達ではないし、ここぞと云う時には実は頼りになるという天邪鬼なだけの困り者な印象で彼女は見られる。だが実際に数秒で現地へ到着し様子を観察してこれる性能も凄いのだが、本当は頭が良すぎ、契約者もいなく寂しくて普段は不作戯ふざけているだけであって、慶司との以心伝心ぶりは群を抜く。


 地上に飛び出したソアラは状況を確認するために縦横無尽に飛び回る。やっとできた契約者が自分だけの者ではないのはちょっと寂しいが、その分皆と仲良く過ごせて彼女は最高に幸せである。だから彼女は自分にできる事は全力で慶司の役に立つ事なら更に気合を入れてと移動した。


「なんか人が多いわね」


 飛び回りながらソアラはそう思った、慶司達が突入した中心部に近い穴より外側に存在する巣穴に軍隊らしき一団待機している場所が数箇所。さらに一箇所だけ更に大規模な軍隊が駐留していた。


 この巣穴を見つけたのは精霊の一人であって冒険者組合(ギルド)からの依頼では無かった。一応必要経費分は牙を取ってあるので、慶司は後日、この国の首都へ赴いて回収してしまえばいいと考えていた。組合(ギルド)からの報告も無く竜族経由でもこの巣穴の情報は無かったので手付かずの未発見の巣だと思い込んでいたのだ。なので、まさか国が軍を出してウィルソルカンポの対処をしようとしているとは思わなかった。


 下手をすれば国に被害を及ぼすような愚策となりかねない。竜の支配地域ではなくてもマリシェル達はこの大陸に限っては魔物、魔獣であれば手を貸すと国交の無い国に対しても通告しているのである。常識で考えれば力を借りれば良いのだがプライドの問題だろうか、この国の王は別の判断を下していた。だが非常に危険な考えである。


 普段から巡回している竜が魔物、そしてこのような危険な種を殆ど退治しているが、竜の支配する土地でさえウィルソルカンポの大群となれば町が潰れる事がある。それ程の規模の大群が噴出す可能性があるのに、どうやら巣の本当の規模も確認せずに爆破に踏み切ったように見受けられる。でなければ慶司達の目指している出口を封鎖もしくは爆破していない説明がつかない。小規模な巣であれば爆破による封鎖で時間を持たして竜の助力を請うという手段が考えられるのだが、それなら連絡もある筈である、そして奇妙な事に一箇所だけ爆破しないで待機している軍団もあったのも気になる。


 とにかく判る事だけを慶司に報告しようとソアラは慶司へと呼びかけた。これは自分の判断できる事ではないし、状況を判断し、決断を下すのは主である慶司の役目だ。


(なんだか軍隊が出てきてる、数箇所の巣穴の出口を一斉に爆破したみたい)

(竜族に連絡は無かったが……遅延処理かな)

(ううん違うみたい、遅延処理にしては兵士の数が多いし、一箇所だけ爆破しないで他より多い人数が待機してるっぽい)


 何を考えているのだろうかと慶司も流石に想像がつかない。

 だが既にクイーンも処分しているのであり、そのまま地上に出ずに帰還しても問題は無い。だが軍隊が見す見す滅ぶのを見過ごすのも若干気が引ける。自分達の退路はすでに氷で塞ぎ地上に出てからの処理予定だった巣穴の穴を塞ぐ処理をしてくれるのは良いが全部を同時にしないと意味も無く残った巣穴から必然的に生き残りのウィルソルカンポや他の魔蟲が溢れ出すだろう。


「何を考えているか判らないけど、助けに行こうか」

「ま、そうなるよな」


 慶司の軽口は人の為になるとよく出てくる、フレアは同じように軽口で応じた。


「仕方ありませんわ」


 続くロミーも不本意ではあるがという様子を装っているが、フレアとの掛け合い漫才は毎回の事。フレアが先に同意したからちょっと捻くれているだけだ。


「で、どうすんだ」

「うーん」

「ノープランか、いっそ俺たちでもう一回巣の中を掃除してもいいんじゃねえか」

「その間に私が他の出口も埋めちゃうのだ?」

「その案は採用できそうですね」


 ぶっきら棒な言い回しだがやる気を見せてくれるエクレア。既にやる気十分のノルン。そして冷静に判断をしてくるシルフィ。心強い仲間がいるので慶司としても対応策が取りやすい。


 いっそ高高度から【閃煌(せんこう)】でも放てばそれで巣は壊滅できるが、周辺の被害などが大きいので却下。


 軍隊とはできれば顔を合わせたくないので呼びかけて止めるのも却下。


 となればやはり内部に戻って殲滅を目指したいのだが、時間的に慶司は物凄く忙しいので可能ならば時間は掛けたくない。


(慶司!)

(どうやら考えている間も無く、選択肢は狭まれた?)

(うん、ちょー大漁)


「って訳でこりゃ倒すしかないんだろ、慶司」

「俺が外は受け持つから、皆は潰れていない洞窟の内部の封鎖を頼むよ」

「まかせな」


(ソアラ洞窟の内部へ、そこで回廊を作るよ)

(了解)


 即座に【幻日環回廊(げんじつかんかいろう)】を作成し、慶司の魔力を持ったまま通り抜けていく。


「やれやれだ」


 この後のスケジュールが殺人的になるだろう事を考えて慶司はため息を吐きつつ外へと走り出した。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「フーッハッハッハ、野郎共、敵さんの登場だ、気合入れていけよ」

「「オウ」」

「国王陛下お下がりを」

「馬鹿かアルゼ、下がったら楽しくねーだろーが」

「貴方は国王なんですから自覚を持って下さい」

「国王である前に、俺は、男である!」

「んなこたぁ知ってるんですよ」

「フッハッハ、地が出てきてるぞ。それよりアルゼ、確かに大したことは無いのは昔と変わらんが、こりゃちと数が多すぎやしねえか」

「何を今更……とちょっと予想より出てくる数が多すぎますね」

「やばくね」

「だから、竜族に報告する所だったのを止めたのは貴方でしょうに」

「今からだと……」

「近隣の町や村が数箇所は潰れますよ」

「オメーラ、気合入れねーと町や村が危ないぞ(主に俺の信用も)」

「「オ、オウ」」


 まさに混沌とした状態とはこのような状況だろうという有様。一時は慶司の攻撃によって死亡したクイーンの指令で巣の中心部へと終結しつつあったウィルソルカンポ、ウィルカンポが巣への攻撃を振動から感知、外部へと脱出する出口へと殺到し、その場に居た軍を敵と認識して襲い掛かり始めた。


「こりゃちょっと洒落にならんな」

「責任は取りなさい」

「わーってるよ、ちょっと時間かかるから頼んだ」

「バルトホルス……帰ったら仕事漬けになる覚悟はいいですね」

「ウグッ」

「【ライトニング】」

「次」

「【ライトニング】

「次です次」

「ら、【ライトニング】、って俺国王だよな」

「ええ、無駄に仕事を増やして、軍を危険にさらした偉大な国王陛下です」

「ぬぉぉぉ、事実だけに言い返せない【ライグ】」

「逃げましたね……しかし、あの王の攻撃でもこれぐらいしか減らないとなると撤退もやはり考慮すべきですね」


 戦端が開かれて倒しきれない数の敵が横にと広がっていき、このままでは退却すら敵を倒しながら進まなければならなくなる、ウィルソルカンポ達は恐ろしい数ではあるが全速力で走ればなんとか逃げ切れなくはない。多数の犠牲はでるが宰相としての決断も必要かとアルゼは考えていた。あの馬鹿王は気にしなくても死なないだろうし、撤退の殿を務めると云わずに一人で突っ込んだのだろう事もわかっている。云えば反対するしかないのを見越した上での行動。幼馴染であるだけにやり難い男だと嘆息をつきつつアルゼは副官を呼びつけようとしていた。


 そのとき突然の轟音と共に前方の洞窟が塞がれていく。

 流石の馬鹿王でもウィルアント等の体液で固められた巣穴を一人では崩せない。

 何が起こったか不明のままにアルゼは撤退かそれともこの場に留まり戦い続けるかの決断を迫られるのであった。

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