地下へ
G注意報 苦手な方はご遠慮下さい。
恐らく、きっとGは2回目の登場はありませんが、苦手な人も居るかもしれないので……前書きとさせていただきました。
巣の大きさは不明だが大よその規模は巣穴の大きさや何箇所設けられているかで推測が出来る。
今目の前にある巣穴が大よそ2メル程(6m)と考えれば1kmには達していない。
見敵必殺で巣穴の内部へと突き進んでいく慶司達一行。前衛が慶司、他の面子は部屋を見つけた場合は其の部屋を殲滅しながら後背を守る。魔素で変化したといえ魔蟲であり、魔獣に比べれば知能レベルの上昇は見られない。精々が連絡能力の上昇や皮膚や筋組織の強化がされている程度。ウィルガレルなどのような脅威ではない。ただ数の物量は凄まじく仮にウィルガレルとウィルソルカンポが戦えば単体ではウィルガレルが圧勝できても100%数で押し負ける事になり、勝者はウィルソルカンポ達という事になる。
この小規模な巣穴でさえ、恐らくは10000体以上のウィルカンポと1000体規模のウィルソルカンポが潜み、女王であるウィルクイーンカンポが居る。
魔蟲の恐ろしいところはこのクイーンの存在だとも言える。魔獣では繁殖した場合でも子供まで魔獣化する場合としない場合があり、爆発的に個体数が伸びる事など一部の種を除けばありえない。だが魔蟲の場合クイーンが居る種の子供は全て魔蟲として生まれてくる。
それが己の武器であると遺伝子が訴えたかのような仕組みであった。現時点でマギノの研究者達も思考的推測は出来ているが解明する事が出来ていない魔素変化の謎であった。
基本的な方針としてクイーンを持つ魔蟲に関しては殲滅となっているのは未知への恐怖からでもある。
「しっかし、これだけよくも沸いてくるもんだね」
「デストローイ! 慶司補給頼むぜ」
「よし一旦この辺りで休憩するか」
一時間程殲滅を続けながら戦い続けている。若干予想よりも内部の坑道が広く規模が大きい。基本的に与えた魔力分で動く精霊たちには慶司からの魔力補給が欠かせない。
休憩の声にすばやく自分の陣地を確保に動いたのはノルンとソアラで、二人して慶司の太ももの上を占拠している。「うにゃあ」とか「にゅう」と奇声を発し(慶司には奇声にしか聞こえない)甘えていた。
シルフィは「あらあら」と微笑ましくみているのだが、フレアは「ウググ」と物欲しげであり、ロミーも「ムゥ」と拗ねているのか羨んでいるのか分からない表情である。そして何故だか一番大胆というか魔力供給は体の一部を接触させた方が効率的なのだが後ろから抱き着いているのがエクレアだった。「ニュフフ」とくっ付いてくるのだが揶揄うつもりで引っ付いているのに顔が赤くなっていれば世話は無い。
そうしてくっ付かれていても慶司としてはちょっと困ったなあといった具合なだけで無反応という状態であり、まあいいかと許してしまっている。彼女達は精霊だから。この考えだけで平然としているのであった。
まあ触れると属性の関係で時折ビリッときたりアチッとなったりというアクシデントもあるが慶司からすれば許容範囲らしい。これぐらいの感性でなければ精霊の主など出来ないのだろうなとエル達外野も妙な納得をしている程だった。
休憩が終わり再度最深部へと向かう慶司達は軽くお喋りをする程の余裕がある。だが彼女達の元気な声は態と明るくしている部分もある。
「そ、そろそろ奴らが出てくるかもよ?」
「ウゲ、そろそろか」
「うにゃあ、嫌なのだ」
「あれは慶司に任せるの!」
「ですわね!お任せしますわ」
「見るのは嫌ですが……」
「まあ、うん出来れば正直俺も会いたくない」
いっそ巣穴そのものを【閃煌】で消滅させたいなあと慶司でさえ思う。ウィルカンポの巣の内部には共生している魔蟲が必ず居ることが原因だった。勿論彼女達も全員あれには会いたくないと考えている。
シルフィに至っては見敵必殺と叫びながら真空魔法で絶滅させていた程の相手だ。
代表的なのは幼虫タイプの芋虫の巨大な魔蟲、恐らくウィルシカの幼虫、そして油虫の魔蟲化したウィルアフィ。そしてコードGの名を持ち特に女性を恐怖に陥れる、体長4cmもあれば地獄をみる奴が魔蟲として存在する。ウィルザジィと恐れられている奴が最深部に向かうとその姿を現す。
「ま、まだウィルシカとウィルアフィなら大丈夫ですわ」
ロミーが遠距離から切り刻む、ウィルソルカンポ達と違って皮膚などの甲殻は弱く倒しやすいが粘液を吐きつけてくるので近づきたくないし、傷口から青緑の体液を撒き散らすからだ。
慶司もこの敵には魔法かもしくは蜘蛛製の糸を使った【操糸風刃】】で切り刻む。
そのまま切り刻むと後に残るのはとんでもない光景になる。そんなスプラッターな現場を見たくないので、慶司は風の刃と一緒に氷結の魔法を使って処理していく。【深淵氷炎】で一体を片付けるのは簡単だし、絶対零度を発生させる魔法のため綺麗に処理《殺す事》はできるが、余りに多数の敵に使うには適していない。それなりの消費魔力、そして溜の長さが問題となる。
他にも空気を完全に無くす手も無くはないが洞窟内で無闇やたらと気圧を下げるのは得策ではない。
よって遠距離からの攻撃のみの選択肢しか残されなくなり、確実に切り裂ける【操糸風刃】】が選ばれた。
白い肉塊と緑の肉塊はまとめて始末していく。完全に凍らせて砕ききり下手に魔物の餌などにならないようにしていく。こうした処理をしていかないと後日になって肉の匂いで洞窟をつぶした後でも魔物などが集まる可能性がある。
そして処理が終わって一息つこうかと言うところで奴が現れた。「ギャー」と叫んだソアラが後方へと光速を超えるのではないかという速度で移動する。
素早さという点で彼女を超える者は居ない訳だが、目の前の敵は大した速度もない筈なのに素早いと思わせる何かをもっているGだ。ソアラが退避する気持ちが理解できてしまう一同。
得てして魔蟲は耐久力が高いのだがGは耐久力という点で特殊な能力を有している。ウィルカンポなどが強力な蟻酸や牙、それなりに頑丈な鎧となる外皮を得ているのと同等に厄介な魔素変化をしている。まずウィルソルカンポ並みの外皮、そして攻撃を滑らせる粘液状の皮膜の存在が厄介で衝撃の吸収などもされてしまう。そして地面擦れ擦れを這う移動スタイルは攻撃が仕掛けにくい。その上確実に殺すには頭と腹にある脳を壊さなければ一切動きを止めない。
殺虫剤プリーズと言いたくなる慶司の心の叫びが聞こえて来る。だが自らの体には影響は無いからと云って、これだけの規模の巣に生息する魔蟲を倒すとなると相当量の毒物が必要となるだろう。そしてその毒物が自然環境にどれだけの影響を及ぼすのか、学者でない慶司には判らない。
誠に残念な事であるが色々と加味して検討した結果、慶司が倒す以外の選択肢は残っていない、いや残されている事を望むなど幻想でしかない。
だが仮にも金を超える白金ランク。【操糸風刃】】以外にも攻撃手段を用意していた。
思い出したくは無いが、前回も慶司はGとの戦闘を行っており、対策を練っているのは当然といえる。
【氷雷縛鎖】Gは確かに生命力が強い、しかし寒さに弱く、そして水分を持つ滑りの皮膜も凍って終えばなんという事は無い。さらに電撃で内部へとダメージを与える事で止めを刺している。一旦止まってしまえば地面に張り付いていようが関係は無い。
「「「おー」」」
慶司の後ろに隠れていた彼女達も歓声を上げていた。通常の虫としてなら森でのサイクルに欠かせない存在ではあるが魔蟲としては近づきたくない対象のトップランカーであった。そのGの死骸を消滅処理させた一行はさらに巣の奥地へと突き進む。目標は最深部の部屋、そしてGなどが出てきたということはもう間も無くクイーンの下へ到着する事を示していた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「これだけの巣を作るだけあって」
「なんというか……大きいですね」
「卵も大量だな」
「それじゃあ、予定通りに」
前回の巣の倍はあろうかという規模のクイーンの部屋、運び出しきれて居ない卵が其処には大量にあった。
まだ巣の拡張をするつもりだったのか、それとも巣分けの段階だったのかは不明だが、確実に処理しなければならない。
巨体ではあるがウィルクイーンカンポは戦闘力などは全くない。魔素化は恐ろしい程の出産力と支配能力のみに振られている。ここまで来るのにまずその出産能力によって生み出された兵であるウィルカンポ、ウィルソルカンポが邪魔をし、そして、辿り着かれた事に危機を感じたクイーンの支配能力の使用によって巣穴に潜む全ての兵力が集結される。
牙を高速で噛み合わせる事で警戒音を発し、近衛とも云うべきウィルソルカンポ達が慶司達に襲い掛かってくる。
その巨体ゆえに巣穴の最深部は非常に大きな空間になっている。これは通路を広げる事よりどんどんと地底深く安全圏を確保するに為にシャフトを掘るように拡張した巣穴の大きさに比例している。よって上部には多数の穴があり、転落死する事を躊躇わずに次から次へとウィルカンポがクイーンを守るべく飛び出してくる。
最初の討伐ではこの沸いて出てくる敵を真面目に倒し続けた、だがこの現象はクイーンを殺さない限り巣穴にいる全部の敵が押し寄せ続ける。であればどうするか、答えは単純明快。物量で押し込もうとするならばクイーンをさっさと殺せばいいのである。確実にクイーンを仕留める為にこの巣穴の深部まで来ているのであって、全部の魔蟲を相手にする必要までは無い。要を失った群れは瓦解していき、一般冒険者や軍でも討伐は可能になる。ただ彼らではこの巣穴を見つけても最深部まで到達する事が叶わなく、出来る処理は巣穴の爆破ぐらいの遅延処理、もしくは自然破壊を容認する毒物による薬殺対応だけ。
「さてと」慶司はポツリと呟いて【風牙】を静かに発動させて女王の首を不可視の刃で切り落とした。あっけないものであるが物事の終わりに最後は大爆発で終わるのはハリウッ○である。まあ首を切り落とされた後の光景はある意味胴体と頭が音を立てていたのでそういう風に見えなくもない。
慶司は部屋に残る卵を纏めて【風牙】で壊していく。
「こっちも終わったよー」
「まあ楽勝なのだ」
「私たちがいるのです、当然ですわ」
「たりめーだつーの」
「あらあら、態度が大きいです」
「ひぅ、まだアタシは何も言ってないよ」
他の部屋も含めて卵だけは全て処分する、そのために別行動をとって卵の置かれている部屋を処分してきたのだった。第二の女王が生まれでもすればこの最深部までの苦労がまた繰り返される為に見逃す事が出来ない。
残る処理は地上でこの空間を破壊する事になる。地盤沈下は否めないが魔素が溜まってダンジョンにでもなれば厄介だ。冒険者としては歓迎するのかも知れないが宜しい状況とは言えない。慶司達は最後の仕上げをする為に地上への帰還の途についた。




