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モノ

 ―竜聖母の神殿―


 一人でウキウキとしているマリシェルの姿がある。

 彼女がここまで喜ぶのは理由があるの。

 もっとも慶司が聞いたら顔を顰めそうな理由なのだが、マリシェルとしては全て善意の上で行った事である。


「ウフフ、やっと私の絵姿の入ったカードが使われる事になりました。

 これはお祝いですね、きちんとブルトンへ派遣した者はカードをケルンへ届けてくれたかしら」


 そう、態々慶司の現在地から次の立ち寄る都市まで計算し、ブルトン女王とも連絡をとって白金のカードを届けさせたのだ。


「初の白金の冒険者、どうしましょう、新しく二つ名を考えて贈ろうかしら」


 慶司がまさか沈んだ気分で受け取ったなどと、思いもしないマリシェルは夢を膨らませる。

 もしかしたらお礼にとまたチーズケーキを焼いてくれたりするかも、などと期待を胸に今日も職務を果たすマリシェルの顔は笑顔だった。



 ―ブルトン王国―王宮―


 少しだけシャーリィは反省していた。

 原因はミランダである。

 白金のカードの件はシャーリィが独断でマリシェルと協議して発行に踏み切ったのだ。


「全く…それを慶司様が喜ぶはずも無いのに、どうして私に一言御相談なされなかったのです」

「えっと、やっぱり竜聖母様からのお申し出だったので…」

「それであっさりと認められた訳ですね」

「慶司様って領地も要らない、褒美も要らないって言われるでしょ、だからせめてと思って」

「いいですか、慶司様はどちらかと言えば平穏を好まれる方です、実力の在る無しではなく、そう望まれるのですよ。それは今まで旅の中で金銭を求めず、金ランク自体を隠し通してこられた事でも明白ではありませんか」

「はい、ミランダの言うとおりだと反省をしてます」

「次回来られたときには必ず自分の行動で困ってないかをお聞きになって下さいませ。でないと寄り付かれないなんて事になれば我が国の不利益になりますわ」

「そ、そこまで大事になるのかな」

「例えば、これ以上竜具がこの国に入らなかったらどうなりますか」

「一大事ね」

「他の国で新たなスウィーツのレシピが出回るのにこの国で手に入らなかったら」

「そんなの大問題よ」

「そう云う事で御座います」

「今度慶司様が来られたら全力で謝るわ」

「恐らく気にされても怒られない方ですけどね」

「お、脅かさないでよ」

「いいえ、常に温和な方を相手にする時こそより慎重になるべきなのです」


 それにしても、とミランダは慶司の事を考える。

 シャーリィに対する暗殺計画などブルトンの黒狼が事件に関わっていたのは納得がいってなかったのだが、フルトリア支部の黒狼が慶司に接触して事件の解決に努めるとは思わなかった。

 これでミランダの処理活動も大幅に楽になる。

 国内で問題が残るとすれば聖教会の地下組織と諜報員の始末。

 それとセリーヌのお相手を見つける事だ。


「そういえば、シャーリィ様はセリーヌ様のお相手を見つける件を覚えてらっしゃいますか」

「あれは一応頼んだわよ」

「もう頼まれたのですか、一応近衛の中から探そうかと思っていたのですが」

「そういうと思って例の人物の息子よ」

「やはりツェルケ卿の御子息ですか」

「ええ、ミランダの強さに敵って、さらに顔も地位もとなれば彼でしょ」

「それならば問題はありませんね、素行調査も済ませましたので虫もいません」

「流石ね、これでセリーヌが帰ってきたら仲人一号目よ」

「次は陛下が探される順番になりますわ」

「何を言ってるのよ、それならミランダが先じゃない」

「フフフ、私より強い男性となれば、残るは慶司様の妾しかないのですが」

「困ったわね、慶司様の奥様がエルウィン様じゃなければそれでも許すのだけど」

「そうですわね、本当に困りましたわ」

「他に近衛でいい人は居ないの」

「残念ですが…」

「他の騎士団は」

「一人いらっしゃいましたが…あの方は」

「あのボアード伯の息子だった方ね、外国に行ってしまわれますからね」

「いえ、あの方は女性なので」

「え?」

「ですから女性ですよ」

「だって、届出も格好も」

「何らかの理由であのような格好なのでしょうが、何度か訓練で手合わせしましたがあの方は間違いなく女性です。私の目は誤魔化せませんわ」


 驚いたシャーリィだがミランダが断言するなら間違いなく女性だったのだろう。

 確かに綺麗な顔立ちはしていたわね…記憶の中の青年を思い返して髪を広げて化粧をすれば納得であった。

 身近に素晴らしい男性がいたらどうしても暫くは比べてしまうのだ。

 それが既婚の男性であろうと致し方ない事だった。

 ミダンダもシャーリィも揃って溜息をついた。




 ―フルトリア聖教会神殿―



聖戦クルセイドの布告をなさい」

聖戦クルセイドで御座いますか、では西へ」

「勿論です、聖竜教などという邪教を蔓延らせる訳にはまいりません、これは王国ではなく聖教会としての軍です。聖教会信徒の貴族にはそれぞれ3000も兵を出させるようにすれば良いでしょう」

「3000もの兵となれば…軽く10万を超える軍になります」

「それと例の神薬の研究はどうです」

「ハッ、現段階で9割の成功と聞いております、以前の物でも8割と報告があります」

「そうですか、ではブルトンの失敗の原因については」

「おそらくですが、成功例は屈強な肉体を持つ者か幼い者のみと聞いております、そのどちらにも当てはまらないのであれば…」

「なるほど、腐った貴族だったから失敗したという訳ですね」

「恐らくは」

「兵に与えさせるべきでしたか…まあ良いでしょう、では成功例をもっと増やしましょうか」

「と言いますと」

「そうですね、教会の騎士団から数名志願者を募りなさい、神の軍団として栄誉を掴むものを」

「畏まりました」

 しかし、頷いたものの心配な様子を感じ取った聖女は声を掛ける。

「どうしました、何か心配でも」

「はい、聖戦クルセイド自体は構わないのです、恐らく神薬の投入された騎士の力をもってすればブルトンはおろかエリミアドさえも討伐可能だと考えます、ですが」

「竜族には届かないですか」

「はい」

「奴等は人間を攻撃しませんよ、そのような記録は残っていません」

「ですが、ブルトンの調査隊は戻らなかったものの、宣言の際に竜族は庇護地で手出しはさせないと宣言したとか、それに【竜の騎士ブレッシング・オブ・ザ・ドラゴン】などと呼ばれる者もいると」

「まぁ仮にですが、竜が出てくるのであれば、それなりの対応もしましょう」

「あの薬は効果が実証されなかったのではありませんか」

「いえ、3000年前の文献から紐解いた結果が神薬にも活かされているのですよ、恐らく成長する前にブレスでもうけて殲滅させられたのでしょう」

「では失敗作ではなかったと」

「そうです、この私に啓示されているのは勝利のみ、行きなさい」

「ハッ」




 ―フルトリア北西部山間―


「ほら、あそこに見えるのが隠里だ」

「確かにここまで山間にはいるとは思わなかった」


 慶司達は麓の監視小屋に荷車を預けて山道を進んでいた。

 獣道しか無いように見せて隠蔽が施された森である。

 知らずに入れば迷うように木々が配置されている。


 一つ山を越えるとそこには集落が広がっていた。

 長閑な農村に見えるが、周囲には見張りの小屋が配置され堀と塀があり、訓練施設の様な物も見受けられた。


「なるほど、ここがお主達の村じゃったか」

「知ってたの」

「竜族が村の位置を知らぬはずがあるまい」

「そりゃそうか」


 慶司達は早速一番大きな屋敷を訪れた。

 クレアが待っているのだろう。


「到着されましたか、思った以上に早く到着されましたが幸いでした」

「出来るだけ早く手を打ちたいと思っていましたから、何か解りましたか」

「はい、一応怪しいと思われる施設が三箇所、それと兵が集められています。

 前回のときとは違い兵糧から武器まで揃える指示がされたようです」

「と言う事は戦争を仕掛けて来る可能性があると…」

「まだ西へ行くのかどうかまでは確認できていませんが、恐らくは」

「ふむ、竜族の宣言を聞いておらなんだのか…」

「竜族の支配地に入った軍ってあったの」

「いや、少なくとも妾の生きている間に大規模な軍が入ってきたことは無いな、じゃがトリスやセクトなどの交易都市を狙った貴族を威嚇して撤退させた事は幾度か在ったはずじゃが…500年も昔の事じゃったかな」

「500年か…少なくとも人間じゃ生きてる人は居ないだろうからね」

「うーむ、困ったもんじゃのぅ」

「おおよそですが10万を超える軍勢になる可能性が…」

「それに怪しい薬や正体不明の魔獣まであると…」

「止める事が可能なら無駄な争いは止めたいのじゃがな」

「少なくとも怪しい薬だけは使わせたくないね、その三箇所をとりあえず急いで調べて、必要があれば壊滅させよう」

「壊滅ですか」

「クレア様、問題ないかと…此処まで御案内しましたが噂以上のお方です、一撃でウィルガレルを倒す者など初めて見ました」

「ウィルガレル…それは、解りました、では此方の地図をご覧下さい」


 クレアはフルトリア大陸の地図を広げ教会の研究施設の上に印をつけた。


「この施設に奴隷が運び込まれるのを確認しています」

「救出する必要がある人達がいるのか」

「生きていれば、ですが」

「それじゃあ」

「ええ、殆どの奴隷が遺体となって処分されているのを確認しました」

「残りの二つについては」

「こちらの施設は獣が運ばれています、そしてこちらには以前ジャック・ド・ビアンが訪れた事が判明してますので一応」


 どこから確認するべきなのか、竜種用の物は獣の施設が怪しいが、奴隷の実験の過程も無視は出来ない。

 万が一にでも救出できる可能性があるならと考えた。


「問題はどれ位の奴隷が運ばれているのかですが」

「確認できたのは40人程度らしいですが…」

「一度確認するしかないですね、必要ならば救出する部隊を編成してもらいます」

「それは構いませんが…」

「大丈夫ですよ、先ずは潜入してみるだけですから、問題があっても捕まってる人がいる限りは無茶はしません」

「わかりました、では部屋をご用意しますので一度疲れを癒して下さい」

「ではお言葉に甘えてエル達だけを案内して下さい、自分はこれからその研究所に忍び込んできます」

「今からですか」

「ええ、幸い三箇所のうちで一番近いですし」

「これからですと明日にされても変わらないとは思いますが」

「えっとこのマントを使うと飛べるんですよ」

「飛ぶのですか」

「はい、ですので直に行けますよ」

「そういうことでしたら、ではお仲間の方にはこちらで対応しておきますのでお気をつけて」

「はい」

「なんじゃ主様、また一人で行く気か、妾も連れてゆけ」

「そうだぞ、一人でいくよりはエルを連れて行っておけって」

「うんうん、何かあった時にサポートはいるにゃ」

「サポートか…わかったじゃあ一緒に行こうか」

「うむ、任せておけ」


 裏庭に出て姿を見えにくくすると、慶司とエルは夕暮れの中を飛び立った。


「本当に飛ばれましたね」

「ええ、まさかとは思ってたけど本当に飛ぶのを見れば信じるしか無いわね」

「まあ、最初は驚くけどな」

「そのうち慣れるにゃ」


 そんな風に慣れるのが普通では無いはずだが…

 だが実際残った二人は気にしていない様子である。


 飛び立った慶司達はというと、抱えて飛ぶのにも慣れてきたのか今回はお姫様抱っこのままである。


「うむ、やはり背中より此方の方がしっくりくるな」

「抱きかかえてる方が安定はするしね」

「のう主様、今回の潜入じゃが軍勢を集める前であれば派手に行った方が良いのではないかの」

「例えば」

「忍び込むのではなく堂々と正面突破じゃ」

「……」

「やはり拙いかの」

「いや、アリだね」

「そうか、ではそれでいくのじゃ」

「敵かどうかの識別をシルフィに頼んで乗り込もう」


 教会施設とは思えないほど厳重な見張りがされた建物の上空から、慶司達は一気に降下し門をぶち破った。


 前が慶司、後ろがエルの担当で内部に突入していく。


(慶司さん、見つけました…囚われていると言っていいのか…人間版の魔素変異した者が牢に閉じ込められています)

(どんな人達かな)

(恐らくは元奴隷でしょう、身形からして間違いないかと)


 此処で人を変異させる薬を研究していたのは間違いない。

 問題はその処遇である。

 竜種に使われたように感染するのではないかという点である。

 まずは研究所の資料確認と警備部隊の殲滅である。


「【明王憑醒みょうおうひょうせい】、シルフィ、ロミー、ノルンはエルの護衛を頼む、フレアとエクレアは警備隊を倒してくれ」

「「「了解」」」

「私の役目がないじゃない」

「ソアラはこの施設内部を全て見て回って、研究資料室を探して欲しい、それから周囲の索敵をお願い」

「解ったわ任せなさいビューンだから」


 内部の敵を掃討した慶司はエルとソアラに資料室の捜索を任せて外部から来る敵に備えた。

 黒いフードをした一団が近づいてきたのは丁度その頃である。


「賊よ、此処が聖教会所有の施設だと知っての狼藉か」

「人体実験してる奴等が狼藉だと? なるほど聖教会は人体実験をしてると認めるわけだな」

「何を言っているのか解らぬが…刃向かうと言うならば容赦はせぬ」

「ところで確認をしたいんだが、その体はどうなってるんだ」

「何?」

「その肌の色…それと髪の色も少し変だな」

「これは選ばれし者のみが神から頂いた物だ」

 全員が銀色のような肌をしていた。黒ではないが異様な輝きである。

「薬を飲んだのか…」

「なぜ貴様が神薬を知っている」

 じりじりと包囲を続ける騎士達、出来る限り情報を引き出したい慶司は敢えて包囲されながら話を続けた。

「貴様、徒の反逆者というわけでも、賊という訳でも無さそうだが…」

「その薬を飲んで死んだものや、傷つけて感染したものはいなかったのか…」

「何を言うかと思えば、神に選ばれて授かったもので死ぬわけがあるまい、まして感染などせぬ

 それよりも、貴様のその竜のような翼、何者だ…」

「できればこの施設を破壊するまで大人しくしておいて欲しいんだが」

「貴様舐めてるのかっ」

「まあ待て、どうして破壊するのだ」

「此処で人体実験をしてるからさ」

(慶司、みつけたよーエルが資料まとめてる)

(ありがとう)

(慶司さん、地下の牢に入る者の中にも一人だけですがそのもの達と同じ肌の物がいます)

(わかった、そのまま引き続き監視を頼む)

(お任せを)

「ふむ、どちらにしろこれ以上の話し合いは無駄か、捕縛は諦め対象を異教徒と断定、殺害を許可する」

(おう、慶司面白そうじゃねえかよ、俺も暴れていいんだろ)

(アタシもまだ暴れたり無いわ)

(任せるよ)


 騎士達が襲い掛かってくるのと、フレアとエクレアが建物から飛び出してくるのが同時だった。

 後ろに回りこんだ事で油断していた騎士をフレアとエクレアがなぎ払う。


「グァッ」

「ウギャアア」

 感電と火の拳の攻撃である…

 肉弾戦かよ、と思ったら全てが魔法攻撃と同等の威力があるようだ。


 慶司に切り掛かって来たのは攻撃を受け流して刀で薙ぎ払った。


「フム、どうやら唯の賊どころか邪教の使徒のようだ、構わぬ聖女様より言われたとおり神のお力を開放せよ」


 瞬間、うっすらと黒い闇のような魔素が立ち上り騎士達の肉体が変貌していく。

 倒したと思った者までその肉体は変異し立ち上がってきた。


「ハムカウモノハマッサツシロ、ソレガカミのゴイシダ」

「「WHAAAAAAA」」

「「OOOOOOOOO」」

 叫びとも違う咆哮をあげながら魔法を放ってきた。


 空中へと飛び上がる慶司を追って数人が飛び上がってきた。

 飛べるものと飛べない者の違いはわからない。

(ソアラ射線確認)

(問題ないよ)

「【霹靂へきれき】、【雷火らいか】」


「グギャ」

「ギャウ」


 流石にこの二つの魔法の威力には抵抗できないのか墜落していく元騎士だったモノ。

 そこに仲間の仇とみたのか4匹が同時に突っ込んできた。

 少なくとも生物ではある。

 慶司は槍杖を構えて頭部と心臓を中心に破壊していく。

 力が込めれる様にウラヌス達の使った魔法を参考に足場を作る。

 脳漿を飛ばしながら墜落していくモノや首を失って落ちるモノ、心臓を貫かれて尚も動こうとしたところを頭を破壊されて落ちていくモノ。

 手加減など出来る相手では無さそうである。


「カミノチカラヲエタワレラヲ、タオスモノガイルトハナ」


 フレアとエクレアも倒していたので残り12人。

(くっそぉ此奴ら普通の攻撃じゃ死なねえぞ)

(ちょっと普通の人間じゃないね、火傷ぐらいにしかならないなんて)


 咆哮ならば一撃で消し炭にできなくも無いだろうが…

 可能ならば控えて起きたかった。

 甘さではなく此処を襲ったのが竜族であると思われたくないからである。

 それに首を落せば死ぬのは間違いない。


「フガイナイナ」


 そう呟いた指揮官が遺体に手を伸ばした。


 まさかそのまま吸収されると慶司が思いもしなかったのは仕方が無い事である。


 おぞましい方法である。

 魔力の塊として摂取したのだから。


(ソアラ)

(この角度じゃ無理だね、近隣の山とか森、村にも被害が出るよ)


 ソアラの返事を聞いて慶司は一気に駆け寄った。


 二臂で受け止めて首を潰していく。


 攻撃魔法は【霹靂へきれき】だけを使用していく。

 敵からの魔法は全てかき消すか【竜翼】で受け止める

 厄介なのは最後の一人の隊長である。

 常に建物を直線状にいれて魔法を放ってくる。

 死亡した死体以外にも近くのモノを殺して3人分の魔力を補給したようである。


「クックック、ッハァッハッハッハ、凄いな貴様、だが三人の力を得た俺には敵わんぞ」


 確かに力も強くなっている。慶司の魔法も仲間の死体を盾に力を弱めて相殺していた。その様子から見ても魔力も上がって治癒力もかなりの物らしい、その自信から来る余裕の態度であった。



 だがそれが慶司に匹敵している訳ではない事を騎士の隊長だった男は気付いていない。

 変調していた声帯も魔力を吸収し体格をさらに大きくした事で変化がみられ饒舌になっているだけなのだ。

 体を大きく、力を強く、確かに普通の相手ならばそれだけで脅威ともなりえる話だが。

 体を大きくした分どうしても小回りは利かないようになる。

 力を強くすれば破壊力が増すがただそれだけなのだ。

 元騎士隊長だったモノは知能が上がったわけではない。

 短絡的に力を求めた結果といえる。

 鎧もはじけ飛んで素肌をさらし、武器は手の大きさに合わず殴るしか出来ない。

 もっとも本人は殴り殺せると踏んでいるのだ。


「我が力は無限、叩き潰してくれるわ」


 フンヌゥと雄たけびをあげて拳を振りかぶってくる。

 俗にいうテレフォンパンチだ。

 横に逸らしつつ刀を一閃させる。

 その動作だけで腕は拳から肘までを裂かれていた。

 驚異的なのはそれが直に元に戻ったことだろう。


「クックック高が斬撃程度ではこの肉体は滅びぬ」


 と大仰に言葉を発したが慶司は既に背後にいたのだ。


「俺の刀は一本じゃないんだ」


 後ろを振り向こうとした怪物の頭部がそのまま地面に落ちた。


「【【流水抜刀繊月りゅうすいばっとうせんげつ】自分が死んだ技ぐらいは覚えておきたいだろ」


 そう呟くと【(ほむら)】を発動させた。


 慶司は屠った騎士の死体を全て焼き尽くしてから屋内へと入っていった。

次の話…書きながら納得行くまで修正してます 明日上がるかどうか…少々お待ちを。

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