乾杯
―エイミイーとルージュ―
少しだけ時間は巻き戻って出発前日の夜。
エイミーとルージュは興奮していた。
何しろ黒狼が伝説の隠里の一つでは無いかと判明したのだ。
「ブルトンの黒狼は悪い奴等だったにゃ、でも本当の黒狼は伝説の義賊の末裔かもしれないにゃ」
「やっぱりそうだよな、アタシも話を聞いて驚いてたんだ」
「でも侍女隊説もあるにゃ」
「うーん気になるなあ…でも伝説は伝説だから凄いって気がアタシはするんだよな」
「聞くと野暮な話になっちゃうにゃ」
「だが知りたい、この矛盾が堪らないぜ」
二人は新たな決意と供に黒狼と侍女隊の隠里はどんな所にあるのかと語り合った。
少女時代から寝物語に聞かされた伝説である。
一族の長ともなれば知る情報ではあるのだが秘匿されている。
「それでルージュ、私にも格闘技を教えて欲しいにゃ」
「突然どうしたんだ、エイミーは格闘っていうより毎日練習してる弓とかの方が向いてるだろ」
「確かにそうだにゃ、でも慶司達と一緒に旅を続けるなら格闘も出来たほうがいいにゃ、慶司みたいな真似は無理だけど頑張らないといけないにゃ。黒狼の人達は私より強かったにゃ」
「良し任せろアタシが特訓してやる」
「ありがとにゃ」
互いに子供の頃に聞かされた話を再度語り合っているうちに夜は更けていった。
―フルトリア聖教会神殿―
報告を聞く聖女の顔からは感情は読み取りにくい。
だが彼女は今苛立ちと怒りを押さえ込む事で精一杯であった。
ブルトン女王の宣言、完全なる奴隷撤廃、差別廃止、聖教会の完全追放。
許しがたい事である。
「これから国王へと謁見の申請をなさい」
「国王に会われるのですか」
「そうです、この度のブルトン王国の宣言、これは我等が認めた王国も認めぬという宣言に等しい内容。
そして同等の内容のと取れる聖竜教などという邪教を立ち上げ此方を非難しているのです。
これを認めてはなりません、直に会えるように手配なさい」
「ハハッ」
こうして聖女は滅多に出ることの無い神殿から出ると告げた。
普通なら国王を呼びつけるのが慣わしにも関わらずである。
それ程にこの宣言は危険だったのである。
竜族と国交を結び、さらに庇護まで受けれる宗教。
そんな物を許してはならないという一念からの行動である。
特別な許可として、翌日に謁見の申し出が許可された。
ベルトラン法王をも差し置いての異例の行動であった。
フルトリア国王、フェリプ・カッペ・ヴァロは野心家であった。
本家筋の従兄弟との継承争いでは聖教会のセルゲイ枢機卿などを使い次期の王は自分であると吹聴させ、敵の派閥の代表を殺させることも厭わなかった。またエリミアド王国に長年攻め込まれていた失地も聖騎士を初めとした諸侯の軍を使い回復させた。自分の名声や尊厳のみを求める王である。
頭は悪いが野心があり、獣並みに感が冴える事があって腹心の意見は聞くが、利用できるなら敵でも何でも利用しようという下品な男でもあった。
事実彼が即位できた一番の理由は最有力候補だった従兄弟の領地がエリミアド王国の侵攻を受けた為である。
討伐に赴いたのは自身の率いる軍と聖教会軍で、戦闘には勝ったがその戦争で従兄弟の一人はなくなっている。
従兄弟を助けられなかった事に王から叱責はなかった、なによりその戦で領地を奪われずそれ以上に取り返した功績の方が大きかったのである。
しかも彼は己の領地とはせず国王に謙譲し一部を教会へと寄付したのだ。
その上で従兄弟を助けられなかった事を悔やみ自ら謹慎してしまった。
これはセルゲイの入れ知恵であったが人々はこの真摯なる公爵を英雄と称え賞賛したのである。
そしてフェリプは父を王の弟、母をエリミアド公爵家の娘という遠いながらもエリミアドの継承権まで主張できる立場にあった。
エリミアド王国が既に自らの国内にエリミアド聖教会を作ってはいるが、フルトリアの聖教会こそが本家である事は知られていて上手くすればエリミアドへの侵攻の大儀は立つのである。
そして、彼は王位を継承するとエリミアドの継承権を巡って戦争を仕掛け数度に渡って勝利を重ねてきている。
何でも利用するこの王が次には聖教会ではなく、聖竜教を選ぶなどと突然言わぬように釘を刺さねばならないのである。
「陛下、突然の謁見をお許し頂き感謝致します」
「構わぬ、余と聖教会の仲だ、そして聖女殿が態々来られたのは、ブルトン女王の宣言と聖竜教についてだな」
聖女は心の中で唸った、此方の方が情報速度で出遅れた…
「流石は陛下御慧眼恐れ入ります、邪教を立ち上げ陛下の王位を脅かす教えを広めようとしておりますれば」
「ふむ、確かにブルトンからの使者によれば彼の国では王位は竜族によって承認されたと聞くな」
「はい、悪しき物によってその地位を築きその庇護を受けようとしております」
「だが竜族の庇護は国民にとってはいい事なのではないのか」
「陛下、それは違います、神が許したもうた支配者は人間で御座います。そして王を選ぶのも神で御座います。下等な竜族などという存在が人間を庇護するなどというのはまやかしに過ぎません。竜族は戦争を認めずブルトンを支配下に置き、その触手をフルトリアやエリミアドに向けるでしょう。陛下必ず竜族が王国を認めるなどとは限らないのです、寧ろブルトン王国を支配下に置き気高き王国へと侵略してくるでしょう。どうか、討伐の命をお出し下さいませ、さすれば我等が勝利し、ブルトンを陛下に献上致します」
「なるほど、余を認めないか…それは困るが、国として竜族と敵対は出来ぬ」
「陛下っ」
「がしかし、誰かが攻め込む事は認めてもいない国相手である。余も止める事はできない。そうだな枢機卿」
「仰るとおりで御座います、国としてはエリミアド王国と戦争中、後方にて敬虔なる信者の貴族が動いたとて、それは宗教の問題による暴発で御座います」
「それでは陛下私はこれにて」
「聖女殿の御加護が我が国を救ってくれる事を祈っている」
そこには信頼、信仰など全く無かった。宗教家と為政者の関係。国民を騙し搾取し、利用し、利用される。ただ其れだけの関係である。
相手を利用し、供に喰らい合う獣だけが蠢いているだけであった。
慶司達は北東の山間部にある都市アリーに到着していた。
新港湾都市建設の地を出発してから暫くすると、黒狼の二人とは別の道を行く事になった。
二人は急ぎフルトリアへ戻って聖教会の関係機関を洗いなおす為に先を急いだのである。
「この都市は蒸留酒を作ってることで有名なんですよ」
「色んな町の酒場に入ったときに一番の蒸留酒として勧められましたよ、料理に使うと言ったら呆れられましたけどね」
「確かに酒飲みの連中が聞いたら怒りそうだが、先生の料理を食べれば納得します」
「主様の料理は竜族のお墨付きじゃからな」
「折角本場にきたんだから後で酒屋に寄らないとね、まずは宿の手配と教会かな」
「そうですね、私どもは何時ものように教会へ泊まりますので」
「じゃあ先に教会までいってから宿に向かいましょうか」
王都からも離れていて、さらに山間部にある為に長閑な都市であるアリーは陽気な人が多い。
だが田舎であるが故に都市部よりも政策の伝わり具合が悪かったり、穏やかに見えていても内実はそうでは無い事も多い。ましてや奴隷問題は蒸留酒の生産に関わる事であった。
「テメーらは国がなんて言おうと奴隷は奴隷なんだ、あっちいけ」
「奴隷から開放されたと思うなよ」
「へっへっへ、生意気な態度を取るからだ、石を投げつけろ」
一見、子供が子供を苛めているだけなのだが、片方が良い身形で、もう片方が継ぎ接ぎの見える服を着ていることや、叫びまわって石を投げつけろと言ってる話から少し違うようである。
「渇ーっ!」
瞬間的に叫んだのはエルであった。
同時に慶司は飛び出し石を叩き落している。
「小童どもよ、貴様ら情けないとは思わぬのかっ、寄って集って2人、しかも一人は女の子に石を投げるとは恥をしれい」
「なんだ貴様、この方はなこの土地の領主様の息子様だ、俺らは将来の騎士だ、邪魔をするな」
「ほう、小童の分際で妾に脅しとは、クックック、親の躾がなってないのぉ」
「うーん子供だけど性質がわるいにゃ」
「はぁ、困りましたね、反省も見えないとは」
「流石に慈悲をかけたいとは思いますが」
「うるせーな、なんだ教会の関係者か領主から寄付が欲しけりゃ黙ってろ、ほらお前等投げろ」
「フフフ、セリーヌさん慈悲など無用ですわ」
「流石に…では拳骨で宜しいでしょうか」
「ええ、構いません罰を与える事も時には道を正すには必要です」
「殴られなければ人を傷つける痛みは分からんのじゃろう」
「これは相手を傷つけた貴方達への教育です」
セリーヌが一気に詰め寄って全員を殴り倒す。
「お父上にも殴られたことが無い僕の顔を…このクソ婆共覚えてろ!お父上に言いつけてやる」
決まり文句を吐き捨てて逃げていく子供達。
残った鬼の形相の女性達をどうしてくれるんだと慶司はため息をついた。
「君たち、大丈夫かい」
「有難う御座います、お兄さんやお姉さん方のお蔭で妹を守れました」
「ありがとうござい、ます」
「なかなか確りした子じゃ」
「はい、素晴らしいですわね、お礼もきちんと言えて」
「うんうん、アタシ達はお姉さんだ」
「全くにゃ」
「それで、あの子達は領主の息子なのかい」
「はい」
「しかし、奴隷は解放されたじゃろ」
「女王様のお達しは来て開放はされましたが実際は雇われた形で父さんたちは働いています」
「それじゃ扱いは」
「改善されるだろうと父さん達は言ってましたが」
「うーむ、あの小僧共の親じゃからなあちと心配じゃの」
「とりあえず君たちの所に送ろう、皆は教会の方で兵士でも詰め掛けてこないか気をつけて」
「来たらアタシが返り討ちにするよ」
「ええ、女性に向かって言ってはいけない事があると骨身に染み込ませて教育しなければ」
「まあ、というわけで俺が君たちを送っていこう」
「有難う御座います、お姉さん達も気をつけてください、あいつ等乱暴なんです」
「きをつけてね」
「フフフ、大丈夫にゃ、アタシ達は強いにゃ」
慶司は子供達と供に住んでるところへ、エル達は教会へと向かった。
一方逃げ帰った子供達は…
「お父上、教会の者に殴られました…私の配下もその時にいた護衛の騎士によって打ち倒されてしまい」
「なんだと、ふむ、まったく国からの保護を受けているからといっていい気になりおって、おい、貴様一隊を率いて教会へ向かい息子に乱暴してものを引っ立てて来い」
「はぁ、ですが宜しいのですか」
「なんだ、ワシの命令が聞けぬのか、我が愛息が殴られているのだぞ、領主の息子を殴る奴は捕まえて当然だ」
「罪を確認せず此方に非が合った場合は国王が出てくる可能性があります。私の記憶が確かならば、聖竜教となった教会は騎士団をなくしているはずですがそれでも宜しいですか」
「どうせ騎士団を無くしたなど言い訳に過ぎぬわ、構わん行ってこい」
「ハッ」
「全く、自分の息子も殴られているというのにあの態度はなっておらんな」
虎の尾を踏んだ事に気が付かない間というのは幸せなものである。
不良息子である事も知らず、どうせ王都にも上手く奴隷を騙し安く雇って欺けばいいと開き直っているのだ。改善するなど馬鹿らしい、領主の男は聖教会派でもないが、どうして買った物を手放す必要があるかと思っているし、手放して経営する蒸留所が経営出来なければ儲けられないではないか、そう自分を納得させたのだ。
「こんな事を命令する女王なんてどうして皆みとめたのですか」
「儂は認めているわけではないがな、全く反乱するならするで最後までやれば良い物を…そう云うときはな、上手く渡りきればよいのだ、息子よ。どうせ続かぬ改革だ、投げだして女王の権力が弱まるのを待てばよいのだ。まあ唯一良いことといえば領地の強力な魔獣がいなくなることだなッフッフッフ」
「父上は流石ですね、自分は今から歯向かった奴隷の住まいへ行って罰を与えてきます」
「あまり遣り過ぎてはいかんぞ、大切な労働力なんだ」
「分かっております、骨を折ったりは致しません」
教会に向かう事になった騎士は戸惑っている。
聖竜教、色々な噂も飛び交っているが本当に竜族と国王が親交を深めていたら…
【竜の騎士】が現れてこの領地の兵士など吹き飛ばされるのでは無いか…どうして俺の息子は一緒になって暴れているんだと悔やみ続けている。
同じような気持ちの騎士が多いのかまるで死地にむかうかの如き様であった。
「思うのだが…息子達は諌めねばならない事もできぬのかな」
「まだ、10歳にもなっていないのだ仕方なかろう」
「いや、教育を間違えたかもしれん」
「我等が幾ら懇願してもこの度の領主様は意見を曲げなかった、それと同じだ、あの御子息と一緒にいれば毒されるのだろう」
「「「ハァ……」」」
竜の力があろうとなかろうと20にも上る貴族の反乱軍を鎮圧した王に歯向かうなんて馬鹿げている…
ここが身の振り方の最終地点なのかも知れない。
それなりに世情にも詳しい騎士達だからこその感覚だった。
「なぁ、この捕縛命令だが…相手に状況を伝えて逃げて貰わないか」
「騎士とは名誉に生きる者だ、忠誠よりも名誉だ」
「うむ、これは騎士の行いではないな」
「俺も戻ったら子供を叩きなおすことにする」
「うむ、俺も賛成だ、この仕事騎士たる者がするべきではない」
5人の騎士は同時期に騎士となり、それぞれが息子を騎士にするために教育の一環として領主の息子に就けることになっていた。普段からも仲がよく互いに相談し合っていた事がこの騎士達の運命を変えたとも言えよう。
「失礼いたす、領主の使いで参ったお伝えしたき事が御座いますのでお取次ぎ願いたい」
「はい、どなた宛に」
「これはすまぬ、本日領主の息子に会った方がおられたらお話したいのだが」
「お待ち下さいませ」
見習いの修道女が奥へと走っていった。
そして現れたのは司祭と騎士、それに冒険者と思われる者達が三名だった。
「私達に御用と伺いましたが」
「はい、領主に仕える騎士だは御座いますが私共の息子の教育が悪く御迷惑をお掛けした件のお詫びと、そしてお手数ですが此方の領地から逃げて頂きたく」
「なんじゃ捕まえに来たのではないのか」
「なんだ、一暴れするのかと思ったのに」
「フフフ、おばさんといったのは領主の息子だけですからこの方々は無罪ですよ」
「大変申し訳御座いませんが、お諌めしても聞くような方ではないのです、できればこの事を王都へとお伝え願えませんか」
「ふむ、王都へ伝えてどう致すのだ」
「我等も一度は忠誠を誓った方なれば名誉の戦死を遂げるまで、しかしその前に必ずや民間人や解放された者達は逃がします故」
「ふむ、これはどうするかのぉ」
「どうしましょうか、慶司さんも居ませんしね」
「まさか…まさかでは御座いますが慶司殿と申されるのは、あの【竜の騎士】ですか」
「慶司って言っただけで通じるのは驚いたにゃ」
「反乱軍を倒した竜が使わした英雄として伝わっておりますよ、まさか此方に来られていたとは…」
「ところでお主達、捕らえに動いたのはお主達だけか」
「はい、命令を受けたのは私たちのみです」
「そうか、それならまだ話し合う余地もあるな」
「それは…どういうことですか」
「そりゃ慶司がいま苛められてた子供達の住んでるところへ送り届けてるからさ」
「私達だけですから、もし普通に英雄殿とお話をさせて頂けたかもと思えば残念ですが」
「ふむ、しかしな、忠誠を誓うと先程お主達は言ったが本当に忠誠を誓うだけの価値がその領主にあるのかの」
「騎士として仕え続けた恩が御座います」
「私も騎士だが、恩だけで使えるのは間違っている。仕える相手が自分に相応しくないのであれば騎士として使えるのは辞めるべきだ。諌めて聞かぬなら辞めて思い知らせるぐらいが良いと思う」
「そもそも、お主達は妾達を捕らえに来たのじゃろ、そのまましばし此処に居ればよいわ」
「元々私達は教会関係の打ち合わせと今回の改革に反対する人などを調査しに来ていたのですよ」
「手遅れでしたか、なんとも情けない話ですが、ならば裁かれて次の領主が赴任するまで我等はこの地の民を守りましょう、その後であれば息子共を教育しなおし出直す事もできます」
「さて、一応主様の事はどうするかのぉ待ってから行くかどうかじゃが」
「一応お戻りをお待ちして、それからの方が宜しいですわね」
「という事でお主達はここで休憩しておればよい」
不思議な展開で騎士達が教会にいる頃、子供達を送っていった慶司は建物に石を投げつけた子供達を縄で括りつけてウラヌスに繋いで歩かせていた。
流石に悪戯が過ぎる為歩かないと食べられるぞと脅してある。
(ウラヌス演技で吼えて驚かせておいて)
(ワフ、任せて下さい)
「ヴゥゥゥ」犬歯までむき出しにしながら重低音で唸られている。
これで御仕置きはいいだろう。
そのままスタスタと領主の屋敷へと向かい制止する門番を叩き伏せて屋敷の中へと入っていく。
兵士を平然と一撃で投げ飛ばした慶司をみて屋敷までつけば何とかなると思っていた子供達は恐怖に包まれていた。
「なんだ貴様!」
でっぷりと肥えた男が執務室で寛いでいるところへドアを蹴飛ばし子供達を投げ入れた。
「お前がこの子供の親か」
「貴様、息子になんてことを」
「なるほど、元奴隷だと言って石を投げつけさらに家まで押し掛けて家を壊そうとした者だが、その親で構わないんだな」
「貴様こそ高々元奴隷や家に石を投げつけたぐらいで息子に対してのこの横暴、徒で済むと思っているのか、おい、衛兵、衛兵」
「そこの父親に衛兵がどうなったか教えてやってもいいぞ」
「お父上、衛兵はすべてこの者が打ち倒してしまっております」
「なっ」
「と、言う訳だが、どうするんだ」
「ふん、もう少ししたら騎士が戻ってくるわ、貴様の仲間を捕らえにいったのだ、そうだろう息子よ」
「そうでした、フフフ」
「元奴隷に対する扱い、少なくとも国からの通達も守らず最低限の賃金も約束せずに再度雇用してましたね」
「それがどうした」
「その時点であなたは領主の資格を失ってるんですよ」
「なんだとっ」
「そして、資産も没収の上で国外追放です」
「なんの権利があってそのような」
「女王陛下の布告にきちんと書かれてますがお読みになっていませんか」
「貴様何者だ」
「徒の冒険者ですよ、と言う訳で拘束しますが歯向かうなら手加減しませんよ」
「ぬぉぉぉぉ」
剣を抜いて走りかかってくるが、余りにも運動不足である。
殺す必要までも無いので腕を取って投げ飛ばした。
ドンッっと豪快な音と供に投げ飛ばされて床で伸びてしまった。
領主が不正を働いている場合が一番処理にこまるのである。
はぁ、とため息をついた慶司はエルに連絡を取った。
(慶司様からの伝言です)シルフィは頼まれた事をエルに伝えた。
(なんじゃ、うむそうか、分かったそちらへ向かう伝えてくれ)
(はい、お伝えしておきます)
「ふう、待つまでも無かったな、主様の話じゃと懲りずに家を壊しにきた小童共を縛り上げて領主の屋敷に乗り込んで始末をつけてしまったらしぞ」
「なんだ、また一人でやっちゃったのか」
「というか懲りない子達だったのにゃ」
「フフフ、御仕置きですね」
「しっかりと教育するんだぞ」
「解っております、この剣と誇りにかけて性根を叩きなおしてみせます」
慶司達はその後の領主たちの輸送を手配し最低限の私財の持ち出しのみを許してケルンへと護送させた。
街の治安維持には騎士達にまかせこの様な行為に走るものが出ないよう警邏にも徹底させる事となった。
アリー酒の製造が止まると多くの人が困るのは確かな事で職人として再雇用された者達は国で雇用することになり一時監督として聖竜教の神父に管理を任せることにした。
他の商人などの不正がないかも確認をしてから慶司達がアリーを出発したのは、到着してから僅か2日であった。
慶司達が都市を去ってから、騎士達は酒を酌み交わすたびに思い出した。
諌め続けた事と教会へ押し入らなかった事で騎士達はそのままこの地に留まる事を許され、息子達も子供である事で見逃されていた。
「あの時、もし教会へ逮捕に行ってたらどうなっていたのか…」
「いや全くだ、やはり騎士は誇りの為に生きなければ意味が無いと言う事だ」
「うむ、民を守り騎士の誇りをかける行動こそが我等を生かしたのだ」
「息子達をあの方の学校へ送ろうかと思うんだがどうだ」
「それは悪くない考えだ、よし、息子達を叩きなおすことで我等も国へと貢献しよう」
「我等が偉大な女王陛下と【竜の騎士】へ乾杯」
「「「乾杯」」」
ポイント評価、レビュー、感想お待ちしてます。




