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ブレシング

(ノルン、この辺りの山中に危険なマグマだったり重要な金脈とかは無いんだね)

(金属は多少は埋まってるのだ、でも鉄とかだけで金とかはないのだ)

(地下深くまで行ってみたけどマグマの心配はないさ、やちゃっていいと思うぜ)

(まったく直に貴方はそういう判断を安直にするんだから、慶司様、湧き水の位置も確認いたしましたがこの一帯の水の流れはこの山を崩しても影響はありませんわ)

(希少植物の類もこの山には無かったよ)

(有難う皆、じゃあ一つ派手に行きますか)


 その日遠く南の方から響く音を聞いた人は何が起こっているのか判らなかったに違いない。


「どれほどの威力があるか、実際試してみる機会がなかったんだよね、シルフィこの進行方向で放って直線状に山は無いんだよね、はい角度をつけて撃てば問題ありません」

「ちゃんと見てきたよ、この進路上なら誰もいないよ、アタシってば最速だから、間違いないよ」

「それじゃ、【明王憑醒みょうおうひょうせい】これで踏ん張って、竜翼の補助術式展開、【逆鱗極光げきりんきょっこう】」



 慶司さえも予想しない現象といっていい結果が其処には存在した。

 光を放ちながら発動した魔法は発動時に凄まじい音と同時に山を消した。

 さらに抉られた山の一部が崩落して崩れ遅れて地鳴りのような音が続いた。

 なにやら変な匂いもしているが空気が焼けた匂いとでもいうのだろうか。


「えーっと」

「なんだぁ今の」

「山が消えましたわね」

「溶けてる部分もあるのだ」

「これは危険ですわね」

「えっとね、アタシの追える限界まではいったけど、この星の外まで行って消えたよ」

「封印だな」

「ですわね」

「賛成する」

「まぁ私達の契約者ですもの、当然の威力とみていいのでしょうが、乱用はできませんわね」

「下手すれば山どころの話じゃないのだ」

「よし、もっと安全な魔法を試していこう」

「そうですね」


 そこで【神威かむい】を放ったのだが物言いがついた。


「慶司様、私の力が利用されておりませんわ」

「アタシも見た目しかないけど使われてないよ」


 確かに水は使っていなかった、其処が不満なのだろう、旧式の逆鱗なら使ってもいたが目的が若干異なる。

 そこで【神威かむい】を二つにして放てばどうなるか、試してみることになった。


 右手に土と水と光、左手に火と雷と風の魔法である。

 触れ合っても問題の無い属性で構成している手が六本になったら一度に放てるかも知れない。

神威かむい】と違って一つ一つの塊を風でさらに操っている為三つの輝きが絡み合うように回っている。


 結果、【神威かむい】の数倍はある威力となってしまった。

 ドン、とかドカンなどという生易しいものではない、先程の事もあって威力を抑えた心算だったのに爆弾でも破裂したかと思うような音である。


「慶司様、せっかくですから通常の【神威かむい】には【雷火らいか】そしてもう一種類【霹靂へきれき】そして今の魔法を【神威かむい】として下さりませんか」

「【霹靂へきれき】は火を抜いて電撃中心にするんだね」

「はい、私とフレアの魔法は互いに打ち消しあう性質ですし、爆発を引き起こしますので」

「そうだね、全員と契約したならそうすべきかな、でももしかしてシルフィこの二人って気が付いてないのかな」

「ええ、まあ互いに中が悪いので…」

「そっか仕方ないけど、氷結系の魔法は教えないほうがよさそうだね」

「ちょっとまったぁ、アタシの魔法単体で使われてるのって攻撃が全く無い件について」


 どこか古きよき時代の突っ込みのようにソアラが食いついて来た。

 だが光である。どうしろというのか。

 そういえば、聞いてみたかった事で、光の魔法についての特性が解らなかったのだ。


「攻撃って言われてもね」

「フッ、まだまだよ慶司」

「引きこもりの精霊が偉そうにしてるな」

「土は防御で役に立ってるのだ」

「ああ、お前じゃないさ、契約者を持たない引きこもりの代表と言えばソアラとエクレアだけど、エクレアは自分からだろ、ソアラは引きこもってたと思ったらエクレアのところに逃げ込んでたくらいだからな」

「それはアタシを使いこなせる人が居なかっただけなの、慶司なら最強の精霊王として資格があるの」

「はいはい、じゃあその方法とやらを教えてみな」

「フレイの魔法なんて目じゃないんだからね」

「火の魔法を目じゃないだと、いいだろう、違ったらお仕置きだぜ」

「フ、ッフフン、慶司、いいこと収束させてこれでもかってぐらい収束させてから放つのよその代わり大きさは握り拳ぐらいでいいわ、ただし放つのは斜め上に向けてよ」

「なんだか嫌な予感がする、だってさ【幻日環回廊げんじつかんかいろう】のエネルギーをそのまま放つってことだろ」

「ウフフ解ってるじゃない、だから少なめによ」

「やらないといけないんだよね」

「引っ込みがつかないわよ」


 薄々にだが危険性を解っていただけにこれは選択外だったのだ。


「そうね、名前は何にしようかしら」

「威力を見てからでいいだろ、しょぼかったら採用はなしだ」

「慶司、やっておしまい」

「はぁ、どうしてこう…」

「調子に乗って御免なさい、でも見せないと理解しないもん」

「仕方ないですね、慶司様お願いします」

「しょうがないね、じゃあいくよ」


 それは静かな魔法だった、だが威力は山の岩肌を刳り貫いていき、向こう側までが一瞬で見えた。


「ちょ、お前なんだよこれ」

「フッフッフ、これが、ああん御免なさい調子には乗らないから睨まないでシルフィ」

「解ればいいのよ」

「でも、名前をつけるだけの威力があるでしょ」

「こんな物封印レベルじゃねえか」

「えーだって威力もあるじゃない」

「さっきの問題の魔法と変わらないよ」

「そりゃそうよ、あれより更に上の魔法だもの」

「「「なんだと」」」

「えーと名前をつけてもいいけど封印だね」

「どうしてよ」

「これを使おうと思ったら調べなきゃいけない範囲が広すぎるよ」

「ウウウ」

「諦めなさい、どうしてもという時にだけ使ってもらえばいいわ」

「じゃあ名前だけはちゃんと付けよう」


 さてどんな名前がいいのだろうか、極光の上となると、名付けも難しいな光子魚雷みたいな物だけど…

 原子、ある意味暗黒物質だよな…


「そうだな、【閃煌せんこう】でどうだろう」

「いいわ、これでアタシの魔法が最高ランクよ」

「なんだか納得がいかないけど、威力は確かに凄かったな」

「やるじゃねえかソアラ、さすが俺のところに来てただけあるぜ」

「だけどこれから使うのは加工用の石材切り出しとかだからね、使うのは水と風だから喧嘩はしないでよ」


 たった数発の魔法で山の形を大きく変えてしまっている。現在では丘より高い山くらである。

 此処からは石を切り出すようにして加工をしていく、十日後にやってくる人達に運んでもらって家の材料や港の設備にするのである。

 それから慶司は時折道にするために【雷火らいか】を使いつつ回りの岩を水で切り出しては石材にしておき海岸まで進む作業を続けたのである。




 ―南へ向かうエル達と開放された人々―


「ふむ、今日も派手にやっておるのじゃ」

「なんだか山がなくなってるのにゃ」

「戦士としてよりこっちの方が本当の力ってことか、あの火柱もすごかったけど、十日で山を削るってのは」

「いえ、山がなくなったのは初日でしたわ」

「先生の凄さを改めて実感した」


 時折聞こえてくる爆音が響いてくる。

 最初は山を越えて港なんてできるのかと半信半疑だった人達も出発の前にみた山の高さで納得をしてここまで来たのだが、未だに鳴り響く音に驚いている。

 山だったところの麓、最初慶司が作業を開始した地点まで到着した彼らのみたのは山が一つなくなっている風景と切り出された大量の石材である。


「なんだか最初に話を聞いたときは信じられなかったけど、この光景をみたら何とかなりそうだよな」

「そだな、全員を説得してきた甲斐があっただな」

「石まではオイラ達じゃ無理だけどその分荷物を運ぶよ」

「じっくりと作業すればよいぞ、主様もまだこの音がしてると言う事は先で作業中じゃ」

「そうなんですか、じゃあまずは石を運ぶための道具を作ろうじゃないか」

「慶司様よりこんな道具をつくれと図面を貰ってますよ」

「へえ、これで運べるのか」

「なんでもこれなら力を余りかけずに物を動かせるそうです」

「なるほどな、よし作ってみるぞ」


 一斉に作業に取り掛かり、男達は材料となる木の切り出し、女性や子供達はテントの設営や食事の準備に取り掛かった。


「30メルごとにこの櫓をたてて綱をかけていくんだな」

「まあ、これで運べたら重い石が次々に運べるな」


 慶司が用意したのは滑車を使った運搬装置である。

 アスレチックなどにある滑って遊ぶものと余り変わらないが、石を取り付けるのに動滑車、ロープを持ち上げるのに定滑車を使っている。

 キャンプに出掛けた先で遊んだ経験と学校での勉強で思いついた方法である。


 こうして次々に石も運べるようになって、慶司の方の作業も大詰めを迎えていた。

 埋め立てるには水深が深いので山を断崖を削っていったのである。

 港になる部分には土砂が落ちないようにするのと崩れそうな場所がないようにノルンに調べてもらいながらの作業である。


 まささに一人建築機械であった。

 最後の水脈を調べて井戸を掘り10万人規模の住める一帯を作り出した。

 後の街の建設は数人の代表を選んでまかせ、時折連絡を取ればいい。

 最後の作業として農耕地用の地面の耕作を行っていた。

 そこにエル達が到着したのである。


「ふむ、ここまで作り上げておれば後は任せられるな」

「そうだね、以前マリシェルに頼まれた都市計画書の焼き直しだけど、いい町に出来ると思うよ」

「これは、すごいですね」

「既に井戸もあるし、生活に不便はなさそうだ」

「ここまで作るのは正直竜族でも厳しいのじゃ」

「そうなると対岸もちょっと見てきたほうがいいかな」

「計画書は渡してあるのじゃろ、なら問題はあるまい」

「まあ、その内暇を見つけて見に行ってみるか」


 ミレーヌはウルウルとした目で見てるが、慶司としたら魔法の練習を兼ねてと、この次に作るであろう聖地の都市の前段階なので、大したことをしたつもりは無かった。

 ある意味ここまで力があって、出来ることをしてしまっただけなので感覚がずれて来ているのだ。


「ここにも聖竜教の支部を作って良いでしょうかっ」

「それは勿論ですよ、できればこの現地の人から選んでもらって責任者を送ってもらう事は可能ですか」

「問題ありません」

「それとそこで身寄りのない子供達を引き受けてもらいたいのですが」

「それこそ私たちのなすべき事ですわ、仕事と基礎教育を与えて自立をさせるための寺院とします」

「お願いしますね」


 それから三日間程は仮設のテントや食料の運搬などを手伝いながら過ごした。その間に、兵士たちには此方の警邏の担当を頼み、数名の現地採用も認めて治安の管理を任せた。領地責任者の侍女隊の人も来ていたので、住民の代表を含めて街づくりの基本と設計図を渡して港の早期開港を目標として貰う事になった。それは後にブレシングと名付けられた都市の始まりであった。


慶司の下へと来客が訪れたのは、明日にも出立するという時だった。


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