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王都での陰謀

 昼食時にはセリーヌへの料理教室が開催される。

 唯一の救いは味音痴ではなかったことだろう。

 空中で野菜を切り刻んだのは誰も教えなかったからだ。

 そう信じている。

 慶司は料理人ではないのでこの分量で決定というレシピは持っていなかった。

 頭の中でこの材料と材料を煮ればこの味で、焼けばこの味になるからこう作るんだ。

 そう頭の中で味を再現しながら料理をするのだ。

 料理方法でこう味が変わるんだよ。だからこうなってね。などという初心者向きの教え方を知っている訳ではなかったので、その辺りは申し訳ないがミランダさんに丸投げとなった。

 先生と生徒の関係が成り立たないのだから仕方が無い。

 先生と呼ばれてしまうことになったけど。


 今作っているホロホロ鳥のワイン蒸しなど完全に自分の知らない味を理想を込めて作っているのだ、出来上がりは違う味になる可能性すら存在する。

 味見をして美味しければ正義。

 何故この料理になったのか、ワインを飲む機会が無い為である。

 慶司は飲んでも酔わないが襲撃を考えれば当然の処置だ。

 よってワインを何に使おうかとなったので酒蒸しの要領でやってみる事になった。クッコの実とギネの球根をを磨り潰したものとに朝からつけていたホロホロ鳥、先ず表面だけをかりっと焼いてそこにワインをいれて火力を弱めつつじっくりと蒸す。大量にワインを入れると煮込みになるので少量づつ入れていく。火が通ったら肉を器に避けて塩、胡椒、漬け込んでいた実と摩り下ろしたギネの球根、醤油数滴、柑橘系の果物の絞り汁を入れてさくっと混ぜて味を見てかけたら出来上がりである。

 大雑把に言えば調理方法は生の物を出すか、焼く、煮る、蒸す、揚げるしかない。細かくすればさらに分類できるがあとは組み合わせになる。

 料理は素材五割:下準備四割:調理一割ぐらいの割合である。

 戦争は戦う前に勝負が決まっていると誰かが言った、そう調理する前に殆ど味は決まっているのだ。

 材料を知り調理方法を知れば美味しい料理は作れる。

 実際この三日殆どの料理をセリーヌ(補助ミランダ)で作っているが問題は無い。


 そして昼食の時間も終わって移動を開始してから四時間程経ってから刺客達が現れた。

 前回二十一人での襲撃を失敗している、完全に形振り構わない人数が集まった。

 未だ前回南へと向かわせた連中が戻ってきていないためブルトンに居る黒狼全員では無いし、全員の投入が必要とまでは考えなかったのである。たった八人の襲撃に総力を上げるまでは考えなかった。失敗するとは思わないが他の仕事も請けているし、他の組織に出し抜かれる可能性もあるのだ。

 そして、そこまでがブルトンを預かる頭目の危機察知能力の限界だったとも言える。

 四十人で皆殺しにして来いと、もし、南からの報告があれば何故騎士団が壊滅したのに関わらず一団が潰されたのか確認するぐらいは出来たかもしれない。

 だが、そんな非常識な可能性など頭に浮かばなかった事が致命的なミスに繋がるなど誰も考えなかった。


(御主人様、敵いる沢山です)

(わかった、シルフィ)

(はい、偉いわねウラヌス、数四十、前方が三十人後方から十人です)

(ワフッ偉い、嬉しい)


 さて、流石に街道でこの人数は本気すぎるだろう。


(後方十人以外にさらに先では)

(見つかりません)


 十人か、エルとエイミーも戦えば切り抜けられる数ではあるな…


(弓とか飛んでくると厄介だな、処理を頼むよ)

(お任せを)


 早速この仕掛けを使う事になったか…

 というかこの為に用意したわけじゃないんだけどなあ。

 新しい荷馬車は元々車輪が稼動するというとんでもない性能の馬車だった。

 だがこのとき慶司の発動した魔術で全員が目を見開いた。

 馬車が宙に浮いたのである。


「「「「はあぁっ」」」

「これが隠してた改造だよ、魔力も大量に使うから普段は使えないけどね、コントロールはエルの魔力なら十二分にできるから任せるよ。これなら荷馬車の重さを気にしないでホルスに曳かせられるでしょ」

「これはなんというか…」

「面白すぎるのじゃ」

「その場で回転も可能だよ、この仕掛けを知ってたのは俺だけだから、作った人もなんで布を底に仕込むのかまで理解して無かったし、車輪が埋め込まれるようになってたのかも理由は説明してないから知らないんだ」

「空は飛ばぬのかの」

「そこまですると魔力消費が激しすぎるね、コントロールが難しくなるから思案中だよ」

「なんというか、信じられ無い物を作られますわね」

「緊急用の装置なんで内緒でお願いしますね」

「了解です先生」

「じゃあ全速力で反転したあとは後ろの十人を頼むね、前は引き受けるから」

「え、先生でも数が」

「まぁ慶司殿が言うならば問題無い、話したじゃろウィルソルカンポの話を」

「確かに、ではお気をつけて」

「安全なところで待機してて下さいね」



 急に反転して遠ざかる馬車を見て、襲撃に気付かれた事を悟った指揮官は一斉に突撃することを命じた。

 だがその前に一人の男が残っているのが見える。

 死兵となって食い止める気かと嘲笑った。


「【明王憑醒みょうおうひょうせい】」


 そこからは地獄の始まりに等しかった。

 蹂躙されるがままの戦いと呼べるものでなかった。


 慶司が【竜鳴】を使わなかった理由は地形を荒らさない為。

 もし対応不能と見れば確実に使っていた、ただそれだけである。


 走り抜けようとする者は、二臂から【焔《焔》】を投げられ焼き殺される。

 倒そうと近づく者には両手に持った二本の太刀で切り裂かれた。

明王憑醒みょうおうひょうせい】はまだ完成した魔法ではなかった。

 慶司の中ではさらに二臂を追加してコートを使わない六臂の状態を想定作っている。

 現状では二臂をだして【竜撃ノ拾八識無我りゅうげきのじゅうはっしきむが】と【竜翼】を一度に発動しているだけである。

 目的は黒竜相手の戦闘の可能性や軍との戦闘用である。

 四十人相手で発動する魔法ではない。

 しかし、一人も逃さない、早く片付ける、その二つを目的とした慶司の意志の表れでもあった。


 余りの凄まじさで逃げ出すものが出た。

 いくら組織に殺されるといえど、今この場に居れば死ぬ事だけは確実だった。

 だが一人として逃さない。

【風刃】【焔】【神威かむい】と魔法が繰り出された。

 試し打ちの【神威かむい】で跡形も無く吹っ飛んだのは慶司にとってもちょっとした誤爆程度だった。

 先日のバシリスク戦で、使える魔法が無い事に気が付いて考えた魔法だ。

 思った以上に効果があったと確認できたのは思わず撃ったが良かった点でもある。

 簡易複合型【竜鳴】のような魔法だが、腕で投げつける無茶をするので二臂がないと使いたくないのが欠点である。火、風、雷、土を一斉に使い、攻撃力の塊を作って投げるので腕で狙いを付けるのが一番メリットが大きい


 殲滅に時間は掛からなかった。

 逃した刺客が居ないことを確認した慶司は即座に馬車へと飛んだ。

 慶司が到着したときには既に戦闘は終了していてエルとエイミー、そしてウラヌス達が活躍したらしい。

 黒狼ブルトン王国支部は壊滅させられたに等しい打撃を受けた。


 その報告を聞いて焦ったのは聖教会派の貴族を裏から操るデブル公爵だった。

 ブルトン担当の黒狼頭目は現状の戦力では厳しいと告げ、依頼を達成する為だといい国外へ向かった。


「不味いぞ、小娘がっ、黒狼を退けるなんて」

「デブル様、どうされました、まさか」

「我が領地のほうで白狼傭兵団が足止めされていますが、なにか関係があるのですか」

「くそ、あの小娘を始末する依頼をした黒狼が失敗をした、もうすぐ王都へ戻ってくる」

「なんと」

「こうなれば別の組織を動かすか、直接領内の兵を率いて戦わねばならん」

「時期を見直されては如何か」

「駄目だ、女王が死ねば現状では確実に王女が即位する、王子ならまだしも…」

「ですが、王子の篭絡も今一つですぞ」

「こうなれば最後の手段にでるまでよ」

「まさか王都では殺せませぬぞ」

「ッフ、最後の手段と言っただろう、こうするのだよ…」

「そんな」

「しかし、確実ですが…」


 三人の貴族はさらに計画を練りいかにすれば自分が優位に立てるかを話し合った。

 さらに自分達の下についている貴族にも根回しする事を決めて嗤いあった。


「ククク、これで全て片付けてくれる」


 デブル公爵の暗く低い声音が響き渡った。





 その後襲撃もなく二日後の夜に王都に辿り着いた。

 慶司達は護衛として特別に王宮へと入ることが出来た。

 通されたのは来賓用の部屋であった。

 石造りの王宮である、板の間などはなくソファに腰掛けて休憩をとり、今後の対策を話し合う事になった。


「これで一安心できるな」

「気が早いのお、ルージュ」

「なんでだ、ここまでくれば安全じゃないのか」

「まだ王宮でも危険はあるってことだにゃ」

「貴族が敵なら色々仕掛けて来る可能性もあるよ」

「失礼します、慶司様宜しいでしょうか」

「どうぞ」


 部屋へ入ってきたのはミランダであった。

 服装が若干変わっているのは侍女としての正装に着替えたようだ。


「どうしました」

「はい、女王陛下が今回の護衛について是非ともお礼を申し上げたいと」

「そうですか、たしかお体の具合が悪いと聞いていましたが」

「はい、私どもが使節へ向かう少し前から体調を崩しておられます」

「なるほど、ミランダさんは見てみて確認をして欲しいと言う事ですね」

「仰るとおりです」

「ですがエイミーにしろ薬剤の知識はありますが…」

「ええ、でも何かわかるかもしれませんので」

「判りました、どちらにしろ招かれて辞退することでもありませんからね」



 慶司達はミランダに案内されて女王の待つ寝室へと案内された。

 部屋のなかにはシャーリイとヘンドリックも居て旅の報告をしているようだ。

 もう一人幼い感じの男の子がいるが、この子がアレクスなのだろう。


「渡良瀬慶司様、エルウィン様、エイミー様を御案内して参りました」

「ありがとう」

「初めまして、白銀の翼の渡良瀬慶司と申します、そして妻のエルと仲間のエイミーです」

「エルウィンじゃ」

「エイミーです」


 ああ、エルはやっぱりその態度なのか…まあ王族と同等か各上の存在だから致し方ないのだが。


「初めまして、シャーリィの母であるシャルロットです、今回のシャーリィの帰国に関しては簡単に聞いただけでも貴方たちが居なくては無事に戻って来れなかったことでしょう。心より感謝を」

「たまたま出会う機会があって知り合いになったのがシャーリィ様達だっただけですから御気になさいませんように」

「うむ、妾達はシャーリィの心意気について来た只のお節介な冒険者と言う事じゃ」

「と云う訳ですにゃ」

「フフフ、でもそれだけでお起しになった訳ではありませんでしょう、慶司様は聞けば討伐金10を持つお方、そしてエルウィン様、貴方は…これは構いませんか」

「構わぬぞ」

「と言っておりますので問題は無いかと」

「アルザスの支配者、白銀竜のエルウィン様ですね」

「「えっ」」

「ってどうしてミランダは平然としてるの」

「薄々ですが、思うところが御座いましたので」

「ッフッフッフ、我の正体を良くぞ見破った」

「エル、その言い方は違うからね、意味はあってるけど、というか隠せてないけど、この場合は見抜くだね」

「ッフッフッフ、我の正体を良くぞ見抜いた、うむしっくり来るな」

「ところで女王陛下」

「慶司様、堅苦しくないようシャルロットとお呼び下さい」

「では、シャルロット様、今回の件お聞きかとは思いますがデブル公爵達聖教会派の仕業だとして、お体の具合が悪い件ですが何かしらの毒を盛られているかと存じます」

「やはり、そうですか…」

「私も詳しく医学薬学に通じている訳ではありませんが時期と病状を見る限りは…疑うべきはまず医師からの処方薬が間違っている事か相手方についている可能性ですね。後は食事から摂取する可能性もあります」

「私が知ってる症状でも普通の病気じゃないと思うにゃ。女王様みたいになる毒があるとしたら…冷え症に効く薬の用量を間違えて処方したときかにゃ、でもお薬は間違えた量をとると体を壊すにゃ」

「一度医師の背後を洗って見ますわ」

「それと食事と飲み物を私たちで用意しますので…」

「判りました、よろしくお願いします」




 次の日から医者の背後関係の調査がミランダによって進められることになった。

 慶司達は食事の用意をする。

 シャーリィの身辺しはルージュとヘンドリックが常に付き添い警戒はしている。

 食材に関しては【幻日環回廊げんじつかんかいろう】を使用して水も含めてリヒトサマラから取り寄せた。

 病人食とはいえ、やはり匂いや味で食欲の出るものがいい、お粥やうどんを中心に献立を考え少しずつ滋養に効くとされる物を使っていった。毎食お茶をだして利尿作用で体外に毒を排出させることと、少し水を加えて練った竹炭の粉から作った丸薬を呑んでもらった。ウェンディにも協力をお願いして体内活性の魔法を使ってもらった。

 この間にシャーリィは時期女王の戴冠準備をしており、聖教会派の刺客を懸念していたが現れることは無かった。

 弟のアレクスとも慶司は話す事があったが最初は警戒されていた。

 聖教派からくる懐柔などで人間不信に陥っていたのだから仕方が無い。

 しかし、自分の母親の様子が少しずつではあるが回復している事と自分を懐柔し姉との仲を引き裂こうとしていないと判るとものすごい勢いで懐かれた。

 なにしろ毎回のように料理を作っていると現れて手伝うのである。

 王子に料理をさせるってどうなんだと一瞬考えたことは考えたが、無邪気な表情をみると気を使うのを辞めてしまった。


「よし、アレク灰汁取りはそれぐらいでいいよ、その出汁にご飯をいれてお粥にしておいて、リュコルの摩り下ろした物を入れ忘れないで」

「わかった」

「あとはプレの実を解して小皿に盛ってと、茶碗蒸しもできたし、そのお粥が煮えたら溶き卵を入れて蓋をして持っていこう」

「今日もお母様と一緒に食べていいかな」

「気にしなくていいと思うんだけどな」

「でも王子たるもの、何時までも母親と一緒に居るものでは無いって」

「家族ってのは一緒にご飯を食べるものだよ」

「そうかな、じゃあ視察で出てる父上も帰ってきたら一緒にご飯食べれるかな」

「大丈夫さ」


 こうは言ったが、その父親のジェームスさん、ミラン大公にはまだ会っていない。

 貴族達からは国王になれと突き上げられ、逃げるように国内視察へと出たらしい。

 視察を薦めたのはシャルロットさんで疲れている様子だったので気晴らしも兼ねてと送り出したそうだ。

 ミラン大公と呼ばれるだけあって元々が王族に連なる一族で元は公爵家だったらしい。舞踏会で出会った二人が恋に落ちて結婚するにあたり周りは王として立つ資格がある人物が現れた事で対立が起こった。

 その際にジェームスさんは決断として王の地位にはならないと決めミランという元の公爵家の名で大公となる事を表明した。

 これが女王の長期の病床という事態で再燃し、国王を望む聖教会派の貴族による連日の嘆願攻勢となった訳である。


「僕も早くミラン家をついでややこしい話を無くしたいんだ」


 アレクスはほとほとウンザリしたと言った表情でそう慶司に語った。


「だいたい姉様が使節に出るのだってお父様が押し切られるのがいけないのさ」

「なんていうのかアレクスは良く理解してるね」

「そりゃ王族ではあるからいろいろ教えられるんだ、それで大体が僕をだまそうとするわけさ、お姉様が使節に赴いた時も『これでブルトンの新大陸開拓も上手くいきますぞ、よかったですな』なんていう貴族が居たけど実際に彼らが思ってるのは違うんだ。竜族についてもしきりに聖教の教えを信じさせようと頑張ってるのさ、王族は竜族と仲良くしたいし、5代前のベス様の時から竜族のおかげでなんとか人は生きてる事を理解してるんだ、彼らは自分の利益を失う事と自分の権力や自尊心を満たす為だけに僕を唆そうとしてるんだ」


 まだ10歳でここまでしっかり見抜くのは王族の才能かもしれないが、これではいけないなと思った慶司はよりアレクスと遊ぶ時間を作ることにした。

 元々姉の稽古や乗馬などに付き合う事を好んだアレクスである。

 ウラヌすに乗せた時など興奮しすぎて鼻血がでて恥ずかしがった程である。

 さらにまだ輸入されていない玩具も竜具屋の力でリヒトサマラから取り寄せて一緒に遊んだ。

 後年チェスの名手と呼ばれたミラン公が誕生したのはこのときの出会いが切っ掛けだった。


 そして1週間が過ぎて女王の体調も以前よりよくなりテラスに出るぐらいになった頃、医師の背後関係が調べ終わった。

 慎重に調べた結果恐らくは何者かに脅されている可能性が浮上したのである。

 医師にはそのまま診察を続けさせていたし投薬として出す薬も受け取りはしていたのだ。

 そしてムーサの鑑定の結果が黒だった事もあり泳がせることになった。

 医師としては困惑の極みだったに違いない。

 処方した薬を飲み続ければ、死亡しないまでも食欲がなくなったり肝機能が低下する副作用を重点としているはのだから顔色が良くなるはずは無い。それに風邪薬と冷え性改善の薬として処方しているのだそれぞれの薬を調べても不審は無い。

 それが良くなっているのではないか。

 そう思って早々に王宮を辞そうとしたところで一人の女性に捕まえられてしまった。


「さて、質問です、貴方は誰に頼まれて女王に毒となる薬を処方されましたか」

「はて、なんのことです、私の処方しているのは風邪薬と冷え性改善の薬ですが」

「そうですね、そしてこの調合の内容を調べさせました。勿論最初の段階でもそれぞれの薬は調べられていましたが二つを合わせての検査まではされていない、この意味はお分かりですね」

「なにをっ」

「ウフフ、リヒトサマラで検査が済んでいます最高の薬剤師からこの状態で服用すれば副作用として食欲不振、肝機能障害、下手をすれば手の痺れや麻痺、ギリギリの量であると。そしてばれにくいように作られていることも判明してるんですよ、まさか王宮医師の貴方が二つ合わせて服用しての危険性を知らないはずがないのですよ」

「わ、私の家族が、捕まって…断ったら妻が殺された。次は息子が…」

「それで暗殺を決意したと」

「いや、この薬で確かに体調は悪くなるが死亡させるほどでは無いんだ」

「でもそれは場合によっては、ですわね」

「だが、そうするしかなかったんだ…ああ、これで私は終わりだ」

「依頼主は誰ですか」

「判らない…、息子は一週間に一度だけ深夜に覆面をした男達に連れて来られる」

「次の夜は何時ですか」

「明日です」

「よろしい、では女王の様態は未だ回復せず、よろしいですね」

「それは…」

「いいですか、貴方は通常ならここで死刑を宣告されてもおかしくは無いのです」

「……そう、ですね」

「ですから此方の指示に従っていただきます、女王は回復していなくて貴方は仕事をこなしている。その間に私たちが背後を調べます」

「私の罪は償います、死んでも構いません、ですからどうか息子だけはっ」

「最善の努力はしましょう」



 こうして医師の背後にいる人物を探す事になった。

 慶司とミランダが担当することになったのだが、ミランダの動きに慶司が驚いたのはこの時である。

 やはり最初にミルトで感じた気配や視線は彼女だったのだと妙に納得もできた。

 それほどまでに気配の消し方から追跡の仕方まで堂に入った動きである。

 さすがシャーリィの護衛を兼ねるだけはある。もしかするとルージュより強いのでは無いだろうか。

 聞いて見たいが微笑み返されて終わりそうなので諦めたのだ。

 あの手合わせをしてるという話も実情は違って、近衛兵への指導教育ではないかと思える。

 あれ…もしかしてら竜王格闘杯(D・L・F・C)でミランダさんがいたら優勝してたんじゃ…


『慶司様、なにか変なことをお考えでは』

『たいしたことじゃないですよ、ミランダさんが竜王格闘杯(D・L・F・C)に出てたら優勝狙えただろうなと』

『フフフ、流石に慶司様を差し置いては無理ですわ』


 それは、準優勝はするぞと言ってるのと同じです。


『私の武術は主を守る為にのみ使用するものですし、大会には向きませんわ』

『向かないんですか』

『ええ、仕留めるための技術のみを磨いてきた一族ですので』

『不謹慎ですがまさに護衛の一族ですね』

『やはり慶司様は面白いですね、この話をすれば暗殺者と思われてしまいますのに』

『護衛する人間は暗殺する方法にも通じていないといけませんから当然ですし、護衛する技術で相手を無力化する最善は素早く相手を仕留めることですからね」

『やはり残念ですわ…結婚されてるのが』

『そこは諦めてくださいねっ、おっと来ましたね』

『あの馬車ですか…』

『先ずはあの馬車に魔素の込めた種を仕掛けて、ウェンディに報告してもらいましょう。

 位置は上空にいるシルフィからで二通り用意したら問題ないでしょう』



 医師の邸宅を離れた馬車は数度に渡って路地を曲がり尾行の有無を確認した後に大きな屋敷へと吸い込まれていった。


『ここは…ハッケル男爵の屋敷』

『たしか聖教会派の一人ですね』

『これでデブル公爵との繋がりが確認できましたね、ハッケル男爵はデブル公爵の手下とみて間違いありません。これまでの調べで確定しています』



 そのまま踏み込んで救出はできても関係を問いただす事が出来ない。

 その為慶司とミランダは一旦王宮へと戻り対策を話合うことにした。

 これは仕方が無い判断だった。

 ここでこの判断をしてもこの先に待ち受けている出来事にはどうする事も出来なかったのだ。

 慶司はシルフィに男の子の警護を任せて帰途についた。


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