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異世界見聞録―黒髪の青年と白銀の少女の物語―  作者: せおはやみ
トラブル・道連れ・世は情け
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金の矢を放つ者

 キーファ村で一夜明けて。

 夕方前まではこの村で過ごしてから都市へ戻る事になった。


 そして慶司はというと、子供達に捕まっていた。


「兄ちゃん俺にも作ってくれ」

「わたしも欲しいにゃ」

「俺も俺も」

「俺が先だぁ」

「私にも下さいにゃ」


 子供との遊び道具、ここで竹蜻蛉を作るところが慶司である。

 竹蜻蛉を人数分削って、竹馬を作り始める

 水鉄砲は季節的にちょっとあれだしな、

 空を自由に…なんちゃ…うぉぉ、

 キタぞ俺、これぞ閃き。


「ッハッハッハ解決したぞ」


 子供もポカーンとした顔である。

 それはまあ済まないが、今は閃きのほうが重要だ。

 気分転換になったというか、新しいヒントを得た瞬間である。

 そう地面が揺れるなら飛べばいい。


 せっせと竹馬を作っていく。

 竹馬は2種類。

 竹の棒と足を乗せる部分の組み合わせた物。

 竹の筒に穴を開けて縄をつけた物。


 さらに釣竿を作って近所の川まで釣りに出かけた。


 子供はエネルギーの塊みたいな物だから疲れて寝るまで動く。

 一日中走り回って、お昼ねに入ったところでお暇する事になった。


「いや、遊んでくれてありがとう、面白い玩具まで作ってもらって」

「こちらこそ息抜きが出来た上に問題が一つ解消しましたから」

「え、そうなの」

「ええ、揺れるなら揺らさなきゃいいと気がついて」

「はあ…」

「それではまた伺います」

「では、また来るのじゃ」

「また帰ってくるにゃ」


 こうして慶司達三人はグラームへと戻っていった。

 そして都市の入り口で出迎えを受ける。


「アニキ、来ましたぜ」

「おう整列だ」

「「「お帰りなさいませ兄貴」」」


 なんだか良く判らない状況である。




 総勢20名の男達が両側に別れて出迎えている。

 あれ、先頭の人…たしか黒熊騎士団《ガレル騎士団》の…

 誰だっけか、うん筋肉の人だ。


「兄貴、このグレン以下50名の黒熊騎士団ですがどうか配下に」


 そうそうグレンさんだっけ…


「いや、突然どうしたんですか」

「兄貴にぶん投げられまして、このグレン今まで何を鍛えて来たのかと恥じ入るばかりで御座います。何卒一つ兄貴の子分として鍛えなおしたい所存」

「いや、子分とかは取ってないんで」

「そこを一つお願いいたします、この筋肉こそが誇りでした、しかし兄貴には通用しませんでした。どうか弟子として末端の席を…」

「弟子も取ってないですよ」

「そ、そうなんですか…あの、白銀の翼の慶司さんで合ってますよね」

「ええ間違いないですが」

「そのお弟子さんがいるとお聞きしてるんですが」

「その情報は間違いですよ、友として冒険者の仲間はいますが弟子はいないですよ」

「うぉぉ、じゃあどうすれば…」

「とりあえず通行の邪魔になりますし、他の方もいきなり弟子だと何だと言われても困るでしょうから。一旦落ち着いてお話をしましょう、一度宿に戻りますから待ってて下さい」

「では自分だけお供させて下さい」

「判りました」


 50人の弟子とか取れるかっ、と言いたいのが本音である。

 若干エルもエイミーも何事かと呆れているし…

 悪い人じゃないんですと言われても押し掛け弟子ってのは、どうなんだろうか。


「じゃあ、ちょっと話を聞いてくるよ」

「ふむ、弟子を取るなら月謝を忘れないようにの、フフフ」

「いってらっしゃいにゃ」


 良くわからないけど励ましてくれてるのだと思おう


「兄貴、お待ちしておりました」

「まず、その兄貴というのは辞めましょうよ」

「いえ、今後どのような事があろうと兄貴が俺の上である事に変わりありませんよ」


 聞けばグレン、オッサンのように見えてまだ23歳である。

 老けすぎだろう、とは言わないが35歳には見える。

 変に髭を生やして、頭を剃って筋肉だらけだからか…


「俺は村の周辺の奴等を束ねて黒熊騎士団ガレルきしだんを作りました、いつかはあのガレルさえも狩れるようになりたいと、そう考え日々体を鍛えこの筋肉を手に入れ、喧嘩しても負けること無しで此処まで着ました、冒険者が多いことで有名なこのグラームならば名を上げるには持ってこいだと思いまして」

「それでどうして俺の子分とか弟子とかって話になるのかな」

「俺を倒したのが兄貴、いや慶司さんだけだからです」

「うーん、倒したっていうか、あの時は中に入ろうとしてただけだしなぁ」

「その体格で俺を吹っ飛ばしたんですよ、自慢じゃないですが俺は喧嘩で負けたことがありません」

「そりゃそれだけの体格してればまずまず喧嘩をふっかける奴もいないでしょ」

「それが慶司さんは俺を意図も簡単に吹っ飛ばしたんです」

「冒険者として強くなるなら別に俺に弟子入りする必要はないと思うんだけどな」

「いえ、俺は頭が悪いから難しい事は判りませんが、今の冒険者で最強なのは慶司さんです、ってことは慶司さんに学べばもっと有名になれる、そうすれば故郷に錦も飾れるってもんです」


 うーむ、なんとも納得し無さそうだぞ…


「そうすれば大会の優勝はしなくてもセンシアと…」

「えーと強くなるのはもしかして女性と結婚するためとか」

「なんで判ったんですか兄貴」

「いや、今グレンさんが言ったんだよ優勝はしなくてもセンシアとって」

「え、そうでしたか」

「うん」

「はい、実は俺は好きな子がいるんですが、村で一番の美人で…

 こんな俺がその子と結婚するには強くなるぐらいしか思いつかなかったんです」

「えーと、その付き合って欲しいとか、その手の告白はしてないの」

「そんなことしたら振られるじゃないですかっ」


 オウフ…

 どうする、どうすればいいのだろうか。

 一難去ってまた一難…

 せっかく耐震問題に蹴りが着きそうなのに…

 人の恋路の相談を受けるにも…この世界の常識がわからないぞ。

 結婚はしてるけどな。


「告白しないと相手が自分を好きなのかどうか判らないじゃないか」

「いえ、俺は見た目がこれですから好かれてないのは間違いないんですよ、村にいたときも目が合ったらそれだけで顔を真っ赤にして走っていくし、まともに話してたのなんて子供の時だけで」

「えっと、じゃあどうして強くなって結婚がどうとなるのかな」

「俺の親父がお袋を捕まえたのも俺が村で一番強かったからだと教えてくれましてね」


 親父よ、間違えた知識を与えてるぞ、あれでもどうなんだろう…


「その聞いてもいいのか判らんがお母さんは美人なのか」

「ええ、俺の顔からは想像つかないですよ」


 おい、この世界は力こそモテ度なのか…


「お母さんは何て言ってたんだ」

「お袋はその話を聞くと笑ってましたね」


 わからんが、グレンさんはどちらかと言えば単純なタイプだ、

 言いがかりも自分中心とはいえど正義感から突っかかってきたし…


黒熊騎士団ガレルきしだんって近隣の若い人達はどうやって集めたの」

「俺が冒険者になるって言ったら着いてきちまって…知らない間に大人数になってたんで」

「親父さんって何してる人なのかな」

「親父ですか、昔は冒険者してたらしいですけど、今は待ちの自警団の団長やってますよ、お袋と結婚するために村に残る為だったとか言ってましたが」

「やっぱりお母さんは笑ってた」

「なんで判るんですか」

「なんとなく…かな」


 うん、相手の女性を知らないが…さっきの逃げる様子からして可能性はあるよな。


「グレンさん、まず優勝したから惚れられるなんて考えは辞めよう」

「ええ、じゃあどうやって惚れてもらうんですか」

「それはグレンさんのいいところを知ってもらうしかない」

「そんなとこありますかね」

「グレンさん…まあ見た目を何とかしたいとこだが、どうして頭を剃ってるの」

「その方が強そうだから」

「…、それでなんで強くなりたいの」

「いざという時に好きな相手を守る強さが男ってもんだからです」

「じゃあ優勝したいのは」

「センシアの為です」

「守りたい相手は」

「センシアです」

「一緒に居たいと思うのは」

「センシアです」

「体を鍛えたのは誰のため」

「センシアの為です」

「冒険者になったのは」

「センシアの為です」

「ほら、そこまで1人の女性を大切にしようと努力してるじゃないか」

「これが俺の好い所ですか」

「うん、それに好きか嫌いかを地位で引き付けるってのはどうも違う気がするし、魅力的な女性なんだったら一度は正面からぶつかってみるのが男だろう」

「うぉぉぉ、そうでした、男は真っ直ぐいきなくてはいけませんでした」

「それも親父さんかな」

「いえ、お袋からです」

「一度告白してみて、駄目だったら磨けばいいじゃないか、それに今でもお母さんはお父さんの事が好きだと言ってなかったかい、そして親父さんも鍛えてるだろ」

「ええ、わかりました、俺一度村に戻って告白してみます、駄目だったら惚れてもらえる男になるべく鍛えなおします」

「上手くいくことを祈ってるよ」

「はい、兄貴、やはり兄貴は俺の兄貴です」

「ハハハ、まあ相談には乗れるから、いつでも来てよ暫くはあの宿にいるさ」

「はい、村はこのグラームの南にあるんで、今から行って来ます」

「じゃあ、プレゼントぐらいはなにか買って帰ったほうがいいよ、上手くいったら思い出になるような物がいいと思う」

「なにがいいのですかね…自分はそういうのが苦手で」

「気持ちが篭ってればなんでもいいとは思うけど…、そうだね髪飾りとかペンダントとかはどう」

「わかりました、有難う御座います、グレンただいまよりいって参ります」

「頑張ってね」


 上手く行くか行かないか、神のみぞ知ると云う程ではないだろうが、相手の事を知らないからな…

 祈るしかない…

 上手く行かなかったら、酒でも奢ろう…

 人の恋路に首を突っ込むほど野暮な事もないのだが、なぜか相談に乗ることになった慶司だった。


 次の日、緊張した面持ちのグレンが自分の村に帰った。

 そして意中の相手であるセンシアを呼び出したのである。

 色々科白を考えてきたグレンだったが彼女の前に立つと全てが吹っ飛んだ。

 付き合って下さいというつもりだったのに声に出たのは違う言葉だった。


「俺と結婚してほしい」


 俺は、俺はなにを言ってるんだ…兄貴…おらぁもう駄目だ…


「ひゃい」


 幻聴か…いい人生だったぜ…

 あれ、なんで差し出した髪飾りをセンシアがしてるんだろう…


「その、不束者ですが宜しくお願いします」


 お、俺は夢、そうか白昼夢を見てるのか…

 違うだろおおお


「本当か、俺でいいのか」

「グレン、ずっと待ってたんだよ」

「え」

「小さい時から一緒にいて、何時も私の事を守ってくれてた、その腕の傷だってドヌルを追い払う為に」

「これは、俺が弱かったからだ」

「ううん、10歳の男の子がドヌルには勝てないわ、それから何時もグレンは稽古ばかりしてた」

「そりゃ、俺が強くなきゃ守れないからだ」

「うん、知ってるわ、だけど一緒に遊べなくなって詰まらなかったのよ」

「そうか、すまなかった」

「でも、アタシのために頑張ってくれてたんでしょ」

「ああ、全部センシアの為だ」

「ずっと、ずっと待ってたんだから」

「俺が何のために頑張ってるのかそれを伝えるべきだと教えてくれた人が居たんだ」

「じゃあその人のお蔭ね、愛してるわグレン」

「俺もだセンシア、一生お前を守れる男であり続けるぞ」

「ありがとう、でも無茶はしないでね」

「ああ、これからは黒熊騎士団ガレルきしだんはこの村を守る為に活動する。もうどこかに行ったりしないさ」



 上手くいきましたとグレンがセンシアをつれて挨拶に来たのはそれから2日後であった。

 両親にも挨拶を済ませて、結婚するんだそうだ。

 センシアさんからもお礼を言われたが、うん、何はともあれ良かったと思う。



 慶司は新しい校舎設立の設計図と魔術特許の申請をする書類を書いていた。


「主様よ、恋の掛け渡しまでするとはなかなかやるではないか」

「うーん、たまたま上手くいきそうな人達だったからね」

「ふむ」

「グレンさんは真面目一筋のタイプだし、絶対に相手もあの人の気持ちは知ってるはずだと思ったんだ。隠し事は出来ないタイプだよ、その上で、顔を赤くして逃げるのは怒ってるわけじゃなく恋してるか、照れてるかどちらかだと思ったんだ。まさかいきなり結婚してくれと言うとは思わなかったけどね」

「主様はもっと鈍感だと思ってたのじゃ」

「酷いなぁ」

「我を時折心配させるからの」

「よし、心配しないで済むようにしてくれる」

「アハハ、そこはくすぐったいのじゃ」

「ッフッフッフ擽ってるから当然なのじゃ」

「アー駄目じゃそこも堪えられぬ、反撃じゃ」


 仲の良い二人であった。

 学校の書類を脇において、二人はそのままベットに入った。

 この世界には恋の天使は存在しない、だが人の恋など天使が居なくても成り立つものだ。

 慶司は二人の幸せをいのりつつ、愛しいエルの寝顔を眺めていた。


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