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異世界見聞録―黒髪の青年と白銀の少女の物語―  作者: せおはやみ
トラブル・道連れ・世は情け
38/105

盗賊達の挽歌― 街道襲撃―

 ウィルソルカンポの大群を片付け、村の平穏を保った慶司達は予定通りに出発をした。

 次の村までは5日はかかるという、足の早い馬車でも4日は見たほうが良いらしい。


「焦らず行った方が旅は安全じゃ」

「まぁそうだね」

「ウラヌス達なら4日で着くとは思うけどにゃ」

「天気次第ですね、曇り空ならいいですが、やはり雨が降るとなれば足止めされます」

「旅の速度は慶司さん達にお任せしますわ」

「うむ、我らは任せた身です」


 とまあ、こんな調子で出発する。

 左手に低くなっている山脈があり辿って行くとアルザス。

 右手のほうは草原だがその先は小国連邦になるらしい。

 歩いて草原を越えるとしたら40日は旅を続けないといけないとか。

 まともな地図の無い時代、一旦道に迷うと大変な目に遭うことになる。


 また何処までが何処の支配する国の土地かとなった時

 ここだと明確に決めるものが必要となる。

 ゆえに国境などは川や山などになるわけだ。


 街道を行く限りは迷う事もないので緊張は薄い。


「ウラヌスに乗ってもいいですか」


 とこうなるぐらいである。

 そういわれて振り向いたのは慶司とウラヌスである。

 まさに呼んだか、と言わんばかり、

 慶司がウラヌスを見てみる、するとウラヌスは良いだろうと言わんばかりに速度を落して荷車に併走した


「乗って良いらしいよ、まだ食事の準備までは時間があるからどうぞ」

「ありがとう、慶司さん、それじゃあウラヌスも宜しくね」

「ワッフゥ」


 若干ウラヌスにつけてある鞍の鐙はシャーリイには大きいかと思ったのだが、なんとかなっている。

 鞍にしがみついているから、実際にはアルテの方がシャーリィには良いかもしれない。


「ウフフ、ホルスより走ったら早いかもね」

「俊敏な動きならピレード、速度ならホルス、

 距離も戦闘もピレードが上だね」 

「ありがとう、ウラヌス」


 シャーリィも満足してようである。

 嬉しそうに荷車に戻った。



 ――とある洞窟――

「おっし、おめえら10人いればそこらの商隊は蹴散らせるだろう、いいな赤旗は狙うなよ」

「へいわかってまさぁ」

「いい女はそのまま南への輸送ルートに乗せちまえ、男は面倒なら殺せ」

「合点でさ」

「おら、いってこい」

「お頭、ミト村の方でウィルソルカンポが出たそうです」

「なんだと、クソ、稼ぎがなくなっちまうな」

「ええ忍ばせた野郎も慌てて逃げてきましたぜ」

「よし、西の洞窟に移動するぜ、おめえらも稼いだら西にこい、エトの方にも確認しとけよ」

「ヘエ」



 順調に進んで今日の野営地も慶司が探し、何時ものように獲物を狩りに出かける。

 草原主体でラビ2羽とキョッキョ鳥1羽のみであった。

 小川でハンマーレブを取り、ホルス用の餌を用意し、ウラヌス達の為にラビとキョッキョ鳥を捌いた。

 草原でもドルドはいるし、さらに凶暴なドルド、ペルマという牙持ちの大型のネコもいる。

 さらに沼地のベルドラム、ベルゲータなども注意が必要である。

 肉の処理には気をつけないと獲物を求めた猛獣を呼ぶだけである。

 ご飯を作る前にデザートを仕込む

 海藻の塩分抜きの物を使い餡蜜をつくる

 これが慶司の隠し種を使うもので

 寒天もそうだが取り出した壷の中身が問題である

 果実の摩り下ろした物とスライスした物を、蜂蜜と砂糖で煮込み酒につけた物である。

 煮込み続ければジャムになる手前で止めてある。

 これを寒天で包み、団子小さく作り茹でて仕上げる。

 餡は粉上で作ったものをお湯で戻していく。

 全てを作り終えたら竹の筒へ入れて冷やして完成である。

 おかずはハンマーレブの焼き物とキョッキョ鳥の串焼き。

 パンにスープである

 全員が合流して設営も終わり、ご飯を食べたところで、

「さて、特別に今日はデザート付きです、

 お茶とあうとは思うんだけど、これ」

「なんじゃこの氷のような物は」

「なんかフルーツの甘い匂いがしてると思ってたにゃ」

「氷の中にフルーツを入れたのですか」

「食べたらきっとおいしいのよ、頂いていいですか」

「どうぞ召し上がれ」


 氷のように見える物を恐る恐る口に含む。


「なんじゃこの食感は、ぬ、この果物、うまし」

「おいしいにゃ、ぷるぷるひんやりだにゃ」

「あらあら、まぁまぁ」

「すっごくおいしいわ」

「ふむ、一流の料理人のいる宮殿でも見掛ぬ料理ばかり、いやはや底が知れぬお人よ」


 ひたすら関心してくれるのは嬉しいが照れくさい


「こっそり作って置いた果物の砂糖漬けと、海藻から取ったカンテンで包んでカットした物と、米から作った粉で団子を作って茹でて、小豆を煮て乾燥させ粉にした物と砂糖で餡をつくっただけなんだ」

「この手の料理を食べるだけで、慶司さんに旅の護衛をお願いして良かったと思ってしまいます」

「うんうん、お城でも食べれないわ、まさに一生に一度の贅沢を味わってるわね、私たち」

「ただ、これは以前知り合いにも言ったのですが、食べすぎはご飯もデザートも体に悪いですし、甘い分食べ過ぎれば確実に太りますからご注意を…」

「あらあら」

「うにゅにゅ」

「まあ、我らもそこで悩んだものよ、その分動くという答えに達した」

「そうにゃ、食べたら動く、それで問題解決にゃ」

「そうですね、食べたら組み手をすれば…」

「ミランダこの後寝るまで特訓を…」

「流石に今回だした量なら問題ないですよ」

「「ホッ」」


 それじゃあ、俺は警戒の仕掛けをしてから寝ますねと言って慶司は歩いていく。


「こんな食事を知ると帰国が心配ですわ」

「ええ、ミランダこれは覚える必要があるわ、教えて下さるかしら」

「この料理だけで…街、いや都市を築く財がなせますわ」

「そう…」

「何を深刻な顔をしとるのじゃ、料理なら覚えればよい」

「そうにゃ、変わったレシピは覚えて帰るといいにゃ」

「いえ、この料理だけで都市が立ちます、支払えるものでは」

「なんじゃ、そんなのいらないと主様は言うに決まっておるわ」

「多分その通りにゃよ、今までの街でも都市でも隠してないにゃ」

「宮廷で止めておけば問題なかろうし、教えてもらえば良い」

「では不肖このミランダ、明日よりこのデザートなる物が作れるように精進いたします」

「頑張ってミランダ、この料理を食べる事が叶うならやる気が満ちるわ」


 たかがデザートと思うなかれと男性は覚えねばならない。

 デザートの魅力があれば女性は頑張れるのだ。

 シャーリイの守護者として名を馳せるミランダの二つ名、

 芳香の暴風(フローラルテンペスト)の原点である。

 近づく暗殺者は悉く排除し、シャーリィを守護した女性は常に甘い香りがしたという。





 そして深夜、ウラヌスは目を開けた。

 何かが近づいているようだ。

 これはご主人様に知らせねばなるまい。

 ウラヌスは主人の下へと向かった。


「ウラヌス、お前は賢いな、よし皆を起こそう」


 さすがご主人様である、既に気が付いておられた。

 我もアルテとヘリオスを起こし、ホルスの周りを固めさせねば。

 我はシャーリィを守ってやろう。

 敵はご主人様が倒してくれる。


「こんな時間に来客とは、無粋じゃのぉ」

「まったくにゃ」

「ちょっとおかしいね、盗賊が出没してるなら街で情報が貰えると思うんだが」

「そうじゃな」

「まあ、それはともかくちょっとお出迎えするから、一応皆を起こしておいて」

「ふむ、任されよう、主様も気をつけてな」

「出来れば一人は生け捕りにしたいけどね」


 ご主人様は消えるように闇へと入っていった。

 さすがは我がご主人さまである。

 ウラヌスはなすべき事をなす為に仲間の下へと動いた。





「よし、あの火を焚いてる奴等を襲う、見張りがいるだろうから遠距離から弓で狙って殺す」

「へえ、そうなんだ」

「ああ、女は生かしておけよ、見張りが女なら雷撃の杖でいけ」

「ふむ、男なら」

「男なんざ皆殺しでいいのさ」

「……」

「兄貴、此奴は誰でやんすか」

「あん、何言ってやがるんだ」

「こんな奴オイラは知らねえですぜ」


それはそうである、暗い中で話していたのは慶司である。


「おい手前てめえっ、いつから其処にいた」

「ついさっき」

「はぁあ、なんだ此奴は、頭が逝かれてるでやんすか」

「一人、二人、っとあれ一人は帰っちゃったか」

「ちっ、今から仕事って時に変な野郎が、おい縛って転がしとけ、気付かれてねえか覗いてくる」

「へえ」

 兄貴分が野営地に向かっていく、子分たちは命令どおりに取り囲もうとした。しかし既に慶司の糸が全員に絡まっている。魔石を触媒として風の属性魔法を付与された糸が既に漂っていたのである。芯に3本の糸を撚り、4本打ちで編まれた慶司特注の一品は風に漂い刃となる武器としても使用できる。

「ぐはっ」「ぐぁ」「うげぇっ」「…っ」「ぐぁっ」

「「「うわぁぁぁ」」」ドサッ

「おめえら、静かにしろって言っただろう気付かれるじゃねえか」

「…」

 兄貴分は騒がしい奴等だと戻ってくる。もっと静かに仕事しろと言いたい。


「気が付いたから俺がここに居るんだよ」

「おい、お前ら…」


 そこには返事をする部下が居ない。


「てめえ、何しやがった」

「明るい焚き火の方を見て暗闇が見えないみたいだな、盗賊だろ、始末したに決まってる」

「な、なんだと手前っ」

 まさかこの短時間で、そんな、ありえない。

 俺らの最低ランクは狩猟や討伐の鋼の7以上、俺が最高の銀2だぞ。

 8人もの仲間が一瞬で殺られてる、しかも無抵抗に近い…

 これは不味い情況だ。


「なんだよ、お前も冒険者だろ、こっちに付けよ、お頭紹介してやるぜ

 女も抱き放題、酒も食い物にも不自由しねえ」


 男は説得すればいいと思った、金、女を与えると言えば頷かない筈がない。

 そう信じてる、自分だったら迷わず頷く。


「興味がないな」


 信じられない、だがこいつは俺じゃ倒せないのは解りきってる。

 そう考えたのか本能で悟ったのか、

「うわぁぁぁぁ」バシュウウウ

 男は逃げに徹した、通常の相手ならこれで逃げれる。


「煙幕弾か、以外に用意がいいけど、軽い風で払える」


 一瞬で煙が晴れる、何をしたんだ、こいつは魔族でも森人でもないじゃないかっ。


「見逃してくれ」


 そう懇願して逃げるしかない。必死に頭を下げた。


「その科白を言った相手にお前は何をしてきたんだ」


 頭の中に自分のやってきた事が思い起こされる。

 逃げ惑う旅人、犯した女、殺した男。どれもが苦しみ、

 そして嘲笑っていた。


「ひぃ」


 俺は、もうここで死ぬ、あいつらの仲間になるんだと覚悟した。


「始末するより、まずは捕えて仲間の事を喋ってもらうぞ」


 男は捕まえられたら最後なのを理解している。

 仲間を売れば一時助かるが死ぬより辛い処刑が待っている。

 自分の女を殺された仲間、笑いながら命じる頭。

 俺も笑って処刑していたからわかる、切り刻まれ生きたまま獣の餌にされる。

 それに盗賊を捕まえる事なんてできない、俺の恨みは仲間が晴らす。

 男は死を選んだ。

 即死量の毒を飲んだのだ。


「グハァ」

「自害するだけの忠誠なんて盗賊にはないよな…失敗したな」

(シルフィ解毒は…)

(服毒した場合は…)

(そうか、わかった)

 慶司は穴を掘って遺骸埋めてやる。

 埋める前に調べていくが、手がかりらしき物も見つからなかった。


 だが確実に解った情報はある。

 お頭に紹介する、こう言ったからには、盗賊はこいつらだけじゃない。

 他にも此奴等を率いている頭目がいる。


 エルとも話したが妙だ。なぜ盗賊の事が街で知り得無かったか。

 通る旅人を全て襲えば噂になる、と言う事は選んでいるのか。

 それか夜だけ出没して証拠も全て消してるか。

 だが何だろうか違和感があるな。


『なんだよ、お前も冒険者だろ、こっちに付けよ』

 と言う事は一応は此奴らも冒険者崩れである。

 だがこれが違和感の正体じゃない。


 暫く警戒を厳重にしよう、そう決めて慶司は野営地へと戻った。



「主様、片付いたかの」

「一応ね、10人いて一人は斥候なのか報告なのか既に離れてた。

 最後の一人は自害した」

「ふむ、手がかりはなしか、まあ主様が無事なら構わんがの」


 エルは近づいてくる慶司を見つけて迎えに来てくれたのである。


「しかし、色々と腑に落ちないね」


 慶司は先程考えた事を述べていく


「ふむ、やはり妙なのは盗賊の情報がなかった事、

 10人でもそれなりなのにまだ居ると見られること、

 こやつらどうやって生活しとるんじゃ」

「そうなんだよね」

「うーむ、まあ主様の言うとおりに警戒を続けるしかあるまいよ」


 エルと慶司が焚き火まで戻ると全員がそこで待っていた。

 慶司の強さを理解しているので心配と言うわけではないが、

 やはり人相手、それに襲撃を受けた事のあるシャーリィ達は緊張していたのだろう。

 慶司の顔を見ると一同が安堵した。


「お疲れ様でした慶司さん、大丈夫ですか」

「ええ、問題はないですよ。ただ最後の一人が自害したので情報は取れませんでした。

 只最初の方で会話を聞いてますので盗賊の類である事は確認済みです」

「では刺客ではなかったのですね」

「はい、しかし大規模な盗賊団の話など前の村でもありませんでした、実際にちょっとそれだとおかしいので暫く警戒は厳重にしていきますね。」

「そうするしかありませんな」


 もう一度寝る者、見張りを続ける者と分かれて夜を過ごしていく。


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