一夜目 ヘンドリックとの友誼
ミランダの罠によって慶司達が護衛として移動することになった訳だが、
ミランダにも驚く事があった。
只でさえ少ないとされる金の保持者、その10の高位を持つ物など見たことも聞いたこともなかった。
しかも討伐なのだ。
討伐でなぜ驚かれるのか、理由は単純である、
そこまで討伐対象で強力な魔獣など竜族が倒し残らないからである。
そして討伐高位の依頼は死亡率が高い。
故に自殺志願者か自意識過剰な者、ほんの一握りの幸運の持ち主。
そんな者しか生き残れないのが討伐高位の依頼である
慶司を見る限り自ら討伐対象へ赴くタイプではない。
狩猟や採取をメインに護衛をし暮らすタイプに見える。
そして金は竜族に戦闘能力を認められた存在である。
その10…あの街で気配に気付かれた時には偶然だと思い、
そして冒険者崩れを倒した時にはいい腕だと思った。
だがあれですら全力ではない。
この人を護衛に選べた事は幸運でしかない。
ミランダは引き合わせてくれた幸運と自らの信じる炎竜に感謝した。
3人のみのパーティー、そして討伐金10保持者。
冒険者達が噂をしていた白銀の翼、正体は不明だが、
数々の魔獣を倒し、問題解決に携わったという。
そしてリーダーは竜をも倒したとも聖地の門番と引き分けたとも噂されていた。
同時に護衛任務は受けた事がない、との情報…
流石に出会う事などない冒険者だろうと思っていた。
それがこの目の前を行く彼らなのだ…
銀の高位者を10人用意しようが20人用意しようが、
金10の戦闘能力には及ばない。
ヘンドリックは王女を母国へ連れて帰れるだろうと確信した。
(これが荷馬車というものなのね、でも何でかしら。
普段の馬車よりも景色も良いし、座り心地がいいわ)
あの街での騒ぎ、たかが不良冒険者程度なら武術で一撃だと思っていた。
怖かった、誰も助けてくれない、周りを見ても誰もが目を背け逃げていった。
「格好よかったなぁ…」
(いけない口に出ちゃった、でも本当に素敵だったもの、
颯爽と現れて不良冒険者を倒してくれて。
まるでお話に出てくる伝説の冒険者のようだったわ)
凄く強くて素敵、残念なのは既に奥さんが居る事ぐらい。
こんな人が一緒に居てくれたら…
夢見る少女の妄想は膨らむばかりである。
街道を進んでいく見渡す限り今夜の野営地になるのは右手奥にある山の麓あたりだろう。
まだ時間もあるが次の川が見える辺りでお昼にしよう。
慶司はそう告げると一足先に食材の確保に向かう。
道中に拾ってきた薪と紐と調味料を持ち、ウラヌスに跨り駆けていく。
昼食はウラヌスやホルスの休息とご飯の為である。
途中でラビを2匹仕留めて川原に到着、
血抜きと皮を剥いですぐに焼く準備をしていく
飼い葉に適した葉を適当に見繕い風の刃で切断しまとめて圧縮する。
ハンマーレブを釣り、魚は岩をぶつけて取って処理をして保存食にしていく。
丁度料理ができる頃にエル達が追いつき食事をする。
塩、小麦粉、米粉、水のみでナンのような物を焼き
ハンマーレブの身を炒めたものとルッコラのようなハーブとマヨネーズ、を挟んで食べる。
スープはジャガイモの粉と塩、胡椒、チーズ、ベーコン、ほうれん草にスープの素Cを煮込んだ物を出した。
「おいしいですわね」
「ふむこれはいける」
「これを毎日食べてるの」
3人共に喜んでくれたようである。
特に慶司の研究途中のスープは好評のようだ。
旅をする上で大変重要な物、それは食料である。
インスタント食品のような物を作ろう、
これが課題だった、まず知ってる知識から、
フリーズドライ、熱風乾燥、チキンラーメン製法
で、三つ目は目的とちょっと違う。
まず水分があって持ち運びに不便な物を選ぶ
これを調理してから熱風乾燥にしてみた、
ジャガイモは茹で、
トマトは煮て、
チーズは粉末状にし、
卵は混ぜてお湯に入れた
以上の物は壷に入れて熱風で砕き粉砕しと単純に熱風でかき混ぜた。
スープの素B,C、Fは濃く作ったスープで実験
スープの素のB、C、Fはまず凍結させそれを砕き、風で粉末状に砕いていってた、
これを熱風の渦巻く壷にいれていくこと数分という手法。
この2種類の魔術道具を作る事にする。
自分の魔力だけでやるのは大変である。
フリーズドライは野菜類を瞬間冷凍、電子波を当てた方が鮮度が違うと聞いたが、解らないから静電気を適度に発生させてみた。
葉っぱ系の物を次々にフリーズドライをしてみて細かく砕いている。
フリーズドライも手間がかかる。
魔術処理した箱を作ろうと思う。
一般人に利用可能かは怪しいのだが、そこは技術だ。
ようは高野豆腐をつくるのだ。
先ず冷凍そして解凍なのだが、
凍った水分を真空状態で飛ばすわけだ。
箱が居る、必ずだ、
シルフィに手伝ってもらったから、成功したようなものである。
これを一般向けにはできない、だから魔術道具として作って、
ギルドに設置レンタル商売。使用毎に料金を頂く。
こっちは儲かる、ギルドも儲かる、そして冒険者も楽ができる。誰も損をしない。
魔法解析もさせないから相当な期間使えるはずである。
(ちなみに冷凍時に電波を当てるのは、冷凍法の内容を勘違いして記憶していた為であったが、意味はあると思う多分)
夜には右手に見えていた山の麓附近について野営の準備をする。
ターフで寝れるのは3人だけだ。
魔術結界で虫が入らないように加工してある。
荷車の中だと容積が減ったとは言え逆に荷物が増えてるから寝床は作れない
簡易テントを組んでそこに寝床を作ったのだが、
「そのハンモックに寝たいわ」
とお姫様が言うので、
今日はハンモックを姫様に譲っておいた。
落ちても俺は知らん。
実際寝転がろうとして落ちた訳だが、嬉しそうだった。
一応警戒の罠を四方に張り巡らせていき全員に説明しておく
例の蜘蛛の糸を使った仕掛けで、下手に触れると肌が切れる。
現在武器にしようとしている物だ。
これを投擲具の穴に通して糸の結界を作る。
伸ばした先には鈴があって鳴るし、
寝る前にシルフィとウェンディには警戒を頼む。
見張りは3回交代で、
最初がミランダ、シャーリィ
2回目が慶司、ヘンドリック
3回目がエル、エイミー
という組み合わせに決まった。
護衛と言う事ではあるが警戒態勢は緩めたくない、
それに疲れていては怪我をするので了承してもらう。
これにはヘンドリックもミランダも異存はなく、
シャーリィに居たっては
「とっても楽しいわ」
と上機嫌であった。
本当に逞しいお嬢さんだ、無理してなければいいのだが。
そしてヘンドリックと見張りの番になった。
慶司はターフだけで全員が寝れるようにと、
予備のロープでもう一つハンモックを作りはじめた。
「慶司殿は器用ですな」
「まあロープワークは遊びで覚えましたから」
「しかもあのような警備方法は考えませんでした」
「あれはあの紐があるからこそ出来る方法ですよ、
たまたまウィルハチュラを倒す機会がありまして、
里長が気を利かしてくれて糸と布を私に譲ってくれたんです」
「ウィルハチュラを倒したのですか…」
「本当に偶々です、でもそのお蔭であの糸で釣りが出来る」
「ハハハ、ウィルハチュラを倒した事より其方が嬉しいとは…
いやはや、私達は本当に運がいいですな」
「出会いは一期一会、そう考えて行動しているだけです」
「本来の騎士団長としては、是非我が王国へとお誘いをせねばならないのですが、
貴方に対しては非礼に当たるでしょうな」
社交辞令ではなくそういってくれる。
大層な物でもないのだが、と自分では思うが他人の評価は違うだろう。
それに、確かに騎士団と言われてもいかないだろう。
「そうですね、実際、気ままに生活が出来無いとなると、
釣りを楽しんだり、夜空をこうして見れなくなる、それは困ります」
「うむ、まさにそういった雰囲気をお持ちだ」
「ところでブルトンの国と言うのはどのような所なのですか」
慶司は興味がある、エルもブルトンの王族なら嫌っていなかった。
確か王と竜が関係してるとかなんとか…
「そうですな、ブルトンはご存知の通り、大陸東側の北部を領土としてます。
西端は殆どが山で囲われ、ロンデの港以外は何もないですね。中央北部あたりに王都があります、
東端は守りをケルン砦とその城下町に任せています。険悪ではないですが守りは入りますからね。
北部にサクスンという港があって、其方から王都までは遅くて3日です、今回は其処から帰還を目指す予定です。」
「しかし解らないのは王女様を国外へ使節で送るとは…」
「いえ、使節自体はフルトリアにもエリミアドにも殿下も参られました事はあるのですが、場所がロゲリアです。それが解らない、もしやとは思いますがロゲリアの王は今回体調を崩していましたが、第二王妃として求婚させる策略だったのかもしれません、彼の王は女性好きで、その女狂いのところがあると、言われてましたからな、私も心配しておったのです」
これは事実であった、新大陸の件で敵対派閥が利権を獲得するため、争っているフルトリアとエリミアドを除いて、王国として認知し同盟を結ぶのは本国の離れたロゲリアが良い、そう王に進言し、大使としては第一王女の功績をあげて進めたのである。もちろん裏で無類の女好きであるアグラⅫ世に求婚させるように仕向けていた。まさか慶司に廃人に追い込まれているなどと、思っても見なかっただろうが。
「これは国事でしょうから聞けなくても良いのですが、
竜族との付き合いはどうなっているのですか」
「そうですな、金持ちの慶司どのからすれば疑問に思われるかもしれませんが、国王や姫様、それに代々の王族は竜との国交を望んでいるのです、建国のおり竜に助けられて建国したという逸話もあるのですが覇王となった初代は竜に喧嘩も売ったとか、それが5代前の初の女王が誕生し時の女王ベスが竜族との対話を望んだそうです。それから女王制が続き王族は竜族を信頼していますが貴族や宗教者からの反発をうけ次の代で国教を竜族容認の宗派に変えたほどです、現女王陛下は病気の為に執政は王が代理となっていますが、そのためか弟であるアレクス様を次の王へ担ぎ復権を狙う教会や貴族が居るのです。アレクス様も今の竜族新派ですが、今後王になれない事への女王制撤廃に感情が動けば…さらに現状の王位継承者はお二人のみですので外戚の者が狙っている可能性もあります。」
「やはり王族というのは大変ですね」
「そうですな」
「しかし、私も思うのです、この大陸で生きていく限り竜族の加護を無くしては魔物や魔獣がいるのにどうしたいのだと、私は一度だけ魔物の討伐に出たことがありますが、魔法を使う化け物と人間など相手になりません、戦った事のない者だから好きに言えるのです」
「そうでしょうね、自分が痛みを感じなければ人は好きな事をいいますから」
「ですから今ブリトンを変な流れにする訳にはいきません、5代前のベス様よりの流れは費やせません」
「その話は何か逸話は残ってないんですか」
「竜族と恋したと言われてますが、実際は試合を望んだのではないか、と言われています」
「戦いを望んだのですか、竜相手に、王族が…」
「驚かれるのも無理はありませんがベス女王は鋼鉄の戦乙女と呼ばれた程の剣の達人だったそうです、シャーリィ様も武術をやっていますが、どうやらその血の流れのようでして」
「…5代前ということは200年程前ぐらいですよね、誰と戦ったのかなぁ」
「竜族の使者は白竜だったそうです、言い伝えですが、変化して試合った姿は壮年の礼服姿で、彼女の剣を素手で折りつつも、剣筋と竜族へと向かう勇気を称え、新たな剣を授けたと伝わってます。今でもその剣は竜族と王族との親睦の証として王家の女王が受け継いでいます」
あーうん執事神だろうそんな真似ができる白竜…
なるほど、エルが護衛しようとするわけだ。
「だから竜族はブルトンの巡回をしてる訳ですね」
「そうですね、流石に王命に背いて矢を射掛けたりはしません、
他国は公表してませんが、他の国も巡回を受けてない訳がないのです、
でないと今頃国は戦争どころじゃないですし、国が潰れますよ。
我が国程の回数は飛んでないので守護を受けてないというのは確かですが、
竜族の情けが深いのはそのような仕打ちでも巡回をすることなのですか
あとは、もう少し国がまともな考えを持てば守護とは言わずとも国交を持てると思うのですが…」
「問題があるのですね」
「はい、恐らく竜族が国交を開いてくれないのは我が国は戦争をしてないのでそれは当てはまらない、
となると、獣人への差別、奴隷問題、この二つは大きいでしょうなぁ。
2代前の女王も撤廃に向けて尽力したらしいのですが貴族と商人という人族の反対にあい潰された法案だったそうです」
「法で人を縛ったり、権利を歌うと利用し、利権を手放さなくなりますからね」
「そうです、それが当たり前だと思ってしまう」
このように考えられる人が居る国ならまだ変わるのだろう…
「いや、少し夢中になりすぎましたな」
「いえ、ブルトンへいつかは行って見たくなりました、
伺えば知り合いにも土産話ができますし」
二人は笑いあってからお茶をのんだ。
そして交代までブルトンの食事や風習を聞いたりと雑談を交わした。
年齢を超えた信頼と友情が芽生えるのはこういう時なのかもしれない。
ブルトン王国がブリガン王国になっている章がありました
設定を優先してブルトン王国で統一させて頂きました。
ややこしいと思った方、申し訳ありません。




