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特攻の…お人好し

ここから2章とします

沢山の方に読んで頂いているようで嬉しいです、

引き続き楽しみにしてもらえるよう努力していきますので、どうぞ応援宜しくお願いします

 進路を南東方面の交易路に向け3人と3匹が旅を続ける。


 大森林地帯の一部を通るのではあるが、

 ドレスムント方面への道に比べれば森の層が薄い。

 しかも、白銀の翼として有名になった慶司達を心配する守人達も居ないからか、のんびりとした雰囲気である。やはり人の子遠方から視線があると緊張しただろう。

 慶司は徒歩で、時折道端にある薪を拾ってゆく。

 するとそれをウラヌスが真似をする。

 流石に山菜やキノコの類は咥えて来ないが、可愛いものである。

 現状で0.8メルはあるのだが慶司の子供か部下といった風で、

 慶司の行動をウラヌス達は真似をするし、エルにもエイミーにも懐いている。もふもふ最高とはよく言ったものである。

 アルテとヘリオスは後ろを振り返り自分達はしなくていいのか、と聞いているような態度である。愛らしいことだ。


 そろそろ夕方になろうか、という頃合で慶司はウラヌスに乗って専攻する。

 流石に一日では森を抜けれない、まず慶司は獲物を探す、できればムシモンやブリーノ、ヒルシュ辺りが見つかればウラヌス達も喜ぶ。

 ムシモンの群れを発見した慶司は幸運だと思いボーラで一匹、コンパウンドボウで一匹を仕留めた。

 穴を掘って血抜きをして最低限の処理をしてから獲物を乗せて移動した。

 小川を見つけた慶司は道からも外れてないので周囲の藪を少しきり広げて野営の準備を始める。

 先ずは竈を作り火を起こして場所を知らせ、肉の解体をしていく。

 既に血抜きは済んでいるが、内臓は処理に大量の水がいる為川辺でないと厳しいのである。

 ウラヌスは慶司の後ろで涎を我慢している。お座りの姿勢でびくりともしない。

 逆に急かされてる訳でもないのだが、慶司の処理は手馴れてきている。

 流石にこの世界に来るまでに慶司が捌いたのは魚と鶏だけで、このサイズの動物をナイフなどで処理していく事になるなどとは思ってなかった。当初は内臓、全部捨て、とかやっていたのだが肉屋で教わり処理さえ間違えなければ美味しく頂けるのだと知り、ナイフも解体用とか皮を剥ぐための物まで用意するようになった。

 動物のホルモンが元々好きな慶司は切り分けて少しだけ自分達用に串処理をすると次に肉を解体しに掛かった。

 昔から腐りかけが美味しいとは言うが、これは本当で実際自分達が食べる街の肉は熟成をさせたものである、だが絞めた直後が不味いわけでもない、正直好みである。本当は肉屋のようにそのまま吊るして熟成ぐらいがいいがちょっと出来ない。

 ホルモンと言われる部分は直ぐに食べないと美味しくなく。

 普通の肉は熟成がされた方が肉の柔らかい部分や旨みが増える。

 ちょっと人間には耐えれないが腐った肉のような匂いの物を動物が食べるのはそれが美味しいからだ。

 なので一部を魔術の布で包み温度を3℃にして保存する。最低7日ぐらいすれば美味しく頂ける。

 エル達がやってきたところでターフを張り調味料でもって心臓や腸、胃などを先に味付けをして串焼きにする。赤身の多い部分と骨をウラヌス達に食べさせて、お茶を飲んで一息つく、その頃にはもう日も落ちて空には星が輝き月が出てきていた。


「うむ、うまし、この内臓を食すというのはやはり野営や狩猟でないと味わえぬな」

「内臓は時間が経たないほど美味しいし、死後硬直が始まってない肉も美味しいからね」

「旅の醍醐味にゃ」


 ご飯を食べると深夜の見張りにつく為、一足先に慶司は寝床へ入り睡眠を取る。ターフと共に仕掛けておいたハンモックを吊るすフックを荷車につけてあって一本だけ杭を打てば寝れるのである。


 虫の声と風と水の音色、エルとエイミーの声を聞きながら慶司は眠りに落ちていく。



 翌朝、食事の準備をしてからエルとエイミーを起こす。

 出発しながら慶司は荷車の中に作った仮眠ベットで1時間程寝る。


 不老不死の肉体で毒の効かない慶司であっても睡眠はそれなりに必要である。

 脳の疲れはどうやら軽減されているが、精神の疲労は別なのだ。

 記憶の整理等を寝ている間にしていると言われるが、自分の知覚していないところでそんな事が本当に行われているのか、単に夢をみてるだけなんじゃないのかと慶司は思う。


 考えてみても自分が記憶しようとしたものや只眺めていただけの風景を、一時間後に覚えてるかと言われれば記憶しようとした物は思い出せても既に見ていただけの風景だけなんて情報を与えられても推測しかできない。映画にもなったサヴァン症候群の一種と言われる完全記憶能力などを考えても、通常の活動状態において常に脳は情報の取捨選択を行っていると慶司は考えている。

 まさか魔法でその手の力はないようだし、この先不老不死たる自分の記憶は何処まで残るのだろうとは思っている、時折日記のような物をつけ仕舞っているのはもしも記憶が薄らいだらと思うからである。

 それほどに慶司はこの生活が気に入っているのだ。



「のう主様よ、この荷車の乗り心地は最高じゃぞ」

「よかった、ちょっと前回よりも工夫はしたんだ」

「うむ、揺れは多少あるがこう振動はすくないし、この皮の敷物が良い」

「それは特注だからね、リヒトサマラが綿花の多い街で良かったよ」

「お、主様、森を抜けるようじゃ」


 目の前には草原と所々に林や森が見える。

 これだけ見晴らしが良いと気持ちがよい。


「このペースでいくと何日ぐらいでグラームに到着するかの」

「うーん話だけで聞くと、貿易都市ミルトまで3日で、その後は多分20日程でベネア、そこから船でエリノまで5日、グラームまではさらに20日はみてるよ、元々が遠回りの予定だからね」

「どうして直接グラーム方向へ行かないにゃ?」

「直接向かうとなるとドレスムント方面への交易路を使って、さらに聖地は抜けれないからぐるっと回っていくんだけどその間に都市は無くて、都市を巡るとしたら更に北上してセクトへむかってとなってしまう、そうすると日数的には海を使わない分あっちの方が時間が掛かると思うんだ」

「そうなのかにゃ」

「うん、ドレッセンの山の方はかなり険しい道らしいから」

「うむ、聖地を中心として広がる山脈もドレッセンあたりが一番広い山脈じゃからな、一番高いのは我のアルザスじゃが」

「そうなると、到着は早くて紅月は過ぎて炭月かにゃ」

「うん、恐らく早くて炭月の10日前後かなあ」

「流石に炭月の後半になると野営は寒いにゃ」

「猫又族はやっぱり寒いのは…」

「あったかい布団がすきにゃ季節にゃ」

「その頃にはあったかい温泉に入ってると思うよ」

「ぬう、爺やに頼んでアルザスもぶち抜いてみようかのお」

「温泉は掘れば確かにでるかもしれないけど無理して作らなくても」

「じゃが長期滞在には向くじゃろ」

「まあ、でも風呂は沸かせるからね、冷泉を掘って沸かせばいいさ」

「ふむ、そういう方法もありか」

「うんうん、ところで交易都市のミルトなんだけど、ここの管理は何処がしてるの」

「ミルトは翠竜の地じゃな」

「翠竜さんには結局遭わなかったなあ」

「あいつは出不精じゃ、年がら年中水中奥の洞窟宮にいるからの」

「どんな人なの」

「うーん戦いよりも音楽や文化を好む変わり者の竜じゃな」

「平和的だねぇ」

「しかし怒ると手に負えんぞ、我ほどではないがあ奴が暴れると危険じゃからな」

「まあ竜だから暴れたら危ないだろうけど…」

「いや怒った時の気迫がな、若い自分にいちど怒られたが逆らえないんじゃ」

「やっぱり強いんじゃ」

「いや、こう言葉で責めてくるタイプでの」

「ああ、なるほどね」


 この日に巡回の竜族を見つけた慶司は聖地への連絡と順路や学校の件について連絡をし、

 目的地であるグラームのグラディスさんへも連絡をお願いした。


 3日の行程でミルトに到着した一行は宿屋をとって、

 エルとエイミーがウラヌス達の世話をし、慶司はギルドへと向かった。

 慶司は1日の滞在をギルド受付に伝えようと入ってきたのだが、ムーサの予言なのかと言いたい雰囲気の場面に出くわした。

 壮年の騎士がなぜかギルドにいる。

 そもそも騎士は独立した傭兵団内で勝手に名乗る場合や、王や貴族に仕える古くからの騎士の家系の者、またその家柄をもって騎士団を形成するものなどがいるが、この身形からして何処かの王国の騎士であろう。

 ロゲリアに良い印象を持たない慶司であるし、差別はせずとも決して自分から鍋には突っ込みたくない。

 だから無視して必要最低限、到着と明日去ることだけを告げるためにカウンターへ向かった。

 まあ向こうの方で騎士と受付の担当が話しているのは聞こえる。

 その内容も、ふむふむとは思う。話の内容は後に知った事も含めてこうである。

 騎士はとある王族の護衛として外交使節としてロゲリアまで赴いた。

 ロゲリアの王の体調不良で予定よりは遅れたが、使節団は一応その任を果たせた。

 やっと帰国できると竜族の支配地域を通過しようとして入国する前の所で山賊に襲われた。

 まぁ慶司も知らないのだが闇ギルドの下っ端が生き残りをかけて山賊行為に走ったらしい。

 騎士団と言うだけあってなんとか難を逃れたのだが遠方への派遣のためにつれてきた20人もの騎士は突然の襲撃だったために壊滅、残るはこの壮年の騎士と派遣団の代表と従者のみであるという。

 20人の護衛を殲滅させる山賊とはまた凄いなと慶司は思ったが、まさかの原因である。

 盗賊団の方でも下調べもせず焦って行動したものだから初撃で討ち果たした騎士が多くとも反撃は甚大な被害で逃げた馬車を追う余力はなく互いに潰しあったという結果である。

 なんとか生き残った壮年の騎士は代表と従者を連れてこの都市まで逃げ込んだ。

 できれば護衛を数名雇いたいと思うのはこれからの行路、日数を考えれば当たり前である。

 ベネアかもしくはマギノ経由でエリノ、そこからは船で海路を行くため大丈夫である。

 問題はベネアまででも最低で20日の護衛である。

 まず遠い、エリノならさらに掛かる。

 この点で問題が一つ。

 さらに希望しているクラスの護衛がいない。

 銀の高レベルを10人規模で雇いたいらしい。

 そんなに大量の銀の護衛クラスを一度に集めるのは至難である

 銀1や2ぐらいなら街の商人の護衛についているがそれを外す事も出来ないのだ。

 護衛は確実に仕事を長期で請けることが出来る為に、受ける者は長期で、受けない者は必然ランクが上がらないのである。

 そして最後に払いを信用払いでお願いすると言っている。

 もしくは冒険者と交渉を願っているらしい。

 そのまま召抱える契約の代わりに手持ちの金銭が無いのであろう。

 さすがにいきなり10人高レベルの護衛銀持ちを20日以上である。

 突然の出来事に対応できない騎士は困り果てているのだが、

 主人の為にも引くわけにもいかないので粘っている。

 だがまあそうなればこの街で本国と連絡を取り金の送金手続きを取るしかない。

 ここでまた、都合の悪い事に連絡はギルドや商会が手伝えば取れるが送金に関してはここが竜族の支配地であるからして問題になるのだ。

 受付の子と、眺めて。

「どうにも大変そうだね」

「そうなんです、ずっと話し合ってて」

「まあでも無理な物は無理だろう、問題が多すぎるね」

「白銀の翼さんであればいけるのでは?」

「いや、うちは護衛は受けないんだ、経歴で護衛任務受けてないでしょ」

「ほんとですね、ふう片付くかと思ったんですが」

「すまないね」

「いえ、では明日出発で受け付けておきました、良い旅を」

「ありがとう」



 ギルドからでた慶司は宿屋に向かう前に雑貨屋と食料品店へと向かった。

 まず保存食の買い足しで、20日の旅だから少し多めに用意する。

 雑貨屋ではロープと袋等を増やしておく、既にこの街でもトウガラシ爆弾が売られてて売り切れになっている。聞くと子供を遊ばせるのに心配が減ったらしい、誤爆もあるらしいが人体には影響があるほどではないので問題もないという。品物を受け取り店をでる。

 一括りにした荷物を肩にかけて歩いていると、後ろで騒ぎがあった。

 これは振り向けば問題が口を開けて待ってる流れであるが振り向く。

 振り向かないと後悔するのは自分だから仕様がないのだ。


 はぁ…振り向くと良く見る光景である。

 捕まってるのは女の子。

 絡んでいるのは冒険者崩れのようなチンピラ連中である。

 どこで用意してきたんだこの情況をと言いたくなる。

 一応、チンピラ達の発言が正しいのだとすれば

 道を歩いていた、店から飛び出してきた娘がぶつかって来た。

 ぶつかって倒れた拍子に骨を折った、だから金をよこせ。

 ないならお前の体で払えという筋書きらしい。


 そして一応女の子は、

 確かにぶつかったけど走ってでた訳でもない、

 むしろ横からぶつかられたのは自分の方である。

 双方共に転んだのに関わらず金を寄越せとは男の癖に軟弱な体だ、恥を知れ

 しかも体で払えとは無礼だ

 と煽っている、凄く気が強いがチンピラは5人いるんで

 その気の強さは危険だと思う。


 慶司は一応【竜撃八識無我りゅうげきはっしきむが】を唱えて置く、

 剣呑になったら仕様がないから鍋に突っ込む。

 これをお人よしと言わずしてなんと言うのか…


「おら、御託はいいからこっちに来いや」

「この無礼ものがっ」


 チンピラその1が腕を掴もうとしたのを避け、

 女の子は拳で相手の顎を殴った。

 ふむ、武術かなにか習っている、

 それで強気なのか。

 だがそれなら逃げたほうがいいのだが。


「なんだ、この野郎、女だから手をだしてないのに」

 と残りの連中がナイフを抜いて、倒れた男もダメージはあるが立ち上がり

 ナイフどころか鉈のようなものを構えた

「てめえ、なんだか齧った程度で強気に出てくれたじゃねえか」


 さすがに不味いと思ったのだろうがもう遅い。

 逆上してるし、止まらないだろう。

 女の子は周囲に味方を求めるが知り合いも居ないらしいし。

 刃物をもった暴漢に武器を持たない人間は流石に出て来ない。


 さっきからチクチクと刺さるような視線は俺に行けと言ってるようだ。


「はいはい、其処まで」

「え」

「あーっん、何だ手前てめえは」

「通りすがり」

「引っ込んでろ打ち殺すぞ」

「へぇ」

「手前、いい度胸してんじゃねえか」


 慶司は基本的に丸腰になる事はない、ナイフも太刀も投擲具やボーラも持っている

(シルフィ、こっそり女の子の護衛をお願いするね)

(はい、風の防壁でいつでも包み込みますわ)


「そりゃあ見てみぬ振りして通り過ぎなきゃいけないほどお前たちが強くないからじゃないかな」

「てめええええ、ぶっころせ」


「え、あれ」

(はい、じっとしててね風の障壁で貴方を包みましたから)

「え、え」


 流石に…殺すと後が面倒だなぁ

 チンピラその2がナイフを腹の前で構えて突っ込んでくる

 ヤクザのドスじゃないんだから…

 ナイフの刃が危ないから篭手を出して側面から叩いて折る。

 喉に手を掛けて体を左前に進めつつ後ろから足を払って背中から落す。


 チンピラその2は鉈を振りかぶって来た

 踏み込んで体を近づけて振り下ろしてきた手を掴んで逆間接にひねりながら背負いなげた。


 チンピラその3はナイフを投げて逃走を図った、幸い喧嘩になって人が居なくなったことでナイフは避けても問題ない、切り落とすなんて面倒である、こいつにはボーラをなげて痺れさせた、まあ死にはしないだろう


 流石に仲間3人が一気に倒されて武器を捨ててくれたチンピラ4,5は縄で括っておくだけに止めた

 全員を道端へと寄せて警邏を呼んでくれと頼んだ。


 少女の横に何時の間にかメイドさんが居た。


 ちょっとまて、このメイド。

 さっきの視線…

 笑ってるし…ああ、鴨葱かもがねぎしょって特攻ぶっこんできただったのねと。


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