精霊と少女 後編
(暖かいなぁ、なんだろう、ふわふわするわ。
あれでも、なんでわたしふわふわしてるのかな、
そうだ…気がついたら森にいて、そこで…
だれかが叫んでたのに、私たべられちゃったかな
ふわふわするのはそのせいだわ、
わたしなんて美味しくないのに。
でも、このふわふわは気持ちがいいなぁ)
スゥ…スゥ……
門番に挨拶をして都市へと入った、
しかし、この子の家は判らない。
門番も知らなかった
これは如何した物か…
エルもエイミーも出掛けてる。
恐らく直には帰らないだろう。
警邏本部…目が覚めたら警邏本部か
俺なら嫌だな。
却下だ。
では何処に連れて行くか。
宿、警邏、ギルド、…ムーサ、嫌だなぁ
ちょっと慶司は頭を抱えたくなった
(シルフィ)
(はい何でしょうか)
(この子の事を知らないか)
(申し訳ありませんが…)
(そうか、手がかりがないし、
だからと警邏に預けて去るのも気が引けるからな)
(お優しいですね、その子は薬草を摘みに来ていたと、
そう草の精霊が申してました、
ですので薬剤ギルドでお尋ねになるのは如何でしょうか)
(なるほど、それならムーサの所よりはいいだろう)
(フフフ、ムーサが聞いたら笑いそうですわ)
道行く人に見られながらも街を進み、
薬剤ギルドに少女を抱えて入る。
「すまないがこの子の事を知っている者はいないか」
「あれ、朝に来てた子か」
「そうか、やはり来てたか」
「え、チェルシーじゃない」
女性職員が走りよってくる。
良かったこれで解決できると安心した
「君はこの子の事を知っているのか」
「はい、マーサさんの子供です」
「森で襲われた所を助けたはいいが、
何処の子か判らなかったんだ」
説明をすると女性職員の顔が青ざめた。
「なんてこと、私の所為です、必要な薬草を教えたから」
「でもこんな小さい子に森に行かせた訳じゃないだろう」
「ええ、町の外壁の所で取れる物だけを教えたのですが」
「あなたも迂闊ではあったかも知れないが、
それを責任に感じては、この子は薬草を取りに行けなかった
だからそこは別問題だ、深くは悩まなくていいと思う」
「そうですか…」
「それでこの子の家なんだが…」
「案内します」
「ああ、じゃあこの子の籠に入ってる薬草で薬をくれないか、必要なのだろう」
「ええ、解りました、すぐに用意します」
女性職員の後をチェルシーを抱えて付いて行く。
5分程歩いて一軒の家の前に着いた。
「御免下さい、マーサさん、エロアです」
「ちょっと待ってね……どうぞ鍵は掛けてないわ」
「失礼しますね」
「チェルシー、どうしたの」
「チェルシーちゃんのお母さんですね」
「はい」
「えっとまずは何処か寝かせられる所へ」
「こちらへお願いします」
奥にあるベットにチェルシーを運び寝かせる。
笑顔で眠っているのをみて母親も安心しているようだ。
「あの、それで一体どうしてチェルシーを貴方が連れて来られたのでしょうか」
「マーサさん御免なさい、私がこの薬の事を教えて、
外壁で取れる事は伝えたんだけど森に入ったらしいの、
そこでその人に助けて貰ったらしくて」
「森に…まだ森に行くには危険だとずっと言っていたのに、
有難うございます。助けて頂きまして。
主人は今守人の任で家に居ませんが、
是非ともお礼をさせて下さい」
「いや、私は偶々近くを通りかかっただけですし、
守人の方にはこの都市に来るまで助けて頂きました。
もしお礼というなら草の精霊に言って下さい、
彼が呼んでいなければ私は気が付かなかったでしょう」
「草の精霊様が…でも助けて頂いた事に代わりは在りません」
「うーん、そうですね、ではこうしましょう、
私は今ムーサさんに頼みごとをしてるので、
体調が直ったら一度ムーサさんの所へ尋ねて下さい。
それで私の仕事を手伝って貰えれば助かります」
「解りました、ではまた後日改めて」
「はい、ではチェルシーちゃんは怖い目に遭ってます
ですから起きた時に混乱するでしょう。
一緒に居てあげて下さいね、それでは俺は失礼します」
「あのお名前を」
「あ、すいません渡良瀬慶司です、では」
慶司は急ぎ町を出てドレスムントへと向かう。
チェルシーの件も片付いた(と思ってる)
次は絞り機を作って貰う為にと飛び立った。
「あの人が白銀の翼の渡良瀬慶司さんだったんだ」
「なにエロア知ってるの」
「ここ最近の薬草依頼が早く終わるのよ、
それがとある冒険者達が来たからだって、
噂になってたの、それが白銀の翼なのよ」
「そんなに有名なのかい」
「ええ、たった3人でチーム名持ちなのよ」
「3人だけでかい」
「ええ、しかもリーダーの渡良瀬慶司は銀8持ちだって」
「銀の8だって、そんなに凄いのかいあの人」
「うん、間違いないよ黒髪と白銀のコートだもの」
「はぁ、体を早く直してムーサ様のところへ行かなきゃね」
「その時は私も行くわ」
「ありがとう、でもこの子、なんでこんなに幸せそうに寝てるんだろうねえ」
目が覚めたらお家だったってなんでだろう
あれれ、おかしいな、わたし死んじゃったハズなのに…
隣にお母さんがいる。
あれ、どうして涙がでるのかな…
「チェルシーおきたのかい」
「おがあざん、あどね、もびで、わだぢ、じんじゃっだの
だげど、おがあざんがいる」
「大丈夫よ…チェルシー、大丈夫だから」
「ぼんど?」
「ほら、ちゃんとお母さん一緒にいるでしょ」
「ぼんどだ」
「ほら、涙を拭いて、鼻をかみなさい」
グシグシ、ズズズ
「ぷは、良かった、なんだか怖いハチュラがでて来て、
死んだと思ったらフワフワしてて気が付いたらお家にいたの」
「あなた、もしかしてウィルハチュラに…ああ…
精霊様、慶司様を遣わせて下さって本当に有難う御座います」
「お母さん痛いよ」
「ホントに良かったわ、チェルシー草の精霊様にお礼を言いなさい」
「草の精霊様に…助けてくれたんだ…有難う御座います」
「さぁご飯があるわ、貴方のお蔭で薬を飲んだから作ったの
お腹がすいてるでしょ、沢山あるからゆっくり食べるのよ」
「うん」
ウィルハチュラには近づくな…近づいたら食べられる
夫からも散々聞かされた話である
そんな怪物から救ってくださったのか…
この子がそんな目に遭わなかった事に感謝した
マーサは食事を暖め、愛しい我が子を見て涙した。
「こんにちは」
「慶司、どうしたリヒトサマラじゃなかったのか」
「いや、ちょっとグルテンさんの力を借りに来ました
少しばかり急ぎでやって来たんですよ」
「まあ、お前さんは聖地の使いやっとるからな、
大抵の事では驚かんがな、
それに最近退屈してたんだ」
「じゃあちょっと変わった製品なんですが…
試作としてまず通常の鍋の大きな物ぐらいのサイズで作りたいのですけど
油を絞る機械なんです」
「油を絞る機械といやあ、
磨り潰してるやつとか石で挟むあれか」
「いえ、これはもっと強い力で油を絞るんです
この本体の作りで重要なのは細い溝が掘って
そして底の部分は穴と溝があり
外へ絞った油が流れるようにして下さい
絞る機構ですが上部の蓋は周囲のこの螺子で止めます
そして太い螺子が溶接された内蓋を上部の蓋に螺子を通して
固定されたら上に突き出た螺子を回して圧力を掛けていきます
これが底まで到達する必要は無いのですが、
螺子の溝の正確性が必要です」
「ふむ、螺子と回す力の掛かる場所が全体にあるわけか、
かなり頑丈に作らねばならんな」
「はい、ですからグルテンさんに試作をお願いするんですが、
これと螺旋をこう回すドリルのような物と二つ作って
でどちらが効率が良いか調べたいのです。
ドリルの方で負担が掛かるのは
この螺旋部分の軸と取っ手です
ここで刃が仕込んで在ってこの穴から出るようになってます。
分解できるようにして置かないと洗えません。
ですからこれも部品に螺子が必要です」
「ッフッフッフ腕がなるな…
さすがに7日、いや5日で仕上げるぜ」
「後は時間のある時に篭手と
篭手につける着脱可能な盾を作って欲しいんですよ
以前見た金属形状をする特殊な魔方陣のスコップ
あれの技術を応用できませんか」
「ッハッハッハ流石慶司だな、これは思いつかん
流石に複合素材は厳しいだろうがいけるぞ
しかし変わった形の形状をさせるのだな
「ちょっと特殊な刀なので魔法で作れたら邪魔にならないなと」
「ふむ、方法としてはギルドの腕輪の延長技術だな」
「そうなりますね」
「よし、こいつはB&MWに回してやろう、
それとな慶司、うちにも一つ玩具のアイデアをくれ」
「それでしたら大人向けでチェスといきましょう」
「ほう、では教えてくれ」
慶司はチェスとヨーヨーの作り方を教えてから帰還した
金属製のヨーヨーにはしないようにと注意をのこしたのは危険だからである
ヨーヨーは子供の人気商品となって輸出までされることになる。
材質は木と骨などで出来ていた、シンプルな物から漆塗りのような加工の施された物まで生産した
チェスは大人から子供までの知的遊具として広まった
駒は置き換わって
キング=白金、クイーン=金、ルーク=銀
ビショップ=銅、ナイト=鉄、ポーン=石
と色や材質で分けたのがよかったのかこちらも国外まで広まり
都市で選手権を開くほどになった。
元の世界のアイデアでの金儲けとしては過去最大の規模となる
夜になり、リヒトサマラに戻ったのだがエルは食事をせずに待っていてくれた。
慶司はエルと今日一日の出来事を話ながら食事を取った。
エルはチェルシーの救出を聞いて喜び、自分が居なかった事を悔やしみながら昆虫類の魔素変化の注意点や魔物と出会った場合の対処方法などを慶司に教えてくれた。
二人で寝床に入って抱き合い、明日は何をしようかと話ながら眠りについた




