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精霊契約

 この世界でファンタジーだよなぁと感心した事といえばやはり、

 ドラゴンに出会って戦った。

 魔法を使えた。

 猫耳や獣耳がいた。

 自身の出鱈目さである。

 そしてもう一つのファンタジー的感動を慶司に与えたのは目の前の巨木である。

 とにかく大きい、最初リヒトサマラは山を中心に都市を広げてるのかと考えたぐらいだ。


(ようこそいらっしゃいました、異なる世界から来た旅人よ)

 念話で話しかけてきているのは解るのだが、この声の主はだれだろうと顔を動かして探してみる、が見当たらない。

(失礼しました、目には入ってると思うのですが。

 はいその木です、目の前の木を通してお話をさせて頂いております。

 宜しければこちらまで来て頂けませんでしょうか)

 喋り掛ける超巨木、これがファンタジーでなくてなんなのかと久々に感動した。

 だが返事の仕方が解らない、そう思いながら会話しててもおかしくない距離まで近づくことにした。

 木に向かって喋り続ける男、うん通報されそうだよな。

(そのまままっすぐお進み下さい、その建物は森人達がこの木に近づく者を監視するための物です。

 森人の長には既に話しを通しておりますので門を潜って頂いて問題ありません)

 荷車とウラヌス達を預けて慶司達は巨木へと歩いた。


 近づいて改めて思う、目の前は幹しか写らない。

「ここで話せば話は通じるのかな」

(はい、少々お待ちください)

 幹の中から人の形をした魔力がでてくる。

「肉体を持つ事を我らは致しませんのでこの姿で失礼します」

「別に構わないのですが、その姿を見るにあなたは精霊でいいのかな」

「はい、我が願いの為に訪れて頂いた旅人よ…

 長い間ずっと待っておりました、もう3000年待ってようやく来て頂けました」

「気になるところですが、まずは自己紹介をさせてもらいますね。

 俺は渡良瀬慶司です、そして妻のエルウィン、同じチームのエイミーです」

「ふむ、シルフィ殿懐かしいな」

「エイミーですにゃ」

「ええ、エルウィン殿もご健勝のようですね。

 結婚された件は竜聖母様からの通達で聞きました。おめでとうございます。

 この木を殴り飛ばそうと頑張っていたあのエルウィン殿が立派になられて嬉しい限りです」

「ハッハッハ、懐かしい事じゃ」

 笑い飛ばしていいのかわからない、けどシルフィさんも笑顔は本物のようで大丈夫なようだ。

「では改めまして、私は精霊のシルフィと申します、精霊に上下はございませんので代表としてご挨拶に参りました」

「では、先程疑問に思った事から…

 俺の事をご存知だったようですが、それは竜聖母様の情報があればわかります。

 ですが、3000年待っておられたと仰ってた意味が解りません」

「はい、慶司様はこの世界に神がいないのはご存知ですね。

 私達精霊や竜族がそれに近しい存在なのでしょうが神はさらに力の強い存在です。

 今から3500年前、私の友人の先代白銀竜達が亡くなった時、私は己の非力さを嘆きました。

 そしてこの地を救う存在がどこかにいないかと。もし再びあのような悲劇が起こったときに助けてもらえる事はないのだろうか、どうにか自分達で対処できるなら祈らなかったしょう。そしてずっと祈り続けてきました、3000年に渡って次の最悪が訪れる前に希望がある事を願って。

 そして、今から一月前の葉月の7日に知らせがありました。

 願いは届いた、我々は行けないが人を遣わすから何とかなると、

 ものすごく軽い言い方の方でしたが、何故か優しい慈愛の言葉でした」

 フランクだけど地蔵菩薩だもんな…今でも信じられないけど

「それで俺が異世界人だと知っていた訳ですね」

「はい、その後いつ来て頂けるのかと楽しみに待っておりましたのに。

 風の噂であっちへいったり、こっちへ行ったりと来られませんので悲しかったですよ」

「すいません、一応あれで変異魔素の事を調べてはいたんですよ」

「ええ、竜族の緊急連絡網からの伝達で教えて頂きました」

「残念な話ですが自然発生ではなく人為的な発生である事は確定しています」

「ほんとうに、ですので慶司様にお願いがあるのです。

 このような勝手な希望をお頼みするのは申し訳ないのですが

 何卒、事件解決にお力をお貸し下さい。

 私達はここから動けない只の精霊にすぎません。

 ですがお力になれる事が存在するならば出来る限りの助力をさせて頂きます。

 何卒、世界を異変からお守り下さい。」

「心配していただかなくとも俺もこのファーレンが気に入ってます。

 それに妻の世界でもあります。必ずとはいいません、被害も少しはでるでしょう

 それでも俺は俺の出来る最善は尽くさせてもらいます」

「慶司は人は人でも異世界の人だったにゃ、どうりで凄いとおもったにゃ」

「エイミーさんはご存知ではなかったのですね」

「ええ、まぁエイミーなら知ってもらってもいいんですが、一応少数に止めています」

「それはすいません」

「いえ、エイミーには十二分に変な質問をしたり戦闘も一緒にしてきてますから」

「そ、そうだにゃ、前々から慶司は只者ではないと思ってたにゃ!」

「まあ慶司は慶司で我の夫であるそれでいいのじゃ」

「仲がお宜しいのですね。

 さて、慶司様がわざわざリヒトサマラへおいでになったのは件とは別件であると思うのですが、目的などお教え頂ければ何かの約には立つかもしれません」

「そうですね、今は魔素の件は商会などにあたっては貰っていますが情報も無いですから。

 今回こちらへ来た目的は複数ありますね。

 まずは精霊に会うのが目的の一つ目でしたからこれは叶いました。

 次は訪れることでその地に繋がりを持つことですのでこれは徐々に出来るでしょう。

 薬草とお茶について知りたかったというのもあります。

 後はそうですね、精霊魔法について教えてもらってもいいですか」

「ええ、ちなみに薬学などの事ですが、長のムーサを紹介します。

 彼女に聞けば色々と助言を貰えるはずです。

 あとは精霊魔法ですね。

 まず魔法に属性がある事はご存知ですね。火、風、水、土、雷、光、この六つです

 精霊とは存在そのものが属性魔法であると言えます。

 私は風の精霊ですから存在自体が風の特徴を持ちます。

 ですので風の精霊魔法というと私自身が動く魔法と私が使う魔法という二つの面が存在します。

 精霊はこの世界でありこの世界でないところに普段は漂っています。私のようにこの木に宿る者もいれば火の精霊のように時折だけ火山に宿ったりする者もいます。

 まずはこの精霊の存在を認識し、契約することが必要になります。

 契約はそのものが精霊と契約するに値する者かどうか、魔力が足りるかなどを見極め、契約が可能であると判断された場合のみその者へ召還魔法を伝えます。これはそれぞれに与えるものが違うので引き継ぐことが出来ないので精霊と契約を結ぶにはまず精霊を見つけるという事が必要となるのです。

 強い存在の精霊は魔法属性と一緒ですが、他に木、石など生物以外の世界の物質それぞれに精霊は存在しています。

 そして契約した者の魔力を使い召還されますと私なら風の魔法として動くわけです。

 そうですね、意思を持った風魔法が発動するわけです。

 この時、私は魔力の風という存在で召還されるため、

 私がぶつかれば突風に当たられたり切り付けられたりするのです。

 ここで一応の補足ですが私を召還しながら火の精霊であるフレアも召還したとしても掛け合わす事はできません。ここが通常の魔法と違うところです。

 もう一つの私が使う魔法が存在し召還者の命令で魔法を行使しますが使えるのは与えられた召還時の魔力分だけです。遣い終われば私たちはそこに存在できませんし、一定時間たつと魔力を消費し続けるので消えてしまいます。そして使えるのは属性の魔法のみですが召還者が魔法を発動するならば火を火炎にしたり水の魔法を水圧変化させたりという事が可能です。

 最後に私たちは精霊ですので、物質の情報を知っています。

 制限はありますが、薬草などの効能を森人へ伝え体内の細胞を活性化させ治癒を行う方法を伝えました。

 これが治癒の魔術として存在します。

 人や亜人は竜族のように魔力で肉体を構成する事は出来ません。

 ですので治療をする必要がありますが魔術で助かるのは一部の人のみというのが現状ですね」

「ありがとうございます」

「いえ、慶司さんが宜しければ契約をなさいますか」

「構わないのですか」

「ええ、問題はないですよ」

「別に契約者がいるのでは」

「いえ、私たち精霊は仮に他で召還されようとも風は風の精霊として召還されるだけです。

 ですから召還者が複数いても風としての私本体は精霊界と呼んでる、ここで在ってここで無い場所に常に存在しますから問題はありません。慶司様なら複数の精霊と契約をなさって召還しても尚魔力が持つでしょう、逆に言えばそれほど私と契約する必要性も無いのかもしれませんが」

「いえ、是非お願いします」

「では、私の精霊契約の方法をお伝えしますね」

(風に魔力を送り私の名前を呼んでください、

 それで私は慶司さんの魔力を覚えます。

 召還したいときは同じように、

 風に魔力を送り込み名前を呼んでくだされば)

「えっと、こんな感じでいいですか」

「はい、大丈夫です」

「では、またお呼びするかもしれませんが…

 その時は宜しくお願い致します」

「はい、それではこれで失礼致します」

「うむ、またの」

「さようならニャ」


 シルフィは木に溶け込むように吸い込まれていった。

 最後にフワっと風が通り過ぎたのは精霊なりの挨拶だったのかもしれない。



「で、主様よ、このまま森人の長に会うのか」

「いや、一旦荷物を宿屋に預けよう、

 ウラヌス達にも餌をあげたいし、

 さっきのところに預けっぱなしは可哀想だよ」

「ふむ、では宿屋に向かおう」

「はいにゃ」




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