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エイミーの悩み・竜族の伝説・森人の青年

 ――討伐後の村、宿屋にて――


「にゃ…うう…猫又族の耳が良すぎるのはちと拷問にゃこの時間まで待ってくれても起きちゃったにゃ」



 時間はまさに深夜である、夫婦なんだ諦めろと、今度から耳栓を使おうと心に決めてエイミーは寝た。







「ふぅ、今日の空も快適なものだ、下を見ても暴れてそうな魔獣も魔物もなし、巡回だけならこれほど楽な任務もない」



 そんな事を言って空を飛んでるのは若手竜族のパトロール隊員である。年齢も関係なく割り振られる仕事だが、やはり湖や森の上を飛行しながらのんびりと出来るのは気分の良い物だと暢気に考えている。


「そう言えば最近突然空で捕まって用事を頼まれるって話が噂話であったな…そんな事されたらびっくりするだろうよ」

「おっとすまない! この手紙を竜聖母様へ届けておいてくれないか」

「うわぁ! え? 」


 危うく墜落しそうになった。なんだいったい?


「え、人族…に翼…竜族?」

「ああ悪いがこれを頼む、慶司からだと伝えてくれたら届くから頼んだよ巡回中だよね?」

「わ、わかった…」

「ありがと、それじゃあ宜しく」


 なんだろう、逆らったら駄目だと本能が告げている、今のが例の噂話なのか。

 確かに突如として現れたしあの翼の色は白銀の竜だった…帰ったら仲間に聞いてみよう、いや、聖地までこの手紙を届けたら判るのかもしれない。


 水竜の若者は聖地へと向かい更に驚く事になる。先程手紙を託してきた青年が白銀竜の夫でありマリシェル様とも知古だという…


「へ…変な態度は取らなかったよな、俺のせいで白銀竜様が殴り込んできたら洒落にならないぞ」


 後日、空の巡回をしてると白銀竜が殴りこみに来る、という噂が広まり、本気で焦ったマリシェルが【緊急連絡事項】とし、竜族全体に連絡網を使い、慶司とそのサポートを進めたのは言うまでもない。









「よっと、間に合ったよ…この辺り担当の水竜の一族かなブルーの澄んだ色の竜だったから」

「おそらくな、この先に行けばもっと本拠地に近づくからな、アルザスでもそういう感じじゃよ、聖地出向組みとで場所はかぶったりするが監視は大事じゃからな、ところでどうだった」

「ああ、やっぱりコートを変形してるほうが話しが通りやすかった、竜族の変形した姿だとおもったのかもしれないね」

「まあ、あの白銀の翼をみて判らぬ野暮はおるまい我が主様だと人目でわかるはずじゃ」

「やっぱり白銀って名前の影響はすごいねえ」

「まぁちょっと昔飛び回っておったから他の竜族の支配地でも我の有名度に関しては抜くものもおるまいよ」



 悪い子がいたら白銀竜様がやってくる的な伝説竜族に残しているとは知らないエルである。



「しかし、森人の監視体制は凄いね、大体村から1日の距離になると近づいてくる、そろそろ獣とあうかな? ってポイントだよ」

「ふむ、それを幾人が知っているかじゃからなぁ人知れず継続するのは大したものじゃ」

「あの川あたりで今日は一泊するか」

「うむ、魚でも釣って食べようぞ」

「一緒にご飯が食べれればいいんだけどね」

「ご飯は皆で食べるのが美味いからのぉ」



 とまあ思っても森人はひたすら森からの監視に務める。

 しかし、ウィルドをあっさり倒すほどの冒険者である。通常ならば冒険者パーティーにとって阻害になりかねない為に実力を見極めたら監視は解かれるのだがより興味をもった。どれだけ巧妙に近づこうが見つかるらしいぞと申し送りには書いてあった。まさに今も時折こちらの位置を見ては進んでいく。なんとかばれないように隠れる事はできないものだろうか。森人の青年はいつしか任務よりもそっちに集中していった。そしてそこに風上にいる慶司達のパーティーが野営地で作ってるご飯の香りである。



「な…この冒険者達はお米を食べるのか、く…焼き魚にご飯」



 いっそばれてるんだから近づいても問題あるまい。などと思いどんな魚を食べているのかと青年は近づいた。







「それじゃエイミー下流で網を3重で重ねててね」

「用意できたにゃ」

「ふむ、主様はどうやって魚を捕まえるのじゃ、網に追い込むのか」

「いや、こうやって、よいっしょっと岩を流れの真ん中にセットするでしょ」

「ふむふむ」

「そしてエイミーの方は流れが狭くなるように石で囲いを作ってある」

「そうじゃな」

「それで、この石をこう、よいせ! ほいっと」

「投げつけた!?」

「岩をセットしたのはまあ出来るだけとる場所を限定するためでやるとプカプカ浮いてくる魚を逃がさないためにエイミーには網をはってもらったんだ」

「大量にゃ!マーガレットフィッシュもいるにゃ」


 薪に串刺しにした魚を大量にならべ食べ切れない物を干物にしていく、薪の近くで竹のスモークで燻していく、さてとご飯も炊けたし、竹でご飯を炊くといい匂いがするようになる。

 あれ? っと思ったらウラヌスが森の奥の方を見ている、ちょうど風下だ。少し匂いをさせすぎたかなと反省したが情況が違った。森人の青年がこっちへ走ってきたのだ、だがウラヌスはその奥を見据えている。これは厄介なのが来たみたいだとエイミーに火を任せて武器を引き寄せ弓を構えた。



「に、逃げろ、ドルムスだ!」

「こっちへ走ってきてください」

「わ、わかった」



 流石に爆裂するタイプはまずいので飛距離を伸ばす空気推進型の矢を次々と放っていく。ドルムス相手に逃走というのは普通の人間には無理である、出会わない事を願うか音をだして避けさせる、もしくは戦うかしか無い、一旦戦闘が始まってしまえば深手を一撃で与えて逃走させるしかなくなるのが普通である。なぜなら逆上したり興奮状態に陥ったドルムスはどれだけ深手を与えても逃げなくなってしまうのだ。

 額に1本、肩や前腕部分に1本、多少は速度が緩んできたので森人はこっちへこれた。

 目を狙ってみたがやはり走るドルムスの目は無理だ、そうなると弓矢で脳を壊しつくせるかということになる。慶司は弓を腰にもどして石を拾い投げつけた一瞬ひるんだドルムスに向かって目の前に光の魔法を浮かびあがらせると側頭部へと一撃を加えて心臓を突き刺して止めをさした。

 ウラヌスが尊敬の眼差しでみているが、肉が欲しいの? と聞くと、うぉん、と返事したのでやることに、流石に食べるには処理に時間もかかるし毛皮を剥いで肉を火で炙ってウラヌス達へとやる事にする、町の薬剤ギルドがみたらこの内臓欲しがるんだろうなぁと思ったところでそういや森人の事を忘れてた事に気が付いた。



「ちょっといいかな?」

「先程は助かった、まさかドルムスに追われるなど里に怒られる…」

「ずっと警護されてるんですね」

「いや今回あなた達は警護の必要なクラスでは無いと報告があったのですが何処まで自分の存在を認識してるのかと確かめたくなりまして…そこにご飯の風景が目に入ったところでまさかドルムスが近づいているのを感じずにといった次第、ご迷惑をおかけし申し訳ありません」

「ああ、いえいえ、ドルムスなら問題は無いんですが、この肝が問題なのです。はあ、この処理ができるという事は以前にもドルムスを薬剤師に売られてますね?」

「ええ、以前も突然の遭遇だったのですがそのまま町へ持ち帰り捌き方を見てたのです」

「この胆嚢は非常に価値のある物です、森人が優れた狩人を集めて仕留めないと手に入らない品ですから」

「そこでまあこちらの胆嚢と内臓を森人の方で薬にされるのなら使って欲しいのですが、こちらではきちんとした処理が難しいので、お仲間で都市か町へと」

「売った事があるならいかに高い品かは解るだろう? それをひょいっと預けるのはどうかと思うのだが」

「いや、私たちがもってっても腐らせるだけですから」

「ふむ、欲が無さ過ぎるな、よしじゃあ今晩のご飯を俺にも分けてくれ、それで処理の方法を教えよう」

「わかりました、お魚とご飯ですけど大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない大好物だ、む、この匂いはなんだこのスープは?」

「味噌汁といって故郷の食べ物なんですよ」

「ほう、これはご飯と魚との相性が抜群だな…」

「やっぱりそう思ってもらえましたか」

「ああ、いやぁ竹をご飯の炊く入れ物にする事や魚も塩焼きですから熊の内臓の処理を教えるだけでは申し訳ないですね」

「いやいや、問題ないですよ。でもせっかくですから一つ質問をさせて下さい。単純に皮をどのような状態で町まで運んでますか?私は今まで数日かけることが無かったので…」

「ああ、それでしたら先程の脂まで綺麗にとった後で我々は灰を刷り込んで水につけ乾かしてから町へ持って行きます。そのさきの工程はさすがに専門の人間がやってるのですが、個人で使うときには塩もみと灰もみをして洗い流したら植物のタンニンにつけて出して揉んで干す工程を経たほうが長持ちしますからね、最後に植物からとれる蝋を刷り込んで使います。もし自分だけで使われる目的でさほど長持ちしなくても良いのであればそんな方法もありですよ」



 コートはあるから良いとして熊革の帽子とか作ってもいいかもそれに荷台に敷いて使えるか…そう思って慶司は今回の革で敷物を作るために作業する事を決めた。元々の慶司の知識のなかでは化学薬品での革処理が存在するといったレベルでありこの世界ならではの方法を教えて欲しかったのである。

 タンニンは木の実と灰とで作れたはずだし蝋のかわりに油もある、時間をかけてやってみようと慶司は決めた。





 その後、森人の青年に熊の胆の陰干しの方法や他の処理方法を聞いてメモをとり今晩ゆっくり処理をすると言ったら手伝いを申し出てくれたので共に作業をした。やはり森人のイメージが他の種族からは変な印象をもたれているだけなのではないかと慶司は確信をもった。





 夜も更けて森人の青年は手伝いが終わると巡回に戻るらしい、以外にこの時間帯にも旅人が要る可能性は無視できないという、慶司は感謝と共に礼として魚の干物と肉を渡しまたどこかでと見送った。





 ドルムス襲撃から5日後に慶司達は村に到着した、この村に到着するまで森人が時折は接近したがあの青年が言うように単に順路に行き当たったのみでそのまま通りすぎていった。

 そしてこの村であるがようやく森人の住む村になってきて建物の殆どが完全な木造建築で雰囲気が変わった、予想してたツリーハウスではなく高床式の建物でねずみ返しなどもついていた。床下も高く子供なら走り回れるぐらいである、ログハウスの様に組まれていて雪が降らないせいなのか屋根は緩やかな板葺きの屋根である、側面は大きな窓がついていて網戸のようなものがはめ込まれていた。

 まずギルドへと足を運びドルムスの牙を渡して換金してもらい討伐代と一緒に換金してもらい。礼を述べて明日には出発の旨を告げ薬剤ギルドへ、そこでドルムスの薬効を確認し自らのパーティー分を少量確保した後に胃や胆嚢などを売却してお茶とハーブを買い足した。食料品を扱う店で保存食を買いこちらでしか手に入らないという米を購入した。雑貨やで樽と釘を買い店内を見て回った、食堂でご飯を食べて一服した後に宿に行き風呂に入って疲れを取った。

 昼に到着したので時間がのこり慶司は宿の主に断りをいれて裏にはで革をなめすために灰を作り水を混ぜいれて灰汁を作り、さらに道中で拾った木の実をその中に砕いて入れて煮詰め冷やした物を樽に放り込んで浸して棒でかき混ぜた。そのまま数日は放置だろうと慶司は決め込み、荷車に載せた。ウラヌス達へご飯を与えに行き、ブラッシングをしてやると嬉しそうに顔をこすり付けてくる。3匹の手入れを終えると慶司は部屋へと戻りエルと一緒にベットで過ごした。





 その後の旅は順調そのもの、出てくるといってもドルドの群れかフォルクスだけで慶司達というよりウラヌス達の食料の為と訓練の為の戦闘といった感じで過ごした。慶司は次の町で革をタンニンの液からだして水洗いをした後に乾かして木組みで枠を作り隅をくぎで固定しさらに油を塗っていった


 さて、油であるがこの世界になぜ植物油が存在しないか、完全に存在しない訳ではないが油と認識されていないのでない物とする、簡単な話で料理には脂身からとったラードがある。そして明かりは魔法が存在するのだ、種などから取れる油はものすごい手間がかかるし大量に作るのが大変なものである。種から3割から4割、この世界なら2割ぐらいしか取れない、存在するのは香油としてはいるだけで、弊害は実は普通の石鹸の存在が無いことである。軟石鹸と思われるものすごい臭いものしかない、使えないし使いたくない。今のところ竹の炭と灰と油を煮詰めたものをつかってるのだが…


 石鹸作りはどうなのよ? と思う。まず種がいる、そして絞る機械もいる。元が取れるだけの投資になるのか?作れれば恐らく…爆発的ヒット間違いない。でも旅を続ける事を優先にしたい慶司はアイデアのみで勝負になるか先ず相談することにした。軟石鹸を改良していけばいいわけだからそこまで難しいわけじゃないはずだ。ちょうどこの先には森人達の都市があり農業に関しては彼らに相談すればいいのだから…

 竜族的な問題が発生しないかマリシェルへ問い合わせをする事にしようと慶司は旅の中考えた。


 そして目の前に目的地であるリヒトサマラが見えてきた。全てを開拓するのではなく森を多くのこし田園風景と切り開いた畑の土で出来た里山を大量に有した景色が広がっている。所々に獣から逃げるための防柵があったり土手に用水路があったりとのどかな風景だ。果樹園も見られるし、近づくにつれ栽培されているのが米と薬草の類だとわかる。桑の林もある。水車が回る小屋も幾つか通り過ぎた。そして慶司達一行は門番に挨拶をして森人の里リヒトサマラへと入いった。


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