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狙い撃つ!

 少し依頼を受けただけなのにギルドのランクが色々と上がっていた。

 ランクが上がったからといってファンファーレがなる事もいが、仕事の幅が広がるのだから悪い事では無い筈である。

 しかし上がる限度という物があるだろう、なにせ慶司は冒険者として初心者なのだ。

 採取銅6、狩猟銅10、討伐銅10、護衛銅10にされるところだった、流石に抗議して、経験と実績はまた別ですからと納得してもらい、妥協点として討伐ランク5までにしてもらった。しかし護衛ランクに関しては聞き入れてもらえなかった。せっかくなのに、とマリアさんは残念そうだった。


 慶司としては未だ完全にこの世界に慣れてもいないのに、そこまで自分の仕事を適当にこなすつもりは流石に無い。まずは経験を積まなくてはいけない。


 今日からは暫くエイミーとエルと3人で朝から行動ができるのである。まずは依頼掲示板を見て依頼の現状を確認する。

 討伐依頼はゼロ、狩猟依頼が5件、採取依頼が6件、護衛依頼が2件、雑務依頼が1件張られていた。

 雑務依頼は冒険者じゃなくても出来そうな物が多く張り出される。口入屋の様な仕事も行っているのである。大概は力仕事の依頼であり今回の物は引越しの手伝いである。

 依頼内容を確認すると、今日張られて期日が明日ということは、かなり急ぎの依頼なのかも知れない。戦闘が関係しない事も気に入ったので午前中は一人でこれを受ける事にした。エルとエイミーは採取と狩猟の依頼を一件づつ選びカウンターへ移動した。

 

「おはようございます、慶司さん。

 この依頼引き受けてくれるんですか?」


「うん、力仕事みたいだったしね。

 募集も一人だからこれは俺だけが受けます。

 二人はロックハイドフィッシュ10匹と、

 ベバの採取30個やるみたいだね」


「あ、あとこちらが昨日のラビとドヌルの皮代です。

 傷がついてない物は貴重で良いお値段がつきました。

 ラビが2倍の一匹200リュートで2000リュート、

 ドヌルも全身あるということで1800で9000リュート、

 合計で11000リュートで落札されました。

 1%セントの手数料を引いて10890リュートをお渡しします」


「ごめんね雑務増やしちゃって」


「いえいえ、昨日の騒ぎでしたし、これも通常業務です。

 皮屋と直接じゃなくギルドに委託する冒険者さんは多いですよ、

 特に毛皮メインで狩猟してる人達は殆どが委託ですね。

 王国とかに纏めて出品する手配を受け付けたりもしますし。

 それに利用してもらうことで冒険者の手助けになって、

 ギルドとして手数料を頂けますから」


 そういってマリアさんは微笑んだ。

 それじゃ、と二手に分かれて依頼をこなそうという事になったのだが、エイミーは既に目が魚になっていた…あの網はそんなに細かくないから、魚には使えないと思うのだがどうする気なのだろうか。



 ◆◇◆


 

「失礼します、冒険者ギルドから派遣された者ですが」


「助かります! 流石に女一人じゃ全部の荷物を運べなくて」


「えーっと、仕事場の引越しという事ですか?」


「はい、一流の彫金師をめざしてまして、

 まあ、みんなに珍しいと言われるんですが、

 あ、私、マーガレットとです」


「慶司です、女性の彫金師は珍しいのですか?」


「あーえーっと私魔族ハーフだから…

 しかも彫金師で魔術研究者じゃないってなると」


「とりあえずこの箱に荷物を詰めるんですね。

 この棚の物をまず入れてそとの荷車に載せればいいかな? 

 

 あとは、そうだな、職業は自由だと思うんだ。

 彫金は細かな作業も多いし種族の違いとか、

 得手不得手は在るかも知れないけど、

 きっと、マーガレットさんにしか出来ない事もあるでしょう」


「あ、はいそちらの箱につめてもらって大丈夫です、

 そう言ってもらえると嬉しいです。


 彫金師って山人の職人は男性ばかりなので、

 私は山人の工房のように金属を石から加工は無理ですが、

 細かい造詣を目指してアクセサリーを作ってるんです。


 それで続けてやってきたんですが、

 今度は大きなお店で修行をさせてもらえる事になりまして、

 今までは一人で金属を仕入れてたんですけど、

 作品を買った人経由で腕を認めてもらえて!」


 彫金に打ち込む情熱は凄まじい程に伝わってきた。



 ◆◇◆



 荷物を積み込んだ慶司とマーガレットの目的地は、北地区の外れにあった。マーガレットさんの工房から徒歩20分、見慣れた景色が目の前にある。

 

「ついに、B&M工房で働ける日がやってまいりました!」


「有名?」


「それはもう、超有名工房ですよ。

 アクセサリーだけなら一番の工房と言っていいです。

 グルテン工房さんにも勝るとも劣らないと言われてますから」

 

 流石ライバルにして酒飲み友達達である。ここでグルテンさんの名前まで出てきた。只の釣り馬鹿工房じゃなかったのである、そして世間は思っていた以上に狭い。少し低い評価をしていたブルーノに申し訳なく思う。

 

「あら、慶司さん、釣り針ならできあがってますよ」


「え、知り合いですか」


「はい、釣りの道具の作成依頼をしてまして…

 今日はマーガレットさんの引越し手伝いでやってきました、

 荷物はどこに運べばいいですか」


「じゃあこちらの方へお願いします」

 

 工房の方の扉を開けてもらって中に荷物を運び込む、慶司は体力も力も尋常では無い為にあっというまに終わってしまった、完了のサインをもらって引き上げることにする。序に商品も引き取っていく。

 

「それじゃ釣り針2種類確かに、

 ではマーガレットさんがんばって下さい」


「はい、助かりました! 一日で終わると思ってなかったので」

 

 余談だが、後日、マーガレットは幸運と努力の甲斐があって女性に人気の彫金師となる。細かく施された魔術文字と魔術記号を組み合わせて発売されるそのアクセサリーは(恋が叶う幸せ)と呼ばれマーガレットブランドと呼ばれる事になる。



 ◆◇◆


 

 実に早く依頼が片付いたものだからといって、エル達がどこで採取と狩猟の依頼をやってるかまでは打ち合わせしておらず、待ち合わせの冒険者ギルドで時間を潰すことにした。

 

「マリアさん引越し手伝い終わってきました」


「予想より早かったですね、

 こちらが報酬の500リュートです」


「それじゃ二人が帰ってくるのを待つまで、

 そこのテーブルで読書でもしてますよ。

 採取関連や討伐関連の本とかありますか?」


「こちらは貸し出し用で置いてる物ですが、これで宜しければ」


「ありがとう」

 

 本を受け取って、テーブル席に座った。冒険者用の技術書とも言える狩猟や討伐対象について纏めた本を読みながら時間を潰す。

 カウンターの方には時折依頼者がやってきてはマリアさんと打ち合わせたり、他の職員が対応にあたっている。現在の依頼は朝よりちょっと増えて、討伐依頼はゼロのまま、狩猟依頼が7件、採取依頼が8件、護衛依頼は1件に減っていた。

 マリアさんも暇らしくこちらにお水を持ってきてくれる。レモンも少し入っていてさっぱりした、商談用だから気にしないで下さいねとの事。少しの気遣いが嬉しく感じられる。

 

「意外と狩猟にしろ採取にしろ減らないものですね?」


「そうですねえ、ここは都市ですからね。

 冒険者が活躍してるのは近隣の村の方が多いんですよ、

 都市よりも討伐なども多いですから。

 今この町にいる冒険者さんでフリーの方は…

 慶司さん達を含めて15人ですね。

 5人が討伐と狩猟メイン、3人が狩猟のみの、

 採取のみはエイミーさんを含めると3人、

 護衛専門の方が2人です。


 討伐されている方達は鋼の上位クラスでこの町のトップです。

 銀クラスの人達が護衛で出てるので戻るまでですけどね。


 ちなみに金クラスはどの分野でも数が少ないですよ、

 300人いるかいないかじゃないでしょうか、

 

 銀の上位の方がいればその町や村の討伐はこなせますし。

 ギルドも一組はいて貰うようにお願いして回ってるんです。


 まあ都市は大きいですからね違う解決方法もあります。

 人数頼みで警邏と門番などの自警団が動きますからね」


「やっぱりピラミッド構造なんですね」


「ええ、上は少ないですから貴重なんですよ。

 慶司さん達には是非とも上のランクを目指して貰わないと。

 それで伝説の白金になってギルドに貢献してもらいます!」


「まぁ程々に頑張るよ…」

 

 慶司が依頼書をみて回るとホルホル鳥の依頼があった、鳥はさすがに弓で撃たないと無理である。といっても慶司は弓の腕前が良い訳でもない、クロスボウを作成すればと考えたが、クロスボウが存在しない世界で果たして作っていいものか、殺傷威力が高すぎて中世では禁止されたとまで言われる武器なのだ。よく小説などでは使われるとも思いつつ異世界物の定番品はどうなのとも思ったのだ。


 そこまで考えたので、形状や使い方に余り差がないアーチェリー位ならいいんじゃないかと考えたのだが、ここでヘリコプターを打ち落とす弓にたどり着いてしまったのは映画の影響だろうか。


 慶司はマリアさんに少し出かけるので二人が戻ったら待ってるようにと伝言を頼み出かけた。


 木で作るにはちょっと強度上の心配があるし量産されるのを防ぐ為に部品調達の形を取ることにする。


 グルテンのところへ行って出来るだけ丈夫で軽い金属でフレームを作ってもらう。こんな金属の弓を人間は引けんぞと笑われながら3個依頼した。


 B&Mでは滑車とそれようのネジやパイプにサイトなどを注文して、武器屋で弓の弦の販売元から通常の長さの4倍の物を仕入れてもらう。


 昼前には全ての手配を終えて明日には作ってもらえるようにと特注して戻ってきた。

 

「ベバの採取は終わったけどにゃー魚の成果は3匹にゃ」


「それじゃお昼を食べたらもう一度行って見よう。

 今日引き取ってきた釣り針だったら釣れると思うよ」


「うぬぬ、網を使えば取れると思ったのじゃ。

 小癪なロックハイドフィッシュめ網をすり抜けたのじゃ」


「あれは魚用に作ってないからね?」

 

 まあ電気漁をやらなかっただけましか、あれエルがやると威力が強すぎて獲物の品質が落ちるしね…まあさすが最終手段としては爆発する魔法を水中で使えばいいんだけど…などと慶司は考えていたのだ。

 すこし失礼な話だが実際エイミーが止めているので間違いとも言い難い。



 ◆◇◆


 

 三人は川原で石をひっくり返して虫を捕まえていく、数が集まったところで上流の岩場で釣りを開始した。竿は竹を加工した物、釣り糸は例の虫から取った擬似ナイロンの物を使用して、釣り針は特注の小さい物だ。


 10分ほどのんびりとポイントを探しながら釣ってると当たりがあって一匹釣れた、そこからは1時間もかからないうちに合計で12匹を釣り上げることが出来た。せっかくだからということで、釣りをしながら焚き火で魚を焙り食べる事にした、エイミーは涎をたらしながらにゃっにゃっと騒ぎながら焼けるのを見守っている。


 さらに5匹を釣り上げて、明日はホルホル鳥を捕まえに行こうという話をした。

 

「ホルホル鳥は意外と足がはやいにゃ、

 弓が得意な冒険者でも難しいにゃ」


「うん、弓は特注で作ってるから、それを使うよ。

 午前中は組み立てと練習、午後から狩に出かけよう」


「ホルホル鳥か…

 あれは美味かったゆえな、

 沢山とって食べたいものじゃ」

 

 エルの食いしん坊は止まらない、ギルドへの帰り道エイミーはロックハイドが食べれて幸せそうにスキップを踏んでいたし、ギルドで受け取った依頼書を抱えてエルはまだ見ぬホルホル鳥を楽しみにしながら帰途についたのだった。



 ◆◇◆


 

 次の日、朝からとりあえず一台を完成させた。慶司はサイトの調整を行い、試射後にその出来に満足した、10メルから15メルの標的なら外さない精度である。鏃も特注の物を用意し細い鏃にした。猫又族は短弓が得意らしいのだが、そのエイミーが感嘆をついたのだから上々の出来だろう。もう少しテンションを調整すれば飛距離はあがるが、自分以外が使うことも考えて、そのままの仕様で狩に出かける事にした。


 ホルホル鳥は林や森より草の多い平地にいて走り回ってる。一番平原に近いということで南門から出発した。


 一羽で250リュート、羽根も引き取りに出せば20リュートで買い取ってくれる。目標は明日締め切りの5羽の依頼だから焦らず一羽づつ狙う。

 

「あっちの茂みに一匹発見したにゃ!」

 

 弓矢の優れてるところはその静穏性能だ、シュッという風を切る音と共に一匹を仕留めた。さらにこの森をこえていけば見つけられるかもしれないが別の獣などに襲われることもあるというので待ち構えながら仕留めて行く。

 

 エイミーが発見し、エルが周囲を警戒、慶司が撃つといった具合である。途中で血の匂いに引かれたドルド達を5匹倒して、夕方までには6匹のホルホル鳥を仕留める事ができた。何を掘るのかと思ったら鳴き声がホルホルということだったのだが思ったより大きい鳥だった。

 更にキョッキョと鳴く鳥もいて、こちらも仕留めたのだがその名の通りキョッキョ鳥らしい、雉をさらに鮮やかにした鳥で美味しいらしい。依頼は無くとも店で引き取り可能の獲物なのだが、、帰り道にエルがキョッキョ鳥も食べてみたいという事で本日の晩御飯が決まった。


 弓を夜に一人で組み立てながら思ったのはちょっと強力すぎたかなというところ。クロスボウを作ってないからわからないが多分実用性はこっちが上だろうと慶司は感じた。そういう理由で予備も含め三台分部品は在ったがエル用に一台を組み立てて後は予備部品とした。

2011/08/01修正あり

2014/09/03加筆修正あり

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