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それって恩返しじゃないよね?

 あえて魔法や魔術などにご都合主義の設定を否定しています、そんな融通がちょっと利かない世界観が特徴のお話です。


 現状、物語の進行を重視し、投稿分の文章見直しは行っておりません。

 読みづらい部分もあるかと思いますが御了承下さい。

            2014/8/10せおはやみ


「話の通りの場所…ぽい?」


 森の中で慶司(けいじ)は呟いた。

 ふむ…

 と納得しつつ、先程までの体験が夢で無かった事を理解した。見渡せば周囲は針葉樹と広葉樹の混ざった森で見たところ問題は無さそうであるが、山の中腹辺りなのか近辺に人里が見当たらない。


 さて、これからどうしたものか、慶司は頭の中で先程まで話していた存在との事を思い出しながら確認する。


 事の始まりは、気紛れとも言えるような、偶然なのか必然なのか、それも教えてもらえなかったが…



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「うん、君な、ちょっと別の世界逝ってくれんかの。俗に言う異世界っちゅうやつや」


 慶司はその人物に突拍子もない事柄を突然話しかけられたのだが、先程まで川辺でキャンプをしていただけである。


「ちょっと待て、っていうかあんた誰?」


 こう質問した慶司は多少ずれていると言われても間違いでは無い。何せ慶司が石で作った竈で焚き火をしつつコーヒーを飲んでいる所に、突然見ず知らずの男性が現れて、平然と目の前の石に腰掛けながら話かけてきたのだ。普通ならもっと慌てても良いぐらいの反応だ。


 だがこの慶司という青年、ちょっと変わった体験なら何度もしているし、多少の荒事なら慣れている。殺気を放ってもいない、単に話しかけてくるような存在なら慌てるよりも好奇心が先に立つのだ。


 まあ、その性格のおかげで厄介ごとに鴨葱(かもがねぎをしょって)が如く突っ込んでいく訳で笑えるのだが笑えないのだか…



「いやあ、すまんすまん。人と話すの久しぶりでなぁ、ちょっと興奮してたわ。私は君らの言うところのお地蔵さんって奴や、地蔵菩薩とか言われとる。けー君が昼間に直してくれたあれよ、あれでな、ちょっと傘地蔵の話ってな訳では無いし、恩返しなんか?そう問われると、ちょっと返答に困る訳やけど。どっちかと言えばお願いやね、ちょっとばかり異世界逝って来てくれんかの」


 謝っている雰囲気が全くもって伝わってこない、なによりも……

 全くもって意味が解らなかった。


 何やら不穏な響きがあるのだが、確かにキャンプを予定していた川辺(ここ)ここに来る前に、倒れて割れてしまった石の地蔵と祠を見つけた為に時間を割いて直したのは間違いない。でも、それがどこからどうして異世界がどうたらという話になるのか、全くもって理解に苦しむ。


 だが目の前の男性が地蔵菩薩というならそうなのだろうとは納得した。流石に神仏に会うのは初めてだが、納得できるところが変わり者と言われる所以(ゆえん)で、様々な経験の賜物であろう。


「お地蔵様を修理しただけなんだけど。それだけで、異世界に行ってくれなんて話になるのかな?流石にそれだけとは思えないんだけど?」

「まぁ、そうやろうねぇ。細かくは言えんのやけど。でもねちょっとこう神様ねっとわーくから連絡があってね、誰かを異世界に送ることになったのよ。で、推薦枠と候補枠があって、さっきまで会議してて」


 なんとも夢があるのだか無いのだか、判断しにくい内容をお地蔵様は話し出す。


「そこでなんと、断突のトップ。候補枠に推薦5で名前が入ってるという子がおった。まあ、それがけー君が選ばれた訳なんよ。まあ私も推薦した訳やけど。他に推薦4とか、けー君の地元の神様とかお稲荷様とか…」


 そのままフムフムと呟きながらと云いながら古書のような物を広げつつ読み上げるお地蔵様。


「えーと資料によると渡良瀬慶司、学生17歳で彼女は面倒だからと作ってない。それなのに女友達が多いって。もしかしてハーレム願望でもあるの?」


「ないよ?」


 多分ねとは言わない、というか慶司自身そんな事を考えたことがないから判らない。


「というか資料って何」

「あー…んーと、ちょっと人には見せることは出来ないんだけど。けー君には異世界に逝ってもらうから説明すると」

「いや、決めてないよ?」


 決めてないのも本心ではある、だが興味のほうが上回ってるのは確かでちょっと聞きたい。


「またまたぁ~、この資料読む限り君なら逝く。そう断言してもいい!というか察しはついてる位の知識はあるんやろ。ここにはそうと記されとるで」


 慶司に心辺りが無いわけではない、この男性が地蔵菩薩と名乗ったからには閻魔帳と云われる物もある。だから人の行いを全て調べようと思えば調べられるのだ、そう慶司が考えているのも確かなのだ。態々(わざわざ)反論をして時間を無駄にすることは無いと考えている。


 小説や漫画ではなく田舎の蔵にある書物で調べた知識だ。先ず間違いは無い、神仏はなくとも、怪異には何度か遭遇してるのだ。その経験から言ってもこの判断は正しい、そう慶司は確信した。


「で、人助けしてたり、喧嘩もしとるがまぁ内容的に問題もなし。その上で神様と言われる存在からここまで評価も受けてる。こんなに推薦を受ける人間なんて凄い事やで。少なくともこの千年間で誰も居なかった位の出来事や。ちゅー訳で、異世界に逝ってきて欲しい訳なんだ」

「いや推薦だろうがなんだろうが、その異世界とか行った後で戻ってこれるの?」

「それがなあ、無理なんよ」

「まず何のために行く必要があるのか、理由を説明もされずに、行ったら戻って来れないとか。なんというか『自分たちでいってらっしゃい?』としか思わないよ」

「これが難しい話なのよ。けー君にはちゃんと説明しよか、まず神とか仏とか言われてる存在が居なくなる。これがまず問題なのは理解してもらえるかな」

「神仏でも一方通行?」

「そう、そこが問題!神様は行って帰ってくる事も出来るんや。でもな、様々な事柄を司ってる力の存在、まあ神様やな。その神様が一人でも一時的に居なくなる。この現象が齎すのは非常に拙い事が起きるんや。世界の均衡やら色々と狂わせるからね。地震とか飢饉とか色々問題が起きる。それが行きも帰りも起こるんや」

「で、人間である俺なら問題ないと」

「まあぶっちゃけるとそうなるね、というか、けー君のけー君である魂や存在は無くならんのや。コピーはこちらの世界に残すから居なくなる訳じゃない」

「それで、理由は何、異世界に何しにいけと」


 もうこの時点で仮に行っても問題ないし、この出来事自体が夢でもいいと思いながら慶司は思っている。17歳にして達観してると言えばいいが異世界と聞いて興奮するぐらいの少年の心をなくしていない。


「様々な異世界の神様とこちらで交流があるんやけど、無法地帯と言えばいいのかなあ。神が管理してない世界も存在する訳なんよ。その異世界からちょっと危ない事件が起こりそうでね。他の世界に侵略しそうな存在が誕生するかもしれんのや。これを阻止して欲しいちゅう事やね」


「阻止って…頼む相手として変じゃないかな。軍人とかそういう人を対象にした方がいいんじゃないのか、と思ったけど色々これまた理由があるんでしょ…あーどうしようかなあ」

「よく判ってるねぇ大人はダメってのがまず一つ、柔軟性が無いのとか色々あるのよね。というか、ぶっちゃけていい?」


 聞けることは取り合えず聞いておこうと慶司は考える。聞いておいて損をする情報は無い取捨選択は其の後の問題であって自身がすればいい。


「どうぞ」

「推薦枠で他の2名ね、欧米と中東、熱心な信者なのね。候補枠は0なのは今回の案件にまだ若すぎる子供と、年齢の対象として過ぎちゃった人しかいない。で推薦枠の…」


「危なそうだからそこまででいいよ…要するに俺が宗教自体に傾倒してない、異能がある、荒事でも大丈夫で好奇心旺盛。これが其方(そちら)にとって都合が良かったわけだ」


 そういうことだね~とニコニコとしながらお地蔵様は頷いている。聞いたら爆弾が飛び出して来たので止めておく。


 そりゃあの辺りの宗教だと危ないことこの上ないだろう事はわかってる。歴史上で何度も戦争まで起こしてる宗教が異世界で宗教革命でもおこしたら問題を正しにいって、そこで更なる問題を起こすという意味のない状態を引き起こしてしまう。ここまで話を聞いたら行くことにもう決心している。


 だがどんな世界なのか、行ってこいというのだから、すぐに死んでしまうような過酷な世界なのか、よくあるゲームのようなファンタジーな世界なのか近未来なのかそれぐらいは知りたい。これではいくら残していく家族の心配が必要ないとしても問題である。


「で、その『異世界』はどんなとこなの。魔法とかファンタジーな世界?」


「うんとね、そうだなあ一応ファンタジーだよ。文明レベルとしたら西暦1000年ぐらいなんだけど。魔法があるから文明レベルが一定してない状態だね。調べた結果100年周期で異世界の魔法の源が狂うみたい。生物は亜人、魔物がいる以外は巨大な動物ぐらいかな。普通の人間の戦士でけー君の半分ぐらいの肉体強度だね、魔法があるから問題にはなってない」


 想像以上にファンタジーな世界だと慶司は感じた。魔法に亜人、魔物とくれば文化レベルなどは関係なくこの世界と違う。


「あと5時間ぐらいしか猶予が無いんだけど、そこは色々こちらから送るってことでサービスするからさ。なんとかして欲しいんだよ」

「判った、なんていうか行くのは了承したいけど、さすがに魔法なんて使えないよ俺、判ってるとは思うけど」

「その代わり気功の基礎ぐらいの力を既にもってるよね。それで十二分に強いとは思うけど、さっきも言ったように色々出来るからさ。向こうに送り込む時にコッチの神様達に協力させるよ」


 気功でなんとかなるなんて思わないが流石閻魔帳と云うところだろうと関心しながらお地蔵様に先を促す。


「もう大量にサービスをさせて貰うからさ。簡単に言えば不老不死で無敵な存在にできるから。まあぶっちゃけ神様みたいな」

「ぶっちゃけるにもほどがある!?」


 どこの一般人を神様にしようなどという酔狂な話があるというのかと呆れてしまった。


「そりゃ危機に送り込むんや、それぐらいするのが当たり前やろ。まあこっちからファーレン、ああ異世界のことな。世界と世界をまたぐには流石に人間じゃ耐えられんのよ。平行世界(パラレルワールド)位ならいけるけど。行き先がまったく次元の違う別系統の異世界だからね」


 お地蔵様曰く、歪みを作って送るにしても負担があるのだと。特に相手側からも召還魔法とか使ってくれないと負担がどうだとか色々と問題はあるらしい。


「以前には面白い例もあったんよ。召還魔法で魔王に頭突きした人間魚雷とか。でも今回はそういうのがないから安心してね」


 召還魔法で人間魚雷って嫌だな、そんな世界じゃないだけましなのか…

 論点がずれてるけども慶司の感想はこんな物だった。


「でも神とかを移動させるのは拙いとか言ってなかったっけ」

「ああ、歪みを神術で覆ってそこを抜ける際に色々するそうだよ、まあそう言ってたから問題無いと思う。うん多分だけど。で、なにか不老不死以外に望みってあったりするかな」


 不老不死は確定らしい、というかそれ程の存在でないと解決できない問題なのだそうだ。


「相手の強さが判らないから最低限勝てるだけの強化。こっちのこの荷物を持っていけないだろうから、代わりに向うで生活できる知識と装備は必要かな。それと金銭的な物が可能ならそれをお願いしたいかな」


 後はどうしようかとお地蔵様は次々と提案してくれる。


「破損して痛みを伴うのは必要な事だから仕方ないとして、毒素無効、お酒でも酔えなくなるけどいいかな。それに強度も増やしておいた方がいいかもね。歪みに耐えるだけは元から上げるらしいけど。普通の刃物で切れない位にはしておこうか。あとは筋力の上限値と骨も変えとくかい。なんてったってファンタジー世界だからね。どんなことがあるか判らないよね!」


 肉体改造になってから饒舌になったってどうなんだ。

 どうしてこうもテンションがあがってるんだよ、お地蔵様……


「酒は飲む気ないからいいよ、見た目とかの問題がないなら可能な限り強化して欲しい。だけど、外見は変わりたくない」


「武器は蹈鞴たたらの神が研究に研究を重ねた特殊合金の太刀。付与とかは出来ない飽くまで普通の刀ってだけだけど。この刀だったらまず折れないって言ってた。岩斬っても大丈夫だそうだよ。やっぱり日本人だったら刀だよね」


 一種の神器のような物を餞別として贈って貰えるらしい、貰えるなら有難い。


 それ以外にも普通の刀も敵が腐食とかすると先程の刀が勿体無いとくれるらしい。最初はこれ使って欲しいらしいがそれでも十二分に国宝を超える一振りだろう。装備はキャンプ用品と同じものを1セットと食料と水。食料と水に関しては迷い家の用意してくれた物になる、これは永遠に湧き出てくる物なのだとか、伝承の通りの物でお米と調味料と焼き魚に関しては心配が無くなった。


「これが壊れない限りいつでも出せるようになるよ。いいねこれ、ちょっと私が欲しいぐらいだよ」


 なんというか…


『いいのかこの世界の神仏!』


 と思わなくも無いが、貰える物はありがたく頂くことにした慶司。どうしてここまでテンションが高い人物(神様)が交渉に来たのか不明だとは思ったが諦めた。



 言語の問題はどうなのだと聞けば、神に近くなる事で会話については問題は無いらしい、言霊に意味をのせて伝え合うのが向こうの言語にもあるらしく、それで通じると説明してくれたので問題はないのだろう。

 人間魚雷を魔王に敢行した人の話や、目的地や敵の特徴、その他諸々雑談などをしてたら準備ができて歪みが足元に出来た…


 って足元かよ!


 こうして慶司は異世界ファーレンを放浪することになった。

物語の筋には変更は在りませんので御安心を。

推薦枠、候補枠が判りにくい辛いとのご指摘を頂きました。

推薦枠:神様からこの人いいんじゃないの?という神様推薦です、これで慶司は地蔵様を含む5人から推薦がありました

候補枠:ある程度の能力者がリスト化されている送還候補者の枠です。今回の案件に適した人間として予めピックアップされた人達の枠となります。


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