姫なりの気づかい
隣の国には、優しい伯爵がいる………らしい
「でも、私は…………、
この氷の城から出られない。
…………溶けてしまうわ。」
あっという間に夢から覚め、
自分の書斎へ戻る。
「あぁ、私が雪の姫で無ければ、
伯爵様を愛することができたのかしら?
伯爵様…、一目でいい。
一目でいいから、伯爵様に会いたい。
神様………、どうか、願いを……………」
雪の姫は、祈る。
祈る姿は、まるで絵画みたく美しい。
ある日、城の中庭で誰かが倒れていた。
雪の姫は、この時はわからなかった。
………この胸騒ぎを。
流石に、心配になってきたので
倒れている人へ向かった。
「もしもーし。
生きておりますかー?…………!」
姫の顔がみるみるうちに青ざめていく。
『もしかしたら、死んでいるかもしれない』
そんな言葉が、脳裏によぎった。
急いで、医務室に運ぼうとしたが、
姫の細い腕で、男性を運ぶことはできない。
仕方なく、1人で医務室へ向かい
慣れない手で、暖かいスープを作った。
『私は、雪の姫なのよ?
どうして、暖かいスープを
見ず知らずの人に作らなきゃ
ならないのかしら!』
内心、腹が立っている雪の姫(笑)
「自分の体が溶ける前に、
急いであの方に届けなくては……!」
足早に中庭へ向かった。
運良く、男性は目を覚ましていた。
「あの、ここは危険ですよ。
このような薄着でこの国へ来るなんて……。
このスープを飲んだら、すぐお帰りなさい。
でなければ、貴方は凍死いたしますわ。」
姫は姫なりの忠告をした。
男性が誰なのかを知らずに。