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掴みし腕、叶うならばその心まで【相模×響 B】

 光と闇の輪廻(サンサーラ)より、相模×響。


 原作沿いで、時間軸は七廻。碧家を訪れた相模。響に思いを寄せるころんを見て、響のどこがいいのかと疑問に思う。けれどそれは自分にも当てはまることで…


 ダイニングから出ていくころんと紗雪の背中を見ながら、相模はくすくすと笑った。明らかに反発する二人がおもしろい。 

 けれど、やっぱり女は嫌いだ。相模は食器を片づける響の背中を見やった。響の家に来るのは久し振りで、私服の響を見るのもいつ振りだろうか。

 響らしいシンプルで大人びたデザインの服。あんな服を着るから、実年齢より上に見られるのだ。ただでさえ大人びた顔立ちなのに。


「それで? 本当に何しに来たんだ?」

「だからお前の様子を見に…」

「俺はお前に言われた通り、高天を誘った! だが、お前も来るなんて聞いてないぞ!」


 振り返った響に、相模は一瞬目を丸くしてから嗤った。


「言ったらお前、反対するだろ? 自分の目でころんの様子を確認したかったんだよ。俺の思惑通り、ころんはすっかりお前にほだされてるな」


 言い返せずに、響はむすっとして食器を洗い始める。

 本当に、ころんは響に夢中だ。――ムカつくほどに。響のどこがいいのか。あんな仏頂面で、口下手男の。


「ほーんと、どこがいいんだろうな…」


 頬杖をついて、相模はぼそっと呟いた。その視線はずっと響に注がれたまま。

 どこがいいのか。それは、自分にも言えること。どうしてか、響のことが気になってしょうがない。

 響を慕うころんや、響が大事に守ろうとしている麗美に嫉妬するほど。


(まさか響を好きになるとは思わなかったぜ。昔の俺が知ったら驚くなー)


 そもそも、仲良くなるとすら思わなかった。あいつの第一印象は『お近づきになりたくないタイプ』だったから。


(なのに、今じゃこれだもんなー。人生分からないもんだよな)


 飲み干したリムルティーのカップを置いて、自嘲するように笑う相模。


「紗雪までいたのは予定外だが、予想範囲内ではある。このままいけば簡単にころん(あのおんな)を陥とせる。ふふ、楽しみだな。ころん(あのおんな)が陥ちて、(こわ)れた時の顔が」


 毀れればいい。ころんなんかに、響は渡さない。毀して、二度と響に近づかないようにしてやる。

 そこに、食器を洗い終えた響が戻ってきた。


「相模……もうそんなことはやめろ」

「ん?」

「そんなことをしてなんになる! お前のためにはならないぞ!」


 真剣な顔で詰め寄ってくる響を、相模は目を瞠って見つめた。


「いつまでも過去を(かえり)みて…過去にしがみついて…っ。こんなことを続けていてもキリがない! むなしくなるだけだ!」


 そう怒鳴る響は、なぜか哀しげな顔をしている。

 どうして、そんな顔をする? どうしてそんなに気にかけるんだ。そんなに俺のことを気にかけるなら――


「後悔することになるぞ!! そうなる前に…」


 ――いっそ俺のことを好きになればいいのに。

 響の言葉を遮るように、相模が響の腕を引っ張る。体勢を崩した響は、相模の腕の中に収まった。


「なっ……相模!?」

「なんで、そんなに必死になってんだよ。お前には関係ないだろ」


 耳元で囁かれる声に、響は身をよじって相模の腕から逃れようとする。だが、相模は腕をほどこうとはしない。


「かっ、関係ならある! 俺はお前の友人として…っ、お前が道を外すのをこれ以上見たくないんだ!」

「…友人として?」

「そうだ!」

「……ふぅん…」


 相模の腕が少し緩む。その隙に、響は相模から離れた。相模はくしゃりと前髪を掻き上げて、うなだれた。

 やっぱり、響は自分のことなどその程度にしか思っていない。気持ちにだって気づいてない。気づくはずがないんだ。


(俺が好きになるなんて、思うわけないもんな)


 少しは期待したのに。相模は大きくため息をついた。響は相模の様子に、怪訝そうに小首を傾げた。

 お前が俺のことをなんとも思っていないならそれでもいい。けど。

 相模は顔を上げて、まっすぐに響を見つめる。その表情はどこか切なげで、響はどきっとした。

 ――俺はあきらめるつもりはない。お前は誰にも渡さない。


「さ、相模?」


 困惑する響を、相模は無言で見つめるばかり。

 逃げるなら追いかける。追いかけて、捕まえる。捕まえたら、その時は。

 相模はにやっと笑った。


「覚悟しろよ? 俺から離れたくなくなるような体にしてやる」


 ――だから、逃げるなら今のうちだぜ?


「はあ!? なっ、なんの話だ!」


 響は我知らず頬を紅潮させた。相模の言葉が、自分に向けられているような気がして。 

 逃げきれるものならやってみればいい。俺は狙った獲物は逃がさない。



  ~END~



 こんにちは、甲斐日向です。第七廻あたりの相模と響でお送りしましたが、どうでしょう? 響の「高天」って呼び方久し振り! 

 相模はちょっとブラックで行きました。一応、相模の片思いということで…

 この二人、本編ではあんまり仲良くないんですよねー。相模が響を嫌ってて、響は相模に弱みを握られて嫌々従ってるんです。表面上は仲良しを装ってますけど。

 そのせいか、逆にくっつけたくなります。同人誌でも、仲の悪いキャラをカップリングしてたりするじゃないですか! あんな感じです。

 でも、意外とお似合いなんじゃないかなぁ、この二人。響が相模を心配してるのは事実だし、相模も嫌ってはいるけど“友達”であることに変わりはないですしね。

 でも、相模だったらベスト相手はユウだと思います(笑) それではまた。



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