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HAPPY BIRTHDAY【バルカン×渡羽 B】

 マジカル☆ラビリンスより、バルカン×渡羽。


 デートに出かけた二人。でも、目的地は渡羽の趣味らしくない場所。不思議に思ったバルカンに渡羽は…

 日曜日。バルカンは駅前の広場にある銅像の下で渡羽(とば)を待っていた。今日は渡羽とデートなのだ。だが、待ち合わせ時間は十分ほど過ぎている。なのに渡羽はまだ来ない。


(事故にでもあったのか!? それとも、変な野郎どもに絡まれてたり…あああ~っ、飛鳥はかわいいからなぁ!)


 頭を抱えて身悶えているバルカンを、近くで新聞を読んでいたサラリーマンが、変なものを見るような目つきですすーっと離れていく。

 そこに渡羽が小走りでやってきた。


「バルカーン!」

「飛鳥!」


 手を振り慌てた様子で駆け寄ってくる渡羽に、バルカンはきゅんとときめく。


「す、すみません…待ちましたか?」


 バルカンの前で、膝に手を置いて呼吸を整える渡羽に、バルカンはへらっと笑み崩れた。


「ぜーんぜん! オレも今さっき来たとこだし!」

「本当ですか?」


 上目遣いに見上げてる渡羽。かわいい。バルカンはムフフ、としまりのない笑みを浮かべる。


「ほんとだって。だからそんな焦ることなかったんだよ。でもありがとな~、急いで走ってきてくれて」

「君を待たせるとうるさいですからね。だから早めに出てきたんですけど、途中の道で工事をしていて、遠回りする羽目になってしまって…」

「そうだったんだ。事故とかじゃなくてよかったぜ」


 本気でそう思う。渡羽に何かあったら気が気でなくなりそうだ。ようやく呼吸が落ち着いてきた渡羽に、バルカンが手を差し出す。


「? なんですか、この手」

「もちろん繋ぐために決まってんだろー」

「なっ」


 みるみる渡羽の顔が朱色に染まる。渡羽はそっぽを向いて、ずかずかと目的地の方へと歩きだしてしまった。


「そんなの恥ずかしいですよ! こんな人目の多いところで…」

「えー? べっつにいいじゃん。だってオレたち恋び…」

「わー! 大きな声で言わないで下さいよ!」


 慌てて渡羽がすっ飛んでくる。真っ赤な顔でバルカンの口を手で押さえ、恥ずかしそうに睨んでいる。バルカンはにや~と笑って、自分の口を塞いでいる渡羽の手を舐めた。


「!! ぎゃーっ! 何するんですか汚い!」

「あ、ひでぇ~」


 渡羽はバルカンの服を引っ張り、手をこするように拭く。


「もうっ、バカなことやってないでさっさと行きますよ!」

「はいはい」 


 くすくす笑いながら、バルカンはぷりぷり怒っている渡羽の後ろを歩いて行った。



 やってきたのはプラモデルの店。渡羽にどこか行きたいところがあるかと訊いたら、ここがいいと言ってきたのだ。渡羽にしては珍しい。渡羽はこういうのには興味ないはずなのに。


「なあ~、飛鳥ー? ホントにここでいいのか? こう、デートなんだし映画館とか遊園地とかさぁ」

飛鳥(おれ)の好きなとこでいいって言ったのは君でしょう!? 文句言わずついてきて下さいよ」

「だってよ、飛鳥の趣味じゃねーじゃん、こういうの。なんだってここ選んだわけ?」


 傍らに並んでいたプラモを手に取りつつバルカンが訊くと、前を歩いていた渡羽は立ち止まり、歯切れ悪く答えた。


「…それは…その……もうすぐ、あれじゃないですか」

「? あれ?」


 何かあっただろうか。本気で分からない。考え込むバルカン。


「だっ、だから!」


 背後で悩むバルカンを振り返り、渡羽は絞り出すように言った。


「……っ、君の誕生日ですよ!」  

「へ? ……あー…あー! そっか! そういやそうだったわ」


 言われて初めて思いだした。来週は自分の誕生日だ。


「だからですね、その…古い付き合いですし、プ、プレゼントを……」  

「えーとつまり?」

「あーもう! 全部言わないと分からないのか!? 本当に君はバカだな! どうせだから君がよろこぶものを、欲しいものを買ってあげようと思ったんだよ! 悪いか!」


 興奮したせいで地に戻る渡羽。そのまま渡羽はまくしたてる。 


「前に、欲しいプラモがあるって言ってただろ!? だからそれをプレゼントするつもりだったんだ! でも、俺はこういうのよく知らないから、間違ったものを買ったら大変だと思って、直接選んでもらうために連れてきたんだよ! これだけ言えば満足か!?」


 肩を上下させて呼吸する渡羽。その目が少し涙ぐんでいる。バルカンは目を瞠って、呆然と渡羽の言葉を聞いていた。まさか自分のためだなんて思ってもいなかった。

 小学生からの付き合いで、本気でぶつかり合える仲だけど、渡羽がバルカンを思いやったことなどない。哀れみの目を向けられることはあっても。

 どんなにバカだ、うざったい、疲れると文句を言っても、結局はそばにいてくれる。それがうれしくていとしかったから、好きだと告白したのは一ヶ月ほど前。

 当然、渡羽は「バカですね君は」と一蹴した。でもその後、「まあ、どうしてもというなら…つき合ってあげなくもないですけど」とはにかんでいた。

 本気でぶつかることはあっても、本音は言おうとしない。分かりにくい愛情表現。

 バルカンはふっと笑みを零した。


「…なんですか、その顔」


 不機嫌な顔で渡羽はバルカンを睨む。口調が戻ってしまった。渡羽の場合、戻るというのは不適格な表現かもしれないが。普段が敬語なのでよしとしよう。


「いや~、そんなにオレのこと想ってくれたなんてなー。うれしいぜ」 


 にかっと歯を見せて笑うと、渡羽はかあっと顔を赤らめた。

「! これくらいのことでよろこぶなんて、おめでたい頭ですね」


 そっぽを向いた渡羽を、バルカンが抱き寄せた。渡羽は「放して下さいよ!」と暴れる。


「サンキューな。大好きだぜ、飛鳥」


 バルカンがそっと落とすように耳元に囁くと、渡羽はおとなしくなった。そして小声でぽつりと呟く。

 その声は本当に小さくて、一瞬聞き逃しそうになった。けれどその言葉は確かに届いた。


 俺も、好きですよ。



  ~END~



 渡羽ってバルカン相手だとツンデレですよね。本編書いてて、絶対そうだなと思ってました。

 マジラビのパラレル書こうと思って最初に浮かんだカップルは、実はこの二人だったりします。だって想像しやすかったんだもん。バルカンは渡羽にメロメロだろうし、渡羽は完璧ツンデレだなーと。

 なんだろう、アスカもシン相手だとツンデレだったし、正規の相手以外だとツンデレなのか主人公ズ。おもろいなー。

 でもこれ、時間軸いつだろう。まあ、本編設定は無視なんだし、いつでもいっか。それではまた!


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