一方通行×一方通行=交叉【陽向×紫 B】
特殊警吏隊士 海宝紫より、陽向×紫。微エロ。
任務から帰った紫。陽向が立ち寄っていたことを知り、会いたいと思うが踏ん切りがつかない。そんな紫を真愛良たちは強引に追いやって…
捜査から帰った紫は、隊士室で待機していた淑生にお茶を入れてもらった。今日は少し寒かったので、あたたかいお茶が心地いい。
「ゆかりん、捜査の方はどうだった?」
「ああ~、まだ時間かかりそうです。今、土師さんが資料をもらいに行ってくれてるんですけど、あの手の資料ってたくさんあるから、探すの一苦労かも」
「だーい丈夫よ。資料官ならパパっと見つけてくれるわ。資料の管理があいつらの役目だもの」
同じく待機だった真愛良にもお茶を振る舞い、淑生は紫に抱きついてきた。紫は少し困ったように笑いながら尋ねた。
「あ、あのー、天刻さんたちは?」
「天さんと春希は任務よ。ほむらんも応援に出てて……あ、そういえばさっき、総隊長が来たわ」
「え!」
どきん、と紫の胸が高鳴る。陽向は忙しいくせに、しょっちゅう特殊課に顔を出す。主に、紫のいる第三班に。
何か意味があるわけではなく、ただ楽しいからという理由なのは分かっている。それでも、期待してしまう。もしかして自分に会いに来てくれたのではないかと。
「昨日、置き忘れていった資料を取りにね」
あっさり期待を裏切られ、紫はがっくりする。
(そんなわけないのになぁ…)
あの人は誰に対しても同じ態度を崩さない。笑顔で近づいて、からかって遊んで、相手の攻撃を簡単にいなす。つかみどころのない雲のような人。いつまでたっても、あの人の心は読めない。
明らかに落ち込む紫に、淑生はくすりと笑って頭を撫でた。
「ホントについさっきだから、今から追いかければ会えるかもよ?」
「ぅえ!? いや、別にわざわざ追いかけることないですよ! そんな用事も理由もないし…っ」
慌てふためく紫がかわいい。淑生は紫の体を放して、トン、と背中を押した。
「用事はなくても、理由ならあるでしょ?」
ウインクする淑生。なんだか見透かされているようで、紫はなんとも言えない顔をした。追いかける理由――会いたい。
一瞬よぎる、陽向の顔。けれど。紫はその顔を振り払った。会いたいけれど、あの人だって忙しい。大した用事もないのに会いに行けるわけが――
そう思った時、紫の体がふわりと浮いた。
「へ?」
「紫ちゃんじれったーい。会いたいならその欲望のままに突き進むべきだよ!」
ソファーでゲームをしていた真愛良が、“念動”を使って紫の体を動かす。宙に浮かされ、紫はばたつく。無重力みたいでバランスが取りにくいのだ。
「ま、真愛良ちゃん!? 欲望ってそんな…」
「はーい、いってらっしゃい!」
「わぁぁぁぁぁっ!」
能力で隊士室のドアを開け、紫を部屋の外に放り捨てる。そしてすぐにドアは閉じられた。ぼてっと廊下に投げ出された紫は、打ちつけた顔をさすった。
「ぁいたたた……真愛良ちゃんってば、もう少し優しくしてくれたって…ってそうじゃなくて!」
がばっと起き上がり、ドアの開閉ボタンを押すがびくともしない。真愛良が能力で押さえているのだろう。
(どうしよう~。あ、会いに行くったって、どこにいるか分からないし…それに、やっぱり迷惑なんじゃ…)
「海宝? なんでこんなところで突っ立ってるんだ?」
「あ、土師さん!」
資料を小脇に抱えた土師が怪訝な顔をしている。紫は土師に取りすがった。
「よかったぁー! 今、真愛良ちゃんに締め出されちゃって。土師さん、中に入って真愛良ちゃん説得して下さい!」
なんでもすり抜けられる“透化”能力者の土師なら、ドアが開かなくても問題ない。訴える紫を見下ろし、土師は首を傾げた。
「というか、なんで締め出されたんだ? 木下の機嫌でも損ねたのか?」
「違いますっ。さっき総隊長が来たから会いに行けって…あ、いえ、今のはなんでもな…」
「総隊長なら資料室の近くで会ったな。総隊長室に戻るところだったみたいだぞ」
「はい?」
「行ってくれば? 資料はオレが調べとくから」
「で、でも…」
「会える時に、会いたい時に会った方がいい。オレたち特殊課は、いつどこで会えなくなるとも限らないんだからな」
特殊課の隊士は他課の隊士と違い、あらゆる事件捜査に加わる。任務も時に危険な任務を与えられることもある。
土師の言葉に、紫の心が動いた。紫はのろのろと土師から離れ、ややあってから心を決めたように走り出した。
「僕、行ってきます!」
「おお~」
土師はひらひらっと資料を振って見送る。「青春だねぇ」と呟いて、“透化”で壁をすり抜けた。
紫は本部棟に入り、総隊長室を目指した。すれ違う人が何事かと目を丸くしているがお構いなしだ。早く陽向に会いたかった。迷惑かもしれないけれど、自己満足でしかないけれど、陽向に会って、安心したい。
総隊長室が見えてくる。紫は全速力で総隊長室のドアまで走り、開閉ボタンを押した。
「総隊長!」
「おや、紫くん? どうしたんだい、血相変えて」
陽向はソファーで資料を読んでいた。おいで、と手招きされて、紫は素直に陽向に歩み寄る。
「珍しいね、君が総隊長室に来てくれるなんて」
笑顔で陽向が紫を見上げる。紫は荒い呼吸を整えながら言葉を紡ぐ。
「あ…あなたに……会いたかったんです……」
軽く目を瞠る陽向。紫は今まで隠してきた想いをついにぶちまけた。
「いつもっ、総隊長に会えるの楽しみにしてるんです。あなたの顔を見るだけで安心できて、声を聞くとたまらなくうれしくて、だから会えない時は…寂しいんです。
ほんとはもっと一緒にいたいんです! 特殊課に来る時は、一番最初に僕のところに来てほしいんです! 僕を…僕のことを好きになってほしいんです!」
一気に言いきって、紫は顔を逸らした。恥ずかしくて、陽向の顔が見れない。きっと迷惑だろう。男同士だし、陽向とは一回りほど年が離れている。こんな若造に好かれたって、うれしいはずが――
その時。紫の手がぐいっと引っ張られる。体勢を崩して、紫は引っ張られるままに陽向の胸に飛び込んだ。
「わっ」
「いきなり飛び込んできたかと思えば、愛の告白かい? 若いなぁ、君は」
「あ、愛って…はっきり言わないで下さいよっ。それに、こんなこと言われたって迷惑でしょう!?」
「どうしてそんなこと言うんだい? 勝手に人の気持ちを決めつけないでもらいたいな。うれしいよ、君が好きだと言ってくれて」
「…っ、好きだとは言ってないじゃないですか!」
「でも私に好きになってほしいんだろう? だったら、君は私を好きだということだ」
何を言っても軽くかわされる。紫は反論できずに黙り込んだ。その隙をついて、陽向はソファーに紫を押し倒した。
「そ、総隊長!?」
「つれないな。名前で呼んでくれないかい?」
「そっ、そんなこと…それより、どいて下さい! こんなところ誰かに見られたら…」
「何か問題でも?」
「ありすぎです! 僕たち、上司と部下で…それ以前に男同士だし…!」
そうは言いながらも、紫は動こうとはしなかった。真上から見つめられる陽向の瞳に引き込まれて、目が離せない。陽向が壊れ物に触るように、そっと紫の頬を撫でる。紫はびくっと震えた。
「紫くん。愛に立場も性別も関係ないよ。私は君の気持ちを迷惑だとは思わない。むしろうれしいんだ。君は自分を好きになってほしいと言ったけれど、私は初めから君が好きだったよ」
「え?」
陽向の顔がゆっくりと降りてくる。紫は体を硬直させた。陽向の顔が、鼻先で止まる。
「どうして私が、君を警吏隊にスカウトしたと思う?」
吐息がくすぐったい。紫は半ば夢見心地で「いいえ…」と答えた。直後、唇を奪われる。
「ふ…っ、んぅ……」
強く貪るようなキスの後、唇が離される。熱い吐息を漏らして、潤んだ目で紫は至近距離にある陽向の目を見つめ返す。
「一目見て君に恋をしてしまったからだよ。先に好きになったのは私の方だ」
「総隊長……」
「名前で呼んでくれ、と言っただろう?」
「……陽向、さん…?」
ためらいがちに名を呼ぶと、もう一度唇が重ねられる。今度は優しく、慈しむように。紫も受け入れて、陽向の背中に腕を回した。そして甘いひと時が始まる。
~END~
はー、もうどうしよう。なんかすっごい楽しい!(え?) こんにちは、甲斐日向です。やっちゃいましたね、初のボーイズラブ。いやーでも、本編書いてた時、この二人はなんか怪しいなと…ゴホゴホ。
でもですね、『特ゆか』の中で主人公のカップリング作るとしたら、BLになっちゃうんです! いや女の子いるけどさ、なんかあの三人の中の誰かとくっつくイメージがなくて(オイ)、とにかく話が思いつかないんです!
その点、この二人ならもうナニやってもいいかなーと(オイ!) はい、すみません。好きなんですこういうの。
版権のBLとかはよほど好きな作品、もしくはカップリングじゃないと受け入れらんないんですけどね、自キャラだと…妄想しまくりです。
まあ、あくまでパラレルなんで本編とは関係ないですけど、本編でも怪しいカップリングは、あると思います!(笑)
この話では、ゆかりんが陽向のことを気になっているのは三班全員気づいてます。春希はゆかりんと陽向の関係をいろいろ妄想してる腐女子、という裏設定があったりなかったり。
妄想は無限大。もっと様々なカップリングを提供できるよう頑張りまっす。その前に本編進めようね。それではまた!